
マイケル シェイボン「ユダヤ警官同盟」
歴史改変物です。戦後イスラエル建国に失敗したユダヤ民族は居場所を求めて世界中に散らばっている。ここアラスカの辺境にも多くユダヤ人が移り住み、期限付きの特別自治区という形で生活を営んでいるが、その期限も残り僅か。自治区返還後の彼らの立場、居場所はまったく何も決まっていない・・・・。
こうした閉塞感に満ちた絶望の街で殺人事件が一つ。担当するのはユダヤ人刑事ライツマン。過去の働きは敏腕そのもの、しかし結婚に失敗し酒に溺れ、止めは離れた奥さんがなんと自分の上司となるという悪夢の日々。・・・・。迫りくる返還までに事件を解決しようと不眠で捜査を続けるライツマンであるが・・・・・。
読み始めてまず感じることとして、「難しい!」です。でも、この難しさがたぶん後半にかけて一気に溶解し、怒涛のエクスタシーのエンディングという構図であろうと期待して読み進めると、あっさりと裏切られます!残されたチェス盤の暗示、地下トンネルが抱かせるめくるめくサスペンスの予感、過激なユダヤ原理主義の存在など、面白く、ページをめくるのが重たいながらも律儀に付き合っていたのに、全部途中であっさりと放り出されてしまったような読後感は何なのだろうか・・・。
ランツマンが朝一番に寄った店で出されるのは、ゆでたまご。確かにハードボイルドには間違いない。
チェス用語として登場する「ツークツワンク」。まさにこの物語自体が、そしてそれを読む読書という行為自体がツークツワンクなのかもしれません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます