Doll of Deserting

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偽善との共鳴:弐(日乱)

2005-06-26 12:11:21 | 偽善との共鳴(過去作品連載)
弐:ハードアンダーグラウンド
 世界は歪曲している。もし地下世界があるとするならば、今の地下世界はきっと明るい。なぜならば今の地上世界が薄暗いからだ。そんなことを乱菊は思う。彼は自分のことを見ない。おそらく永遠に見はしない。遠い昔に幼馴染に見放された時よりも数段切ないのはなぜだろう。そして幼馴染と失敗した自分が愛する彼が見ているのは幼馴染だなんて、どういう皮肉なのだろう。
「日番谷隊長、確かに五番隊へ重要書類を届けさせました。」
「ああ、有難う。」
 外見は乱菊よりも二周り程幼いが、向ける声には果てしない威厳が漂っている。改めて彼が自分程ではないにしろ長く生きていることを実感する、と乱菊は思った。
「…あの書類が、どういった内容のものなのか伺っていないのですが。」
 おもむろに乱菊が口を開くと、日番谷は何ともなしに答える。
「出動命令だ。十番隊が出るはずだったが、急遽五番隊の担当になった。」
 それは明らかに上官が出動すべきレベルのもので、乱菊は僅かに瞠目した。おそらくここ最近出動続きだった十番隊に代わりに出動の少なかった五番隊が選択されたことは理解出来るが、前衛部隊である十番隊とは違い五番隊は元々後衛部隊だ。藍染隊長が付いていれば大丈夫だろうとは思うが、いささか不安が残る。もし副官が率先する任務になりでもしたら、と。巨大虚は副官でも手こずる相手なのだから。
「日番谷隊長、いいのですか。心配ではないのですか。」
「何がだ?」
「雛森のことです。今回の虚は特別手ごわいようですし。」
「大丈夫だろう。あいつは実力で副官になったんだからな。ああ見えて芯も強いし。」
「…信頼、していらっしゃるのですねえ。」
 語尾に皮肉が混じっていたのを思い、乱菊は少々しまった、と思った。しかし日番谷は気にもとめていないらしく、「ああ。」と普通に返してくれた。
「ここに来る前からあいつのことは一番よく知ってるからな。」
「そうですか。それは結構なことです。」
「…何でそんなに棘があるんだ?お前だって市丸のことなら何でも分かるだろう。」
「さあ。市丸隊長とは昔のような付き合いはないので、特には。」
 どんどん投げやりになる会話にうんざりして、乱菊は目を背けた。日番谷の態度は、明らかに雛森のことを好いているように見える。ただの幼馴染への想いではない、と乱菊は常々感じていた。そう、自分がギンに対して抱くような感情とは違う、と。
「言っておくが、お前が思っているような関係は一切ないからな。」
「知っています。雛森はどう見ても藍染隊長一筋ですから。」
 でも、貴方は。言いかけて乱菊は口をつぐんだ。これ以上言ったところで日番谷のことを傷付けるだけだと思ったからだ。ため息をつきながらふと目を伏せた日番谷の長い睫毛を眺めながら、いつかはその銀糸の一筋まで自分のものに出来たらと、願った。


 申し訳ありません。この前「弐」と書いておりましたが、本来はあれが「壱」でこちらが「弐」となります。何だか乱菊さんは片思いです。というか受連中は全員片思いです。藍染は確信犯。ギンはお遊び(真意はどうなのか不明)日番谷は鈍感。(ある意味これが一番幸せかもしれない。笑)次は藍←桃です。そこはかとなく藍染が確信犯です。その次は問題作っぽいので、もし読んでくださっている方の中で続きを望んで下さる方がいらっしゃれば、この「弐」か次の「参」に感想を頂けると間違いなくUPすると思いますので、宜しくお願い致します。(押し付けがましいようで申し訳ありません。笑)

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