超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

告発!山梨県警と自民が癒着 前代未聞の選挙違反替え玉事件

2008-03-15 21:42:06 | 週刊誌から
<自民県連局長を書類送検 公選法違反容疑で県警>
 二月十六日、顔写真入りで事件を報じる山梨日日新聞の記事に、地元・甲府で仰天する人たちがいた。
「検挙された県連事務局長は、マジメで地味な人。権限のない彼が、大がかりな違法行為を指揮できるわけがなく、明らかにスケープゴートです」(地元記者)

 自民党が歴史的惨敗を喫した昨年七月の参院選、事件は投票日直前に起きた。
「県知事と握手する自民の入倉要候補のビラが、十三万戸に郵送された。あたかも県知事が入倉氏を支持していると思わせる悪質なビラです。しかも、選管の証紙を貼っていない違法ビラでした」(民主党関係者)
 差出人は故人の名前を拝借し「山梨をよくする県民の会」と名のる架空の団体だった。結局、自民党公認の入倉氏は八万表の大差で落選。民主党は会見を開き、被疑者不詳で告発する動きを見せると、自民党県連は激しく動揺した。なぜなら、違法ビラは県連ぐるみの犯罪だったからだ。
 違法ビラの封筒詰めは、県連会館で七月二十二日に五十人近い人を動員して行われた。十三万通を急ピッチで封筒詰めしなければならず、一部アルバイトには自給千円を支払っている。もちろん違法だ。このとき、今回書類送検された秋山武県連事務局長は、県連の幹事長だった臼井成夫県議に「県連でやったらまずいですよ」と進言した。すると、日ごろから怒鳴ることが多い臼井県議は「いいんだよ!」と語気を強めたという。ビラの印刷と郵送だけで、費用は計五百三十万四千五百二十六円。秋山局長は「すべて一人でやりました」と供述しているが、そもそも百万円の決済もできない立場の職員である。さらに、封筒詰め作業の動員も別の人間が行っている。
 民主党の告発の動きを知り、八月三日には、前参議院議員の中島眞人自民党県連会長(当時)の自宅で緊急の会合が開かれた。そこに呼ばれたのが、中島氏に仲人をしてもらった恩義がある会社社長のS氏だ。S社長が当時のメモをもとに述懐する。
「居間には臼井県議がいた。臼井さんはテーブルにその違法ビラを一枚置き、こう言ったんです。『県連でやったとなると、党に傷がつく。(ビラの)企画立案はお宅の会社でやったことにしてもらえませんか』。そして、十三万枚のビラの印刷代と郵送費を私の会社で払ったことにしてほしいと言う。既に印刷業者二社の領収書の宛名には、勝手に私の会社の名前が書かれていた。さらに、私の友人で自民党県連と長い付き合いのあるAをビラ配布の実行役だったことにしたいので、Aを説得してくれ、と言うのです」
 S社長は印刷業者と郵便局の領収書を渡された。当のA氏が取材に答える。
「ビラを安く配布する方法を自民党側から聞かれたので、配達地域指定郵便という方法は教えた。しかし、私が罪をかぶる話には乗れないので断りました」
 だが、九月三日に民主党が山梨県警に告発状を提出すると、風雲急を告げる。翌日午後四時、甲府市郊外にあるリース会社「K社」の応接室にA氏が呼ばれた。待っていたのは、臼井県議、S社長、そして保坂武衆議院議員だった。
「臼井さんが『ひとつよろしくお願いします』とAに頭を下げていた。保坂議員はあまり喋らず、臼井さんがずっとAに協力を要請していたが、彼は頑なに拒んでいた」(S社長)
 十月九日、A氏が任意の事情聴取を受けるため、警察署に到着したちょうどそのとき、A氏の携帯電話が鳴った。臼井県議からで、「これから事情聴取ですよね。秋山事務局長とよく話し合ってください」と言うのだ。なぜ聴取のことを知っているのか、A氏は驚いた。聴取の帰り、A氏は秋山局長に会った。
「真実をすべて供述したよ」
 A氏が言うと、秋山局長は、「それは困った」と途方に暮れたという。
 十月二十五日、A氏はS社長の会社から勝手に持ち出した郵便局の領収書のコピーを県警に提出した。公選法違反の濡れ衣を着せられそうだ、と再び供述したのだ。すると、またまたおかしな動きが始まった。
 S社長のもとに自民党側から連絡が入った。
「なんでAさんが領収書を持っているんですか! Aさんがこちらのことを取調で喋っていますよ」
 なんと、事情聴取の内容がその日のうちに自民党側に漏れているのだ。告発者である民主党に捜査状況はまったく知らされていないのにだ。さすがのA氏も、翌日の聴取で県警に「てめえんとこは、どこまで腐っているんだ!」と激怒。
 S社長も二度の聴取で、「聴取内容が政治家に抜けるのはフェアじゃないよ」と諭すと、刑事は沈黙するばかりだったという。
 実は、昨年七月に民主党が告発の動きを見せ始めたときにも信じがたいことがあった。民主党県連の山崎光世総務局長が話す。
「県警捜査二課の担当刑事から私に電話があり、『告発のこと、考えてほしい。どうしても告発しますか?』と言われたんです」
 捜査二課の告訴告発担当刑事が、取り下げを求めていたというのである。
 結局、県連から“替え玉”を依頼されたA氏が聴取で頑なに否認したために、今度は、秋山事務局長が「違法ビラはすべて自分ひとりでやりました」と、罪をかぶる供述をし始めたのだ。
 この無茶苦茶な展開について、今回、真相を知る関係者が初めて語る。
「違法ビラの絵を描いたのは臼井県議だ。ビラは臼井氏のスタンドプレーだった。S社長がいまになって真相を話し始めたのは、臼井氏が筋を通さなかったからですよ。A氏への説得を依頼しておきながら、知らぬ間に秋山さんが犯人になっている。話が違うし、義憤を感じたのでしょう」
 昨年十一月に県連会長に就任した保坂武衆議院議員は小誌の取材に対し、九月のK社の応接室での会合にいたことは認めた。だが、
「話の内容は選挙総括です。そもそも私は(A氏を)説得する立場にない。経緯や中身はよく分からない」
 と言葉少なに話す。一方の臼井県議は反論した。
「まったくの捏造です。人一倍努力する私の突出した仕事ぶりに対して、出る杭は打たれるというか、妬む勢力が悪意に満ちた話で私を陥れようとしている」
 県警の捜査二課次席は、告訴取り下げを求める刑事の電話について「していない。民主党は嘘をついている」と言い、情報漏洩も「絶対にないし、根拠のない話だ」と強く否定した。
 だが、本当に秋山氏がすべて一人でやったなら、A氏が県警に提出した郵便局の領収書は秋山氏が持っていないと辻褄が合わない。
 昨年十一月二十四日、甲府駅前のジョナサンで、秋山局長はA氏とS社長に「話を合わせてほしい」と懇願している。A氏が、「秋山君、おまんは何か将来を約束されているのか」と聞くと、秋山局長は「全くないです」と答えた。
「おまん、頑張れるだか」
 A氏の心配に、秋山局長はぽつりとこう答えた。
「頑張ってみます」
 今、秋山局長は公の場に一切姿を現さず、沈黙を守り続けている。この腐敗した風土にメスを入れるべく、甲府地検は近く調査を始める方針だという。

週刊文春08年3月13日号より
コメント (2)
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