ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

わからないこと・不思議なこと・喪の作業-2017年精神分析学会・その1

2023年10月16日 | 精神分析に学ぶ

 2017年秋のブログです

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 名古屋に来ています。

 昨日から2017年精神分析学会が開催されており、2年ぶりに参加させてもらいました。

 1日目は、編集委員会企画セミナー、研修症例、教育研修セミナーの三つのプログラムを選択、じーじはいずれも藤山直樹さんが出席される会場に参加させてもらいました。

 午前中の編集委員会企画セミナーのテーマは、事例の書き方。

 事例をいかに説得力のある形にまとめるかで議論がされました。

 藤山さんの、客観性は必要だが、書き物なので創造的で美的であることが重要と思う、との発言は刺激的でしたし、同意できました。

 午後の研修症例は、若手治療者による表情恐怖の事例に藤山さんが助言をされました。

 面接では優しく共感するだけでなく、わからないことや不思議なことは聴くのが自然、治療者が怖がって聴かないことは不親切ではないか、との指摘には思わずうなりました。

 じーじも同じような傾向があるので、反省させられましたし、勉強になりました。

 夕方の教育研修セミナーのテーマは、いかに分析的臨床を描写するか-体験から言葉へ。

 ここでは、まず高野晶さんのていねいな臨床描写の実践報告に思わずうなり、藤山さんの、体験を言葉にする時には、さまざまな「喪」の作業が必要、との発言にいろいろと考えさせられました。

 また、いい文章を書くためには詩や小説をたくさん読むことが大切、との指摘にはおおいに同意をしました。

 ふだんから役に立つのかどうかわからないような本をたくさん読んでいて、誰かさんから、無駄遣いのかね食い虫、と言われているようなじーじですが、それもまったく無駄でもないのかも(?)、と自己弁護をしてしまいました。

 1日目の終了が午後7時半と、じーじの私にはかなりハードな日程でしたが、しかし、勉強になりました。今日と明日もなんとか頑張りたいと思います。 (2017.11 記)

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 2023年秋の追記です

 わからないことを聴くことと、わからないことに耐えることはどんな関係になるのでしょう。

 わからないことを聴く時、なんでもかんでも聴くのではなく、クライエントさんにとっても大切と思われることを聴くのではないかと思います。

 そういう聴くことが出てくるまで、わからないことに耐えて、待っているのかなと思ったりします。

 これは、解釈の時の、話してもわからないことは話さない、ということとパラレルな感じかもしれません。 (2023.10 記)

 

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瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』2015・新潮文庫-中学男子の生きにくさと友情と希望を描く

2023年10月16日 | 小説を読む

 たぶん2015年のブログです

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 瀬尾さんの中学男子を描いた小説、『あと少し、もう少し』(2015・新潮文庫)を読みました。

 またまた、泣いてしまいました。

 年のせいか、涙もろくなってきているようですが、いい小説です。

 中学男子の駅伝をめぐるひと夏の小説。

 スポーツ根性小説ですから、涙は必見でしょうが、予想を裏切りません。

 しかし、単なるお涙ちょうだい小説とは違います。

 まずはそれぞれの登場人物の抱えている「生きにくさ」。

 瀬尾さんの小説の登場人物にはこういう人たちが多く出てきますが、今回も、みんな等身大に悩み、苦しみ、もがいている中学生と、その周囲にいるおとなたちが描かれます。

 そういう「生きにくさ」を抱えている登場人物が、お互いの不器用な優しさや心配りで、傷つけあいながらも少しずつ変わっていきます。

 部活の顧問をまかされてしまった、ひ弱でちょっと場違いな美術女子教師も、それはおんなじです。

 また、中学生の母親やおばあちゃんなど、大人の人たちの姿もおんなじです。

 解説を書いている三浦しおんさんが、走ることを描いた小説は、なぜ、ひとの本質に迫るのだろう、と述べておられますが、まったく同感です。

 走ることを通じて、ひとが変わる姿が描かれます。

 みんなで走ること、それだけで人は変われるようです。

 走ることは生きることに繋がってくるようです。

 そして、走ることにその人の生きざまが現れるようです。

 友情、思いやり、がんばり、などなど…。

 久しぶりにこころが、すがすがしくなったような感じがします。

 いいですね、中学男子。

 そして、周囲のおとなたち。

 そういう人たちと一緒に生きていきたいなと思います。 (2015?記)

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 2019年春の追記です

 瀬尾さんが本屋大賞を受賞されました。おめでとうございます。 (2019.4 記)

 

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