英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

アン・ブーリンは本当にヘンリーを愛していたのか?

2012-06-29 | イギリス

ヒラリー・マンテル「ウルフ・ホール」


イギリスの子どもたちは歴史の時間にヘンリー8世のことをどんな風に勉強するのだろうか?
ローマ教皇と決別し、英国国教会の長として君臨し、カトリック修道院を解体することで国家の財政基盤を強化、文芸を振興し絶対的な王権で英国を繁栄に導いた王。愛人を多く抱え、ローマと反目するきっかけとなった最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンとの婚姻無効調停を起こし、アン・ブーリン以下、次々と計6人の妻を娶り、そのうち2人の首を刎ね、可愛がった側近も意見が合わなければすぐに首を刎ねちゃうという絶倫王。歴史の先生はどこまで教えるのかな?シェイクスピアの「ヘンリー8世」は毒気が抜かれたストーリーのようだし・・・。
そんなヘンリー8世くんとアン・ブーリンとの「いちゃいちゃ時代」を、側近として仕えたトマス・クロムウェルの目で描いたのがこの作品です。2009年のブッカー賞作品だ。
トマス・クロムウェルは鍛冶屋の倅として生まれるが、類まれな語学力と情報収集力、そして腕力を駆使することで頭角を現し、ウルジー枢機卿の側近として抜擢される。ウルジーがヘンリー王の離婚調停不首尾で失脚すると、今度はヘンリー王から目を掛けられ、側近中の側近として寵愛されることに・・・。クロムウェルはまさに成り上がり者として、並居る貴族たちから煙たがれるのだが、彼に様々なお伺いを立てないことにはヘンリー王から嫌われてしまうから大変だ。同じく成り上がり者のブーリン家の皆々もいつのまにかクロムウェルにすりすりしているのだ。
お話はトマス・モアの処刑で終わる。ヘンリー王とアン・ブーリンの関係もちょっと微妙になってくる時期だ。これは絶対に続編が書かれるな!と思っていたら、この5月にイギリスでは刊行されたとのこと。日本では2年後かな?
多少の歴史背景は勉強している方が楽しめるでしょう。それにしても、イギリス人ってやったらトマスとかメアリーとかが多いですよね。いったい誰が発言しているのか分からなくなることもしばしば・・・。巻頭の大量の登場人物一覧を何度も見直しながらの読書です。

お世継ぎが生まれる生まれないで陰謀や策略がうごめく英国王室。日本は平和で良かった。雅子さま紀子さまも世が世なら血で血を洗う日々・・・というのは考えすぎか・・・

 

我が家の近くでもヘンリー8世くんの影響が・・・ 

 

 


ヴィクトリアン・ハードボイルド?

2012-06-13 | イギリス


マイケル・コックス「夜の真義を」

「赤毛の男を殺したあと、私はその足でクインズへ向かい、そこで牡蠣の夕食を認めた」
という出だしです。
なかなかなハードボイルドですねえ、と思いきや・・・・
偶然発見されたエドワード・グライヴァーの手記とい形で進められる物語。
時はヴィクトリア朝、
法律事務所で裏仕事を営むグライヴァーには大いなる目的があった。
学生時代に彼を無実の罪に陥れ、その将来を無茶苦茶にしたフィーバス・ドーントへの復讐だ。
ドーントは今や詩人として大成功を納め、飛ぶ鳥の勢い・・・。
母の遺品を整理するうちに、グライヴァーはある疑惑を抱くことに。
彼自身が、実は男爵家の正当なる継承者なのではないか・・・。
母がひた隠してきた事実とは何なのか?
しかし、その継承者には、あのドーントが・・・・。
復讐というとモンテ・クリスト伯ですが、そこまでのスペクトル感はありません。
ヴィクトリア風の重厚粘着的な文体で書かれるストーリーは時にクドイのですが、
男爵の館の描写はなかなかに面白い。
特に大きな図書室に集められたコレクションには注目です。
残念なのは、グライヴァーの手記ゆえ、悪役ドーントの紹介が一方的に描かれてばかりなところ。
復讐心にだんだんと埋没していき、最後は、ちと平凡な終わり方・・・。
ディケンズに大きな影響を受けたという作者、ロンドンの生活、自然の中に溶け込む貴族の館の描写は読ませるのですが、
もう少し、ドライな展開でどんでん返しを期待しちゃいました。

 

 




 


HMSヴィクトリー号・・・

2012-06-04 | イギリス

 

デアゴスティーニが発売した「週刊HMSヴィクトリー号をつくる」。
テレビCMを見ながら、
「これ、欲しいなあ・・・」とつぶやいたら
間髪入れずに
「買ってきたら殺すよ」
って家人から言われてしまった。

そうだよなあ・・・
創刊号は190円だけど
完成するのに15万円近くかかるし
だいたい置いとく場所が無いんだよね・・・・

それにしても
殺さなくても・・・・・