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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

プーチン大統領がロシアの新しい「外交政策の概念」を発表。「ロシアは独特な国家文明で単なる国家ではなく、ユーラシアと太平洋地域の強国として特別な地位」「自国民の保護のため他国に侵攻する」(恐)。

2023年04月03日 | ロシアによるウクライナ侵略

鈴木宗男氏と共に日本の親露派筆頭の佐藤優氏はこれについて「3月31日に発表された文書を読むと、基本的に去年10月のヴァルダイ会議におけるプーチン発言の枠内に留まっています。ロシアとしても西側連合との関係を決定的に悪化させることは避けようとしているのだと思います。」とコメントしていて呆れました。

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 2023年3月31日、ロシア軍が大量虐殺を行なったウクライナの首都キーウ近郊のブチャから撤退して丸1年を迎え、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日行われた追悼式典で

「世界はこの街のことを忘れない。我々はあなた方のことを決して忘れさせない」

と述べたのと同じ日。

なぜウクライナのゼレンスキー大統領は停戦できないのか。それはプーチン大統領が領土の割譲を禁じ刑罰を科する規定を憲法などに設けたため、停戦交渉でロシアが併合した地域を返還することが不可能だからだ。

 

 

 ロシアのプーチン大統領は3月31日、新しいロシアの外交政策の概念を承認する大統領令に署名しました。

 ロシアを独特な「国家文明」と宣言し、単なる国家ではなく、ユーラシアと太平洋地域の強国として特別な地位を確立すると主張しました。

 そして、国外のロシア人やロシア語を保護する立場にあるとしたのです。

 私は大日本帝国の「八紘一宇」というスローガンを思い出しました。

これだけ他国に攻め込んで自分の国土の何十倍も占領しておいて、全部「邦人保護のため」「自衛のため」と言い張った大日本帝国。

プーチン大統領がウクライナ侵攻を「自衛」の軍事作戦だと正当化。大日本帝国が「自衛」戦争だとして中国を侵略したのとそっくりだ。すべての侵略戦争は「自衛」目的で始まる。だから憲法9条が必要なのだ。

 

 

 日本が真珠湾攻撃をしてアメリカとの太平洋戦争を開戦する前年の1940年(昭和15)8月、第二次近衛内閣は基本国策要綱で大東亜新秩序の建設を謳い、

「皇国の国是は八紘を一宇とする肇国(ちょうこく)の大精神に基」

づくと述べたんですね。

 大日本帝国は世界を一つにする運命であるという意味です。

 ロシアは独特な「国家文明」なんだ、単なる国家ではなくユーラシアと太平洋地域の強国として特別な地位を持つんだというプーチン大統領の誇大妄想は、日本の大東亜共栄圏や八紘一宇という「思想」にうり二つです。

 しかも実際、在外邦人の救助の口実で日本はアジア各国に侵略戦争を仕掛けていったわけですから、まさに戦前の日本と今のロシアはそっくりだということが言えるでしょう。

 

 この『外交政策の概念』は、ロシアの外交指針で前回の更新は2016年でした。

 ロシアのラブロフ外相は同日の国家安全保障会議で、今回の外交政策の概念の更新は

「特別軍事作戦後に加速した地政学的な変化を反映した」

と説明しました。

 新概念では「ロシアは自国や同盟国の防衛」などに加え、「在外の国民の保護」のために軍を使用できると規定し、自国民の保護を理由に、他国に侵攻することを公然と認めました。

 これは直接には今のウクライナ侵略を正当化する目的がありますが、実際にはモルドバなどでも問題が生じており、プーチン大統領はロシア人保護の名目で今度も侵略戦争をし続けると宣言したも同然です。

 

 

 そもそも、プーチン大統領は開戦初日の2022年2月24日にウクライナへの「特別軍事作戦」=侵略を開始するにあたって演説をし、その中で、ウクライナ東部ドネツク・ルハンスク2州の親ロシア派が事実上支配している地域を念頭に

「ロシアに助けを求めている。これに関連して特別な軍事作戦を実施することにした。ウクライナ政府によって8年間、虐げられてきた人々を保護するためだ」

「われわれの目的はウクライナ政府によって虐殺された人を保護することであり、そのためにウクライナの非武装化をはかることだ」

と述べています。

 ウクライナ政府が親露派住民を虐殺している、その人たちを救助しなければならないというのが今回のロシアの侵略戦争の大義名分だったので、今回の『外交政策の概念』の変更・更新はウクライナ侵略を正当化することになるわけです。

 

 これについて、即時停戦派でありウクライナへの欧米の軍事支援を否定する伊勢崎賢治東外大教授はこのロシアの侵略宣言はまた無視。

 そして盛んに、ウクライナ戦争は突然始まったものではなく、ウクライナ国内でのドンバス(ドネツク・ルハンスク両州にまたがる地域)内戦(ドンバス戦争)の延長線上に今回のロシア軍によるウクライナ侵攻があるというのです。

 また、ウクライナ戦争はアメリカの代理戦争だということも頻繁に言います。

 さらに、ウクライナがやったドンバス地域での戦争犯罪?もICCは捜査すべきだと主張しています。

 これらはプーチン大統領らロシアの主張とまったく軌を一にしています。

 しかし、そもそもドンバスで「内戦」があったとしてもロシアがウクライナを侵略したことを正当化はできません。またウクライナの防衛戦争をアメリカの代理戦争だとレッテル張りをしても、だから何だという話です。

国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑でプーチン大統領らに逮捕状発令。国連人権理事会が殺害・性的暴行・子どもの連れ去りなどロシア軍の戦争犯罪があったとする調査報告書を公表。橋下徹氏、伊勢崎賢治氏らは沈黙。

 

 

 ちなみに同じ開戦初日の演説の中で、プーチン大統領は

「ウクライナ領土の占領については計画にない」

と述べているのですが、これは2022年9月30日にウクライナの4州を併合宣言してしまったことからわかるように大嘘でした。

 そして、ロシアがこれら4州を支配するようになってから半年以上も経過するのに、ロシアからは、まだウクライナがこれら4州の住民を虐殺していたという主張も立証も一切なされていません。

 そんな証拠があれば、ウクライナ侵略を正当化する格好の大義名分になるのに発信しないということは、そんな事実はなかったか証拠が見つからないからとしか思えません。

 つまり、ドンバス地域の住民をウクライナ政府が虐殺しているという話はロシアがでっちあげた侵略の口実に過ぎず、プーチン大統領はそもそも住民保護を重視していたのではないのでしょう。 

 ちなみに、ロシア政府はウクライナがネオナチだ、特にアゾフ大隊はネオナチだとも開戦時から主張し、日本でもそれに乗せられる親露派陰謀論者が多かったのですが、アゾフ大隊が守っていたマリウポリを陥落させてロシアが支配するようになり、同大隊の兵士も多数捕虜にしているのに、やはりアゾフ大隊はネオナチだったという話がロシアから出てこないのはなぜなんでしょうか。

 あれも大袈裟に言っていただけだったのか(呆)。

 

 さて、プーチン大統領はこの『外交政策の概念』の中で、欧州には

「反ロシア政策を放棄し、米国からの独立を獲得すれば安全と幸福を得られる」

と呼びかけました。

 しかし現実には、ロシアによるウクライナ侵略をきっかけに、これまで長く中立政策を保ってきたフィンランドとスウェーデンを追いやる結果となり、両国がNATOに加盟申請し、フィンランドの加盟は決まりました。

 まさにロシアの自業自得です。

 そして、プーチン大統領は今回の外交政策を発表した2023年3月31日の国家安全保障会議で

「ロシアの主権を強化し、世界の問題解決での役割を高め、より公正で多極的な世界秩序の構築に取り組むことが重要だ」

と述べたのですが、世界の多くの国はこれからも侵略すると宣言するようなロシアに公正な世界秩序の構築など期待するわけもありません。

ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーと同じくどこまで正気でどこまで狂気かもはやわからない。

「NATOの東方拡大」はプーチン大統領によるウクライナ侵略の「動機」ではあり得ても、ウクライナ戦争の「原因」とは言えない。ウクライナ戦争の原因はロシア軍によるウクライナ侵略以外にあり得ない。

 

 

参考記事

「ウクライナ叩き」はなぜ誤りなのか ~大国の侵略と小国の抵抗を同列に見てはいけない

 

追記

ロシア国営通信スプートニクのサイト「ドンバス」のキーワードで4州がロシアに併合された以降の2022年10月からの記事を全部検索してみたのですが、ウクライナがドンバス地域で虐殺をしていたという具体的な事実や証拠を指摘した記事がただの一つもありません。

プーチン大統領が2022年12月に

「何年もの間、西側諸国は恥知らずにその(編注:ウクライナの)資源を吸い上げて搾取し、ドンバスでの虐殺とテロを奨励してきた。」

と述べたという記事しか見つけられませんでした。

スプートニク以外でネットで全般的に検索しても、具体的にこんな証拠が見つかったというニュース記事が一つもありません。

なんでロシアはお得意の証拠や証人をでっちあげてでも捏造しないのか。

伊勢崎賢治氏が何を根拠にウクライナが「ドンバス内戦」でやった戦争犯罪をICCが取り上げるべきだと主張しているのかも不明です。

 

 

ドンバス内戦でウクライナがこんなに住民を虐殺した、とか、ウクライナはネオナチだ、という事実や証拠が実際にはなくても、これまでも多数のでっち上げをしてきたロシアなら証拠を捏造してウクライナの「戦争犯罪」を糾弾しそうなのに、なぜしないのか不思議なくらいです。よほど無理があるのか。

親露派の人々もどうしてそんな報道が出てこないのか不思議に思わないのでしょうか。

トランプ支持→反ワクチン→親ロシアの陰謀論グループでは出回っているのかもしれませんが、探してもロシアが4州を占領して以降のロシア側が見つけたウクライナのドンバス戦争での戦争犯罪について具体的な事実を摘示した主張が見つかりません。

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ロシア「米は安全保障の主要リスク」 新たな外交政策概念発表

ロシア国旗=ゲッティ

 ロシアのプーチン大統領は31日、ウクライナ侵攻による欧米との関係悪化を背景に、米国をロシアの安全保障の主要なリスクと名指しした新たな「外交政策概念」を大統領令で承認した。ロシア大統領府が発表した。

 同概念はその一方で「最大の核保有国として、米国と共存し世界の戦略的安定を保つ」とも強調、今後も米国との戦略核兵器の戦力均衡を保つ方針を明示した。

 プーチン氏は今年2月の年次報告演説で、米国との間で唯一残った核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行停止を表明。米国も条約に基づく核弾頭やミサイルの数、場所などに関する情報交換停止を発表し、戦略核を巡る状況は不透明さを増している。ロシアは米露の疑心暗鬼がこれ以上高まることを避けたとみられる。

 「外交政策概念」はロシア外交政策の基本指針で、改定は2016年以来。

 ウクライナ侵攻を非難し対露制裁を科した日米欧などの「非友好国」の圧力に対抗し「国の存続と自由な発展のためあらゆる手段を使う」と強調。ロシアと同盟国への攻撃に対処するため「ロシア軍を使う」と明記するなど、欧米との対決姿勢を鮮明にした。

 中国やインドに加え、中東諸国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、中南米諸国を今後の潜在的な戦略的パートナーとして挙げ関係強化の方針を表明。半面、米英や欧州連合(EU)との関係断絶を「自ら望んではいない」とし、関係改善の余地を残した。

 日本については「ナチス・ドイツや日本軍国主義者の英雄視」などの歴史見直しに対抗するとの形で言及した。(共同)

 

 

 

31日、ロシアのプーチン大統領は新たな外交政策概念を大統領令で承認した=ロイター

ロシアのプーチン大統領は3月31日、外交政策の指針となる「外交政策概念」を大統領令で承認した。世界の多極化が進む中で米国による支配の排除を進め、ウクライナ侵攻で対立する非友好国の政策に対抗すると主張した。

外交政策概念の改定は2016年以来となる。米国と同盟国がロシアと欧州の競争力を損ない、関係の正常化を複雑にしているなどと指摘した。

一方でロシアは核保有国として「米国と共存し戦略的安定を保つ」とした。プーチン氏は2月28日、米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を定めた法律に署名した。リャプコフ外務次官は3月30日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの発射実験の米国への事前通告について、今後も維持する考えを示した。

西側諸国など非友好国について、情報通信技術を内政干渉など軍事目的に利用しているとして対抗措置を進めるとした。

 

 

「ネオナチ思想」?マリウポリで抗戦のアゾフ大隊の実像

ウクライナ東部の前線から帰還するアゾフ大隊の隊員ら=2015年3月、ロイター

 ロシア軍が包囲攻撃を続けるウクライナ南東部の要衝マリウポリでは、ウクライナ軍と共に内務省傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」も抗戦している。元々は極右グループを中心に結成されたこの組織はネオナチ思想との関連性が指摘されたこともあり、「ウクライナの非ナチ化」を掲げるプーチン露政権にとって格好の標的だ。アゾフ大隊の実像とロシア側の実情を探った。

極右グループ基盤に創設 内務省に編入

 アゾフ大隊の誕生は2014年にさかのぼる。この年の2月、親欧米派の市民と民族主義者らによるデモが親露的なヤヌコビッチ政権を崩壊させたのが始まりだった。プーチン政権は反撃として南部クリミア半島を軍事制圧して一方的に編入、東部のドネツク、ルガンスク両州では親露派武装勢力とウクライナ軍の戦闘が始まった。

 ウクライナでは当時、兵力が不十分な軍を補強するため、オリガルヒ(新興財閥)の資金拠出で民兵部隊が次々生まれた。極右グループを基盤として、ユダヤ系の富豪コロモイスキー氏らの支援で14年5月に創設されたアゾフ大隊もその一つだ。<picture>ウクライナのキーウとマリウポリ</picture>拡大

ウクライナのキーウとマリウポリ

 大隊は翌6月、親露派勢力からドネツク州南部のマリウポリを奪還した際の戦闘に参加し、当時のポロシェンコ大統領から「最高の戦士たち」と高く評価された。これ以降、大隊は同市を拠点とし、今回の戦闘でも隊員約900人が防戦に当たってきたとされる。

 ウクライナ国内では大隊の戦闘能力の高さを評価する声が聞かれた。記者(真野)が14年9月にマリウポリを訪れた際、軍を支援する民間組織の男性幹部は「彼らが敵に対して攻撃的ならそれは良いこと。だが、地元住民に対しては攻撃的ではない」と語った。

 一方、アゾフ大隊には暗い影もつきまとってきた。人種差別的なネオナチ思想との近さだ。英メディア「インディペンデント」によると、創設者のアンドリー・ビレツキー氏(42)は北東部ハリコフ出身で元フーリガン(暴力的なサッカーファン)の白人至上主義者と指摘されてきた。

 大隊は公式には「ナチスの思想を支持していない」と否定してきた一方、ナチス親衛隊が使ったマークに酷似した紋章を使用。「かぎ十字」などナチスを象徴するマークを戦闘服やヘルメットにつけたり、入れ墨として体に彫ったりした隊員も数多くみられた。また、国連人権高等弁務官事務所の16年の報告書は、ウクライナ東部における親露派武装勢力の人権侵害を非難すると同時に、アゾフ大隊も略奪や拷問を実行したと記載されている。<picture>市民らに武器の扱い方を教えるアゾフ大隊の元隊員=ウクライナ首都キーウで2022年2月12日、ロイター</picture>拡大

市民らに武器の扱い方を教えるアゾフ大隊の元隊員=ウクライナ首都キーウで2022年2月12日、ロイター

 ただ、アゾフ大隊は14年11月に内務省傘下の国家警備隊へ編入されて以降、政府からの圧力もあり、過激主義的なグループの排除や隊員の多様性をアピールしてきた。軍本体が戦力を強化したため、大隊の役割は低下したとも言われた。

 注目された創設者のビレツキー氏は14年に最高会議(国会)議員に当選し、大隊を離れた。16年には共鳴する大隊出身者らと極右政党を結成したが、19年の選挙で2・15%しか得票できず、自身も落選した。

 アゾフ大隊の問題に詳しいドイツ人研究者のウムランド氏は「欧州諸国の多くと比べると、ウクライナで極右グループは力を持っていない」と独メディアに話している。プーチン政権による「ウクライナの非ナチ化」の主張に関しては、19年の大統領選で圧勝したゼレンスキー氏がナチスに虐殺されたユダヤ系であり、ロシア語話者でもあると指摘。「ウクライナにおけるナチス主義の議論は完全に場違いだ」と反論した。

 米ワシントン・ポスト紙によると、ロシアの侵攻を受けてウクライナは存亡の機を迎えたため、アゾフ大隊の新規加入者は「思想的にさらに多様になった」とみられる。一方で、戦争が長引くと極右など過激主義者の国内での影響力が増す恐れがあると懸念する専門家もいる。

ロシア、日本のテロ要覧大隊削除を非難<picture>ビデオ会議に出席するロシアのプーチン大統領。プーチン政権はウクライナ政府傘下にある準軍事組織アゾフ大隊をネオナチの組織だと批判している=2022年4月20日、スプートニク通信・ロイター</picture>拡大

ビデオ会議に出席するロシアのプーチン大統領。プーチン政権はウクライナ政府傘下にある準軍事組織アゾフ大隊をネオナチの組織だと批判している=2022年4月20日、スプートニク通信・ロイター

 ロシアは前身の旧ソ連が第二次大戦でナチスドイツに勝利した歴史を誇り、その記憶を国民統合の要としている。そのため、プーチン政権は今回の侵攻に際して「ウクライナをネオナチが支配している」と強弁し、アゾフ大隊をその象徴的存在と決めつけて利用してきた。

 具体的には、露軍によるとみられる市民や民間施設への攻撃に関して「現地のネオナチ部隊が実施した」と主張し、包囲する都市については「ネオナチ部隊が市民を人間の盾にしている」と訴えて避難が進まない責任を転嫁してきた。衛星画像や市民の証言から主張が虚偽と露呈しても、ロシア政府とその支配下のメディアは国内世論や海外の親露派層へ向けたアピールを続けている。

 しかし、そのロシア国内でネオナチ組織が野放しにされてきたという事実もある。ワシントン・ポストは今月、プーチン政権が白人至上主義の民兵組織「ロシア帝国運動」の存在を許していると報道した。この組織は過去にウクライナ東部の親露派武装勢力を支援したほか、北西部サンクトペテルブルクで運営する軍事訓練施設にドイツなど欧州の極右主義者も受け入れていたという。

 政権に近い民間軍事会社「ワグネル」にもネオナチ思想を持ったメンバーが含まれるとされる。ワグネルは露軍を補うため、現在ウクライナの前線にも投入されている模様だ。独メディアは、ドイツの極右勢力の間では、今回の侵攻でロシアとウクライナのどちらを支援すべきかで分裂が生じていると報じた。<picture>煙を上げるマリウポリのアゾフスターリ製鉄所。ウクライナ政府傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」が立てこもっている=2022年4月20日、ロイター</picture>拡大

煙を上げるマリウポリのアゾフスターリ製鉄所。ウクライナ政府傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」が立てこもっている=2022年4月20日、ロイター

 アゾフ大隊を巡る議論は、日露関係にも飛び火している。日本の公安調査庁は今月上旬、21年版の「国際テロリズム要覧」からアゾフ大隊に関する記述を削除したと発表した。同庁が各種報道などを基にまとめた記述を根拠として「公安調査庁がアゾフ大隊をネオナチ組織と認めている」とする誤った情報が広がったためという。

 ロシア側は敏感に反応した。露外務省のザハロワ情報局長は国営テレビで「日本はロシア恐怖症のグループに加わった。対露関係と国際関係で独立した判断を捨て、米政府に追随している」と一方的に非難した。【カイロ真野森作】

ウクライナ情勢とアゾフ大隊の経緯

2014年2月 国内の抗議運動が激化し、親露的なヤヌコビッチ政権が崩壊。

2014年3月 ロシアがウクライナ南部クリミアを制圧し、一方的な編入を表明。

2014年4月 ロシアが支援する武装勢力がウクライナ東部で政府庁舎などを占拠し、治安部隊との戦闘勃発。

2014年5月 民兵部隊のアゾフ大隊が発足。

2014年6月 南東部マリウポリの戦闘に参加。

2014年10月 アゾフ大隊創設者のビレツキー氏が最高会議選挙に当選し、後に大隊から離脱。

2014年11月 大隊は内務省傘下の部隊に編入された。

2015年2月 ロシア、ウクライナ、親露派武装勢力がウクライナ東部紛争の停戦で合意したが、その後も散発的な戦闘が継続。

2022年2月 ロシアが「特別軍事作戦」と称して、ウクライナ侵攻を開始。アゾフ大隊はマリウポリなどの戦闘に参加。

 

 

【解説】 開戦1年、ウクライナでプーチン氏の戦争は失敗したのか ロシアは何を求めている

2023年2月20日
ポール・カービー、BBCニュース


ロシア軍が猛攻を続ける東部バフムートを防衛するウクライナ兵

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月24日に兵20万人をウクライナに送り込んだ時、数日もすれば首都キーウを制圧し、ウクライナ政府を倒せるはずだと、間違った思い込みをしていた。

屈辱的な後退が相次ぐ状況で、その当初の侵略計画が失敗したのは明らかだ。しかし、ロシアはまだ戦争に負けたわけではない。

プーチン氏の当初の目標は
ロシアによるウクライナ侵攻は、第2次世界大戦以降の欧州で最大規模の侵略戦争で、1300万人以上のウクライナ人が国内外への避難を余儀なくされているが、プーチン大統領はいまだにこれを「特別軍事作戦」と呼ぶ。


2月24日にウクライナの北部、南部、東部へ兵を派遣したプーチン氏は、目標は「ウクライナの非軍事化と非ナチス化」だと自国民に説明した。ウクライナ政府に8年にわたり威圧され、ジェノサイド(大量虐殺)行為を繰り返されてきた現地の人々を保護することが、目的なのだと。こうした主張はいずれも、客観的証拠の裏付けがない。大統領はこのほか、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに足掛かりを得るのを防ぐことも目的の一つに挙げていた。加えて、ウクライナの中立確保も、目的に付け加えられた。


プーチン氏は公言こそしていないが、ロシアにとって特に優先順位が高かったのは、ウクライナ国民が選挙で選んだ大統領を失脚させることだった。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「敵は私を標的その1に、家族を標的その2に指定した」と述べた。大統領顧問によると、ロシア軍は2度にわたり、首都キーウの大統領府を急襲しようとした。

 


「ウクライナのナチスがジェノサイドをしている」というロシアの主張に、整合性はついぞなかった。しかし、ロシア国営リア・ノヴォスチ通信は4月初めの論考で、「非ナチス化とはすなわち、否応なく、非ウクライナ化でもある」と書いた。つまり、ロシアの目標は現代ウクライナ国家の抹消だというわけだ。

ロシアの大統領はもう何年も前からウクライナについて、独自の国家ではないと主張してきた。2021年7月に発表した長文では、9世紀末にさかのぼり「ロシア人とウクライナ人はひとつの民だった」と論じた。

プーチン氏の主張の変化
侵攻開始から1カ月たつころには、ロシアの戦役が予定通りに進んでいないのは明らかだった。プーチン氏は「第一段階」の完了を宣言し、その野望を劇的に縮小してみせた。ロシア軍はキーウとチェルニヒウの周辺から後退し、北東部で勢力を再編した。戦争の主な目標は「ドンバス解放」にすり替えられた。「ドンバス」とは、ウクライナの東部ルハンスクとドネツク両州にまたがる工業地帯を漠然と指す。

ロシア軍はさらに9月初めには北東部ハルキウ州から、11月には南部ヘルソンからも撤退した。ロシアの目標は変わっていないものの、ほとんど実現できずにいる。

そして9月21日、プーチン大統領はウクライナをめぐり国民向けのビデオ演説で「部分的な動員令」の発動を宣言した。ロシア国防省は、軍務経験がある予備役約30万人を段階的に招集すると明らかにした。しかしこの発表を受けて、戦争がいよいよ身近に迫ったロシア人の多くが、次々と国を逃れた。

劣勢に立たされたプーチン氏は9月30日、ウクライナ東部と南部の4州を一方的にロシアに併合すると宣言した。東部のルハンスクとドネツク、そして南部のヘルソンとザポリッジャの各州がその対象だったが、いずれもロシアの支配は部分的にしか及んでいなかった。それでもプーチン氏は、4州は「永遠にロシア」だと宣言した。

 

Presentational white space
今では、長さ850キロにわたる戦線で消耗戦が続いている。ロシア側の勝利は珍しく、勝っても小規模だ。あっという間に終わるはずの軍事作戦が、今では長期化した戦争となった。そして西側諸国の首脳は、ウクライナがこの戦争に勝たなくてはならないと、意を固めている。ウクライナの中立確保など、現実的な可能性ではとっくになくなっている。

プーチン氏は昨年12月、「長引くプロセスになるかもしれない」と述べつつ、「軍事紛争の円盤を回し続ける」ことがロシアの目標ではなく、戦いを終わらせることこそ目標だと述べた。

プーチン氏はこれまでに何を達成したのか
プーチン大統領が主張できる最大の成果は、ロシアからクリミアまで陸路を確保したことだろう。2014年にロシアが違法に併合したクリミア半島まで、以前はケルチ海峡にかけた橋を利用しなくてはならなかったが、今では陸路でクリミアに行き来できる。

ウクライナ南部のマリウポリやメリトポリといった都市を制圧したことで、ロシアはこの陸路を確保した。これをプーチン氏は「ロシアにとって重要な結果」と呼んでいる。ケルチ海峡内のアゾフ海は「ロシアの内海になった」とプーチン氏は宣言し、ロシア帝国のピョートル大帝にさえできなかったことだと指摘した。


失敗したのか?
クリミアへの陸の回廊を奪取したことを除けば、ロシアが一方的に引き起こした戦争はロシア自らと、その相手となった国に、悲惨な流血の事態をもたらした。これまでのところ、ロシア軍がいかに残虐で能力が低いかを露呈した以外、成果と呼べるほどのものはほとんどない。

マリウポリなどの都市は廃墟と化し、キーウ近郊ブチャなどでは民間人に対する戦争犯罪の詳細が明らかになっている。こうした事態を受けて、ロシア国家そのものが、国家的なジェノサイド(民族虐殺)を画策・扇動したと糾弾する第三者報告も出ている。

しかし、ロシアの弱さを何よりも明るみに出したのは、相次ぐ戦場での失態だった。

昨年11月にロシア兵3万人が南西部ヘルソンからドニプロ川の対岸へ後退したのは、戦略的な失敗だった
開戦直後にキーウ近くで全長64キロの装甲車列が立ち往生したのは、補給上の失敗だった
東部ドネツク州マキイウカで新年早々、動員間もない兵士がウクライナのミサイル攻撃で大勢死亡したのは、情報活動の失敗だった
昨年4月に黒海艦隊の旗艦モスクワが沈没したのは、防衛上の失敗だった。同様に、昨年10月にケルチ海峡大橋が攻撃され、数週間も閉鎖を余儀なくされたのも、防衛上の失敗だった

 

Presentational white space
ロシアは西側に対して、ウクライナに武器を提供しないよう、再三警告しているが、西側は構わずウクライナを支援し続けている。むしろ、「必要な限りずっと」支援し続けると、欧米諸国は繰り返している。

この結果、ウクライナは攻撃力に優れたハイマース(高機動ロケット砲システム)を入手した。さらに、ドイツ製のレオパルト2戦車の供与約束もとりつけている。

しかし、この戦争は終わっていない。ドンバスをめぐる攻防は続く。ロシアは今年に入り、東部ソレダルの街を制圧し、東部バフムートも抑えようとしている。バフムートを掌握し、さらに西の主要都市への足がかりにして、昨年秋に失った地域を再び奪おうというもくろみだ。

プーチン・ウォッチャーたちは、大統領が昨年4月に併合を宣言した4州すべてを支配しようとするはずだと見ている。そこにはドンバス地域だけでなく、主要都市ザポリッジャも含まれる。

必要となれば、プーチン氏は動員対象を拡大し、戦争を引き延ばすこともできる。ロシアは核保有国だ。そして、プーチン氏は必要となれば核兵器を使ってロシアを守り、すでに占領したウクライナの領土にしがみつく用意があると、その姿勢を示している。

「ロシアと国民を守るため、我々は持てるあらゆる手段を使う。これは、はったりではない」と、プーチン氏は昨年9月の時点で警告している。

ウクライナ政府はこれに加えて、隣国モルドヴァについても、ロシアがその欧州寄り政権を転覆しようとしているとみている。親ロ派が実効支配するモルドヴァ東部トランスニストリア地域には、ロシア軍が駐留している。

プーチン氏の立場は弱くなったのか?
70歳になったプーチン氏は、ロシア軍の失敗から距離を置こうとしている。しかし、少なくともロシア国外では、その権威は完全に失墜しており、大統領が国外に出ることはほとんどなくなった。

国内では、ロシア経済は表向きは西側の相次ぐ経済制裁にも耐えたかのように見える。しかし、財政赤字は急拡大し、石油と天然ガスの売り上げは激減している。

こうした中でロシア国民がどれだけプーチン氏を支持しているのか、実態を把握するのはきわめて困難だ。

ロシアで政府に異を唱えるのは、きわめて危険な行為だ。ロシア軍に関する「偽情報」を広めたとされれば、誰でも刑務所に入れられる。ロシア政府に反対しようとする人は、国外に逃れたか、あるいは野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏のように、投獄されている。

 

Presentational white space
ウクライナ、西側へシフト
この戦争の発端となったのは2013年のことだ。欧州連合(EU)との政治経済関係を強化する「連合協定」をウクライナが結ぶかどうかという事態の渦中、ロシア政府は協定締結をやめるようウィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領(当時)を説得した。

これにウクライナ国民の多くが大いに反発し、大規模なデモが続いた。ヤヌコヴィッチ氏は失脚してロシアへ亡命。ロシアは2014年2月にクリミア半島を併合し、ウクライナ東部の領土を奪った。

その8年後にロシアの今回の侵略が始まってから4カ月後、EUはウクライナに加盟候補国の立場を与えた。ウクライナ政府は、加盟手続きを加速するよう強く求めている。

プーチン氏は、ウクライナのNATO加盟も何としても阻止しようとした。しかし、NATOの東方拡大が今回の戦争の原因だと非難するその言い分は、事実と異なる。

開戦前にウクライナは、NATOに加盟しないとする暫定合意をロシアと交わしていたと言われている。そればかりか昨年3月の時点でゼレンスキー大統領は、ウクライナを非同盟・非核化の国にすると発言。「(NATO加盟は)できないと聞いている。これが事実で、認識しなければならない」と述べていた。

戦争はNATOのせいなのか?
NATO加盟国は、ウクライナの防衛を支援するため、防空システムやミサイルシステム、大砲やドローンを相次ぎ提供した。これがロシアの侵略を押し返してきた。

しかし、この戦争が起きたのはNATOのせいではない。むしろ、スウェーデンとフィンランドが正式に加盟申請したのは、ロシアのウクライナ侵攻のせいだった。

NATO expansion
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この戦争はNATOの東方拡大のせいだというロシアの言い分は、欧州ではある程度、受け入れられている。開戦前にプーチン大統領はNATOに、1997年の状態に戻るよう要求し、中欧、東欧、バルト半島から軍備を引き上げるよう求めた。

プーチン氏の目線からすると、西側は1990年にNATOは「1インチたりとも東へ」拡大しないと約束したにもかかわらず、東へどんどん拡大してきたということになる。



Presentational white space
しかしそれはソ連が崩壊する前の話で、当時のソ連大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏への約束は単に、ドイツ再統一の文脈から、東ドイツに限定された内容のものだった。

ゴルバチョフ氏はのちに、当時「NATO拡大の話題はまったく協議に上らなかった」と述べている。

対するNATO側は、ロシアが2014年に違法にクリミアを併合するまでは、東欧に部隊を派遣するつもりなどなかったと反論している。

 

 

 

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1 コメント

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Unknown (暗黒大将軍)
2023-04-03 21:42:37
プーチンの言ってる戯言は、「世に倦む日日」「非国民通信」「てきとう」辺りの西側の負け組系サイトが衒学趣味で垂れ流してる与太と同レベルですかね

また陰謀論屋の馬渕睦夫や副島隆彦の受け売りでヤフコメ汚染も継続されそうですね(笑)

GDPはアメリカの12分の1、中国の8分の1、日本/ドイツの半分という経済三流国のロシアにSWIFT(国際銀行間通信教会)排除などの経済制裁が利かないのはナゼだ、ロシアは不死身か、みたいな忖度スレを立てるのはやめてほしいわ

そんなのは経済が低スペックすぎるから、外貨は中国と取引できる元があればいいってことが裏づけされただけのこと
まともな先進国なら人件費が高くつくから自給自足はまずできないが、1人当たりGDPが日本の3分の1、アメリカの5分の1ってロシアなら自給と中印貿易で何年もやせ我慢は続けられますよね

で、陰謀論者の最大のウソはあの国がさも西側の搾取から新興国を守るメシア、みたいなあり得ない地位に祭り上げてること
資源で弱みにつけ込んでるだけのクセに、いつロシアが新興国が伸びるために先端技術や金融の投資をやったのか、具体例があるなら挙げてみろってんですよ
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