想い事 家族の記録

難病の父と生きる
鬱病
ふたり暮らし

アムリタ。a.3

2013-01-28 14:48:53 | 日記

鼻が恐ろしく痒い。
花粉症間違いなし!なんだけど、
昨夜は頭のなかまでムズムズするようで、
やむなく診療所へ。
カメラの仕事に入れたのに、
苦痛に勝てなかった…

嫌だけど、ステロイド剤を飲むことになる。

でも、気の所為ではなく、頭皮が痒い。
瞼も、眼も、…やられた。







天の甘露(memo)a.3


18世紀 インドの茶園 

一日の日射量、 月の満ち欠け、

計算しつくされた茶畑の傾斜、 高品質の茶木、

秘伝の茶製法、 特別に区切られた畑で、

突然の自然災害のあとに、上質な新芽が芽吹いたので、

それは、満月の日に作られた。

ティーオークションで、紅茶史上最高の取引価格を記録した、

伝説の紅茶。「アムリタ」。

ティーテイスターの私が、友人の経営する医院で、それをひとりの少年に試飲させた。

お湯を注ぐと同時に立ち上がる、上品なアロマ。

紅茶のエッセンスは、少年の重い病を魔法のように払った。

苦しみに飽きあきした彼に、いちるの望みを与え給うた。

明日の朝を迎えずとも知れなかった彼に、

花のようなかんばせの、希死念慮の塊に、

生き汚い真っ白な身体に、

破滅的に美しかった風景に、

リアルなシャドウを作り出す。

不躾な足取りで歩みくる朝のように、

容赦ない歓喜を孕んだ陽ざしを与え給うた。

本当に、不死を招く天の甘露というに相応しい。

しかし、明日を望まなかった少年は、与えられた生に困惑する。

生きる意味がないと云えば、生きる気持ちがないだけだと云われ続けた。

何のために生きるのかと問えば、誰かのために生きるのだと云われ続けた。

生きていれば楽しいこともある。

生きるあなたが必要だ。

生きたくても生きられないひともいようと云うのに。

生きることを強いる言葉が、病の牢獄と化した身体を押し付けてくる。

病んだ身体に残った、生の余韻をも踏みにじる。

生きたい。死にたい。生きたい。死にたい。

想いは、狂おしいほどに翻る。


「…人とは、そういうものだ」


アムリタがめぐる、人の生。

アムリタが変えた、人の死。

その後、何百年も生き続ける少年の体内で、

そのエッセンスがついに消え、人の死がもはや止めようのない現実となった少年の時代に、

再びアムリタは生まれるだろうか。

あの奇跡の茶園で、私の子孫が、

あのマネージャーズバンガローで、出会うだろうか。

天の甘露、アムリタ。











コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 傾いてゆく身体。a.2 | トップ | 先にすべきことがある。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。