吉村洋文大阪府知事ら歴代党幹部のSP役を務めてきた日本維新の会交野市支部の高石康幹事長(54)から、繰り返し威圧的な言動を受けたとして、大阪維新の会の女性府議が党のハラスメント調査に対し、被害を申告していることが、「週刊文春」の取材でわかった。また、高石氏が過去に女性府議らに対し、高圧的に「死ねばもろともでやる気あんのか」「ほんま次ないで」などと発言する音声データも入手した。

美好かほる府議が高石氏からのハラスメント被害を申告

 190センチ超で、スキンヘッドという風貌の高石氏。維新関係者の間では「入道さん」と呼ばれる有名人だ。

「もともとは、維新の創設者である橋下徹氏の後援会の青年部部長だった古参党員です。吉村氏や松井一郎前市長のSP役として警護も担当してきました。街頭での威圧行為が問題視され、関西写真記者協会が抗議した過去もあります」(維新担当者)

吉村洋文知事 ©時事通信社

 大阪維新の会は現在、「週刊文春」5月18日発売号や5月25日発売号などで報じた笹川理前府議団代表(除名処分)による女性議員へのセクハラ問題を受け、全所属議員を対象にしたハラスメント被害の調査を実施している。その過程で、高石氏からのハラスメント被害を申告したのが、美好かほる府議(52)だ。医療機器販売会社の社長などを経て、現在2期目。交野市支部の支部長でもある。

美好府議(自身のHPより)

恫喝や暴言など、計9項目にわたる被害を訴えていた

「週刊文春」は、美好氏が大阪維新の会のハラスメント調査に対し、6月2日付で提出した〈ハラスメント申告について〉と題した文書を入手。そこでは〈私が支部長を務めている交野支部における高石幹事長(交野支部役員)のハラスメント事案に該当もしくは準ずる行為について、以下、ご報告いたします〉として、高石氏の行為を列挙している。

 例えば、〈支部会議での暴力的言動〉については、以下のように記している。

〈月一回、支部役員により支部会議が行われているが、暴力的言動が多い。交野市議会議員3名を含む交野支部役員はその暴力的言動に委縮(ママ)。190cmを超える身長と威圧的言動に、私も、体格的に劣る女性であるため時に恐怖を感じる。具体的には、(1)意見を聞かず一方的に主張する、(2)怒鳴る、(3)机を叩く、(4)支部役員を「お前」呼ばわりするなど。直近では、今年、5月20日の支部会議において、(1)(2)(3)(4)があり、(3)については、当該会議に出席していた顧問の中司参議院議員(ママ=中司宏氏は衆院議員)に注意を受けた。なお、当該会議は公的な場所である交野青年の家で行っていたので、会議室の外にいた支部会議後の政務報告会参加者(維新党員)及び隣室を使用していた一般市民の方数名(別の党の交野市市議会議員もその中にいた)が聞こえてきた当該言動に驚いたとの報告があった。一般市民の方に、この暴力的言動が話題になり始めた〉(下線ママ)

 他にも、〈維新公認で現役市議会議員を恫喝〉〈統一地方選挙の集会時等における暴言〉など計9項目にわたってハラスメント被害を訴えていた。

美好氏が党に提出したハラスメント申告

橋下氏や松井氏の名前を出し、自らの影響力を誇示する場面も

 また、「週刊文春」は、高石氏が交野市支部の会議で美好氏らに高圧的な発言を重ねる音声を入手した。日時は2020年6月15日。高石氏は次期衆院選に向けた支部の準備が不十分だとして、冒頭から次のようにダメ出しを始めた。

「美好、あんのか? 死ねばもろともでやる気あんのか。返事してくれよ。ないんならないでええさ。ないんやろ? しょせん他人事やろ? ちゃうのん?」

 府議や市議らを前に、約40分間ほぼ一人で喋り続けた高石氏。橋下氏や松井氏の名前を出し、自らの影響力を誇示する場面もあった。

松井氏と高石氏の2ショット(高石氏のツイッターより)

「次偉そうなこと言うたら、ほんま次ないで」

「あの橋下徹でも、俺が怒り狂っているとき、『高石さん、ちゃんと話するから待ってや』みたいに言うから、もの言われへん。松井一郎でもそうや」

 そのうえで、以下のように述べていた。

「わかってるけ、美好。次偉そうなこと言うたら、ほんま次ないで」

 美好氏に対し、自身に反抗的な態度を取った場合、次の府議選における公認など、今後の政治生命に影響しかねないという意味にも受け取れる発言をしたのだ。

 交野支部関係者が言う。

「こうしたハラスメント的言動は以前から繰り返されてきました。他の市議に『アイツの公認でんようにしてやった』『お前絶対潰すからな』などと言うこともあった。高石氏は、吉村氏らと直接やり取りでき、維新幹部と太いパイプを持ち、その影響力は侮れない。誰も何も言えないのです」

高石氏に事実確認の取材をすると…

 美好氏に高石氏からのハラスメント被害などについて直撃すると、「事実です」と認め、こう語った。

「高石さんは『資質がない』『活動してない』と何度も言うが、府議団の役員や駅立ち、府政報告会も定期的にやっており、個人攻撃、人格否定にしか思えません」

 一方、高石氏は約60分にわたって、事実確認などの取材に応じた。

――今年5月20日の件。

「ポスターの話で揉めて、『それやったら俺がお前に金払うたるわ』という感じで財布を机にバーンと叩きつけた。すぐパワハラって言うから『パワハラ、パワハラって言うなら、訴えてみたらどう?』と。カッとなったので美好府議に申し訳なかったとお詫びはした」

「入道さん」の異名を持つ(高石氏のFBより)

「私の一言で、公認が出ないとか、そんなアホな組織ではない」

――美好氏に「次はない」とも?

「美好もほかの議員たちも活動しないので。僕は維新の志を広めたいので、叱咤激励の中で言うかもしれないけど。ただ、幹事長名でコイツは公認出さないようにと文書出したりとか、そういうのはないんで。ただ、だいぶ前から、正直今でも思いますけど、それは公でいいんですけど、(美好氏は)支部長としての資質はないんじゃないかと。『長』としてのねっていうのがあって」

――他の市議にも「お前潰す」と。

「活動してますとかいうのが、嘘ついたりとかもあったんで、お前ええ加減にせえよと言ったこともあるし。おいコラお前と、怒って言うこともあります」

――橋下氏、松井氏、吉村氏との個人的な関係がある。公認権含め、影響力が大きいと市議らが捉えているというが?

「ないですね。周りの人がどう思ってるか知らんですよ。けど、私の一言で、公認が出ないとか、そんなアホな組織ではないと思うし。たとえば、冗談でね、『お前、そんなんアホばっかりしとったら次ないぞ』とかね、会話の中ではいうかもしれないけど。叱咤激励の一つですわね」

「それこそ、僕へのハラスメントやと思います」

――恫喝やモラハラでは?

「それこそ、僕へのハラスメントやと思います。身体が大きいから乱暴やと言われる。恫喝って受け止められたら直さなというのはもちろんわかっているけど、こっちの言い分としては怒るには理由があるやんかと」

――交野支部のことを思って?

大阪維新の会からの見解は、期日までに得られず

――吉村知事も市議時代から?

「はい、知ってます。知ってます。彼は(市議時代の)活動は言い方あれやけど、おろそかな部分あるんやけど、例えば駅立ちとかね。あんまりしないですわ。やけども、政策的に勉強とか、それを周りの人に意見を聞きに回ったりとかっていうのはすごいしているので。支部でも『駅立ちがすべてじゃないよ』と。維新の党勢拡大とか議員としての資質を高める活動ならなんでもいいと」

 大阪維新の会に、高石氏による美好氏へのハラスメントについて見解を求めたが、期日までに回答はなかった。

 大阪維新の会を率いる吉村氏はハラスメント根絶を掲げ、今回、党所属議員のハラスメント調査に乗り出した。そうした中、自身のSP担当でもあった高石氏によるハラスメント被害の申告についてどのように対応するのか、注目される。大阪維新の会は6月中旬をめどに被害の申告件数について公表するとしている。

 6月14日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および6月15日(木)発売の「週刊文春」では、高石氏による威圧的な言動の数々や、高石氏が怒号をあげた5月20日の交野市支部総会の様子などについても報じている。また、「週刊文春 電子版」では、2020年6月の交野市支部会議での高石氏の“恫喝発言”を収めた音声データを公開している。

 

 

「維新の会」関係者のパン店が府庁に出店騒動…店主「入道さん」に真相を直撃

社会・政治 投稿日:2021.11.14 08:00FLASH編集部


「維新の会」関係者のパン店が府庁に出店騒動…店主「入道さん」に真相を直撃
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「入道さん」こと高石康氏

《吉村知事、公務で来れないんだって。カレーパン差し入れいただいた。なう》

 高須クリニックの院長・高須克弥氏がSNSにこうツイートしたのは、11月9日のことだ。ツイートには、吉村洋文・大阪府知事の依頼を受けて、190センチ以上はあろうかという大柄な男性が高須院長にパンを手渡す写真が添えられている。だが、ちょうど同じタイミングで、男性が経営するパン店には、数多くの”疑惑の目”が向けられていたのだ。

「11月に入って、複数のアカウントが、このパン店の経営者が『日本維新の会』の議員や関係者であること、そしてパン店が大阪府庁の中で販売していることを指摘し、吉村知事や維新の会が便宜を図って販売の場所を与えているのではないか、という可能性を指摘するツイートをしたのです」(府政関係者)

 ツイートを受けて、批判は拡大した。パン店が吉村府知事以外にも、維新系の首長などに差し入れていたことや、維新所属の議員が店を訪問したり、店についてツイートしているスクショが拡散され、維新とパン店の”ただならぬ関係”に、大阪府庁や店には抗議が殺到。パン店は、当初はツイッター上でも反論をおこなっていたが、11月8日ごろ、アカウントは削除された。

「このパン店は大阪府枚方市にある『パン工房 ラビット』で、同店を経営しているのは議員ではなく、橋下徹のボディガード兼運転手を務めたといわれる最側近・高石康氏なんです。高石氏は党内では『入道さん』と呼ばれる、知らない人はいない大物です。

 ボディガードをしていた当時は、橋下氏の演説会場でメディアなどに高圧的に対応し、新聞でその名前が取り上げられたこともあります。ラビットの焼きカレーパンは、『カレーパングランプリ』の『西日本焼きカレーパン部門』で3年連続で最高金賞を受賞しているのですが、この受賞報告にも維新の議員が多数『いいね!』をしていました。

 この賞は、一般の投票によって決まるのですが、『ラビット』はSNSで広く投票を呼びかけていました。フォロワーの多くが維新関係者なのですから、異様な”組織票”といえると思います」(前出・府政関係者)

 高石氏の名前を検索すると、日の丸に「無敵」と書かれた布を腕に巻き、周囲を睥睨している姿がヒットする。高石氏に維新との関係や、大阪府庁への出店の経緯を聞くべく、本誌は11月10日、「ラビット」へと赴いた。

「自分は悪いことは何もしていないのに、勘違いが勘違いを生んで、精神的に参っています。SNSはつい見ちゃうし、見たら『この野郎』と反論したくなるので、いったんアカウントを消したんです。ネットの写真を見られましたか。あれはね、演説のときに知らない人に『無敵』と書かれた鉢巻を渡されて、無理に撮られたんですよ」

 枚方市内の、どの駅からも歩いて40分はかかる場所に「ラビット」はある。もともとは工場だったという建物は大きく、扉には「一般社団法人 エバーグリーン」とある。「ラビット」は就労継続支援B型事業所といわれる福祉施設で、知的障害、精神障害を持った人が約10人働いている。高石氏は「働いている方々は、音や知らない人に敏感なので」と、2階の個室に移動し、本誌に応対した。

「大阪府庁でパンを売っているといっても、府庁舎に入っている『こさえたん』という福祉コンビニで、ほかの業者さんと日替わりで、月に2、3回パンを置かせてもらっているだけなんです。『こさえたん』はお弁当やカップ麺のほか、僕らのような施設でつくったパンや、手作りのぬいぐるみなどを売っている店です。

 パンだけでも5~10業者が持ち回りで出品していますし、”維新のコネ”ではありませんよ。数年前、たまたま店の前を通りかかって、『ここはいいな』と思って申請したのですが、最初の年は審査に落ちてしまいましたし(笑)。一回に持っていくパンは80個から100個くらい、売り上げは1万2000~3000円くらいにしかなりません。枚方からのガソリン代などを考えたら、まったく儲かりませんが、働く方の工賃や、やりがいに繋がりますから」

 この施設を開いたのは最近で、高石氏はもともと、測量士だった。

「もともと、僕は25年くらい測量士をやっていました。3年ほど前に、兄貴が脳梗塞で半身不随になったのがきっかけで、自分で施設を作ったんです。兄貴は、『身内の世話にはならん』と、来ないですけど(笑)。ちょうどそのタイミングで、僕の後輩のお父さんがパン屋を廃業するということで、器材を一式もらったのが、『ラビット』の始まりです」

 高石氏は、自身が熱烈な維新支持者だと認める。

「僕は、もともと橋下徹の後援会員なんです。測量屋さんをやっていたころに、後輩が橋下の秘書になり、手伝ってほしいと頼まれたんです。この前の総選挙で辻本清美さんに勝った池下卓とかも、地元の後輩です。そんな風に、維新の議員には先輩後輩や友人が多くて、いろいろ手伝うようになったんです。

 当時は橋下にも殺害予告が出ているような状況で、ナイフを持ってくる人もいました。当時、僕は体重が130キロくらいありましたし、メディアもワーッと来ていましたから、『なんやコラ!』と言う役回りだったんですよ。選挙中にちょっと運転を手伝ったことはありますが、SPでもなんでもなく、維新から一度たりとも、交通費すらもらったことはありません」

 友人・知人である議員たちを、パンの”ステマ”(ステルスマーケティング)に利用しているのか。

「いや、ふつう友達だったら『こういうことを始めたから買うてよ』と言いますよね。『買っておいしかったら宣伝してや』と。吉村府知事も、市会議員のころから知っていますから、『食べて書いてや』と。あるとき、吉村知事が『ラビットのパンが欲しい』というので箱に入れて渡したら、それを高須さんに差し入れたことを後で知ったんです。それに、知事自身は『ラビット』という名前を出していないですからね」

『カレーパングランプリ』の最高金賞受賞は維新の組織票だった?

「それはないですね。パンを買ってくれた人向けに、『投票してください』というハガキは100枚くらい刷りました。その中に、維新の人が入っていた可能性はありますが、基本的にはネットショップで買ってくれた人に送っただけです。ツイッターでも投票を呼びかけましたが、人気投票的なコンテストですから。パンをおいしいと言ってくれる方は多いし、味に自信はあります」

「既得権打破」を旗印に、総選挙で躍進した日本維新の会。今後も、「これは維新の既得権では」と、ネット上を探し回る動きが続きそうだ。

( SmartFLASH )