[永田和宏選]
○ 小春日の空流れ行く蜘蛛の糸、雪むかへとはみちのくことば (蓮田市)斎藤哲哉
「雪迎え(雪むかへ)」とは、「晩秋の小春日和に、上昇気流に乗って空高く伸びた糸にぶら下がった子蜘蛛が飛行する現象。快晴の空に銀色の糸が光って流れる。この後、雪の降る時候になるところから言う」とか。
「雪むかへ」は、山形県の米沢盆地などでよく見られる現象であるので、作者の仰る通り「雪むかへとはみちのくことば」なのかも知れません。
○ どこからが私どこまでが私、雪虫ふわりふうわりふわり (福島市)美原凍子
本作の作者は、現在は福島市にお住まいの美原凍子さんである。
この作品の上の句にもある通り、人間というものは、時折り「どこからが私」で「どこまでが私」なのかさっぱり判らなくなる事がありますが、そうした場合の多くは、あちらこちらと際限も無く口出しをしたりする場合なのかも知れませんから、その点に就いては、お互いに留意して置かなければなりません。
○ 冬の蚊のうすき余白を生きるがにとぎれとぎれに澄みし翅音 (福島市)新妻順子
そうです。
前作の作者と同じ福島市にお住まいの新妻順子さんの仰る通りなのです。
「とぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら辛うじて棲息しているのは「冬の蚊」であり、その「冬の蚊」は「うすき余白を生きる」が如くに棲息している訳でありますが、私たち後期高齢者も亦、「冬の蚊」が「うすき余白を生き」ているがの如くに「ぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら、余生を生きて行かなければならない存在なのかも知れません。
ところで、「うすき余白を生き」ている「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」に立てる「澄みし翅音」とは何ぞや?
辛うじて「うすき余白を生き」ている、私たち後期高齢者が「とぎれとぎれに」に立てることを許されている「澄みし翅音」とは何ぞや?
それは、例えば、本作の作者の新妻順子さんや、新妻順子さんと同じ福島市にお住まいの美原凍子さん、そして、私・鳥羽省三の場合は「短歌を詠む」ことでありましょう。
同じ短歌と言ってもさまざまなものが在りますが、この場合の「短歌」は「うすき余白を生きる」「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」立てる「澄みし翅音」の如き短歌でなければならないのでありますから、その内容は自ずから限定されましょう。
即ち、被害者意識丸出しで声高に「アベノミクスは類い稀なる失政だ」などと言ったりする内容の短歌は「澄みし翅音」の如き短歌とは言えないのかも知れません。
○ 朝食にりんご夕食後にみかんセンター試験まで二か月を切る (富山市)松田梨子
「りんご」を食べることの効用に就いては、「一日一個のりんごは医者を遠ざける」とも言われ、「りんごが赤くなると医者が青くなる」とも言われ、「みかん」を食べることの効用に就いても「りんご」の場合と同じようなことが言われておりますから、お風邪など召されませんように、「りんご」や「みかん」をどんどん食べましょうと、産地の農家の方々がおっしゃっています。
○ 孫子みなおばあちゃん家と親しめる戸主はわれなりじいちゃん家なり (長野県)千葉俊彦
「戸主はわれなり」とは〈馬鹿丸出し〉であるが、でも、たまに訪れる「子」や「孫」たちの前で「戸主はわれなり」と言ったりして威張り散らしてみたいものですね!
長野県の片田舎にお住まいの本作の作者・千葉俊彦さんのお気持ちは、私にもよく解りますよ!
○ 可口可楽を神無月の夜買いにゆくそこかしこに咲く可口可楽の花 (神奈川県)九螺ささら
この寒い最中の「神無月の夜」に、「可口可楽」を「買い」に行ったりすると、狐に化かされることだってありますから、よくよく注意しなければなりません。
○ 人を殺さず殺されず来し信頼のわれらの兵士殺すかも知れぬ (天童市)鴨田希六
いやしくも「兵士」たる者の本分は何処に在りや!
そもそも、現憲法下の何処に「兵士」の在りや!
[反歌] 自衛隊は軍にあらざれば隊員は兵士にあらず敵など持たず
○ 五能線に雪のふる頃さびしげな湯宿に地酒飲みたきものを (仙台市)沼沢 修
斯く申す私は、「五能線」は嫌い!「雪のふる頃」も嫌い!「さびしげな湯宿」なんて大の嫌い!勿論「地酒」なんか大の大の嫌いなんです!
こんなにも寒い時期にあんなにもつまらない所に行く者の気が知れません。
[反歌] 四つ橋線玉出駅から徒歩五分「バロンドーラ」の海鮮料理
○ カンさんは竹かんむりのカンですか訊かれて微笑む私の名前 (神戸市)康 哲虎
本作の作者・康哲虎(カン・チョルホ)さんは、かつては「神戸の虎」と呼ばれたプロボクサーでありました。
その彼を掴まえて「カンさんは竹かんむりのカンですか」などと訊くなんて、ものを知らないのもいい所ではありませんか!
訊いた本人としては、彼が在日三世であることを知らないで、「カンさん」と呼ばれる彼の苗字が〈菅元総理〉の〈菅〉でも〈寒寒カラスの勘三郎〉の〈寒〉でも無くて、〈土管〉の〈管〉かと思って訊いたのでありましょうが、訊かれた本人としては「微笑む」しか無かったのでありましょう。
それにしても、お人柄の宜しい元プロボクサーであることよ!
[反歌] 「キンさんは平均点のキンですか」〈IQ80〉の僕つかまへて
○ 水槽にメダカ幾何売られゐて秋のカフェエに人声低き (徳島市)上田由美子
一首の眼目は「メダカ幾何」の「幾何(いくばく)」に在り。
即ち、件の「メダカ」は売れ残りのメダカなのでありましょう。
[反歌] 水槽に琉金数匹揺られゐて入り日射し込む「眼鏡の山田」
○ 小春日の空流れ行く蜘蛛の糸、雪むかへとはみちのくことば (蓮田市)斎藤哲哉
「雪迎え(雪むかへ)」とは、「晩秋の小春日和に、上昇気流に乗って空高く伸びた糸にぶら下がった子蜘蛛が飛行する現象。快晴の空に銀色の糸が光って流れる。この後、雪の降る時候になるところから言う」とか。
「雪むかへ」は、山形県の米沢盆地などでよく見られる現象であるので、作者の仰る通り「雪むかへとはみちのくことば」なのかも知れません。
○ どこからが私どこまでが私、雪虫ふわりふうわりふわり (福島市)美原凍子
本作の作者は、現在は福島市にお住まいの美原凍子さんである。
この作品の上の句にもある通り、人間というものは、時折り「どこからが私」で「どこまでが私」なのかさっぱり判らなくなる事がありますが、そうした場合の多くは、あちらこちらと際限も無く口出しをしたりする場合なのかも知れませんから、その点に就いては、お互いに留意して置かなければなりません。
○ 冬の蚊のうすき余白を生きるがにとぎれとぎれに澄みし翅音 (福島市)新妻順子
そうです。
前作の作者と同じ福島市にお住まいの新妻順子さんの仰る通りなのです。
「とぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら辛うじて棲息しているのは「冬の蚊」であり、その「冬の蚊」は「うすき余白を生きる」が如くに棲息している訳でありますが、私たち後期高齢者も亦、「冬の蚊」が「うすき余白を生き」ているがの如くに「ぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら、余生を生きて行かなければならない存在なのかも知れません。
ところで、「うすき余白を生き」ている「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」に立てる「澄みし翅音」とは何ぞや?
辛うじて「うすき余白を生き」ている、私たち後期高齢者が「とぎれとぎれに」に立てることを許されている「澄みし翅音」とは何ぞや?
それは、例えば、本作の作者の新妻順子さんや、新妻順子さんと同じ福島市にお住まいの美原凍子さん、そして、私・鳥羽省三の場合は「短歌を詠む」ことでありましょう。
同じ短歌と言ってもさまざまなものが在りますが、この場合の「短歌」は「うすき余白を生きる」「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」立てる「澄みし翅音」の如き短歌でなければならないのでありますから、その内容は自ずから限定されましょう。
即ち、被害者意識丸出しで声高に「アベノミクスは類い稀なる失政だ」などと言ったりする内容の短歌は「澄みし翅音」の如き短歌とは言えないのかも知れません。
○ 朝食にりんご夕食後にみかんセンター試験まで二か月を切る (富山市)松田梨子
「りんご」を食べることの効用に就いては、「一日一個のりんごは医者を遠ざける」とも言われ、「りんごが赤くなると医者が青くなる」とも言われ、「みかん」を食べることの効用に就いても「りんご」の場合と同じようなことが言われておりますから、お風邪など召されませんように、「りんご」や「みかん」をどんどん食べましょうと、産地の農家の方々がおっしゃっています。
○ 孫子みなおばあちゃん家と親しめる戸主はわれなりじいちゃん家なり (長野県)千葉俊彦
「戸主はわれなり」とは〈馬鹿丸出し〉であるが、でも、たまに訪れる「子」や「孫」たちの前で「戸主はわれなり」と言ったりして威張り散らしてみたいものですね!
長野県の片田舎にお住まいの本作の作者・千葉俊彦さんのお気持ちは、私にもよく解りますよ!
○ 可口可楽を神無月の夜買いにゆくそこかしこに咲く可口可楽の花 (神奈川県)九螺ささら
この寒い最中の「神無月の夜」に、「可口可楽」を「買い」に行ったりすると、狐に化かされることだってありますから、よくよく注意しなければなりません。
○ 人を殺さず殺されず来し信頼のわれらの兵士殺すかも知れぬ (天童市)鴨田希六
いやしくも「兵士」たる者の本分は何処に在りや!
そもそも、現憲法下の何処に「兵士」の在りや!
[反歌] 自衛隊は軍にあらざれば隊員は兵士にあらず敵など持たず
○ 五能線に雪のふる頃さびしげな湯宿に地酒飲みたきものを (仙台市)沼沢 修
斯く申す私は、「五能線」は嫌い!「雪のふる頃」も嫌い!「さびしげな湯宿」なんて大の嫌い!勿論「地酒」なんか大の大の嫌いなんです!
こんなにも寒い時期にあんなにもつまらない所に行く者の気が知れません。
[反歌] 四つ橋線玉出駅から徒歩五分「バロンドーラ」の海鮮料理
○ カンさんは竹かんむりのカンですか訊かれて微笑む私の名前 (神戸市)康 哲虎
本作の作者・康哲虎(カン・チョルホ)さんは、かつては「神戸の虎」と呼ばれたプロボクサーでありました。
その彼を掴まえて「カンさんは竹かんむりのカンですか」などと訊くなんて、ものを知らないのもいい所ではありませんか!
訊いた本人としては、彼が在日三世であることを知らないで、「カンさん」と呼ばれる彼の苗字が〈菅元総理〉の〈菅〉でも〈寒寒カラスの勘三郎〉の〈寒〉でも無くて、〈土管〉の〈管〉かと思って訊いたのでありましょうが、訊かれた本人としては「微笑む」しか無かったのでありましょう。
それにしても、お人柄の宜しい元プロボクサーであることよ!
[反歌] 「キンさんは平均点のキンですか」〈IQ80〉の僕つかまへて
○ 水槽にメダカ幾何売られゐて秋のカフェエに人声低き (徳島市)上田由美子
一首の眼目は「メダカ幾何」の「幾何(いくばく)」に在り。
即ち、件の「メダカ」は売れ残りのメダカなのでありましょう。
[反歌] 水槽に琉金数匹揺られゐて入り日射し込む「眼鏡の山田」