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村上春樹 『ねじまき鳥クロニクル』(第1部~第3部)1998・新潮文庫-邪悪なるものとの戦いの物語

2024年06月27日 | 村上春樹を読む

 2019年のブログです

     *

 村上春樹 さんの『ねじまき鳥クロニクル』(第1部~第3部)(1998・新潮文庫)を再読しました。

 これもかなりの久しぶり。ところどころ記憶がありましたが、じっくりと味わいながら読んでみました。

 少し暗いですが、重厚な小説です。

 これまでは何となく暗いというイメージが残っていて、再読が遅くなってしまいました(村上さん、ごめんなさい)。

 しかし、いい小説です。

 あらすじはあえて書きませんが、邪悪なるものの存在とそれとの戦い、そして、こころ休まるもの、ということになるでしょうか。

 邪悪なるものは世の中に確かに存在するようです。

 しかも、人々のこころの中にも確かに存在します。

 それゆえに、それとの戦いはとても困難になります。

 外部の他者との戦いはなんとかできても、自己のこころの中の邪悪なるものとの戦いは非常にたいへんでしょう。

 つい妥協しがちになるかもしれません。

 それとの関連で、ここでも戦争の残酷さや悲惨さが出てきます。

 そして、外部状況としての戦争の残酷さだけでなく、普通の庶民が、戦場でいかに残酷な行為をしてしまうものか、村上さんはおそらく怒りもこめて描きます。

 村上さんの戦争への強い抗議と、それにもかかわらずに人々が意外と容易に戦争に賛成してしまう危うさをも描きます。

 そんな中で、笠原メイという少女の存在がこころ休まります。

 決して、いい子、ではないのですが、ものごとの本質を考え、見つめようとする存在で、いわゆるトリックスターの役割でしょうか。

 硬直したものをうち破り、遊びと創造に通じていきます。

 素直な考えがいかに大切かが描かれます。

 いい小説が読めて、幸せなひとときでした。      (2019.7 記)

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 2022年春の追記です

 ロシアのウクライナ侵略の残忍さを見ていると、この小説の奥深さをつくづく感じさせられます。      (2022.4 記)

 


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