英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

炎の人、リプトン

2006-05-31 | イギリス
昨夜BSで「炎のランナー」やってました。
1924年のパリ・オリンピック(当時3ヶ月弱もの開催期間・・)でのイギリス陸上選手の活躍を描いた映画です。もう何回も観ているので、これといって感想はないのですが、一つだけ未だにどうしても解けない疑問があります。それはメインスタジアムに掲げられた「Lipton's Tea」のタペストリー。それもカメラアングル的にクライマックスシーンで一番効果的に映る背景に配されています。
アマチュアリズムを守るためにプロのコーチをスタジアムに入れない、という話が進行している一方で思いっきりコマーシャルめいた映像が流れるので、??という感じです。
解釈の仕方として
①リプトン社はこの映画の大スポンサーである。
②当時本当にこういう事実があった。
このどちらかか、両方か・・・・

小さな食料品屋を世界的なブランドにしたトーマス・リプトンは、スポーツマンとしても有名でした。1899年からヨットレース「アメリカズ・カップ」に挑戦し続けその度に敗退、5度目の時には80歳になっていました。このチャレンジ精神をアメリカ人は高く評価し、ニューヨークタイムズのキャンペーンで市民が1ドルづつ寄付をし、ティファニー社デザインのカップをリプトンに贈ったという話があります。また、リプトンはサッカーの国際的な普及にもお金を出しており、1905年に開催されたウルグアイ・アルゼンチン戦に自ら「リプトン・カップ」を贈っています。そういうことを考えると、この映画での「Lipton's Tea」もあながち不自然ではないのですが・・・。真実はどうなのでしょうか。

原題「Chariots of Fire」はイギリス人の愛唱歌「エルサレム」の一節からとられています。

白い光の向こうは何?

2006-05-30 | イギリス
よく夢を見ます。いつも不思議なのが、初めての場所に居るにもかかわらず夢の中の自分はドアの向こうに何があるか、道を曲がると何の建物が見えるかを知っていること、はたまた会ったことも無い人なんだけど、その人とは前にいっしょに遊んだことがあるとか・・・。その瞬間、夢の中にいる自分とその自分をみている自分が共存している様な変な気持ちになります。夢の中の自分が持っている「記憶」っていったいどこから来ているのでしょうか?「前世」なんて信じるタイプではないのですが、「何か」があるみたいです。

コニー・ウィリス「航路」

コニーはアメリカ人、舞台もアメリカの病院ですが、前に紹介した「犬は勘定に入れません」つながりと、イギリスに関係する大事件がこの作品に深くかかわっている(ネタバレ注意です)ということから・・・。
擬似的臨死状態を化学物質投与で作り出し、科学的に臨死体験を研究しようとするリチャードとジョアンナ。ジョアンナ自身も被験者となり臨死体験を行なうのだが。そこで見たものは・・。
増改築の連続で迷宮のようになった病棟、いつ行っても営業していないカフェテリア、二人の研究をじゃまするために絶えず付きまとうマンドレイク・・・。物語は当初コミカルに、というよりドタバタに、あたかも先が読めない状況下での脳シノプスの様にイライラともったいつけて進行しますが、これこそこの作品の罠なのです。
後半起こる怒涛の展開に唖然としながら、読者は最後に起きる「大どんでん返し」を期待しながら読み進め、そしてその「大どんでん返し」の希望が所詮叶わなかったと気付いた時に不思議な幸福感に包まれたりするのでした。

この写真、トンネルの向こうの白い光をイメージしてみました・・。
ダメですね・・。

難攻不落の嵐が丘

2006-05-29 | イギリス
どうしても読み通せない小説。
その一つにE・ブロンテ作「嵐が丘」があります。
世界的な名作古典だと言われようが、これを読まずして人生や愛は語れないと言われようが、ダメなのです。何回チャレンジしても・・・・。
ヒースクリフが発言するたびに頭痛がするし、キャシーが叫ぶたびに痙攣してしまうありさまです。まだまだ私が子供だと言うことなのでしょうか。いや、逆に歳をとり過ぎたのかもしれません。熱いたぎる感情を読み解くには、ひょっとして年齢制限が必要なのでしょうか・・・。私の中では「嵐が丘」と「天城越え」はどうもカッコで括られているようです。

もっとシンプルに嵐が丘を楽しむには
ケイト・ブッシュがいいですね。彼女は58年に英国ケント州の生まれ。リンゼイ・ケンプのもとでマイムを学んだりして、この「嵐が丘(Wuthering Heights)」で77年にデビューしています。写真は「嵐が丘」も入ったファーストアルバム「Kick Inside」(邦題は天使と小悪魔・・・めちゃめちゃですね)。このA面いいですね。彼女の独特の高音域の声とあわせ、情景描写的な音楽の作りがマッチして非常に心に残るアルバムとなってます。ただケイト自身はこのアルバムには満足せず、以後様々な音作りを行い、通好みのアーティストとなって行きます。
当時セイコーの時報CMに彼女が起用されたりしてましたね。


「嵐が丘」というタイトル訳もけっこうすごい。

会議は踊る!

2006-05-26 | 日常
今日は朝から「えらいさん」が来ての会議です。それも10時から1時までと2時から6時半までのダブルヘッダー・・・。この2つの会議の資料作りに今週は掛かりっきり・・・。
へとへと状態のまま会議が始まります。オープニングは常務から有り難い一言です。45分間もしゃべります。
続いて各部門・エリアからの企画の進行状況の報告です。
次々と常務からキツイつっこみが入ります。
まともに聞いていると身体が持ちません。
ここは「省エネモード」に切り替えです。
スクリーンセーバーで身体をカモフラージュしたつもりでしばし・・・
突然、「なあ、○○、どう思う?」と常務の声・・・
し、しまった・・あたってしまいました。
省エネモードから急速立ち上げで、一転スーパーコンピューターに変身です。
最後に聞き取れた会話と常務の表情からパズルを組み立てて生きます。
ダ・ヴィンチ・コードも真っ青の謎解きです。
「そーですねえ。面白いですね。」
「だろ!けっこういい企画だよ。営業にも教えてやれよ。」
「はい、そうします。」
なんの企画の話だったのか、いまだに分かりませんが・・・・・。
そして再び省エネモードに・・・

「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きてるんだ!」青島刑事は叫びます。
そんな「踊る!会議室!」に疲れたら、
美しい踊りを見て癒されましょう!


今晩深夜、BS2で放映されるバレエ「ラ・シルフィード」。
パリ、オペラ座バレエ団の公演ですが、よっぽどバレエアレルギーでないかぎり、感動すること必至のパフォーマンスです。主演のオーレリ・デュポンの美しさは格別ですし、マチュー・ガニオの若々しい踊りもいいですよ。同じ映像がDVDで5千円で売ってることを考えると是非録画をお勧めします。

階級小説のすすめ

2006-05-25 | イギリス
J・オースティン「自負と偏見」

合コン大好き5人姉妹。娘を玉の輿に乗せようと躍起になる母親、ノウテンキでズレてる父親。そこに登場、男が3人。ピングリーくんは気の優しいお金持ち。ダーシーくんはスカシてるけど超お金持ち。ウィカムくんはお金持ちじゃないけど超イケメン。さて姉妹は誰とゴールインするでするでしょうか?
という単純明快な物語です。というと月並みな連続ドラマの粗筋の様ですが、そういう普遍性がこの小説の大きな特徴となっているのでしょうか? ブリジッドジョーンズの日記がここからテーマを採っているとも聞きますが・・。

時代は19世紀、舞台はロンドンからちょっと離れた田舎。出てくる人は皆アッパーな人たち。仕事の話は全然なし、毎日毎日、舞踏会だ、狩だ、観劇だ、お食事会だ・・・と過ごす・・・。執事以下の人たちはまったく物語から排斥され、タイタニックで言えば「一等船客」の話だけで進行していきます。そうこれは「階級小説」なのです。

読んでいて不思議だったのは
●次女のエリザベスが旅行途中、ダーシーくんのお屋敷を見学させてもらう場面。当時は突然訪れた旅行者に気軽に館内を案内することになっていたのでしょうか?今なら入場料を取ってということは考えられますが。
●5人姉妹の1人メアリーがほとんど出てこない。4人姉妹と勘違いしそう。
●ウッドハウスを読んでても感じたのですが、アッパークラスの人たちって「おじ」「おば」っていう関係にけっこう依存しているのは何故?(たまたま?)
●とにかくみんなずーっとしゃべってます。


S・モームが世界十大小説に選んだ作品。
家柄だの財産だのは、真の結婚には関係ないのよ!と言いながらも、結局最後は家柄と財産と顔なのね!という本です。(あれ?違いました?)

ちびくろさんぼ

2006-05-23 | イギリス
原題は「The Story of Little Black Sambo」
元々はスコットランド人、ヘレン・バナマンが自分の子供のために作った手作り絵本だったそうです。その後1899年にイギリスの出版社から出されましたが、著作権の管理をきちんと行なわなかったことから様々な海賊版が出版され、多種多様な「ちびくろさんぼ」が世の中に登場しました。日本で一番売れた岩波版もそのひとつです。
子供時代、この岩波版が家にあり、それこそボロボロになるまで読んだ記憶があります。トラが溶けてバターになるというお話、原色が鮮やかななイラスト、リズミカルな文章、そしてラストのおいしそうなホットケーキ・・。いまでも「ちびくろさんぼ、おまえをたべちゃうぞ。」「どうかトラさんたべないでください。このあかいうわぎをあげるから」・・・・・かなりの部分を暗唱できますよ。
この「ちびくろさんぼ」、人種差別問題を理由に88年に一斉回収、そして絶版となったことは有名ですが、何が本当に問題だったのかの議論もなく自主規制がひかれた様に思えます。
昨年、瑞雲舎からこの岩波版が復刊となり、娘によく読んであげてます。娘のお気に入りは、トラが近づいてくる「ぐるるるるるるるるるるるる・・・」というところ。
親子2代で楽しめる本です。

でも瑞雲舎さん、本はもっと丁寧につくりましょうよ。この表紙にしても絵が右にずれてますよ。きちんと作った絵本なら、子供もちゃんと大事にします。

ロンドンのランドマーク

2006-05-22 | イギリス
ロンドンに行くと毎回立ち寄るのがセント・ポール寺院。ウェストミンスター寺院がどちらかと言うと改修、増築の連続で蛸足配線の様な印象を受けるのに比べ、セント・ポール寺院はロンドン大火後、天才建築家クリストファー・レンが設計したとあって建築物としてのまとまりと美しさがある様に思えます。夜のライトアップも美しく、テムズ対岸のテート・モダンからの夜景は絶品です。
寺院の中は思った以上に簡素で抑制が効いていますが、内陣から後陣にかけての装飾はなかなか見事です。そしてセント・ポールと言えばドーム。世界2位の高さを持つドームは見上げるだけではなかなかその大きさを実感できません。では、そのドームに上がってみましょう。祭壇に向って右側に上り口があります。ここから螺旋状の階段をえっちら上っていくと「The Whispering Gallery」と呼ばれる回廊に出ます。ここはドームの内側を廻る回廊で高さは30mあります。なぜ「ささやきの」と呼ばれるのかと言うと、はるか向こうの回廊の反対側で交わされるささやき声がこちらで聞き取れるということからです。本当に?私たちも最初は半信半疑でトライしましたが、団体で来ている子供たちの歓声が響いてよく聞こえません。「聞こえないよ」と向こう側にいる妻に合図を送っていると、それを見ていた警備担当の教会関係者が突然まわりに「静かにして!しーー」と静かに言ってくださり、妻に「さあ、今のうちに」と促してくれます。とその瞬間、今まで聞こえなかった妻の口パクがちょうど頭の後ろから聞こえてきたのです。当然まわりの人たちも聞こえる様になったらしく回廊はまた騒々しくなるのですが・・・。おじさん(失礼!)にお礼を言うと、肩をすくめて「上も見ていってよ」と。そこから急な階段をひーひー言って上ると「The Stone Gallery」に出ます。ここは比較的ゆったりした外の回廊で53mの高さからロンドンを一望できます。そこからまだ上があります。今度の階段はドーム内壁にそったような階段で正直怖いです。だって全体がメッシュになっているから下が丸見え。足下を見ずにひたすら上を向いて進むと、ようやくたどり着いたのが「The Golden Gallery」85m。けっこう窮屈な回廊ですが、眺めは抜群です。まあ、パリなんかに比べるとロンドンの街は空から見る都市としての美しさはありませんが、まあ絶景です。
階段を同じ段数下りて汗をかいたら、地下の納骨堂を見学しましょう。ネルソン、ウェリントン公爵、アラビアのローレンス、ナイチンゲール、そしてレン・・・イギリスの偉人、英雄が眠っています。そしてノドが乾いたら同フロアにあるカフェへ。お墓の横でするアフタヌーンティーも格別です。


ケン・フォレット「大聖堂」

この作品は91年に新潮社から一度出されていたものです。ソフトバンクに移籍して再登場です。
時代は12世紀。ノルマン・コンクエストを経てフランス文化が流入・融合した時代。動物とその食肉の名称が違うのはこの頃からとか。
仕事を求めて国中を歩き回る石工トム・ビルダーは、いつの日か自分の手で大聖堂を建てたいと夢みている。そんな彼に大きなチャンスが。かつての教会後に大きな大聖堂を建立しようという計画が。一方、時の王様ヘンリー1世が崩御する。彼には男子の世継ぎがおらず娘マティルダと従兄妹スティーブンの権力争いが激化し、国は内乱状態(無政府状態)に陥る。王権と教会の対立や市場経済の興隆などの要素を加え、トム一家と強い女性として描かれるアリエナの波瀾万丈の一代記が語られます。
ケン・フォレットの本はけっこう残酷な表現やエロティックな部分がありますが、この中世という設定ではこれまで以上に馴染んでいるように思いました。
ちょっと残念だったのは、教会建築に関する用語が多数出てくること。せめて巻頭に代表的な教会の平面図、立面図ぐらいを掲載して欲しかったな。

薫風緑

2006-05-21 | 日常
今日は全国的に快晴。
お弁当を買ってセント・ジェームズパークにお出かけです。
ウソです!近くの植物公園に行ってきました。
気温もかなり上がって汗ばむくらいでしたが、木陰にはいると風が気もちよく、とても爽やかな午後を過ごすことができました。緑も本当に若々しい色になっており、疲れた目を癒すのに効果がありそうです。
見頃のバラ園を散策したり、ハーブ園で色々な香を楽しんだりして帰宅しました。

Don't panic!

2006-05-19 | イギリス
「SOSタイタニック~忘れえぬ夜~」(1958 イギリス映画)

昨晩BSで放映されたこの映画を不覚にも鑑賞してしまいました。故に眠いです。
たぶん子供時代に一度観た記憶はあるのですが、あらためて感動しました。
ストーリーはドキュメントタッチで淡々と進み、短時間の内に静かに沈んでいった惨事が史実として伝わる数々のエピソードを交えて語られます。
衝突で砕けた氷山の欠片で遊ぶ3等船室の乗客、沈むと宣告する設計技師、届かない無線、電力を最後まで供給しようとする機関員、初めて使われたSOS、5分ごとに上げられる信号弾、目視できる近くにいながら信号を無視するカリフォルニア号、無線を受けながらも「遠すぎる」カルパチア号、絶望的に足りない救命ボート、女性・子供の優先を徹底する左舷担当ライトナー2等航海士、死を静かに受け入れる紳士たち、最後まで演奏を続ける楽団員、誘導すらされない3等船室の乗客達、浮かべられなかった折り畳みボート、「遅すぎた」カルパチア号の到着・・・・。

イギリスのパブリックスクールでは昔から、どんな時でも「パニックにならない」という教育がなされていると聞きます。船上で悠然と最後の時を迎えるイギリス紳士と最後までサービスをやめない従者たち・・・。私だったらどうなるでしょう。
最近、会社でも若い人達で、ちょっとしたトラブルや仕事の重なりでパニックに陥る人が多くみられます。カルシウム不足だけの問題じゃないと思うのですが・・。

CGなんてない時代、船の外観は模型丸見えですが、ディカプリオくんのかったるい恋物語がない分、むしろキャメロン版よりもこの惨劇がリアルに胸にせまってきた映画でした。

駄・ヴィンチ・コード?

2006-05-18 | イギリス
世に美術館は沢山存在しますが、器の大きさという点ではルーブルは群を抜いてます。このルーブル、いつ行っても混んでますので、スムーズに入場するにはちょっとコツが。まず地下鉄の駅で美術館共通パス(1日、3日間、7日間?有効がありますが)を購入。これさえあれば荷物検査の列には並ばなければなりませんが、比較的短時間で入場できます。(オルセーもこのパスで裏から入れば待ち時間なしです。)
さて、ガラスのピラミッドから入場する(地下鉄から直行もできますが)と、この時点で方向感覚が無くなっているはずです。インフォメーションで日本語の案内図をゲットして3つの展示翼の位置関係と自分の現在位置を確認したら、攻略開始。ここで気をつけなければならないのは、決して全部見ようなどと考えないこと。それは不可能ですし、健康に悪いです。とにかくお目当てがあればそれを鑑賞し、見落としがあれば(絶対出てきます)日を改めてという気持ちじゃないと、とてもこの巨大な美の迷宮を堪能できないばかりか、疲労だけが残るだけとなってしまいます。旅行の日程が少ないから・・・という方も、もう一度お金を貯めて来ると割り切ってください。
お腹が空いたら、地下のカフェテリアが便利ですが、値段のわりには「いまいち」です。(ロンドンの美術館に比べればはるかに美味いですが・・・)パリの美術館で美味しかったのはオルセーのレストラン。日本語メニューなんかも置いてあって期待薄だったのですが、サービスもちゃんとしてて◎でした。


ダン・ブラウン 「ダ・ヴィンチ・コード」


映画のほうは、カンヌであまり評判がよろしくないとのニュースですが、原作はちゃんと面白かったですよ。ただ後半、ウェストミンスター寺院での謎解きシーンでは・・・・私は解ってしまったんですね。答が・・。これってけっこう解る人多いんじゃないのかな。それともわざと解らせているのでしょうか・・。
短時間のうちに場所を変えながらの追っかけ謎解きの連続。途中??という話の食い違いもありますが、面白いことには変わりありません。
ただ、文庫版で十分かな?

家の近くにシオン幼稚園があるのですが・・・。ちょっと怖いですね。

それにしてもこのカバーデザイン、最低です。