*姉弟設定ですのでご注意下さい。(汗)
瞼の下で嘲笑うのです
少しの偽善も許されぬと
少しの罪も許されぬと
指の先で押しやるのです
少しの密事もあるまいと
少しの情けもあるまいと
歳の離れた姉がいるらしい。常に淡い蜜色の髪を揺らしている一族の中でも、際立った濃い色の金糸を持つ姉には珊瑚の飾りがとりわけよく似合った。けれどもその美しさをはがゆく思ったのか、直系であるにも拘らず同じ色彩を持たぬ姉を母方の祖母は罵り、制する母の言い分も聞かずに流魂街へと堕としたそうである。
両親が死する前に聞かせた姉の話は、たったのそれだけであった。
春らしいとも思えぬ熱気が袖の奥を突く。手合わせの後はいつもこうである。この頃進級が決定し、胸を撫で下ろしたのも束の間、再び稽古の日々が返ってきた。昨年霊術院へ入学を果たした頃には幼さを隠せずにいた利発そうな顔立ちが、僅かに凛とした艶かしさを帯びている。
剣を振るい、鬼道を極め、白打を高めて素早い身を持とうとも、二年目ということもあり己の力に満足出来ずにいる。そもそもイヅルはそういう子供であった。どれ程までに身体を酷使し、勉学に励む日々を送ろうとも、いっこうに知識欲、地位欲というものが満たされぬ子供であった。
(まだ甘い。)
水で清めた汗を拭い、鋭利な視線を上げる。
(まだまだ甘い。)
幾度心の奥底で呟いたか知れぬ言葉は、誰に聞こえるものでもない。ただ、儚げに佇む己の信念というものを、更に高く押し上げてやりたいだけなのだ。自覚しなければならない。己より高いところにある者の存在を。己の脆弱さを。
―…未だ見ぬ、美しい姉に報いることの出来る強さを。
姉が流魂街などで今も慎ましい生活をしているのならば、探し出して助けてやりたいと思っていた。けれども、姉を捜索するにも、姉を養うにも、それなりの資格と富が必要である。それだけの地位を、イヅルは一心に欲していた。
そのようなことを青ざめた木々の中でぼんやり思っていると、目前の窓から垣間見える廊下から、濃い金糸の美しい面影が窺え、ふと目を見張る。まるで話に伝え聞いていた姉のようである。緋色に近しいその色濃い髪は柔和な陽光に映え、波打つ髪からちらりと蒼い双眸が覗いていた。
「姉上…?」
そのようなことがあるはずはないと知りながらも、ぽつりと呟く。すると窓が浅く開いていたことに気付いておらず、イヅルの言葉が聞こえたらしいその女性から訝しげな視線を向けられた。けれども途端に花の綻んだような笑みを見せ、窓から頭を覗かせてイヅルへ声をかけてくる。
「吉良君でしょう。」
「…僕の名前を、ご存知なんですか?」
「知ってるわ。去年…そうね、去年の今頃から。」
「失礼ですが、どこかでお会い致しましたか?」
「いいえ、でもあなたの見目と名前は知ってるの。とある男が吉良君吉良君ってうるさいから。」
「はあ…。」
本当はもう随分昔から知っている。そのような言葉は濁して、含んだような笑い顔を見せる。艶やかな人であるとイヅルは思った。肉感的なその美貌は、周囲で姦しく笑い声を上げている同級の女子達にはないものである。
「…ご両親を、亡くされたんですってね?」
「ええ、それもとある方から?」
イヅルが含んだような笑みを浮かべると、女の方も面白そうな顔をした。だがそれには曖昧に返し、哀れむようにイヅルの頭をひと撫でしてから、ふわりと髪を波打たせた。髪を梳いた跡から、快い花のような芳香が僅かばかり流れる。
「強くなりなさい。そうして、そうしてここまでいらっしゃい。」
戒めるその声は、まるで母のようであると思った。けれども全てにおいて母のものとは異なる見目に、はっと意識を取り戻す。
「あの、お名前は何と―…。」
淡い色の髪から先程の感覚が消え失せた頃には、女の姿は塵と去り、舞う花弁のように芳香のみが散乱した。
潤いを秘めた薄い唇から、浅い溜息が漏れる。それは既に癖のようなものであり、周囲は皆慣れてしまい不快に思う者もない。燦々と照りすさぶ熱風は、まるで若かりし頃の手合いの後のようだ。ふと懐かしく思い、そのまま目を伏せた。
護廷へと入隊する折、配属されたのは五番隊であった。既に三番隊の隊主として実権を握っていたギンの元へ就くことが出来ぬのは残念ではあったが、同時に少しばかり安著する。未だ不安定で、未熟な自分の姿を見せたくはなかった。
数十年前、手合いの折に顔を合わせた女性のことを忘れたことはない。そもそも、彼女の名は既に存じ上げていた。護廷へと入隊し、暫くすると自然に上官の名は滑り降りてくるもので、その女性の名もよく風聞に上がったので覚えていたのである。しかしながら、その名があの時の女性を表すものであるということを知ったのは随分と後になってからだったのだが。
そうして、永らく名のみ記憶していた彼女とようやく再会したのは、同僚となってからであった。松本副隊長、吉良副隊長、と、同じ官位で呼ばれることを許された後のことである。
学院生の頃より親しくしていた修兵と恋次、そうして桃と共に酒を煽るのは、珍しいことではない。桃が出席しているのは少しばかり物珍しいが、彼女がこの場に座しているというその事実は、これが何らかの祝杯であるということを表していた。他でもなく、イヅルの出世祝いである。
随分と陽は落ち窪んでいるが、未だ翳る様子はない。譬うならば夕べといったところか。そのような思いで杯を傾けていると、少しも酔った気配のない修兵が、突如として浅く口を開いた。
「吉良、もう一人来る予定なんだけどよ、いつの間にお前乱菊さんと知り合いになったんだ?」
「え、松本副隊長、ですか…?」
自分が彼女の名を知っているならば、彼女も自分の名を知っている。それを考えれば知り合いと言えるのやもしれぬが、出世を祝われるほど親しくなった覚えはない。
「へえ、あの松本さんと。お前もなかなかやるじゃねえか。」
「やめてよ阿散井君、知り合いといっても何十年も昔に話したことがあるだけで…。」
「何十年も昔!?吉良君すごい、よく覚えてるね。」
「うん、たった一回のことなのに覚えてるんだ。何でかは分からないけどね。」
おそらく彼女の容姿が話に聞いた姉と酷似していたからであろうと分かってはいたが、そのような話を出したところで驚かれるだけだ。朗らかな場で、生々しい家庭の醜聞を晒すのは避けたい。
「まあ、乱菊さんに聞いてみりゃ分かるだろ。そろそろ―…来たぜ、ホラ。」
「えっ―…。」
彼女は、はじめに出会った時分と同じく美しい見目をしていた。相変わらず自分より幾らか色濃い色素を纏っており、存在そのものが希薄で儚く見えるイヅルとは違い、匂い立つように鮮やかな美貌を孕んでいる。
「松本副隊長…。」
「やあね、アンタももう副隊長でしょう。吉良。」
圧倒されるような艶かしさからは、想像も出来ぬほどの気さくな声が流れる。やはり似ている。会う度に気付かされるのだ。母が、父が語った姉の麗しさと、特徴と、似ているどころではなく、それはもはや等しくあった。
「乱菊さん、いつ吉良と知り合いになったんスか?」
「ちょっとね…内緒よ、内緒。」
曖昧に仄めかし、修兵の疑わしい眼をやんわりとかわす。そうしてイヅルの方を向いたかと思うと、何の贈り物もなくてご免なさいね、と悪びれぬ笑みを浮かべた。いえ、と慌てて発した後、杯の方に視線を戻し白皙に紅を零す。その様を見て、乱菊は少しばかり苦笑を表した。
「ちゃんとここまで来れたじゃない。」
讃えるような、けれどもどこか安著するような、やはり母のような声であるとイヅルは思う。決してイヅルの実力を軽んじているような素振りはなく、ただ言葉の通りに意味を伝えることが上手い人であると、漠然とした印象しか持たなかったが、柔らかい確信がそこにはあった。
暗雲のようにぐったりとした闇が辺りを覆う。周囲の料理屋が店を畳み、代わりに灯篭を持ったさも懐暖かそうな風体の男が通りを闊歩するようになると、女性を交えた酒宴は自然にお開きになった。とはいえこのような時刻である。はじめは恋次とイヅルが桃と連れ立ち、修兵が乱菊を送るというあんばいになっていたはずなのだが、いざそういう頃合いとなったところで乱菊が口を出した。
「いいわよ修兵、アンタと恋次で雛森を送ってあげなさい。」
「え、そりゃあ乱菊さん…。」
「だから、あたしは吉良に送ってもらうって言ってるのよ。」
「はあ?松本さん、そりゃやめた方がいいっすよ!」
「…どういう意味かな、阿散井君。」
「どういう意味、って…。」
淡い微笑を浮かべたイヅルを見て、唐突に恋次が押し黙る。桃は何事か分からぬ様子であたふたと視線をあちらこちらに巡らせていた。修兵は僅かに困惑し、心ばかりの溜息を吐く。
イヅルとて護廷を担う死神の一人であり、確かに男性である。けれどもその見目はお世辞にも頼り甲斐のある若者とは言いがたく、傍目に見れば上背が乱菊と少しも違わぬというのもあいまってより薄らげに見える。そもそも何を思ったのか数年前より儚い色をした髪を長めに伸ばしており、暗がりでは女が二人歩いているように見えなくもないと思われた。
「…分かった、よし阿散井。お前雛森を送ってやれ。俺が乱菊さんと吉良を送ってくから。」
「なるほど、そうっスね。それなら―…。」
「檜佐木先輩もどういうことですか?松本さんだけならともかく僕まで送って下さるとか。」
結構な紳士でいらっしゃるんですね?と、四番隊隊長を思わせるような慈悲深い笑みを浮かべつつ、地の底から這い出るような声を発すイヅルにいささか不味いと後ずさりする。すると、傍らで苦笑していた乱菊が突如としてイヅルの腕を掴み、呆然と視線をやる三人へ意味ありげにくすりと笑った。
「あたしは吉良だけに送ってもらいたいって言ってるのよ、野暮な男共ねえ。」
「ほら、松本さんもこう言って下さってることですし。僕にだって女性の一人や二人護れるんですよ?馬鹿にしないで下さい―…行きましょうか、松本さん。」
「ええ、でも二人も護ってくれちゃ困るわ。あたしだけ護ってくれないと。」
また何を言い出すんだこの人は、と流石にイヅルも目を見開いたが、必死に毅然とした姿勢を崩さぬよう努める。そうしてまたにこりと微笑を交わし、背後にあるあっけない表情にわざとらしい視線を返した。
「…どうなってんだ?」
「酔ってたんじゃないっスかね、二人とも。」
「そうよね、きっとそうよ。」
未だ状況が理解出来ぬ様子の桃すらその場を取り繕おうと笑い顔をそのままに同意する。修兵と恋次は、もはやそのまま再び店に居座ってもう一杯やろうかという思いが頭を掠めたが、桃がいるのだと懸命に己を落ち着けた。
そこかしこに、豪奢な女を携えた男達の姿が見られる。蝶の艶やかさと、大店の遊郭や灯される燈篭の光で仄かに色付いた闇の円は、逃げ場を与えぬようにして荘厳に張り巡らされていた。その隙間を縫うように、イヅルと乱菊は身を寄せ合い歩を進めている。その姿は微笑ましいようでいて、か細い肢体が互いに集束し補い合っているようでひどく虚しい。
元より携えている色彩が酷似しているので、尚更だ。
「…どういうおつもりですか、松本さん。」
「自分に気があるんじゃないかとか、そういう素直な考え方は出来ないの?」
「出来ませんね、どう考えても僕はあなたの理想に合致するような男ではございませんから。…おありになるんでしょう。わざわざこうして二人きりで、身を潜めるようにしてしなければならぬようなお話が。」
「あんたって、嫌なところで聡い男ね?」
「よく言われます。」
皮肉なほどに純然たる微笑を返すと、乱菊はさも面白くないというような顔をした。そうして、遊女を従えながらも、先程から毛色が物珍しいのか、乱菊やひどい折にはイヅルまでをもじろじろと品定めするように眺めていた男の群れも消えたところでふと足を止める。
「気付いてるんでしょう?あたしがあんたの何なのか。」
「…数十年前、市丸隊長伝いで僕の名を知ったと仰っていたあなたのお話が偽りであると理解出来るまでには。」
「あら、あたし市丸隊長が教えてくれたなんて言ってないわよ。ただとある男が、って。」
「あの頃、僕の名をご存知でいらっしゃる男性の死神は市丸隊長―…いえ、市丸副隊長のみでございました。少なくとも、こちらからお伝えした限りでは。」
成る程ね、と含んだような微笑を放り、真摯に言葉を紡ぐイヅルを哀れむような瞳で見つめる。ほんのりと香るような色をした優しい灯りは、和らぐ気配などなくどちらの顔をも照らし続けている。乱菊は、珊瑚色をした橋に腰掛けて所在なげに言葉を模索しているように見えた。それを見て、やはり似合いであるとイヅルは確信を深くする。
「…恨んでおられるのですか、僕、いえ―…吉良の一族を。」
「まさか。どうしてあたしが吉良家を恨まなくちゃならないの?…あたしは自分を捨てた祖母のことを恨んじゃいないし、まして一族を恨む理由なんて持ってないわ。まあ少しは、少しはね、どうしてこんなに色濃く生んで下さったのかしらって、思うこともあるけど。」
それこそ神様なんかに、と冗談めいた笑みを零し、深く嘆息する。とうとう観念したかのような姉の様に、イヅルは嘆くことも謝罪することも出来ず、ただその場に佇んでいた。乱菊は、その様子に呆れたかのような素振りで歩み寄り、イヅルを抱き締める。
突然のことに目を見開くことしか出来なかったが、慈しむような指の動きにいつしか込み上げるものがあり、小さく呟いた。
「姉う―…姉さん。」
「なあにそれ、わざわざ言い直さなくたっていいのに。」
くすくすと苦笑する乱菊を、あやすように抱く。けれども奔放で、なだらかな美しさを持つ彼女には、古風で格式のある呼び名よりも、響きが柔らかく、自由な呼称の方が似合いであるような気がしたのだ。そう返そうとしたが、やめた。
本心などおそらく乱菊には知れている。知れていなくとも、同等の血色の中には、大方のことを許容するおおらかさが大なり小なり含まれているものであろう。理解されなくとも、血縁であるという事実が真実として残るならばどうとでも構わなかった。
薫風が昼の風に混じるようになり、そろそろ梅雨に入ろうかとしているように思える。けれどもそのように穏やかな時節とは相反して、身辺の雲行きは怪しい。この頃はとりわけそうである。隊長職に就く者達は誰も彼も皆良識的に飾っているか、他人に関心を持たぬよう見せているがそれは偽りであり、本心では常に互いを訝しく観察していた。
だからといって、イヅルにはそれを正す権利もなければ術もなく、またそうしようとする意志もなかった。ただ剣呑と目前で軽やかに跳ねて回る上司の動向を掴むべく疾走しているだけであり、同僚には常にその姿を哀れまれ、また危ぶまれてもいる。
副官に就任し既に幾年か経過したが、未だ過去を懐かしむ思いは変わらず、ともすればすぐに初心を模索していた。だが、護廷内の対人関係が著しく蠢き、そこかしこで硝煙が立つようになると、初心、などという艶かしい感情はふいに消えた。
わけても、イヅルの仕える市丸ギンと、姉である乱菊の仕える日番谷冬獅郎の不仲が如実に現れてきた頃であったと思う。これまで以上に鮮明に身の振り方を迫られたその時、初心などというものは消えていた。否、消したのだ。
そう思いながらも、待ち合わせた木陰へと歩を進める。乱菊との逢瀬は、実に幾月ぶりかであった。乱菊は、燦々と振り被る葉の群れと生温い風に髪を攫われ、少しばかり顔を顰めながらもそこに佇んでいる。そうしてイヅルが訪れたことを確認すると、にこりと笑い、久方ぶりの挨拶を交わしたのも束の間、常では見られぬ厳格な表情を浮かべ、イヅルに問うた。
「これからどうするの。あいつは―あたしが捨てられた時の話からしてみたら、あんたには優しい人間に聞こえたかもしれないけど―ギンは、そんなに出来た男じゃないわよ。このまま付いて行ったら、誇りなんて全く尊重されない死に方をするかもしれないわ。」
他でもない姉の言葉に、少しばかり心を濁す。けれどもどうしろというのだ。イヅルは既にギンの下に就いている。一度与えられた職を捨てるなど、それこそ誇りに欠けると密かに唇を噛んだ。そもそも、イヅルは魅入られてしまっている。あの男の性情に、あの男の振る舞いに、否、あの男そのものに魅入られてしまっているのだ。
肉親と知り得た後も崩すことのなかった敬語を、初めて切り崩して微笑み返す。
「姉さん…僕は、あの人が好きだよ。」
乱菊は、これ以上ないほどに哀しげな表情を見せた。時代や環境といったものに、いとも容易く苛まれるような弟であった。けれどもひどくいとおしかった。そうして、凛とした脆弱さが事もなげに手折られる日を、常に恐れていたのである。
そのような乱菊の思いを知る由もなく、イヅルは更に非道な問を投げかけた。
「僕はあの人のために死ぬでしょう。いえ、死にます。その時あなたは―…姉さんは、どうします?」
薫風は尚も嘲笑うかのように、けれども時代というものに、使命というものに翻弄される者の先を、僅かに慰めるようにして空を戦慄かせた。乱菊は、常に紅色を絶やさぬ麗らかな唇を震わせながら開く。
「じゃあ、その時はあの人のためにあんたを殺してあげる。他の誰にも譲っちゃ駄目よ。あたしがあんたを殺すの。」
先に死ぬのはイヅルではなくギンだと、乱菊には分かっていた。イヅルに護られるなどということは、あの男には出来ない。ならばその際には、潔くイヅルも逝かせてやろうと思う。自分が何者かを殺めることを頑なに阻む上司も、僅かばかりの意志は汲んでくれるのではないかと、そう思った。
すると乱菊の言葉に、イヅルが尚も凄艶に笑う。硬質な風に揺られた髪のお陰で、潤いを増した目元は気取られずに済んだ。けれども目に潤いを宿していたのは、イヅルだけではない。だがそれを互いに悟らせぬように、色めいた風は殊勝にも細やかな雨を運んだ。
―誓うならばそう、互いが崇めるたった一つの神に。
*あとがき*
やはりと申しますか、ギンイヅ日乱を織り交ぜつつ、微妙に乱→イヅっぽい。(汗)というか最後のフレーズが使いたかったのですが、別に姉弟設定はいらなかったんじゃないか、な…!
こういう絆で結ばれた乱菊さんとイヅルも何となくいいなあ、と思いまして。
しかしアレですね、最後辺りの文を読み返してみると、うちの市丸さんと日番谷君は本当どうなっているのだろう、と…orz
瞼の下で嘲笑うのです
少しの偽善も許されぬと
少しの罪も許されぬと
指の先で押しやるのです
少しの密事もあるまいと
少しの情けもあるまいと
歳の離れた姉がいるらしい。常に淡い蜜色の髪を揺らしている一族の中でも、際立った濃い色の金糸を持つ姉には珊瑚の飾りがとりわけよく似合った。けれどもその美しさをはがゆく思ったのか、直系であるにも拘らず同じ色彩を持たぬ姉を母方の祖母は罵り、制する母の言い分も聞かずに流魂街へと堕としたそうである。
両親が死する前に聞かせた姉の話は、たったのそれだけであった。
春らしいとも思えぬ熱気が袖の奥を突く。手合わせの後はいつもこうである。この頃進級が決定し、胸を撫で下ろしたのも束の間、再び稽古の日々が返ってきた。昨年霊術院へ入学を果たした頃には幼さを隠せずにいた利発そうな顔立ちが、僅かに凛とした艶かしさを帯びている。
剣を振るい、鬼道を極め、白打を高めて素早い身を持とうとも、二年目ということもあり己の力に満足出来ずにいる。そもそもイヅルはそういう子供であった。どれ程までに身体を酷使し、勉学に励む日々を送ろうとも、いっこうに知識欲、地位欲というものが満たされぬ子供であった。
(まだ甘い。)
水で清めた汗を拭い、鋭利な視線を上げる。
(まだまだ甘い。)
幾度心の奥底で呟いたか知れぬ言葉は、誰に聞こえるものでもない。ただ、儚げに佇む己の信念というものを、更に高く押し上げてやりたいだけなのだ。自覚しなければならない。己より高いところにある者の存在を。己の脆弱さを。
―…未だ見ぬ、美しい姉に報いることの出来る強さを。
姉が流魂街などで今も慎ましい生活をしているのならば、探し出して助けてやりたいと思っていた。けれども、姉を捜索するにも、姉を養うにも、それなりの資格と富が必要である。それだけの地位を、イヅルは一心に欲していた。
そのようなことを青ざめた木々の中でぼんやり思っていると、目前の窓から垣間見える廊下から、濃い金糸の美しい面影が窺え、ふと目を見張る。まるで話に伝え聞いていた姉のようである。緋色に近しいその色濃い髪は柔和な陽光に映え、波打つ髪からちらりと蒼い双眸が覗いていた。
「姉上…?」
そのようなことがあるはずはないと知りながらも、ぽつりと呟く。すると窓が浅く開いていたことに気付いておらず、イヅルの言葉が聞こえたらしいその女性から訝しげな視線を向けられた。けれども途端に花の綻んだような笑みを見せ、窓から頭を覗かせてイヅルへ声をかけてくる。
「吉良君でしょう。」
「…僕の名前を、ご存知なんですか?」
「知ってるわ。去年…そうね、去年の今頃から。」
「失礼ですが、どこかでお会い致しましたか?」
「いいえ、でもあなたの見目と名前は知ってるの。とある男が吉良君吉良君ってうるさいから。」
「はあ…。」
本当はもう随分昔から知っている。そのような言葉は濁して、含んだような笑い顔を見せる。艶やかな人であるとイヅルは思った。肉感的なその美貌は、周囲で姦しく笑い声を上げている同級の女子達にはないものである。
「…ご両親を、亡くされたんですってね?」
「ええ、それもとある方から?」
イヅルが含んだような笑みを浮かべると、女の方も面白そうな顔をした。だがそれには曖昧に返し、哀れむようにイヅルの頭をひと撫でしてから、ふわりと髪を波打たせた。髪を梳いた跡から、快い花のような芳香が僅かばかり流れる。
「強くなりなさい。そうして、そうしてここまでいらっしゃい。」
戒めるその声は、まるで母のようであると思った。けれども全てにおいて母のものとは異なる見目に、はっと意識を取り戻す。
「あの、お名前は何と―…。」
淡い色の髪から先程の感覚が消え失せた頃には、女の姿は塵と去り、舞う花弁のように芳香のみが散乱した。
潤いを秘めた薄い唇から、浅い溜息が漏れる。それは既に癖のようなものであり、周囲は皆慣れてしまい不快に思う者もない。燦々と照りすさぶ熱風は、まるで若かりし頃の手合いの後のようだ。ふと懐かしく思い、そのまま目を伏せた。
護廷へと入隊する折、配属されたのは五番隊であった。既に三番隊の隊主として実権を握っていたギンの元へ就くことが出来ぬのは残念ではあったが、同時に少しばかり安著する。未だ不安定で、未熟な自分の姿を見せたくはなかった。
数十年前、手合いの折に顔を合わせた女性のことを忘れたことはない。そもそも、彼女の名は既に存じ上げていた。護廷へと入隊し、暫くすると自然に上官の名は滑り降りてくるもので、その女性の名もよく風聞に上がったので覚えていたのである。しかしながら、その名があの時の女性を表すものであるということを知ったのは随分と後になってからだったのだが。
そうして、永らく名のみ記憶していた彼女とようやく再会したのは、同僚となってからであった。松本副隊長、吉良副隊長、と、同じ官位で呼ばれることを許された後のことである。
学院生の頃より親しくしていた修兵と恋次、そうして桃と共に酒を煽るのは、珍しいことではない。桃が出席しているのは少しばかり物珍しいが、彼女がこの場に座しているというその事実は、これが何らかの祝杯であるということを表していた。他でもなく、イヅルの出世祝いである。
随分と陽は落ち窪んでいるが、未だ翳る様子はない。譬うならば夕べといったところか。そのような思いで杯を傾けていると、少しも酔った気配のない修兵が、突如として浅く口を開いた。
「吉良、もう一人来る予定なんだけどよ、いつの間にお前乱菊さんと知り合いになったんだ?」
「え、松本副隊長、ですか…?」
自分が彼女の名を知っているならば、彼女も自分の名を知っている。それを考えれば知り合いと言えるのやもしれぬが、出世を祝われるほど親しくなった覚えはない。
「へえ、あの松本さんと。お前もなかなかやるじゃねえか。」
「やめてよ阿散井君、知り合いといっても何十年も昔に話したことがあるだけで…。」
「何十年も昔!?吉良君すごい、よく覚えてるね。」
「うん、たった一回のことなのに覚えてるんだ。何でかは分からないけどね。」
おそらく彼女の容姿が話に聞いた姉と酷似していたからであろうと分かってはいたが、そのような話を出したところで驚かれるだけだ。朗らかな場で、生々しい家庭の醜聞を晒すのは避けたい。
「まあ、乱菊さんに聞いてみりゃ分かるだろ。そろそろ―…来たぜ、ホラ。」
「えっ―…。」
彼女は、はじめに出会った時分と同じく美しい見目をしていた。相変わらず自分より幾らか色濃い色素を纏っており、存在そのものが希薄で儚く見えるイヅルとは違い、匂い立つように鮮やかな美貌を孕んでいる。
「松本副隊長…。」
「やあね、アンタももう副隊長でしょう。吉良。」
圧倒されるような艶かしさからは、想像も出来ぬほどの気さくな声が流れる。やはり似ている。会う度に気付かされるのだ。母が、父が語った姉の麗しさと、特徴と、似ているどころではなく、それはもはや等しくあった。
「乱菊さん、いつ吉良と知り合いになったんスか?」
「ちょっとね…内緒よ、内緒。」
曖昧に仄めかし、修兵の疑わしい眼をやんわりとかわす。そうしてイヅルの方を向いたかと思うと、何の贈り物もなくてご免なさいね、と悪びれぬ笑みを浮かべた。いえ、と慌てて発した後、杯の方に視線を戻し白皙に紅を零す。その様を見て、乱菊は少しばかり苦笑を表した。
「ちゃんとここまで来れたじゃない。」
讃えるような、けれどもどこか安著するような、やはり母のような声であるとイヅルは思う。決してイヅルの実力を軽んじているような素振りはなく、ただ言葉の通りに意味を伝えることが上手い人であると、漠然とした印象しか持たなかったが、柔らかい確信がそこにはあった。
暗雲のようにぐったりとした闇が辺りを覆う。周囲の料理屋が店を畳み、代わりに灯篭を持ったさも懐暖かそうな風体の男が通りを闊歩するようになると、女性を交えた酒宴は自然にお開きになった。とはいえこのような時刻である。はじめは恋次とイヅルが桃と連れ立ち、修兵が乱菊を送るというあんばいになっていたはずなのだが、いざそういう頃合いとなったところで乱菊が口を出した。
「いいわよ修兵、アンタと恋次で雛森を送ってあげなさい。」
「え、そりゃあ乱菊さん…。」
「だから、あたしは吉良に送ってもらうって言ってるのよ。」
「はあ?松本さん、そりゃやめた方がいいっすよ!」
「…どういう意味かな、阿散井君。」
「どういう意味、って…。」
淡い微笑を浮かべたイヅルを見て、唐突に恋次が押し黙る。桃は何事か分からぬ様子であたふたと視線をあちらこちらに巡らせていた。修兵は僅かに困惑し、心ばかりの溜息を吐く。
イヅルとて護廷を担う死神の一人であり、確かに男性である。けれどもその見目はお世辞にも頼り甲斐のある若者とは言いがたく、傍目に見れば上背が乱菊と少しも違わぬというのもあいまってより薄らげに見える。そもそも何を思ったのか数年前より儚い色をした髪を長めに伸ばしており、暗がりでは女が二人歩いているように見えなくもないと思われた。
「…分かった、よし阿散井。お前雛森を送ってやれ。俺が乱菊さんと吉良を送ってくから。」
「なるほど、そうっスね。それなら―…。」
「檜佐木先輩もどういうことですか?松本さんだけならともかく僕まで送って下さるとか。」
結構な紳士でいらっしゃるんですね?と、四番隊隊長を思わせるような慈悲深い笑みを浮かべつつ、地の底から這い出るような声を発すイヅルにいささか不味いと後ずさりする。すると、傍らで苦笑していた乱菊が突如としてイヅルの腕を掴み、呆然と視線をやる三人へ意味ありげにくすりと笑った。
「あたしは吉良だけに送ってもらいたいって言ってるのよ、野暮な男共ねえ。」
「ほら、松本さんもこう言って下さってることですし。僕にだって女性の一人や二人護れるんですよ?馬鹿にしないで下さい―…行きましょうか、松本さん。」
「ええ、でも二人も護ってくれちゃ困るわ。あたしだけ護ってくれないと。」
また何を言い出すんだこの人は、と流石にイヅルも目を見開いたが、必死に毅然とした姿勢を崩さぬよう努める。そうしてまたにこりと微笑を交わし、背後にあるあっけない表情にわざとらしい視線を返した。
「…どうなってんだ?」
「酔ってたんじゃないっスかね、二人とも。」
「そうよね、きっとそうよ。」
未だ状況が理解出来ぬ様子の桃すらその場を取り繕おうと笑い顔をそのままに同意する。修兵と恋次は、もはやそのまま再び店に居座ってもう一杯やろうかという思いが頭を掠めたが、桃がいるのだと懸命に己を落ち着けた。
そこかしこに、豪奢な女を携えた男達の姿が見られる。蝶の艶やかさと、大店の遊郭や灯される燈篭の光で仄かに色付いた闇の円は、逃げ場を与えぬようにして荘厳に張り巡らされていた。その隙間を縫うように、イヅルと乱菊は身を寄せ合い歩を進めている。その姿は微笑ましいようでいて、か細い肢体が互いに集束し補い合っているようでひどく虚しい。
元より携えている色彩が酷似しているので、尚更だ。
「…どういうおつもりですか、松本さん。」
「自分に気があるんじゃないかとか、そういう素直な考え方は出来ないの?」
「出来ませんね、どう考えても僕はあなたの理想に合致するような男ではございませんから。…おありになるんでしょう。わざわざこうして二人きりで、身を潜めるようにしてしなければならぬようなお話が。」
「あんたって、嫌なところで聡い男ね?」
「よく言われます。」
皮肉なほどに純然たる微笑を返すと、乱菊はさも面白くないというような顔をした。そうして、遊女を従えながらも、先程から毛色が物珍しいのか、乱菊やひどい折にはイヅルまでをもじろじろと品定めするように眺めていた男の群れも消えたところでふと足を止める。
「気付いてるんでしょう?あたしがあんたの何なのか。」
「…数十年前、市丸隊長伝いで僕の名を知ったと仰っていたあなたのお話が偽りであると理解出来るまでには。」
「あら、あたし市丸隊長が教えてくれたなんて言ってないわよ。ただとある男が、って。」
「あの頃、僕の名をご存知でいらっしゃる男性の死神は市丸隊長―…いえ、市丸副隊長のみでございました。少なくとも、こちらからお伝えした限りでは。」
成る程ね、と含んだような微笑を放り、真摯に言葉を紡ぐイヅルを哀れむような瞳で見つめる。ほんのりと香るような色をした優しい灯りは、和らぐ気配などなくどちらの顔をも照らし続けている。乱菊は、珊瑚色をした橋に腰掛けて所在なげに言葉を模索しているように見えた。それを見て、やはり似合いであるとイヅルは確信を深くする。
「…恨んでおられるのですか、僕、いえ―…吉良の一族を。」
「まさか。どうしてあたしが吉良家を恨まなくちゃならないの?…あたしは自分を捨てた祖母のことを恨んじゃいないし、まして一族を恨む理由なんて持ってないわ。まあ少しは、少しはね、どうしてこんなに色濃く生んで下さったのかしらって、思うこともあるけど。」
それこそ神様なんかに、と冗談めいた笑みを零し、深く嘆息する。とうとう観念したかのような姉の様に、イヅルは嘆くことも謝罪することも出来ず、ただその場に佇んでいた。乱菊は、その様子に呆れたかのような素振りで歩み寄り、イヅルを抱き締める。
突然のことに目を見開くことしか出来なかったが、慈しむような指の動きにいつしか込み上げるものがあり、小さく呟いた。
「姉う―…姉さん。」
「なあにそれ、わざわざ言い直さなくたっていいのに。」
くすくすと苦笑する乱菊を、あやすように抱く。けれども奔放で、なだらかな美しさを持つ彼女には、古風で格式のある呼び名よりも、響きが柔らかく、自由な呼称の方が似合いであるような気がしたのだ。そう返そうとしたが、やめた。
本心などおそらく乱菊には知れている。知れていなくとも、同等の血色の中には、大方のことを許容するおおらかさが大なり小なり含まれているものであろう。理解されなくとも、血縁であるという事実が真実として残るならばどうとでも構わなかった。
薫風が昼の風に混じるようになり、そろそろ梅雨に入ろうかとしているように思える。けれどもそのように穏やかな時節とは相反して、身辺の雲行きは怪しい。この頃はとりわけそうである。隊長職に就く者達は誰も彼も皆良識的に飾っているか、他人に関心を持たぬよう見せているがそれは偽りであり、本心では常に互いを訝しく観察していた。
だからといって、イヅルにはそれを正す権利もなければ術もなく、またそうしようとする意志もなかった。ただ剣呑と目前で軽やかに跳ねて回る上司の動向を掴むべく疾走しているだけであり、同僚には常にその姿を哀れまれ、また危ぶまれてもいる。
副官に就任し既に幾年か経過したが、未だ過去を懐かしむ思いは変わらず、ともすればすぐに初心を模索していた。だが、護廷内の対人関係が著しく蠢き、そこかしこで硝煙が立つようになると、初心、などという艶かしい感情はふいに消えた。
わけても、イヅルの仕える市丸ギンと、姉である乱菊の仕える日番谷冬獅郎の不仲が如実に現れてきた頃であったと思う。これまで以上に鮮明に身の振り方を迫られたその時、初心などというものは消えていた。否、消したのだ。
そう思いながらも、待ち合わせた木陰へと歩を進める。乱菊との逢瀬は、実に幾月ぶりかであった。乱菊は、燦々と振り被る葉の群れと生温い風に髪を攫われ、少しばかり顔を顰めながらもそこに佇んでいる。そうしてイヅルが訪れたことを確認すると、にこりと笑い、久方ぶりの挨拶を交わしたのも束の間、常では見られぬ厳格な表情を浮かべ、イヅルに問うた。
「これからどうするの。あいつは―あたしが捨てられた時の話からしてみたら、あんたには優しい人間に聞こえたかもしれないけど―ギンは、そんなに出来た男じゃないわよ。このまま付いて行ったら、誇りなんて全く尊重されない死に方をするかもしれないわ。」
他でもない姉の言葉に、少しばかり心を濁す。けれどもどうしろというのだ。イヅルは既にギンの下に就いている。一度与えられた職を捨てるなど、それこそ誇りに欠けると密かに唇を噛んだ。そもそも、イヅルは魅入られてしまっている。あの男の性情に、あの男の振る舞いに、否、あの男そのものに魅入られてしまっているのだ。
肉親と知り得た後も崩すことのなかった敬語を、初めて切り崩して微笑み返す。
「姉さん…僕は、あの人が好きだよ。」
乱菊は、これ以上ないほどに哀しげな表情を見せた。時代や環境といったものに、いとも容易く苛まれるような弟であった。けれどもひどくいとおしかった。そうして、凛とした脆弱さが事もなげに手折られる日を、常に恐れていたのである。
そのような乱菊の思いを知る由もなく、イヅルは更に非道な問を投げかけた。
「僕はあの人のために死ぬでしょう。いえ、死にます。その時あなたは―…姉さんは、どうします?」
薫風は尚も嘲笑うかのように、けれども時代というものに、使命というものに翻弄される者の先を、僅かに慰めるようにして空を戦慄かせた。乱菊は、常に紅色を絶やさぬ麗らかな唇を震わせながら開く。
「じゃあ、その時はあの人のためにあんたを殺してあげる。他の誰にも譲っちゃ駄目よ。あたしがあんたを殺すの。」
先に死ぬのはイヅルではなくギンだと、乱菊には分かっていた。イヅルに護られるなどということは、あの男には出来ない。ならばその際には、潔くイヅルも逝かせてやろうと思う。自分が何者かを殺めることを頑なに阻む上司も、僅かばかりの意志は汲んでくれるのではないかと、そう思った。
すると乱菊の言葉に、イヅルが尚も凄艶に笑う。硬質な風に揺られた髪のお陰で、潤いを増した目元は気取られずに済んだ。けれども目に潤いを宿していたのは、イヅルだけではない。だがそれを互いに悟らせぬように、色めいた風は殊勝にも細やかな雨を運んだ。
―誓うならばそう、互いが崇めるたった一つの神に。
*あとがき*
やはりと申しますか、ギンイヅ日乱を織り交ぜつつ、微妙に乱→イヅっぽい。(汗)というか最後のフレーズが使いたかったのですが、別に姉弟設定はいらなかったんじゃないか、な…!
こういう絆で結ばれた乱菊さんとイヅルも何となくいいなあ、と思いまして。
しかしアレですね、最後辺りの文を読み返してみると、うちの市丸さんと日番谷君は本当どうなっているのだろう、と…orz