英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

100年後のストレイシープ

2008-12-25 | イギリス

夏目漱石「三四郎」


何故か2冊もある「三四郎」。
朝日新聞に連載されて今年でちょうど100年です。
よく「こころ」から漱石デビューして、「自分にはちょっと合わない!」と以来漱石から遠ざかる人が多いですが、絶対に「三四郎」からがお薦めです。
永遠の恋愛小説という読み方も出来ますけど、悩める現代人にとって、この100年前の潔さと大いに悩みながらも前傾姿勢を保つ姿は大いに力になってくれそうです。
漱石はあらためてもっと評価されてもいいと思います。中学生、高校生には読ませちゃいけない大人の文学として。「猫」なんて抱腹絶倒インテリ爆笑小説だし、「行人」「それから」は超危険な小説ですもんね。

「三四郎」に登場する美禰子は、何回読んでも魅惑的です。元祖クールビューティーか・・・。
彼女がバスケットにお手製のサンドウィッチを入れてやってくるシーン、好きです。100年前のサンドウィッチってとっても涼しい食べ物のように思えます。

冒頭、熊本から東京に向う三四郎に広田先生が言葉を残します。
~「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」~
私も、かつて入社式に出るため、東京行きの新幹線の中でこの広田先生の言葉を噛み締めていたのですが・・・・・。時がたち、気がつけばあらゆる物に「とらわれてばかり・・」の毎日です。
ストレイシープ、ストレイシープ、ストレイシープ・・・・・・・。




大悪臭はどこから来たのか?

2008-12-22 | イギリス

ウィリアム・ギブソン&ブルース・スターリング
「ディファレンス・エンジン」

「スチーム・パンク」の代表作ということですが・・・。コアなSFマニアでは全然ないので、どういうジャンル分けでも・・・・・。
話の筋としては、19世紀初頭に実際に作られかけた機械式コンピュータ?「階差機関(ディファレンス・エンジン)」が完成し、進化を遂げ、蒸気機関を動力としてイギリス国家全体を制御している。その前提のもとでの、ビクトリア中期に起きた陰謀と騒乱を描いた物語(?)
明らかに有り得ない改変物語ですが、実際に活躍した歴史上の人物が、その性格・素性はそのままに違う行動を取り、この新しい物語に積極的に係わりあうところが面白いところ。我らが日本からは、森有礼(一橋大学の前身を作った方)、福沢諭吉などが登場し凶悪なロンドンの悪人どもを・・・・なんて場面も。
そして当時の実際のロンドンの風俗やラッダイト運動の拡大、急進派の台頭等歴史のエッセンスが巧みに盛り込まれています。現在博物館が多く建つサウスケンジントン界隈からイーストエンドのホワイトチャペルまでの通りの様子、ギャンブル好きなイギリス人の様子なども。世界最初のプログラマーと言われる「レディ・エイダ」の存在、高度に情報管理社会となったロンドンの姿は、この作品が発表された90年代頭よりも、誰でもがネット社会を享受できる現代のほうがよりメッセージを与えてくれるのかもしれません。

巻末にはこの物語を十分に楽しむための「事典」も付録としてつけられています。




クリスマス会

2008-12-17 | 日常

先週土曜日は幼稚園のクリスマス会。年長さんですから今年が最後ですね。恒例の降誕劇での娘の役は、念願かなってマリア様です。ちなみに家内も同じ幼稚園でマリア様を演じているそうです。母子2代でのマリア様。
新しいホールで行う最初のクリスマス礼拝ですから、園長先生相当はりきっています。今までに無い緊張感も会場に漂って・・・。
さて、子供たちが衣装を着けて入場します。子供って、こういう時には必ず親の顔を捜しますよね。そのくせ目が合うと恥ずかしそうな素振りをしたりして・・・。
礼拝が始まります。礼拝の一環としての劇ですから、写真は撮れません。
今年の劇は・・・・、みんな上手い!落ち着いています。昨年は娘のいる年中さんを中心に劇が途中崩壊する事態も生じていましたが、今年の年長はみんなちゃんと役を果たしています。特に博士3人組みが良い!
マリア様も間違えることなく、ヨセフ様と仲良く演じています。
ラスト、幼子イエスを抱き座るマリア。羊を献じる羊飼いたち。貢物を差し出す博士たち。「いちばんきんちょうした」と言う娘の真剣な表情を見ていると・・・・・・、うっ!迂闊にも涙が出てきました。やばいです。天井を睨みつけてなんとか堪えました。将来、あんな風にみんなに祝福されて家族が作れれば、他には何もいりませんよね。
絶対に結婚式ではびゃーびゃー泣いちゃう父親になっちゃうんだろうなあ・・・。




さてこの写真は何でしょう?
これは、この日幼稚園で子供たちからのプレゼントとして娘からもらったキャンドルシェードです。早速使ってみて、ということになり、他にキャンドル2本灯して夕食となりました。この日のメニューは餃子・・・。ほとんど闇鍋状態です。
「電気つけようよ。何食べてるか分かんないじゃん!」
「いや!もっとやる!」
いつもの騒がしい食卓です。





でも、
今日、パパは確かに会いましたよ
聖母マリアに






有給休暇・・・

2008-12-11 | 日常

6年ぶりに有給休暇を取りました。理由は頚椎間板ヘルニアの悪化・・・です。
予感は・・あったのです。数日前から背中が張って・・・。で、火曜の朝に、やっちゃいました!左肩に走る激痛・・・・。いつもは右肩なのに、今回は逆。しかも痛みはメガトン級です。しばらくは座ることも出来ずに部屋の中を腕を抱えて歩き回るばかりです。さすがに出社できる状況ではありませんでした。
脊椎動物の悲しい運命なのでしょうか。こんなにも頭と腕が重たいとは思いませんでした。
とにかくキーボード叩くのが一番しんどいですわ。




マイルドなホラー?

2008-12-08 | イギリス

ジョー・ヒル「20世紀の幽霊たち」


書評でのあまりの賛辞、そして英国幻想文学大賞受賞の言葉に惹かれての購入です。
正直言ってホラーは苦手なのですが、食わず嫌いはいけない!ということで・・・。
冒頭の「年間ホラー傑作選」は確かに怖い。ホラー雑誌を編集する男の目に留まったひとつの作品。その作家に会える日が訪れたのですが・・・・。続いての表題作「二十世紀の幽霊」は、怖いと言うより映画館に対する愛が感じられるニューシネマパラダイスのようなお話。出てくるディズニー映画はあの「ファンタジア」ですね。そして「ポップアート」。これは・・・これってホラー?シュールなんだけど何だろうこの脱力感は・・・。「蝗の歌をきくがよい」にいたっては・・・パロディ!じゃ・・・・カフカじゃあ・・・。
後半では「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」が良かったな。ゾンビ映画の撮影現場での大いなる「やり直し」の物語。
ホラーと思って読むと、ちょっと肩すかしを喰らいます。怖さだけでは、ロアルド・ダールなんかの方がぜったいに怖かったり。でも多彩な手法を持った書き手であることは確か。





赤壁

2008-12-02 | 日常
「レッド・クリフ」を観ました。日曜日の16時からの回。お客は30人ほど。親子連れ、夫婦、若いカップルに混じってかなりお歳の老人カップルも。
面白かったです。理屈ぬきに。
趙雲はさすがにスピード感あるかっこいい働きぶり。関羽と張飛はかなり誇張した姿で登場します。関羽は融通が利かない面もあるが義のためなら死をも厭わない大丈夫。張飛は怒髪天で大喝凄まじいちょっと頭の軽い怪力男。この3人衆がとにかく強い、強い。こいつら仮面ライダーか!ガンダムか!ってくらい数万の敵兵を、切るは、突き刺すは、投げ飛ばすは・・・。呉の将軍役として登場する中村獅童も歌舞伎で鍛えた眼光と華麗な馬上演技でがんばっています。
これに比べて、劉備役がなんとも貧相です。英雄どころか、流行らない町医者風情といったところ。いくら今回、主役ではないとは言え、民の中の人望厚き男とは言え、皆がイメージする劉備とかなりのギャップが残念でした。これでは仕える諸葛亮孔明がかわいそう。曹操もちょっとねえ。家内のお父さんにちょっと似ているのですよ。いやになっちゃう。
呉の周瑜と諸葛亮の牽制、探りあいが今後どう戦いに即して出てくるのか。三国志の世界観を全て映像で再現することはとうてい不可能ですが、より巾が広く底の深い展開を期待しましょう。ハリウッドアクション映画にカンフー、京劇、歌舞伎、そして黒澤映画をまぶした三国志です。

リン・チーリン演じる小喬は美しい。でもお話にはちょいとじゃまな存在。
総じて言えば、来春公開の後半(Part,2)への壮大な予告編というところか。

両親とお兄ちゃんといっしょに観ていた小学生の女の子には、ちょっと退屈だったかな?



関羽 見参!持つはもちろん青龍偃月刀!