英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

ディケンズは吉本新喜劇だ!

2007-05-30 | イギリス
ディケンズ
「ボズのスケッチ」 
(短編小説編)


1833年、新聞通信員として生計を立てていた若きディケンズは「マンスリー・マガジン」誌に一つの短編を投稿します。その作品は採用され始めて活字となって世に出ることに。これが文豪ディケンズの第一歩です。以後「ボズ」の筆名でルポ、エッセイ、短編小説を庶民生活のスケッチという形で連載し、36年に作品集としてまとめられたのが「ボズのスケッチ」で、この岩波文庫版はその中から短編小説だけを集めた物となっています。描かれるのは、より上流の生活に憧れるミドルクラスの滑稽談と勘違いや思い込みに起因する失敗談などです。大どんでん返しというスペクタクルではなく、途中で「落ち」が予感できるのも良い味を出しています。

収録されている作品は
・ボーディングハウス盛衰記
・ポプラ並木通りでのディナー
・花嫁学校感傷賦
・ラムズゲートのタッグス一家
・ホレイショー・スパーキンズの場合
・黒いヴェールの婦人
・蒸気船でテームズ下れば
・グレート・ウィングルベリーの決闘
・ミセス・ジョセフ・ポーターの出番
・ワトキンス・トットル氏に降りかかった難儀
・ブルームズベリーでの洗礼命名の儀
・大酒飲みの死

次作となる「ピクウィック・クラブ」といい、「ディケンズは面白い!」です。

MOTTAINAI

2007-05-23 | 日常



4歳の娘が最近よく家で歌いながら踊っています。「ナイナイナイナイナイ、ナイナイナイナイナイナイヨー、ナイナイナイ、ナイナイナイ、ナイナイナイナイモッタイナイヨー・・・」
「それって何の歌?幼稚園で習ったの?」
「ちがうよ。みんなのうただよ。みーんーなーのーうーたー!」
「???????」
聞くところによるとこれが今NHK「みんなのうた」で流れている『MOTTAINAI~もったいない~』なんだそうです。歌っているのは、あのルー大柴とヒップホップシンガーの仁井山征弘。
「MOTTAINAI 」はノーベル平和賞を受賞した環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが、消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、修理(リペア)を一語で表す言葉として世界に広めています。その精神にも共感できますが、それよりもこの濃いキャラのルー大柴のパフォーマンスになんかヒットの予感がします。ことの次第では時勢の流れから、NHK的に「紅白」登場なんてこともあながちあり得なくはないと思うのですが・・。

シンボルをめぐる冒険

2007-05-22 | イギリス
ゼイディー・スミス「直筆商の哀しみ」


原題は「Autographman」。有名人の直筆サインやゆかりの品を収集、売買することを生業とする人のことで、主人公アレックスはこれで生計をたてています。
物語はアレックスの子供時代、父親に連れられて友人たちとプロレスを観に行ったロイヤル・アルバートホールから始まります。このホールでプロレスをやっていたなんて・・・驚き!。まあ、大相撲のロンドン場所もここですから、同じようなもんですか・・・。
時代が十数年下り現在のアレックスっていうと・・・、酒とドラッグと女にだらしない毎日、ラリってる最中に自分の車を破壊するは、ガールフレンドに怪我を負わせるはとはちゃめちゃです。ここいらあたりから急にお話は難解に・・・。このアレックスっていうのが、中国系のユダヤ人なんですね。で、友人には黒人系ユダヤ教徒がいたりして・・・。民族としてのユダヤと信仰としてのユダヤの知識がない分、交わされている会話にちょっと置いてきぼりになりそうです。構わず読み進めましょう!後半、舞台はニューヨークに。往年のハリウッド女優をめぐる展開が突然スリリングに始まります。それを導くのは「禅」の思想・・・・。うん、これなら共感できます。理解も早い!
「ユダヤ的」と「非ユダヤ的」、「実存」と「シンボル」という軸の対比で語られる物語なのですが、とにかく笑ってしまったのがニューヨークでアレックスを待ち受けていたある女性の存在です。この女性の設定が、なんとある著名なイギリス人俳優とスキャンダルを起こした売春婦ということになっているんですね。つまり「ブリジット・ジョーンズの日記」でも書かれていた、ヒュー・グラント(実存)の「●●●」(シンボル)を咥えてヒューもろとも現行犯逮捕された女性なんです。もちろんヒューの実名は出てこずスコットランドの俳優ってぼやかされてますけど、誰が読んでもあの事件そのままです。この女性が、やっている商売にも係わらずものすごい「潔癖症」っていうのも笑えます。
ロンドンに戻ったアレックスを待つのは死んだ父親の法事(ユダヤ教の)。自分の居場所に懐疑的なアレックスは無事にこの儀式を迎えることができるのでしょうか。
全体の半分以上が泥酔したり薬やったりしている状態ですので、読み手はちゃんと正座して読みましょう。ワイン片手に読んだりすると迷宮にはまっちゃいますよ。

ゼイディー・スミスは75年ロンドン生まれ 母がジャマイカ人、父がイギリス人

ハロッズは1日にしてならず。

2007-05-21 | イギリス

かなりの確率で日本人が訪れる「ハロッズ」。買い物なんて退屈なだけ!と思ってる人も足を運ぶだけの価値はあります。
でも大きなお店ですから事前の予習が大切です。

●最寄の地下鉄駅は「ナイツブリッジ」。この駅、出入り口が珍しく2つあります。ハロッズに行くには必ず西よりの出口から出ましょう。反対から出るとかなり時間をロスします。地上に出るとすぐにハロッズの入り口があります。入り口にはガードマンが立っており、ドレスコードのチェックをされます(笑)。少なくともリュック等を肩に掛けていると手に提げて入店するように声をかけられます。
●ハロッズの建物は一見するとプロンプトン・ロードに面して横長の建物のように見えますが、フロア案内図を見ると歪んだ5角形の形をしています。その中が多くの部屋で仕切られ、床の高さも場所によって違ったりするものだから、巨大な迷宮のようです。事実結構迷いますよ。とにかく案内図(日本語版もあります)をインフォメーションでゲットして探検を始めましょう! まずはトイレの確認から。日本の感覚だとトイレは端っこにあるイメージですが、ここハロッズでは多くはど真ん中にあります。それに有料です(全てのトイレが有料かは分かりません。レシートがあればそのまま無料で入れますが・・・)。
●やっぱり外せないのが、G階(日本では1階))のフードホール。世界の食材が優雅に並んでいます。日本のデパ地下の方が断然インパクトがあるのですが、そこは天下のハロッズです、見て歩くだけでも十分楽しめます。すしバーやオイスターバーのカウンターもあり、簡単な食事も取れます。(ただし大勢の衆目の中での食事となりますが) 
ちょっと日本人の感覚と合わないのは、フードホールの隣が香水売場だったりすること。
●スターウォーズに出てくるR2D2の頭のようなクルクル回る防犯カメラが全ての部屋に配置されています。どうも自分が自動追尾されているようで、ついカメラ目線になってしまいます。
●取り扱っているブランド品は誰でも知っている高級ブランドばかりですが、同じバーバリーでもハロッズオリジナルのバーバリー(2つタグが付いていてそれほど高くない)があったりもします。(現在もあるかは不明です)
●中央部にあるエスカレータ(EGYPTIAN ESCALATOR)のLG階(地階)には亡くなった御曹司とダイアナ元妃のメモリアルコーナーがあり、ここだけは写真撮影が許されています。でもちょっとお涙頂戴的でやりすぎ・・・。
●館内にはレストランやカフェなどもありますが、全体的に値段が高く、サービスも画一的かな。
●私が個人的に好きなのは2階にある「Old Maps&Prints」の部屋。古い地図や本の挿絵などをマット付きシートで販売しています。こういうアンティークな印刷物は専門店やフリーマーケットを巡って掘り出し物を見つけるのが醍醐味なんでしょうが、時間がないときにはここは重宝します。細かく多色刷りされた古地図やコミカルな挿絵、ボタニカルイラストレーションなどが、沢山見ることが出来ます。価格は高い!ですが、額装すればお洒落なインテリアとして使えます。私は2枚の地図を購入し、日本で額装して自宅玄関に飾っています。
●けっこう充実しているのがアウトドア関連やガーデニング関連です。「Barbour」などの王室御用達狩猟ウェア(このワックス付きのジャケットってどうやって日常使いこなすのでしょうか。)なんかがどっさり。もちろん馬具も揃っています。そしてホームセンターで売ってる物とは格が違う園芸道具たち・・・。そのまま飾り物になりそうな物もあります。
●ハロッズには買い物以外のサービスも充実しています。館内には銀行、チケットエージェンシー、床屋、パブ、フィットネスクラブ・・・なんてものもあります。
●お土産を買うなら4階(5階)のハロッズワールドかLG階(地階)のハロッズショップへ。ありとあらゆるハロッズグッズで一杯です。もちろんフードホールの紅茶やジャムもお忘れなく。三越でもグッズの購入は出来ますが、種類の多さはご本家ならではです。
時間の都合でお土産が買えなくても大丈夫です。ヒースロー空港の各ターミナルにもハロッズの出店が必ずあります。あせって買わなくてもたいていのグッズはここでも売っています。出発便の待ち時間、残ったポンドの消化がてらにのぞいてみるのもいいでしょう。

フロア案内図は→

ハロッズのHPは→

恐るべしブリジット・・・

2007-05-10 | イギリス


ヘレン・フィールディング
「ブリジット・ジョーンズの日記」



体重→70.2kg(どうなんでしょう?) お酒→焼酎3合(まずい!まずい!)タバコ→8本(大いにけっこう) 上司に怒鳴られた回数→1週間で5回(本当に怒鳴りやがって・・・・、電話で1時間やられたことも・・・) 部下に無視された回数→1週間で2回(まずまず) 


この小説って単独での楽しみももちろんですが、相互関係の中で読むとより楽しめる作品ですね。つまり下敷きになっているジェーン・オースティンの「自負と偏見」(高慢と偏見)があり(もっと言えばそれのBBCドラマ版があり)、この「ブリジット。ジョーンズの日記」があり、そして映画版の「ブリジット・・・・」がある訳なんですが、それらを横断的に眺めると何とも可笑しい繋がりが楽しめるんです。
とにかく小説版「ブリジット・・」全体が「自負と偏見」のパロディ感に満ちていること。それに加えて、小説版「ブリジット・・」の中でも「自負と・・」のBBCドラマ版がイギリス中で人気であり、ブリジット自身も夢中になっている。そしてドラマ版「自負と・・」でダーシー役をやっていたコリン・ファースをブリジットは取材ネタにしようとし、映画版「ブリジット・・」ではそのコリン・ファースがマーク・ダーシー役をやっている。
小説版「ブリジット・・」の中で実際に売春婦とのスキャンダルを起こしたヒュー・グラントが下ネタ的に取り上げられるのですが、映画版「ブリジット・・」ではそのヒュー・グラントがダニエル役として登場していたりと・・・
こう書くと混乱してよく分からなくなりそうですが、とにかくシャレがきいています。


明日から4連休だ!

2007-05-02 | イギリス

「ホリデイ」

遅蒔きながら観ましたこの映画。その映画館では最終上映会ということもあって観客は10人程度の入り。
季節外れのクリスマス映画。恋に破れたイギリス人女性(ケート・ウィンスレット)と同棲相手に浮気されちゃったアメリカ人女性(キャメロン・ディアス)がそれぞれの傷を癒すため、2週間のクリスマス休暇をお互いの家(かたやイングランド・サリー州のカントリー・コテージ、かたやLAのハリウッド関係者が多く住むエリアの豪邸)を交換するってお話です。で、新しい「出会い」ってことで登場するのがジュード・ロウとジャック・ブラック。
キャメロン・ディアスって見れば見るほど目鼻がデカイですね。ケート・ウィンスレットも見れば見るほど身体がデカイです。ジュード・ロウは相変わらずイヤラシイ笑顔だし、ジャック・ブラックは期待した暴走が無くってちょっと地味すぎ。という配役でそれぞれの過去のしがらみをどう精算できるかが物語の主題なのですが・・・・。
ちょっと良かったのが、ジュード・ロウの2人の幼い娘を演じる子役がとっても可愛かったことと、今はヨボヨボじいさんになってしまったかつての名脚本家が再びケートの励ましで元気を取り戻していくってところ。このヨボヨボじいさん、観てる時は気付かなかったんですけど、イーライ・ウォラックだったんですよ。イーライ・ウォラックって言えばカルベラですよ!カルベラ! カルベラって言うのは「荒野の七人」で村を徹底的に搾取する憎たらしい盗賊の頭です。そのカルベラを演じてたんですね。他にも「続・夕陽のガンマン」での「卑劣漢」役で有名です。永い時が昔の悪人顔をすっかり善人顔に変えてしまってました。この脚本家を万雷の拍手で称えるシーンは違った意味で心に残りました。
あっ、それからそれぞれの家のインテリアもちょっと素敵でした。

みなさんの休暇はいかがですか?