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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

プーチン大統領がウクライナへの侵略戦争で戦死した兵士の遺族に「人生は複雑で多様だ」と慰め。数十万人の自国国民の犠牲者を出しながら、自分の責任も認めず謝罪もしない独裁者の姿は自民党の政治家の鑑だ。

2024年01月08日 | ロシアによるウクライナ侵略

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 1月7日はロシア正教会のクリスマス。

 2023年はロシアのプーチン大統領は36時間のクリスマス休戦を呼びかけたのですが(にもかかわらずその間も攻撃していたが)、今年2024年はそれもなし。

 ロシア大統領府の発表によると、クリスマスイブとなる1月6日、プーチン大統領はモスクワ郊外の大統領公邸にウクライナへの侵略戦争で亡くなった兵士の遺族を招いたのだそうです。

 そこで遺族に向かって慰めの言葉として言ったのが

「人生は複雑で多様だ」。。。。

 まさに珍言、妄言。

 さらに、プーチン大統領は戦死者のことを

「勇敢に戦った」

と称賛し、遺族が必要とする支援を国を挙げて実施していくと述べるだけで、自分が始めた侵略戦争で自国民が何十万人も死傷していることを決して遺族に謝罪したりはしませんでした。

ロシア軍の兵士を確保するために中絶の権利を否定。プーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏は移送され行方不明。リベラル派の大統領候補は立候補禁止。このプーチン政権の人権侵害がウクライナ侵略を可能にしている。

 

 

 イスラエル政府のネタニヤフ首相がハマスに殺された遺族や人質になっている方々のご家族にこんな放言をしたら、どれだけ叩かれてまたデモが起こるかわかりません。

 しかし、ロシアの市民の方々は大人しくこれを聞いていたようで、同じようにウクライナやガザの無辜の市民を殺戮して戦争犯罪を繰り返しているロシアとイスラエルですが、その民度や政府による抑圧のされ方には大きな差があると思わされました。

 プーチン大統領は国連憲章違反のウクライナ侵略で死んだ兵士たちの遺族に

「クリスマスは最も温かい(祝日の)一つ。新年のように家族の祝日として祝う。最も好きな祝日の一つだ」

「ロシアの人口の多数を占めるロシア正教会や、我々の伝統的、友好的な宗教の代表者も、正教会の信者を祝う」

「ロシア国民の明快な同胞的結束という特質がある祝日だと、誇張抜きに言える」

といけしゃあしゃあと述べて、政教分離どころかロシア正教会をも使って侵略を正当化。

 また、自国内にチェチェンなどイスラム教などの少数民族やローマ・カソリック教会の信者などなどもいるのに、それらの「少数派」は存在さえ無視という少数者の人権や信教の自由を一顧だにしない発言を連発。

ロシア軍がウクライナの各都市に最大規模の空爆をして教育機関や産科医院などで民間人を殺戮。ウクライナ兵士の捕虜を射殺。カソリック教会の活動を禁止。プーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏を北極圏の刑務所に移送

 

 

 そして、プーチン大統領はウクライナを侵略中のロシア軍については

「多くの我々の男たち、勇敢で英雄的な我々の若者、ロシアの兵士が、祝日も武器を手に我が国の国益を守っている」

と侵略戦争に参加した兵士を称えて

「ここから一緒にお祝いしたい」

と述べた、というのですから呆れてものも言えません。

 ロシア軍に殺されているウクライナ市民のことはもちろん、無益な戦争で無駄に死なせてしまっている自国民の苦しみも全く気にならない独裁者気質丸出しです。

 そもそも、プーチン大統領は自分がウクライナ侵略を始めなければウクライナ市民はもちろんのこと、ロシア軍兵士も死なずに済み、遺族も悲しまなくてよかった責任には全く思いも及ばないのですから、うちの国の自民党も真っ青です。

ウクライナとロシアの市民に悲劇をもたらしたのは自分自身だと全く気づかないプーチン大統領。

ウクライナを侵略しているロシア政府のプーチン大統領が「戦闘は悲劇だ。ただ、ロシア側が和平交渉を拒否したことは一度もない」「私たちはどのようにしてこの悲劇を止めるのか考えなければならない」(呆)。

 

 

 ところで、情報機関からアメリカ議会に送られた報告書によると、ロシア軍ではウクライナに侵略した時点の兵士36万人のうち31万5000人、87%が戦場で失なわれたというのです。

 ところが他方、ウクライナに展開しているロシア軍の今現在の兵力は何と約62万人と倍増していて、そのうち動員による兵士は24万4000人なので、主力は「志願兵」として参戦した契約軍人や民間軍事会社の戦闘員などが占めるとみられるのですが、うち10~15万人は刑務所で「志願」した受刑者です。

 さらにプーチン大統領は12月1日に、ロシア軍の兵士の総員を23年1月時点から17万人(15%)増やし132万人規模とする大統領令に署名しています。

プーチン政権がロシアに入国した外国人にもロシア政府を批判しない「忠誠」を求める法案を準備。ロシアの軍事予算はソ連崩壊後初めて社会保障費を上回り予算全体の4割で22兆円。プーチンロシアは軍事独裁政権だ

 

 

 要するに、ウクライナ軍がロシア軍をいくら撃破しても、ロシア軍のように人間を使い捨てにする軍隊だといくらでも替わりが攻めてくるわけで、「負ける」ということがありません。

 さらにロシア軍の受刑者兵士は恐怖と痛みを感じないように薬物を使用させられており、まさに次から次へと新しいロシア兵が「ゾンビ」のように攻めてくるというわけです。

 こんなロシア軍に対する2023年後半からのウクライナ軍の反攻が成功していないのは、ウクライナ軍が制空権を得ていないのに強引に攻めたからだ、ロシア軍が勝つのはわかっていたと親露派はゼレンスキー大統領をバカにしたように言います。

 しかし、彼らはウクライナ政府が2022年に欧米にF16戦闘機を供与してほしいと要請していた時には、それではロシア軍が敗走してしまい

「そんなことをしたらプーチン大統領が核兵器を使う」

とロシア軍の敗北を予期して反対していたのですから、よくもまあそんな矛盾したことを平気で言えるものだと呆れます。

ロイター『ロシア軍懲罰部隊「ストームZ」、弾薬も食料もなく前線投入』より

ロシア軍はウクライナへの侵略を開始してからの2年弱で、現役の地上兵力のうち87%、31万5千人以上の死傷者を出して失った。それでも戦争を継続できるプーチン大統領の専制支配はもはや奴隷制だ。

 

 

 さてそれにしても、ロシアのように人口が多くて、しかも人の命に対する価値観が低い国ならではの「強さ」を世界は思い知らされました。

 ところで、ウクライナ当局は1月6日、同国東部ドネツク州がロシア軍のミサイル攻撃を受け、子ども5人を含む11人が死亡し、8人が負傷したと発表しました。

 ロシア政府は自国民の命もなんとも思っていないのですから、ウクライナ市民の命などさらさら気にしているわけがありません。

 こうしてみると、ウクライナはロシアに侵略されて仕方なく「売られた喧嘩」を買っている状態ですが、前から言っているように是が非でも戦争を避けることを最優先に行動すべきでした。

(ただし、ゼレンスキー政権がロシアの侵略を避ける道があったかもしれない、ということと、侵略戦争の責任があるということは論理的に全く違う。

侵略責任は侵略したプーチン大統領とロシア軍にしかない)。

 そして、日本は中国のようにロシアよりも人口が数倍で経済力は数十倍、しかも人の命がロシア並みに軽い国とは絶対に事を構えてはならない、日本から喧嘩を吹っかけてはならないのがよくわかります。

プーチン大統領の世界観はもはや現代のものではない。

「NATOの東方拡大」はプーチン大統領によるウクライナ侵略の「動機」ではあり得ても、ウクライナ戦争の「原因」とは言えない。ウクライナ戦争の原因はロシア軍によるウクライナ侵略以外にあり得ない。

 

ロシアは世界で特別な存在で何をしてもいいと思っているプーチン大統領こそ、ナチスドイツのヒトラー総統とそっくりだ。

プーチン大統領がロシアの新しい「外交政策の概念」を発表。「ロシアは独特な国家文明で単なる国家ではなく、ユーラシアと太平洋地域の強国として特別な地位」「自国民の保護のため他国に侵攻する」(恐)。

 

 

ロシア軍は北朝鮮から供給された砲弾や、イランから供与されたドローン兵器などを使ってウクライナ市民を攻撃していますが、そのロシア経済を支えているのは中国。

まさに世界の専制国家が総結集といった様相になっています。

欧米が被侵略国であるウクライナに軍事支援することは口を極めて罵倒するくせに、イランや北朝鮮が侵略国ロシアに武器を供給していることは非難もしない「非軍事主義者」。

その北朝鮮の金主席でもお見舞いを言ってきた能登半島地震の被害をプーチン大統領は黙殺。

そんな「プーチンを悪だというのが妄想」だとか言って、むしろゼレンスキー政権だけを目の敵にする親露派陰謀論者がなぜか日本でさえ後を絶たないのですから、2024年なのに春まだ遠い「世紀末」というべき状況です。

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ロシアのプーチン大統領は、ロシア正教のクリスマスイブにウクライナ侵攻で戦死した兵士らの遺族と会談し、国の支援を約束しました。3月の大統領選に向け、国民の支持を取り付ける狙いがあるとみられます。


プーチン大統領はロシア正教のクリスマスイブにあたる6日、モスクワ郊外の大統領公邸にウクライナ侵攻で戦死した兵士らの遺族を招いて会談しました。

その中でプーチン氏は“侵攻に参加する兵士を「国を守る英雄だ」”としたうえで、遺族らに対し「われわれは常にあなた方のそばにいる」と述べ、国の支援を約束しました。

その後、プーチン氏は遺族とともに公邸の敷地内にある教会で行われたミサに出席しました。

プーチン氏は今月1日には侵攻で負傷した兵士らとモスクワにある軍の病院で会談し、“戦場での主導権はロシアが握っている”と主張。そのうえで「ウクライナは敵ではない。彼らを利用してロシアの戦略的敗北を目指す欧米こそが敵だ」と述べ、ウクライナを支援する欧米への対抗姿勢を改めて示しました。

今年3月に大統領選を控え、プーチン氏としては侵攻を続ける意義を強調し、国民の支持を取り付ける狙いがあるとみられます。

 

 

侵攻戦死者遺族に支援約束

プーチン氏、クリスマスイブに

2024年1月7日 午後3時29分
 
 7日、モスクワ郊外の教会で、ウクライナ侵攻作戦の戦死者遺族らとミサに出席したプーチン・ロシア大統領(後列中央)(大統領府提供、タス=共同)

 7日、モスクワ郊外の教会で、ウクライナ侵攻作戦の戦死者遺族らとミサに出席したプーチン・ロシア大統領(後列中央)(大統領府提供、タス=共同)

 

 ロシアのプーチン大統領はロシア正教のクリスマスイブに当たる6日深夜、ウクライナで続ける侵攻作戦で戦死した兵士らの遺族とモスクワ郊外の大統領公邸で会談し、国の支援を約束した。タス通信が伝えた。

 プーチン氏は、戦死者は「勇敢に戦った」と称賛し、遺族が必要とする支援を国を挙げて実施していくと述べた。

 プーチン氏はこの後、公邸の敷地内にある教会で行われたクリスマスのミサに遺族らと共に出席した。(共同)

 

 

ロシア軍、地上兵力の9割近くを喪失か 米情報機関

軍事訓練に参加しているロシア兵=14日、ロシア・クラスノダール州/AP

(CNN) ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始してからの約2年間で、現役の地上兵力のうち87%、戦車の3分の2を失ったとする米情報機関の見解が明らかになった。機密解除された報告書の内容に詳しい関係者が、CNNに語った。

報告書は、ロシア軍の進めてきた地上軍の近代化が、15年分後退したと指摘している。

報告書によると、ロシア軍はウクライナに侵攻した兵士36万人のうち、31万5000人を戦場で失った。さらに戦車3500台のうち2200台を失い、歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車計1万3600台の32%に相当する4400台が破壊された。

地上軍の装備も先月末までに4分の1以上減少した。作戦の内容や規模が縮小した結果、昨年初めから大きな戦果を挙げられずにいるとみられる。

報告書は11日に米議会へ送られた。議会ではウクライナへの支援継続を含む緊急予算をめぐり、与野党の攻防が続く。ウクライナのゼレンスキー大統領はホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、軍事、経済支援の必要性を強く訴えている。

これに先立ち、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は最近機密解除された別の情報として、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州で10月から展開している作戦では1万3000人以上の死傷者を出し、戦闘車両220台以上を失ったとの見方を示していた。

 

 

ロシアのプーチン大統領は14日の国民との直接対話や大規模記者会見で、ウクライナ侵攻での兵力補充は十分だと強調した=ロイター

ロシアがウクライナ侵攻の長期化を見据え、兵員の増強を進めている。プーチン大統領は14日、契約軍人など「志願兵」との契約が2023年は50万人近くに達すると明らかにした。ウクライナの戦闘地域には現在約62万人の兵力を展開しているともいい、プーチン氏は体制強化をアピール。24年3月の大統領選を前に「強いロシア」も誇示する。

プーチン氏は、14日に開催した国民との直接対話と記者会見で、23年に入り48万6000人が契約軍人となり、現在も増加基調が続いているとした。「祖国の利益を守ろうとする動きは衰えていない」とも強調した。

ウクライナに展開する約62万人の兵力のうち、動員による兵士は24万4000人。主力は、「志願兵」として参戦した契約軍人や民間軍事会社の戦闘員などが占めるとみられる。兵員の増強には、動員ではなく、志願兵の確保が欠かせない。

ウクライナの戦闘長期化に伴って、ロシアは兵士の総数も増やしている。プーチン氏は1日、ロシア軍の兵士の総員を23年1月時点から17万人(15%)増やし132万人規模とする大統領令に署名した。

ロシア軍の総員は、ウクライナのクリミア半島を一方的に併合した後の16年に、従来比で1割強減の100万人規模となった。その後は微増にとどまっていたが、ウクライナ侵攻開始後の23年1月に115万人に増加し、今年は1年弱で再度の兵員増の計画となった。

ただ、30万人超の予備役を招集した昨年9月の部分動員令では、発令後に招集を回避しようとする人の出国が相次いだ。国民の多くは動員令への不安感が依然として強い。そのため、プーチン氏は現時点で「追加動員は必要ない」と懸念払拭に努めている。

兵力の増強を狙う一方、ウクライナ侵攻の長期化で軍の損耗は進んでいるようだ。英国防省は4日、ロシア側の死傷者について、死者は民間軍事会社の兵士を含めて7万人、負傷者は22万〜28万人との推計を公表した。

ロシア軍は兵士に支払う報酬を手厚くし、人材不足を補う考え。国防省系のメディアによると、軍高官は10月に兵士の月給が21万ルーブル(約33万円)からだと明らかにした。ロシアの平均月収の3〜4倍程度の水準となる。

地方などでの採用を増やしているとみられるほか、ロシアメディアによると、兵士の確保に向け、ロシアのパスポートを保有する旧ソ連諸国からの移民を、軍事務所に連行し、契約を強いる動きが起きているという。

受刑者を兵士に登用、前線に投入する動きも続いている。米紙ワシントン・ポストは10月、ウクライナ侵攻前に約42万人と推定されたロシアの受刑者数が、約26万6000人にまで減少したと伝えた。

ロシアのプーチン大統領(右)は8日、軍人らを前に次期大統領選への出馬を表明した=タス共同

プーチン氏は19日の国防省幹部らが出席した会合で「我々の軍隊が主導権を握っている」と述べた。ロシア軍は東部ドネツク州では主要都市ドネツクにつながるアブデーフカ周辺などで攻撃を継続し、徐々に前進しているとみられる。

英国防省は10日、ロシア軍がウクライナのエネルギー施設を標的としたミサイル攻撃を始めたと分析した。冬の寒さが厳しさを増す中、暖房などに使う施設を攻撃することでウクライナ側の戦意喪失を狙ったものとみられる。

こうした状況下、ロシアの民間世論調査会社レバダセンターが8日発表した直近の国民への調査結果によると、「軍事行動を継続するべきか、和平交渉を開始すべきか」との質問に対し、57%が「和平交渉の開始」と回答した。23年に入ってからは最も高い調査結果となった。一方、「軍事行動の継続」は36%と低下基調が続いた。

プーチン氏は戦時下での「国民の団結」を強調しており、独立系メディアによると、同氏は来年の大統領選で、得票率80%以上の「圧勝」を目指す方針だ。

 

 


焦点:ロシア軍懲罰部隊「ストームZ」、弾薬も食料もなく前線投入

Maria Tsvetkova、Polina Nikolskaya
2023年10月6日午後 4:36 GMT ロイター

 飲酒をとがめられた新兵。命令に背いた兵士。そして受刑者――。今年、こうした軍紀違反者や民間の犯罪者ら数百人が、「ストームZ」と呼ばれるロシアの懲罰部隊に投入され、ウクライナの前線に派遣されている。写真は、処遇への不満から戦闘拒否を宣言するストームZ兵の動画から取得(2023年 ロイター)

[ロンドン 3日 ロイター] - 飲酒をとがめられた新兵。命令に背いた兵士。そして受刑者――。

今年、こうした軍紀違反者や民間の犯罪者ら数百人が、「ストームZ」と呼ばれるロシアの懲罰部隊に投入され、ウクライナの前線に派遣されている。ロイターでは、ストームZ部隊の兵士5人を含む13人の関係者に取材した。

生き残って自分の体験を語れる者はほとんどいない、と彼らは言う。

正規軍兵士の1人は、「ストームZ部隊の兵士はただの『肉』だ」と語る。匿名での取材に応じたこの人物は陸軍第40318部隊に所属し、今年5月と6月、激烈な争奪戦の舞台となったウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムト周辺に派遣された。

戦場ではストームZ部隊の負傷兵6、7人の集団を治療した。名前も知らない指揮官からは放置しておくよう命じられたが、従わなかった。命令の理由は分からないとしつつ、将校らがストームZの兵士を通常の兵士より下に見ている典型的な例だと主張している。

ストームZの兵士らが置かれた苦境には同情しているという。「息が酒臭いことを将校に気付かれた兵士は即時、ストームZへ直行だ」

ロイターは第40318部隊の将校の1人に接触したが、ストームZについてはコメントを控えるとして通話を切られてしまった。ロシア政府に問い合わせたところ国防省に回されたが、コメント要請への回答は得られなかった。

政府の統制下にあるロシア国内メディアでもストームZ部隊の存在は報じられており、激戦に投入され、所属兵士の中には勇敢な行動を表彰された者もいるとされる。だが、部隊編成の実状や、被った損失については明らかにされていない。

ロイターは報道機関として初めて、実状を直接知る複数の情報提供者に取材し、ストームZ部隊の編成や配備について包括的な記事にまとめた。

取材に応じた13人には、ストームZ部隊兵士の親族4人のほか、同部隊と関わりのあった正規部隊の兵士3人が含まれている。前述の第40318部隊の兵士同様、全員が報復を恐れて匿名を希望している。ロイターでは、記事に関連する兵士全員について、犯罪歴やソーシャルメディアのアカウント、戦友や家族らへの取材に基づいて、その身元を確認した。

関係者によれば、この懲罰部隊は各100―150人程度で構成され、正規軍部隊に組み込まれる。通常は前線の最も危険な場所に派遣され、甚大な損失を被ることも多いという。ウクライナ側による東部および南部での反攻を撃退するために投入された、少なくとも5つのストームZ部隊も関係者によって特定された。

取材したストームZ部隊の兵士5人のうち3人、および他部隊の兵士3人の親族は、所属する兵士の大半が命を落としたという悪夢のような戦闘について語った。

窃盗罪で服役していた刑務所から動員された1人の兵士の話では、第237連隊に従軍していたストームZ部隊120人のうち、6月のバフムト近郊での戦闘で無事だったのは15人だけで、残りは死傷したという。

こうした懲罰部隊の配置は、ウクライナ侵攻におけるロシアの逸脱ぶりを示している。6月の反乱の後に解散させられた民間軍事会社ワグネルが受刑者を前線に送り込む例はあったが、ストームZは国防省直属の部隊だ。

別の関係者によれば、ストームZでは減刑の約束と引き替えに戦闘への参加を志願した受刑者と、軍紀違反により処罰された正規軍兵士が混在しているという。

戦況の推移を追っている独立系調査組織「紛争情報チーム(CIT)」によれば、ストームZはロシア国防省にとって、使い捨ての歩兵部隊として展開できる便利な道具になっているという。ロシアで設立されたCITは「ストームZの兵士は前線において、防御面であれ攻撃面であれ最も危険な場所にひたすら送り込まれている」と述べている。

ロシア国防省がストームZ部隊の創設を認めたことはないが、その存在が最初に報じられたのは4月のことだ。米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」がロシア軍から漏えいしたものとして引用した報告書に、同部隊の編成が書かれていたのだ。

ロイターはストームZ部隊に所属する兵士の総数を割り出すことはできなかったが、取材に応じた実状に詳しい人々は、現在少なくとも数百人のストームZ部隊兵が前線に配備されていると指摘している。

搭乗機の墜落事故で死亡したワグネル創設者のプリゴジン氏は、6月の反乱の際、ワグネルには約2万5000人の戦闘員がいると述べていた。

プーチン大統領は9月29日、正規軍に混じって戦闘に参加している受刑者に言及した。プーチン氏はテレビ番組の中で、ロシアの職業軍人からなる少人数のグループと会談し、彼らの戦友である元受刑者2人が戦死したと言明。「彼らは母国のために命を捧げ、自分の罪を十分に償った」と述べ、詳細には触れなかったものの、受刑者の家族には支援が与えられるだろうと続けた。

軍紀違反者の前線部隊への投入には歴史的な前例がある。第2次世界大戦中の1942年、旧ソ連軍がナチスドイツの侵攻を受けて退却を重ねていた頃のことだ。ソ連の指導者だったスターリンが、パニックに陥ったり持ち場を離れたりした兵士らを「懲罰部隊」へ配属し、前線の最も危険な場所に配置したことが、スターリン自身の署名した政令で確認されている。

ウクライナ政府も、戦闘への参加に同意することを条件に一部の受刑者を釈放していると明らかにしている。

<刑務所を出て殺りくへ>

「ストームZ」というのはロシア軍で使われている俗称で、突撃部隊を意味する「ストーム」と、ロシア軍がウクライナ侵攻の象徴として使う「Z」を組み合わせたものだ。

モルドビア出身のアルチョム・シューキンさん(29)は2021年12月に強盗容疑で懲役2年を宣告されたが、国防省の徴兵担当者が刑務所を訪れ、ウクライナに行って戦うことを希望する受刑者はいないか打診したという。裁判所の記録およびシューキンさんの親族2人の談話により確認した。

今年12月には釈放されるはずだったシューキンさんは、この募集に応じた。家族によれば、前科を消し、家族のため家の修繕資金を稼ぎたいと考えていたからだという。ストームZ部隊の兵士3人は月20万ルーブル程度(約30万円)の給与を提示されたが、実際には、平均してその半分程度しか支給されていないと話している。

家族によれば、シューキンさんは今年5月、第291親衛自動車化狙撃連隊に従軍する懲罰部隊に配属となり、ウクライナ南部ザポロジエ州に派遣された。そこではウクライナ軍がロシア軍の防衛線突破を試みていた。

ロイターで同連隊本部の当局者に問い合わせたが、回答は得られなかった。

ザポロジエ州にロシアが設けた行政機関の当局者で、この紛争について定期的に最新情報を公開しているウラジミール・ロゴフ氏は、第291連隊は今年の夏、同州で戦闘を続けてきたと対話アプリ「テレグラム」に投稿している。ロイターはロゴフ氏にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

シューキンさんから家族への連絡は、6月18日を最後に途絶えた。

<従軍中の泥酔、薬物使用>

2人の兵士によれば、懲罰部隊の中心は元受刑者だが、軍紀違反に対する懲罰として正規部隊の兵士が配属されることもあり、自分の部隊にはそうした形で異動してきた兵士もいたという。殺人未遂で服役していた「イゴール」と名乗るストームZの兵士も同様の証言をしている。

この2人の兵士のうち1人は第40318部隊所属で、将校らは勤務中の飲酒、薬物の使用、命令遂行の拒否などの理由で兵士をストームZに送り込んでいたと話している。

軍隊の規律に関するロシアの法律によれば、兵士が懲罰部隊に異動させられるのは、軍事法廷により有罪を宣告された場合に限られる。だが、ストームZに送り込まれた兵士について取材に応じた人々は、誰1人として、そのような兵士が軍事法廷で審理を受けたとは語っていない。先週ロイターが接触した第40318部隊出身の兵士は、そうした異動に伴う軍事裁判は全く行われていないと述べており、イゴールと名乗るストームZ兵も、やはり軍事裁判が行われた例は知らないと話している。

戦時国際法を定めたジュネーブ条約は、自軍内部での兵士の処罰については扱っていない。

<ストームZの反乱>

ザポロジエで第22179部隊に所属していた約20人のストームZ部隊は扱いに耐えかね、前線に戻れという命令を拒否した上、6月28日には処遇への不満を示す動画を撮影した。ロイターは、この部隊の連絡先とされる番号に電話をしたが、使われていなかった。

兵士の1人はこの動画で「私たちがいた前線には、弾薬が補給されなかった。水も食料もなかった。負傷者は搬送されず、遺体は今も放置されている」と語った。「実行する価値もないような恐ろしい命令を下される。われわれは戦闘続行を拒否する」

動画は撮影当日、ロシアの受刑者の人権擁護を求めてフランスで活動する団体「グラグ・ネット」により公開され、ロイターもこれを閲覧した。ロイターはこの反乱に参加した2人の兵士の身元を確認し、それぞれの親族に話を聞いたところ、動画の証言が裏付けられた。

2人の親族によれば、動画の公開後、2人の兵士および同じ部隊の兵士は反乱に対する処罰として、憲兵隊の将官から激しく殴打されたという。その後、2人の兵士は親族に待遇の改善を伝えてきたものの、2人が除隊を認められる時期については不明だという。

当局者らはこの件について公式にコメントしておらず、ロシア国防省はロイターの問い合わせに応じなかった。

刑務所で志願してストームZ部隊に所属し、その後反乱に参加したシベリア出身の兵士の親族は、前線からの知らせにおびえていると語った。

女性はこの戦争について「何ということか。とにかく早く終わってほしい」と嘆いた。

(翻訳:エァクレーレン)

 

 

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1 コメント

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Unknown (暗黒大将軍)
2024-01-09 00:58:35
今、米共和党がモスクワの代理人を(喜んで)やってる状態でマスコミも「支援疲れ」を連呼してますが、俺にしてみりゃいったい誰が疲れてるの?って訊きたくなりますね

少なくとも武器に関しては全くの無償供与って国はググッても見つけられなかったし、「ある」という人がいたら教えて下さい

アメリカ型の有償供与は債務の履行では現金やら物納やら、柔軟に応じるってことなんですが債務なんですから利子もつきます
1日戦争が延びればその分債務も増えるわけで、今後何世代にも亘って彼らにのしかかります

「じゃあ土下座でも降伏でもしてサッサと終わらせろよ」と話を振り出しに戻す奴もいるでしょうが、債務は彼らにかかるんであって支援国が迷惑がる話じゃありません

でも食料や医薬品など民生品は無償だし負担なのは事実だろ、と言うでしょうがそれはパレスティナ、ガザでも同じでしょう

あとやたら「増税」や「物価高」をウクのせいにする低スペック層も懸命に世論のボトム化に尽力してますね

増税をしてる国があってもそれは金融引き締めと併せたインフレへの弥縫策だし、昨今のインフレもコロナ後の需要超過としてやむを得んでしょう

全く、ロシアからすりゃ「助け舟」だらけで、船頭が多すぎて舟が山に登ってるぜ、って鼻でもホジりながら笑ってるとこでしょうよ
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