Doll of Deserting

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凄艶な名。(氷上の蒼。余章)

2005-12-03 20:01:46 | 過去作品連載(捏造設定)
*こちらの諸注意をよくお読みになってから、「氷上の蒼」をご覧になった上でお読み下さい。



 青く苦く、喉に透き通るその名を。


 ひたひたと何かが近付く音のみが響いていた。イヅルはそれが何なのか理解していたつもりであったが、いざそちらに目を向けるとやはり恐ろしかった。伯父の家の客間といえど、緊張感が拭われることはない。初めてギンと出会った日であったが、その時にはまだギンの名を知ることはなかった。ただ、近付いてくる足音の主に男と逢瀬を交わしたことが知れたのではないかと、そればかりを思っていた。



「…何の御用ですか、伯母様。」
 思えば、伯父よりも浅ましかったのはむしろ伯母であった。夫婦揃って、とはよく言ったものであるが、この伯母ほど恐ろしいものもいなかった。彼女は何か怪しい手法でも使っているのではないかというほどに若く、美しい見目を保っていた。
 イヅルの問いに伯母は薄く笑い、整った艶やかしい黒髪を指で梳いた。伯母が髪を結っている様を終ぞ見たことはなかった。いつもその髪がよく見えるように腰まで垂らし、着物も淫靡な具合にはだけていた。だらしがないと諭す者も多くいたが、彼女がそれを聞き入れることもなかった。
「何の用、ということもないんだがね。」
「それではなぜこちらへ?」
「…相変わらずお前は可愛げのない餓鬼だね。可愛い甥っ子との逢瀬も理由がなけりゃ許されないのかい?」
 伯母が言うことは、大抵伯父と同じだった。可愛い、とはよく言ったものである。この伯母にいつイヅルを可愛がろうとしたことがあったというのか。既に、伯母を見つめる目は冷めていた。それは自分でも分かっていたが、あまり不快感を露にすると後々面倒なことになりそうだと思い、なるべく平静を保つよう気を付けていた。
「…お前、今日男と会ってたね。」
 イヅルの身体が瞬時にびくりと震える。伯母はそれを見て満足そうににやりと笑った。
「…伯母様のお気になさるような間柄ではございませぬ。」
 この伯母ときたら、イヅルが女と逢瀬を交わすことより、こと男と関わりをもつことについてよく小言を言った。それはおそらく、伯母がイヅルの父に懸想していたからであろう。伯母は毛色の違うシヅカが景清のことを誑かしたのであると、いつもそう決定付けたがった。だからこそシヅカに瓜二つと言われるイヅルのことも、魔性であると触れ回りたいのだろうと思った。二人を失った今、そうすることでしか伯母は自分を慰められないのだから。
「お前と同じ、毛色の珍しい男だった…。あたしはあの男を知ってるが、どうだい。男の名を知っているかい?」
「…いいえ。」
 伯母は、にたりと勝ち誇ったような顔を見せた。大層艶めかしく美しい容貌をしているにも関わらず、そういった表情しか浮かべぬために美貌も台無しである。どうやら伯母は、あの美しい銀糸の男を知っているらしい。両親と知り合いだと話していたので、不思議ではないとイヅルは思うことにした。決して伯母が特別なわけではないのだと、なぜだかそう思いたかった。
「知りたいかい?…あの男の名を。」
「…いいえ。」
「強がらなくていいんだ…。お前はあの男に言い寄られたようじゃないか。そんなことをされておきながら、名も素性も知らないっていうのは居た堪れないだろうよ。」
「いいえ。次会うことがあればあの方から直接お伺いします。」
 どこまでも名を知ることを、否むしろ伯母そのものを拒絶するような物言いに、彼女の眉が吊り上がった。そのままつかつかとこちらへ向かって来ると、鮮やかな着物の色を揺らしながらイヅルの頬を打った。想定してはいたが、予想より強い痛みにイヅルの表情が歪む。
「お前はあの女にそっくりだ…!見透かしたような目であたしを見ながら、易々とあの人を奪っていった…。イヅル、どうしてお前はそうなっちまったんだい。」
「…母は、決して父をあなたから奪ったわけではございません。父は自分のことを寂しい人間であるといつもおっしゃられておりました。母は聡いからこそそれに気付いたのです。ならばあなたは、僕の両親の間に愛など存在しえぬとおっしゃるのですか!」
 むしろ、誰が父のことを追い詰めたと思っているのか、とイヅルは声を荒げた。景清が常々「寂しい」と口にしていたのは、決して孤独であるという意味ではない。幼き頃から異常なまでの愛情を表現してきた伯母が恐ろしいと、そう感じていたとシヅカに話していたのをイヅルは聞き及んだことがあった。
 伯母の執着とは凄まじいものであった。それこそ景清が伯母のことを愛せるはずなどないというほどに恐ろしく、そして凄絶なのである。景清から「人間」というものを遠ざけていたのも伯母であった。だからこそ景清は狂うことを懸念された両親から、早々に霊術院へと入れられたのだそうだ。そのため景清は、愛というものは寂しく、浅ましいものであるとそう思いながら育ってきた。
「…イヅル、お前は駄目な子だ。目上の人間に対する物言いがなっちゃいない。だけどそうだねえ、余計に賢く育ったみたいじゃないか。おかしなことをよく知っちまったようだ。…そうだ、ご褒美をあげよう。あたしもお返しに、いいことを教えてあげるよ。なぁに、お前にとっちゃ無駄なことと変わらない。」
「…何のことでしょう。」
「よぉく覚えておくといい―…あの男の名は、」
「―…!」
 伯母が言うのと同時に、イヅルがきつく耳を塞いだ。彼女はそれを見て、再びにたりと笑うと、イヅルの腕を強く掴んで引き寄せる。それに抗うイヅルの姿は、やけに儚く見えた。
「どうしたんだい?知りたいんだろう。お前が誑かした男の名だ。景清と同じ、お前達の香に誘われた男の。」
「―…あなたの声で、あの方のお名前を紡がないで頂きたい。」
「何だ、お前はあの男に惚れてるんじゃないのかい?」
「いいえ、いいえ…。あの方は、そのような言葉で言い表して良いお方ではございません。」
 イヅルの言葉に、どうやら相当心を奪われているらしい、と伯母が更に口唇を吊り上げた。神聖だとでも言うのか。あのような血に塗れた男を。あのように冷めた色を纏った男を、神のようだと崇めるのか。そう思い、彼女はふと嘲笑した。
「そういうところが甘いんだって、昔から何度言えば分かるんだろうねえ、お前は。」
「…え?」
「好きな男なら、自分のものになるまで思う存分束縛してやればいい。それが出来ないから愛されるんだろうけどね、お前達は。…虫唾が走る。」
 はっと言い放つと、伯母はイヅルの柔らかい髪を掴み、唇を寄せた。そのまま耳元に口を持っていくと、低い声で囁く。まるで差し迫る恐怖そのもののようだとイヅルは思った。
「…名前を知りたくないんなら、換わりに教えてやろう。」
「…。」
 鋭い視線で伯母を睨むが、彼女はいっこうに怯む様子を見せない。例え耳を塞ごうとも、今度は逃れられぬであろうということは嫌になるほど分かった。伯母はイヅルの耳に唇を寄せたまま、おどおどろしい声で低く笑った。
「あの男はね、あたしを抱いたんだよ。」
「…あなたとあの方に、そこまでの接点があるとは思えませんが。」
「いいや違うね。あたしが旦那に身請けされるまで、どこにいたか知っているだろう?」
 伯母は、景清や伯父と昔馴染みであったが、景清が霊術院にいる間に家が没落し、郭で生活していたことがあった。親族が消息を追う間もなく家のかたにと攫われ、そのまま男の慰み者になることを続けていた彼女は、長年弟に心を奪われたままであった伯母を恋い慕っていた伯父によって、懸命に溜め込んできた財産で身請けされるまで、思わず目を背けたくなるような日常を過ごしていた。帰ってきた頃には更に狂っていたおうであったと、誰かが語った話である。
「それで、どうしたのです。」
「ある時店に大層身なりのいい男が訪ねてきたんだ…。特に上等な着物を着てたってわけじゃない。ただ、黒い袴の上に白い羽織を重ね着てたってだけの話さ。でもねえ、店の奴らときたらそれだけで動揺しちまって、やたら頭ばっかり下げて気色悪いったらなかった。」
「その方は、もしや。」
「ああ。今もいるかは分かりゃあしないけど隊長さんだよ。何せそんなに敷居の高い店じゃないもんだから、隊長格が来たってだけでうるさいったらありゃしない。その人は、男を一人連れてたんだ。それが誰だか分かるかい?」
「あの方…ですか?」
「そうだ。それでその隊長さんときたら、何て言ったと思う?この男は女を抱いたことがないから、適当に選ばせて抱かしてやってくれって言うんだよ。」
 全く馬鹿にされているんじゃないかと思った、と伯母は笑う。イヅルはそれを黙って見つめていた。大層可笑しそうな顔をして、彼女は更に続けた。
「もう分かるね。選ばれたってわけじゃないけど、その時駆り出されたのがあたしさ。」
 その場の空気が凍りつき、温度が二度、いやむしろ五度ほど下がったような錯覚に陥る。目を見開いて瞠目するイヅルの顔を、おそらく母がそうしているように思えるのであろう。伯母は尚もくつくつと笑いながら見ていた。
「可笑しな因縁じゃないか。」
 何事もなかったかのように伯母が呟く。イヅルは朦朧としつつも意識を保っていた。むしろこのまま眠ってしまった方がいいのかもしれないとも思いはしたが。
部屋の中の温度は徐々に戻ってきた。だがしかし伯母とあの人の間に残る確執だけは、永遠に消えることがない。目の前の女は相も変わらず黒々とした髪を振り乱しながら笑っている。まるで遊女に戻ったかのように肌蹴た紅い着物が痛々しい。
「どうだいイヅル、いっそあたしを抱いてみるかい。」
「…誰がそのようなことを。」
「間接的にあの男と繋がることが出来るかもしれないよ?」
「誰が…!」
 じゃああたしがお前を抱いてやろうか、とからから笑い声を上げながら伯母が言い放つ。今更だが、やはり彼女は狂っているのだとイヅルは改めて確認する。性情は元より、尋常ではない環境がそうさせたのであると分かってはいた。そしてその環境を造り上げたのは、他でもない吉良という一族なのだということも。
「お帰り下さい。」
「…追い返すのかい?お前まで…お前まであたしを。」
「あなたがどなたに抱かれようと、あの方がどなたを抱いていようと構いません。しかし―…あなたは少しお休みになられた方が宜しいかと存じます。」
 近頃伯父と伯母が不仲であるということは知っていた。しかし、それがイヅルを虐げて良い理由になるかといえばそうではない。イヅルは控えめに、しかし厳かに淡々と言い放つと、緩慢な動作で伯母が足を引いた後襖を閉めた。伯母は一瞬悲しげな顔を見せたが、それには何も返さなかった。思えばあの人は寂しかったのか、と今でこそ思う。



 伯母は、心臓を患っていた。そのことを知ったのは、伯母が急死を遂げた翌年のことである。しかしその症状を誰にも悟らせることなく、静かに逝った。最期の瞬間、人が変わったように穏やかに伯父の名を呼んだことだけが、イヅルの胸に深く刻み込まれている。伯母は伯父に愛情など感じていないと思っていたが、長く連れ添った伯父には、やはり親愛のようなものを募らせていたのかと顔を俯かせたのを覚えている。
 とうとう初めて女を抱いた時のあの人のことを聞く機会はなかったが、それで良かったとも思う。聞くだけならまだいいが、それによってあの人が女を抱く様を想像してしまうのは恐ろしい。そして、あの人に抱かれた伯母の口があの人の名を紡ぐことも、やはり恐ろしい。



「ボクな、市丸 ギン言うねん。」
「いちまる、さん…。」
 


 紅く清く、喉に透き通るその名を。





■あとがき■
 ええとお気づきの方はいらっしゃるでしょうか。少しばかり「哀憐の灯」とリンクしております。が、哀憐の灯は余章のつもりで書いておりませんので、噛みあわない点が多々あるかと。(汗)
 ええと何だか凄まじいお話になりましたが、性表現はありませんので表にしました。どうなんでしょう。大丈夫でしょうか…?

氷上の蒼:第六話(ギンイヅ8000HIT記念連載)

2005-10-14 19:46:07 | 過去作品連載(捏造設定)
第六話

あなたが越えるは屍の山
私が越えるは砂の上
骸の束も砂礫の塚も いつか消えるは同じこと
しかしあなたの過ぎた跡に
決して息づく音は止まず

ああ、あなたは殺すために行くのではないのだ


 ギンが最後にイヅルに用意したこの家に訪れてから、もう七日経つ。それは間違いない。あの日丁度あと一週間だと話していたからだ。他でもない、霊術院の入学式の話である。とうとう当日の朝になったが、それほど緊張はしていなかった。それよりも、あの人と同じ位置に立てるようになれるかもしれないという期待の方が大きかった。
「制服、よお似合うとるよ。」
「ありがとうございます。」
 素直に答えると、ギンはさも満足といった様子でうん、と頷いた。そして一瞬イヅルが見たこともない程に切なそうな顔をしてから、イヅルの髪に唇を落とす。
「ご免な、イヅル。」
「…はい。」
 その言葉が意味することは分かっているつもりだった。次にいつ逢瀬を果たすことが出来るか定かではない、もしかすると二度と会うことはないかもしれない、という意味だ。あれだけ強く抱いておきながら、捨てる時にはひどく潔い男であると思った。
 なぜギンが自分を捨てるのか、その理由は定かではなかった。今でこそ分かることであるが、ギンは恐ろしかったのだ。いずれはイヅルを抱くであろうと決心を固めていた。それをすることでイヅルが穢れようとも構わないと思っていた。しかしいざ抱いてみると、あまりにその姿は頼りなく、この先自分が一生かけて穢していくには淡すぎると感じた。
 だからといって他人がイヅルを穢していくのを易々と見ているつもりはないが、自分の手で彼が黒ずんでいく様を眺めるのは、自分がこれまでしてきた凄惨な行為の中で最も残酷なことのような気がしたのだ。
「イヅル…―」
 名を呼んだはいいが先の言葉が出てこず、そのまま踵を返した。一度イヅルの方を振り向いたが、それ以上目を合わせることはなかった。最後にイヅルの目に映った自分はどれ程までに情けない顔をしていたのだろう。そればかりが頭を掠めた。
「…市丸、さん。」
 お帰りをお待ちしていますと呟こうとしたが、果たして「お帰り」という言葉は正しく当てはまっているのかと自信がなくなり、そのまま口をつぐんだ。それならば何と言えば良いのであろう。またお会い出来るのを、と言えども、それはあまりにも残酷な言葉のような気がした。ギンは、行為の後にイヅルの髪を撫でながら、自分には帰る家もないと言った。それならばいっそここを帰る家とした方が幾分彼にとっては救いになるのではないだろうか。また会える日を、などと、場所すらも定まらない言い方で侘しく言い放つよりも、幾らか。
 イヅルはふう、と一つ息を吐き、荷物を取るべく家の中へ足を戻した。


 学院に発つ前に、両親へ一言残して行こうと吉良家の墓へと足を向けた。憧れてやまなかった彼等へ、せめてもの手向けの言葉だ。これから自分は、暫くの間両親との別離を体験しなくてはならない。ただ、精神を自立させたとしても休みの日に花を供えることだけは忘れるまいと思った。
「…では言ってまいります。父上、母上。」
 特別な言葉は何一つ言わず、軽く手を合わせ目を閉じた。おそらく父も母も全て理解しているに違いない。聡いあの人達のことだ。そう思った。


 墓参りをする上で、多少の問題もあった。しかしそれは後に歓喜を呼ぶものであり、不快なものでは決してなかった。ただ、燃えるような赤毛の少年と艶やかな黒髪の少女との出会いにより、自分の運命が大きく変えられたということは否定出来ない。それでもイヅルは、ギンとの出会いよりは幾らかましだと思うのであった。
(あの人が僕に与えた、皮肉な宿命に比べれば。)
 ギンが現れなければ、イヅルが死神になることもなかったであろう。ここまで様々な手配をされなければ、イヅルは路頭に迷うか、あのまま伯父に捕まり、それこそ耐え難い運命へと歩みを進めていたに違いない。それは感謝すべきことでもあり、同時に悲観することでもあった。
 ギンがイヅルに与えたものは、大きく、そして冷たい。優しさをも孕んでいるものだと分かってはいるが、そのことをいささか信用することが出来なかった。しかし、イヅルはここまで歩いて来た。数奇な運命を辿ろうとも、足を動かしてきた。生きてきた。
(あの人に、会いたいなあ…。)
 イヅルは初めて、自分から会いに行きたくなった。


 
 その日のことは、運が悪かったとしか言いようがない。よもや初めての実習で、あんなことがあろうとは。


 イヅルは、恋次などと親しくなっていくうちに、普通の人間関係を覚えていった。明らかに異常な人間と人間との繋がりを垣間見てきたイヅルには、それがどういうものなのか理解出来なかったが、全て恋次が教えてくれた。
 両親が死神ということもあり、既に霊力の正しい使い方を知っていたイヅルは、着々とクラスの中でも卓越した存在になっていった。しかしそれでも、出来ることはまだ限られている。そんな自分がもどかしく感じてきたある時、初めてあの人に出会ったのだ。

「お前、そう、そこの一回生。そんなとこで何やってんだ?」
「檜佐木先輩…。」
「…俺の名前知ってんのか?」
「ええ、先輩のお名前はよく耳にしますので…。」
 そこは、学院で管理されている茂みの中だった。中庭、といえば聞こえはいいが、本来ならば生徒が入るべきところではない。もしかすると檜佐木は、自分をこのまま教員に差し出すつもりではないのだろうかと懸念する。何しろ彼は外見は少々不真面目であっても優等生なのだ。彼がここに入ることも許されはしないはずだが、何か後ろ盾があるのかもしれない。そう思った。
「す、すみません!決して不純な動機で入ったわけでは…。」
「不純じゃねえって、許可もなしに入った時点で既に不純だろうが。」
「…申し訳ありません。」
 素直に謝ると、彼はふと控えめに破顔し、何を思ったのかその場に座り込んだ。
「先輩…!?」
「冗談だっつの。俺も許可なんて取ってねえんだよ。…静かでいいだろ?ここ。」
「そう、ですね…。」
 それから時折、檜佐木とはここでよく顔を合わせることとなった。イヅルは、この学院へ訪れてから何度も出会いを重ねたが、後々後悔に繋がるようなものは一つも存在しない。それは一重に、この場所の雰囲気も手伝っているように思えた。

 
ここは、確かに楽園だったのだ。


 前々から計画されていた現世での実習は、上手くいったように思えた。引率が檜佐木であると知った時には歓喜を覚えたし、実習も滞りなく進んだ。檜佐木や蟹沢、青鹿の努めもあったが、それにしても初めてにしては上々の出来なのではないかと思われた。
「しっかし、吉良が檜佐木先輩と知り合いだったとはな。」
「きっと先輩は何とも思っていないよ。ただちょくちょく顔を合わせるだけで。」
「知り合いなら知り合いらしく、立てるような言い方してやれよ。よりによって自分の才能の方が上だなんて言わなくてもいいと思うぞ。」
「あれ?そんなこと言ったっけ?」
「言った。間違いなく言った。」
 度々軽口も交えつつ、任務が終了すると共に踵を返す。桃も僅かに疲れた様子だが、明るく笑っていた。しかしその時、行く先の方角から悲鳴が轟く。三人共そちらを見るが、ばっと血飛沫が飛んだ以外には何も分からなかった。
「退がれ!!逃げろ一年坊共!!出来るだけ速く!出来るだけ遠くに逃げるんだ!!」
 檜佐木から大きく声が発せられるが、そらすらも遠くの出来事のようにイヅルには思えた。目前では彼が刀を振り上げており、その視線が動く先には巨大な化け物が見える。虚である。
 呆けているイヅルの腕を引くようにして、恋次が走り出す。しかしそれを押し止めイヅルが別の方角を見た。桃だ。彼女が黒目がちな眼球を丸く見開き、自問しているように見える。その表情は、狂気にも似ていた。
「何してるんだ雛森君!止まっちゃ駄目だ!!」
「どうして…あたしたち…逃げてるの…?」
 世界が止まった。

 考えてみればそうなのだ。どちらかといえば彼女が正しい。イヅルは自分に問いかける。檜佐木が、彼が自分の命も顧みず立ちはだかり、押しとどめているというのに、自分は何をやっているのだろう、と。
「ああ、そうだね…。」
 うわ言のように呟き、足を踏み出す。恋次はそれに驚愕したが、すぐに後に続いた。イヅルと桃の中に、何か恐ろしいものを感じたからだ。このまま見過ごすわけにはいかなかった。

 何度か致命傷を与えようと試みたが、少しも怯まず虚はこちらへ向かってくる。全く歯が立たなくとも、とにかく救援が訪れるまでは足止めをしなくてはならない。それは心得ていた。
 しかし、信じられないものが全員の目に映る。一匹ではない。
「ダメだ。」
 背後から檜佐木の声が聞こえる。その声は決して情けないものではなく、諦めたようなものでもなかった。しかし、どう見ても自分達には応戦しきれないと思われ、イヅルは絶望する。
「嘘だ、こんな…。嫌だ、死にたくないよ…。」
 本音が漏れた。怯えたような、何とも情けない声を発していることは自覚している。親から受け取った生を、親から護られた生を、そして…ギンから再び与えられた生を、無駄にはしたくない。しかもまだ、自分はまだ彼と再会してはいないのだ。
「う…ああ…あ…ああああああああああああ!!!!!!!」
 力の限り叫ぶと、身体から力が奪われていくような感覚を覚えた。ふ、と閃光が走る。背後から放たれたそれは、まるで精巧な弓を打つかのように目前の標的を粉砕した。その白い光は、まるであの人を思い出させるような気がして、期待混じりに振り向く。

「藍染…隊長…!市丸…副隊長…!」
 檜佐木の口から、何やら不穏な声が聞こえる。今何と言ったのだろう。あの人は、一体誰であると…誰であると言った?


 ギンが、神鎗を戻しながらイヅルに向かって静かに微笑んだ。


あなたが越えるは屍の山
私が越えるは砂の上
骸の束も砂礫の塚も いつか消えるは同じこと
しかしあなたの過ぎた跡に
決して息づく音は止まず

ああ、あなたは何かを生かすために、死の上に立って待ち続けているのだ




 

 イヅルと修兵があの時点で既に面識アリってどうですか。(真顔)私はどうも原作で出会う前のことを捏造する癖があるようでして…。(タチ悪っ)
 逢瀬編は第七話でございます。第五話は裏にありますが、読まずとも平気…じゃないかもしれないけど(泣)多分大丈夫な内容ですので、ヌルくとも苦手な方はご遠慮下さい。

氷上の蒼:第四話(ギンイヅ8000HIT記念連載)

2005-09-14 20:33:15 | 過去作品連載(捏造設定)
*この連載をお読みになる前に、必ずカテゴリーから「ギンイヅ~another world~」を選択し、注意書きをよくお読みになられてからご覧下さい。


第四話
 月日は緩慢な動作で流れていく。イヅルはもう長いこと、時間の流れというものを感じたことがなかった。否、実際は自分の周囲で確かに時は流れている。だが、イヅルにとっては昨日も今日ももしくは明日も、何ら変化することのないものだ。父と母が命を落としてから、前当主の居場所は小さな仏壇に狭苦しく収められることとなった。イヅルは一回忌、二回忌と過ぎていく度、目の前で線香を上げる人の群れがだんだんと減少していくのをただ眺めることしか出来なかった。
 その間にも、伯父はといえば尚更酷い方向に衰えていく。伯父が母であるシヅカに懸想していたことは周知の事実だった。弟に当たる父、景清の希に見る才気に、端正な容姿に、嫉妬していたということも。思えば景清がシヅカを妻にすると言って吉良家に招いたその時から、伯父の良からぬ想いは顔を覗かせていたのかもしれない。
 歳を重ねる度に、イヅルは益々シヅカと瓜二つの容貌になっていった。イヅルまでになるとかなり薄れてしまった異人の血も、それほどまで浅くはなかったらしく、イヅルの髪や瞳にしっかりとそれは映し出されている。だからなのかは分からないが、思った通りというべきか、伯父はイヅルに淫猥な眼差しを向けるようになった。
(家を出て行くことは出来る。しかし…。)
 イヅルはまだ霊術院にも入学していない子供だ。しかしだからこそ、万が一伯父に何か良からぬことをされようとした時には、おそらく逃げ切ることは無理だろう。最も、伯父がそこまで人間として落ちぶれていれば、の話だが。
 しかしイヅルが伯父に期待していた『僅かな良心』というものは、やはり相応の形で裏切られることとなるのだ。イヅルの唇が、僅かに震えた。



「イヅル、お前伽の経験はあるのか?」
 何でもない夜、突然に伯父の口から放たれた言葉を聞いた時、来た、と思った。遂にその時が来たのだと。興味本位のからかい程度ならば特に何も言わず無視をすれば済むが、この日の伯父は常軌を逸していた。ここ最近、伯父はただでさえ不安定だった。それもふまえて、そんなことを言い出したのかもしれない。
「…いいえ、女性とそんなことをする暇はありませんでしたし。ましてや、男性とも。」
 淡々としたイヅルの言葉に、伯父の目が微かに光る。瞳孔は既に開いていた。イヅルはその様が、普段の伯父の何倍も恐ろしいと感じた。ここまで狂ってしまっても、性欲は衰えないとは何とも浅ましいものだな、とも思ったが。
「そうか、ならば―…。」
「っ失礼致します…!」
 イヅルに伸ばされた伯父の手が、空を掻いた。それが届く前に、イヅルは既に駆け出していた。元々部屋に荷物は纏めてある。伯父の決定的な行動がなかったからこそ決心は揺らいでいたが、逃げる用意は整っていた。ましてや先刻のようなことがあっては、いつ間違いが起こらないとも限らない。
 伯父はおそらくもう狂ってしまっているために、早々追いかけては来られないだろう。イヅルは伯父の文机にそっと「お世話になりました」というような書置きを置くと、小さな荷物を持って踵を返した。伯父の足音がすぐそこまで迫って来ていたからだ。例え書置きがあろうとなかろうと、今の伯父に読めるかどうかは定かではないが。



 外は闇に包まれ、足元さえおぼろげだった。イヅルは息を整えるために、木々の生い茂る道のところで、足を止めた。前々から用意はしていたものの、勢いで飛び出して来てしまったことに変わりはなかった。これからのことなど少しも分からない。が、伯父の自室の引き出しの中には、微かな希望が存在したはずだった。もう今となっては、それも失くしてしまったが。
 イヅルは、少し前に霊術院の入学試験を受験していた。無論、伯父に黙って、だ。あそこは身分、年齢に関わらず誰でも試験を受けられるし、学のない者でも才能さえあれば通るような試験が実地されていたので、親を失くした子供などは大抵一度はそこに希望の光を見出す。ましてイヅルのような死神の子供ならば尚更だ。
 合格したことは、分かっていた。ある日郵便受けに入っていた文の中に、確かに合格通知が入っていたのだ。しかし伯父は、基本的にイヅル宛ての文は本人に預けようとはせず、イヅルが読みもしないうちに取り上げてしまう。その日も、そうだった。
 出て来る前に、もしかしたら探すことが出来るかもしれないと期待もしていたが、伯父の気配が迫って来るのが思いのほか早かったために、それも叶わぬ願いとなった。これでイヅルは、人生全てを棒に振ったことになる。そう思い、僅かに口唇の端を上げた。が―…



「何しとんの。こないな時間に、そない重そうなん持って。」
 痩身の男だった。流れるように繊細な印象をもつ銀髪に、日頃細められている血のように紅い瞳は、今は見開かれ、剥き出しにされている。イヅルは、それが誰なのかよく知っていた。数十年前、自分に今後の身の振り方を二者択一で迫った、あの男。当時と全く変化のない、若く美しい姿で、今、確かにここにいる。
「―…家を、出て来ました。」
「絶えられへんかったか、あの家に。」
 小さく頷くと、男は面白そうに口の端を上げて笑った。周囲の木立が、ざわざわと音を立てて揺れる。それは逃げろと言っているようでもあったし、受け入れろと言っているようでもあった。イヅルはふと思い出す。あの時この男が言った、『次会うた時、今度こそお前の全て奪ったる。』という言葉を。
 幼い時には理解することが出来なかったが、今ではその意味がまざまざと感じられる。よしんばこの男にその気がなくとも、男には色めいた印象を与える何かがあった。
「イヅル君、言うたな。」
「…なぜ僕の名をご存知なのですか?」
「言うたやろ、ボクは君のお父さんの知り合いやて。」
 確かに父と知り合いならば知っていてもおかしくはないが、イヅルはそのことがいまいち信用出来なかった。しかしそれが偽りならば、自分の名を知っているはずはない。不本意ではあったが、信じざるを得なかった。
「ボクだけ名前知っとるいうんも不公平やな。ボクな、市丸 ギン言うねん。」
「いちまる、さん…。」
「ギンでええよ。」
「いえ…。」
 イヅルが口ごもると、ギンは納得出来ないような顔をした。しかし、「まァ、イヅルやしなあ」と、会うのは二度目なのにも関わらずイヅルの全てを知っているような口振りで言った後、すぐに機嫌を直したらしい。なのでイヅルは、気にせず市丸さんと呼ぶことにした。
「あァそうや、渡すもんあんねや。」 
ギンは、おもむろに懐に手を差し入れた。そんな仕種すらもこちらを同様させるほどに色めいている。こんな人もいるのだな、とイヅルは目を丸くした。
「これ、欲しない?」
「っそれ!」
 ギンの手に握られていたのは、紛れもなく真央霊術院の合格通知だった。しかもそれには、入学要項も伴われている。あの日伯父の家に送られてきたものと、全く同じものだった。しかし伯父の家からは持ち出された形跡はなかったはずだ。
「どうして市丸さんが持ってるんですか!?」
「ちょお拝借させてもろうたわ。」
 せやから伯父さんのお家にはもうコレはないはずや、と明るく言うギンに、イヅルは驚愕を隠せなかった。父ほどではなくとも、あれでも伯父は腕の立つ人なのだ。それなのに、伯父の目を盗んで一瞬で窃盗が出来るとは、市丸 ギンとは一体何者なのだろうか、とそう思った。
「市丸さんが死神ということは分かります。でも、あなたは一体―…。」
「ええやん、そないなことは。」
 どれほどの位置にいる方なのですか、と続けたかったが、ギンがまるで正体を明かしたくはないとでも言うように言葉を遮ったので、イヅルはそれ以上何も言えなかった。
「なあ、イヅル君。その合格通知見てみい。君主席やて。」
 言葉だけでは信じられなかったが、封書の中に収められている紙を取り出し、書かれている文字には驚きを隠せなかった。確かにそこには「新入生代表」と書かれている。つまりそれは、イヅルが首席合格だということを如実に表していた。
「良かったなあ、君が早うこっち来るん、期待しとるで。」
「市丸さっ―…。」
 イヅルが文から目を離し、そちらを向いた時にはもう、彼は消えていた。イヅルはもう一度、数十年前の彼の言葉を頭の中で復唱する。
『次会うた時、今度こそ―…。』


 お前の全て、奪ったる。


「…忘れて、しまわれたのだろうか…。」
 目を伏せ、彼の人の消えた彼方へ目を向けると、手の中の封書をぎゅっと握り締めた。




 はーい、せんせぇー。何ていうか、このまま話を進めていくと否応なしにエロを書かなければいけない感がひしひしとしまーす。(汗)これも全て、私が伯父とイヅルの会話みたいなのとか市丸さんとイヅルの会話みたいなのとかを書くとやたら嫌な方向にやらしい感じがするせいです。(泣)

氷上の蒼:第三話(ギンイヅ8000HIT記念連載)

2005-09-12 18:18:43 | 過去作品連載(捏造設定)
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第三話
 筆を動かす音のみが響いていた。窓から見える空は白色である。水色というよりも翡翠色と言った方が正しい透明な青の中に、白い雲が白龍のように身を捩り、うごめいていた。精悍な顔立ちの美丈夫が机に座り、さらさらと何かを書いている。その男の役職と、ここがどこなのかを考えれば、男が進めているのは仕事の書類だということが分かる。傍らにはいつも控えている副官ではなく、他隊の副隊長である銀髪の男が、所在なげに佇んでいた。
「市丸、シヅカが居ぬ間に来ているのであれば、少し書類を手伝ってくれると嬉しいんだけどなあ。」
「何ですか、吉良副隊長がおらん間にこっそり逢引しに来とるみたいな言い方しはって。」
「お前が言うと冗談に聞こえないよ。」
 手伝いの件をはぐらかされたのをまるで気にしないかのように、茶化すようにクスクスと笑うと、その男は続けて言う。
「市丸、うちの隊は隊長も副隊長も吉良なんだから、どちらも同じように呼ぶのはやめないか。」
「せやかて、ボクより目上のお人を名前で呼ぶやなんて。」
「シヅカはお前と同じ副隊長じゃないか。」
「アンタの奥方やろ。」
 そういうところにはやたら気を遣うくせに、私をためらいなくアンタと呼ぶのもお前だけだな、と言いながら、男は仕上がった書類を纏めてトントン、と机を使って整えた。
 市丸と呼ばれた銀髪の男は、吉良というらしい男の姿を見ながら、ふと思い出したように手を叩いて、再びにじり寄った。
「そういや、お子がお生まれになるんやってなあ。おめでとさん。」
「全くお前はどこから情報を仕入れてくるんだ。そうだな…シヅカの身体の状態によっては、早くて来年の中ごろになるかな。」
 長めの黒髪を肩口まで垂らしたその男は、吉良景清と言った。数十年前に当時副官であった吉良シヅカと婚姻を結び、今となってはシヅカの旧姓など誰も分からない。仲睦まじい夫婦であるのに、今の今まで子がなかったのがむしろ不思議に思われたが、市丸は、その理由を知っていたので何も言わなかった。シヅカは副隊長という役職に就いている女にしては身体が弱く、子を産む時の負担を考えた上で景清が妊娠させていなかったのだろうと思ったからだ。
「で、男ですの、女ですの。」
「いや、それはまだ分からないんだが…市丸、女だったら嫁にどうだ。」
 冗談交じりに、しかし真剣な面持ちで景清が言うので、市丸も一瞬強張った顔をしてからそれに応えた。
「ええですなあ、あの奥方さんのお子やったらえらい別嬪さんやろうし。」
「おや、私の子だから、とは言わないのか?」
「まさか。」
 景清も端正な顔立ちをしていたが、どちらかといえば女性らしさは感じさせない。正しく『美丈夫』という言葉が似合うというような容貌をしていた。比べてシヅカは、さぞ美しい人だと市丸は思っている。儚げで、母親が英国人との子だったらしく、僅かではあるが入った血より受け継いだ蜜色の髪と青い瞳が目に眩しい。
「…市丸。」
「…何ですの。」
 突如として険しく歪んだ景清の顔に、影が差す。そのことに市丸は、いつもの飄々とした顔付きを僅かに変化させ、真正面から景清の目を見つめた。
「藍染に仕えて、もうどれほどになる?」
「せやなあ、八年ほどになりますか。」
 五番隊隊長、藍染惣右介の右腕として働き、もうそろそろ八年ほどになる。そのことに何ら不足は感じていない。大体からして、隊長などという役職に就きたいと思ったこともない。やたら仕事が増えるだけだと市丸は考えている。
「市丸、私が保証してやる。お前は副隊長で終わる男ではない。」
「そらおおきに。えらい買い被りですなあ。」
「いずれは必ず隊長になれ。そして…そして。」
 渋るようにして口をつぐんだ景清を、市丸は訝しく思いながら尚それに耳を傾けていた。景清は、狂おしいとでも言うかのような面持ちで、ゆっくりと話を続けた。
「私に何かあった時には―…「ちょお待ち。」」
 景清の言葉を、市丸は慌てて遮った。縁起でもない。しかしこういった職業柄、常に死を感じておかなければならないのかもしれない。そうは言えども、二つほど先の未来など考えなくともいい。そう思う。
「何や、縁起でもない…。」
「聞いてくれ。私はおそらく―…長くはないだろう。」
「何も患いはなかった思うけどなあ…。」
「とにかく、だ。今はまだお前にも知らせることは出来ない。まだ、先の話だ。しかし、シヅカのお腹の子が自立出来るほど成長するまでは、もたないだろう。」
「して―…ボクにどうして欲しいん?」
「私達夫婦に何かあった時には、子供が女であろうとなかろうと、お前が面倒を見てやって欲しい。」
「そんなん出来へんわ。」
「育てる必要はないんだ。子供と顔を合わせなくともいい。しかし…どこかで必ず、その子のことを見ていてやってくれ。」
 その声は、悲痛としか取ることが出来なかった。最後の方は、既に言葉として成り立っているかどうかも怪しかったが、市丸は曖昧に頷いてやった。「しゃあないなあ。」という、余計な一言を付けて。


 今思えば、彼は自分が常に部下の一人から足元を狙われているということを知っていたのだ。だからこそ自分に、イヅルを預けたのだ。


「吉良隊長、今日な、イヅルに会うて来たんよ。」
 ざわざわと揺れる木々の中に、ぽつんと寂しげに佇む墓を見つめながら、ギンは呟く。眩しそうに目を細め、しかしそれは涙を堪えているようでもあった。
「えらい綺麗に育っとったわ。シヅカさんによお似とる…。」
 シヅカが死んでから、ギンは『シヅカさん』と呼ぶことを心がけていた。それはある一種のけじめでもあり、願いでもある。響きの似た彼女の子の名を、いつか同じように呼ぶことの出来るように。

「吉良隊長、ホンマにあの子もろうてもええですか?」

 その声が、届くことがないと知りながら呟いた言葉の中で、最も小さかった。ギンはイヅルのことを放ってはおけないのだ。運命に棄てられてなお、泣くことも出来ない可哀想な子供が。ましてそれは、遠き日の自分によく似ていた。


 ええとあの…吉良景清×市丸ギンとかじゃないです…よ?(汗)ちゃんとギンイヅですよ。ということを主張するために、最後の市丸さんの台詞を入れました。(痛)景清さんかなり夢見てすみません。お父さんを女顔にしようかと一瞬血迷ったのですが、結局美丈夫に決定。(笑)

氷上の蒼:第二話(ギンイヅ、8000HIT記念連載)

2005-08-24 23:26:47 | 過去作品連載(捏造設定)
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 何なのだろう、この感触は。体内に異物が混入される感覚。自分ではないのに全くの他人とも言えないようなものがゆるゆると脳から爪の先までを侵食していく。イヅルは幾度となく血溜まりに嚥下され、幾度となく孤独な沈黙をたずさえてきた。しかし、こんな感覚は初めてだ。苦しいのに、こんなにも身体は酸素を求め続けているのに、むしろこのまま、沈んでいたいと思うのはなぜだろう。

                  
 

 男の口からは大量の血が吐き出され、床には血の染みが続いていた。息づく音が、段々と鈍っていくのが分かる。そこに漂っているのは、ただひどく濃密な死の腐臭だけだ。男は苦痛に顔を歪めながら、目の前に立つ男を眺めていた。
「…なぜだ…。なぜお前が私を殺す?」
「そんなことも分からないのか。お前が三番隊隊長であるからだ。そして私は隊長職には就いていない。これだけで立派な理由になる。」
 自分の不意を狙った男は、自分が最も信頼していた部下だった。いっそこれが何者でもない人間ならば、自分もまだ救われたことだろう。そう思った。目の前の男は緩慢な動作で刀についた血を拭い、鞘に収めた。卑怯な真似をされなければ、自分にも勝機は充分にあっただろう。しかしこの男は、自分が刀すら持たないところを狙った。しかも奴は、自分が何者かに殺されたとなればすぐにでも代打として隊長職に就くであろうと思われるような腕前をしていた。仕方がない、と思う。この男に鬼道だけで勝つということはおそらく不可能なのだから。自分はここで死を待つしかないのだろう。
 いざ死ぬとなれば、必然的に妻と子のことが気にかかる。妻も副隊長であるので、例え母一人子一人になったとしても充分生活はしていけるだろう。しかしこの男が隊長になった後、まだ妻が副隊長に就いているのかと思うと不安になってしまう。そして、三番隊に今も残されている、忌まわしい死のしきたりとやらも。
「そうしていればじきに息絶えるだろうさ。」
 そう言って男は踵を返した。もしかしたらあの男は、したたかにも自分が第一発見者として名乗りを上げるつもりなのかもしれない。最後まで何と浅ましい、と、緩んでいく力を振り絞るようにして口唇を歪めた。
「…っ景清様!」
 血溜まりに沈む自分を呼ぶ声がする。それは鈴を転がしたように澄んだ声だ。自分が最も、愛した女の声だ。
「…シヅカ…。」
 シヅカの絹糸を思わせる蜜色の髪が、さらりと揺れる。死神業には邪魔だからと言って伸ばすのをためらっていた髪を、伸ばすようにと頼んだのは他でもない景清である。
「シヅカ、頼む。私はこのまま死ぬだろうが…お前は生きてくれ。」
「何をおっしゃいます!三番隊の上官として、ここで私だけ生きるわけには参りません!」
「あんなしきたりに惑わされるんじゃない!あまりに馬鹿げてる…。私達には、イヅルがいるのに…。」
 景清とシヅカの表情が、同時に歪曲した。三番隊には、公表されることのないあるしきたりがある。それは護廷には伝えられておらず、代々、隊長と副隊長だけに伝令されるものだ。
 ―…三番隊隊長が死んだ場合、副隊長も共に後を追わなければならない。
 馬鹿げている、と言って実行しない者も多いが、その場合、結局は後日何者かによって始末されている。しかも副隊長が死んだ場合には、隊長は後を追わずとも構わないのだ。景清は、そのことに少なからず疑問を抱いていた。何はともあれ、自隊の隊長のために死ぬ覚悟がある副隊長というものは限られてくる。三番隊の上官二人が、必ずしも通じ合っているわけではない。ましてや異性であるとも限らないのに、どうしてそこまで心酔出来ようか。
「…しかし景清様、私達は仮にも夫婦なのです。ただの隊長副隊長という関係ではございません。それに、子がいようとも、最終的には私は始末されます。」
「だからこそ、だ。隊長副隊長という…関係で…ないから、こそ。」
「死神を辞めたとしても、それならばどこでどうやって生きていけというのです。…景清様、これだけは言っておきます。…イヅルは、あの子は、強い子です。」
 無責任な親だと罵られても、何としてもシヅカは景清に付いて行きたかった。そして、我が子を信じたかった。むしろイヅルを死神へと育てるために、イヅルを捨てるのだと言ってもいい。どちらにしろ、ここで死なずとも自分は殺される。イヅルを連れて逃げてイヅルを巻き込むよりも、いっそここで自害してしまった方が良かった。
「シヅ、カ…!」
 生きろとでも言うかのように、景清はシヅカの名を一声叫び、息絶えた。シヅカはその亡骸を抱き締め、常備していた毒を取り出す。三番隊の副隊長になった時から、肌身離さず懐に隠し持っていたものだ。
 イヅルへの自責の念は消えることはない。しかしここでやり遂げなければならないのだ。この隊に配属されたその瞬間から…覚悟していたことだった。
「ご免なさい、イヅル…。」
 一気に毒を煽ると、苦い味が口の中に広がる。それだけ感じていると、まるで良薬のようだとも思う。そしてその後の感覚を味わうこともなく、そのまま息絶えた。

                 

「シヅカはともかく…景清を殺したのは、死神しか考えられないな。」
「そんなことは分かっている。誰が殺したのか、と言っているんだ。」
「イヅルには、両親は事故死だとでも言っておけよ。」
「まあ…あんまり可哀想じゃありませんか。」
「可哀想?何を可哀想なことがあるか。イヅルは死神になる人間なんだぞ。自分が将来目指すものが両親を殺したなんて知れてみろ。それこそ可哀想だろうが。」
「お前達は馬鹿か。教えてやればいいだろうが。」
「何てこと!あんたはあの子が可哀想だと思わないのかい?」
「何であんなガキに気を遣ってやる必要がある!言ったところで何も分かりやしないだろうさ。」
「…言っておくけど、あんたがあの子を引き取るんだからね。」
「またそれか。全く同情ばっかりで肝心な時は俺に全部押し付けやがって…。」

 大人達の声が、静寂の中で静かに耳を焼く。イヅルは聞いていられなくなり、その場から逃げ出した。自分の両親は、死神に殺されたらしい。自分が何よりも憧れていた、死神に。
 そう思うと急に死神というものが憎らしく思えた。子供とはあまりに単純なものだとこういう時に思う。両親を殺された憎らしさと、自分の尊敬を裏切られた悔しさで、身を焦がしてしまいそうだった。
 家から少し出たところで、気が付けば、目の前に男が立っていた。見るも鮮やかな色を纏った、漆黒の鴉。第一印象とするならばそれが一番正しい。白銀色の髪に、細められた眼からは血色の瞳が覗いている。言うなればそれは、悪魔のようだった。
「お兄さんは、死神ですか?」
「そうやけど…キミ男の子?」
「…男です!」
 つい、声を荒げて問いに返した。母は、子供の自分から見ても日本人離れした美しい人だった。すると母親似のイヅルは、必然的に女性的な顔つきになる。しかも色素も薄いので、女子に間違われることがよくあった。
「すみませんが、僕は死神が嫌いなんです。仲良く出来そうにはありませんね。」
「そら残念。せっかく可愛え子とお近付きになろう思うたのになァ。」
「…何しにここへ?」
「…吉良隊長の、供養や。」
 イヅルはその言葉に、眼を丸くした。父の知り合いにこんな人がいただろうか、と思ったのだ。
「父を、ご存知なんですか?」
「ボクがえらい尊敬するお人やった。」
「でも父は死神に殺されたんですよ?仲間であったはずの、死神に。」
「せやなァ…それも道理や。」
 死神の世界では、とその男は続けた。しかし自分は景清の人柄に、生き様に、心酔していたのだと。本当に素晴らしい人だったと語るその眼に、先程のような妖艶な空気はなかった。
「なァ坊、仇討ちたいか?」
「…はい、出来ることなら。」
 強く、誰よりも、果てしない強さを持った男に。
「そんなら、…おいで。」
 男の手に縋ったのは、今思えばなぜだったのだろう。きっと今では自分もあの人に手を差し伸べられれば素直に従ってしまうのだろうけれど、当時の自分がなぜ迷いなくその手を取ったのか、今でも理解することはない。

 こんなにも身体は酸素を求め続けているのに、むしろこのまま、沈んでいたいと思うのはなぜだろう。


 …今回無駄に長いです。何と三話分。(汗)本当は両親が死ぬシーンで終わるはずだったのですが、どうしても市丸さんとイヅルを出会わせておきたくて。第一話の完全版みたいなものですが。(汗)市丸さんと吉良隊長の話はちゃんと書いてみたいなあ。何かシヅカさん平気で子供置いて行くひどい親みたいですけど違うんですよ。イヅルを思ってのことなんですよ。(泣)今日中にと言っておきながらもうあと30分ほどで明日なのですが(汗)読んで下さっている方々ありがとうございます。

氷上の蒼。(ギンイヅ、8000HIT記念連載)

2005-08-22 15:39:37 | 過去作品連載(捏造設定)
この小説をお読みになる前に、必ず下記記事の諸注意をお読みになって下さい。


第一話
「お前はどうしてそんなに可愛げがないんだ?」
 イヅルは、その言葉にどう返答していいのか分からなかった。結局自分を引き取ることになってしまった伯父は、自分をひどく罵った。しかしその度に自分は沈黙を促すしかない。それも伯父の気に障っているようだった。
「…ではどういった子供が、あなたの言う『可愛げのある子供』ということになるのですか?」
「また減らず口を。お前のそういうところが可愛くないんだ。子供は何も知らないのが一番いい。無知で扱い易い子供が一番可愛いんだ。」
「それならば、僕は可愛い子供になる必要はありません。」
 そのまま踵を返し、伯父に背を向けた。とかく無知な子供というものにはなりたくなかった。何も知らずに大人に従う幼い子供にはなりたくなかった。自分自身の足で立ち上がることが目的なのだから。
 一刻も早くここから出て行きたい。イヅルは死神の子であるということに非ず、強い霊力を内に秘めていた。真央霊術院の入学要項に、年齢は別段関係ない。十代ほどの外見をした者が多いことは確かだが、幼い子供も中には存在するのだ。それを考えると、今すぐにでも入学試験を受けたい気分だった。
『仇討ちたいか?』
 独特の言葉遣いが頭を駆け巡る。あの日、確かに自分に救いを促した男を思い出す。葬式の日、突如として現れたその男に、自分は抗うことが出来なかった。
『ー…ほんなら、おいで。』
 男はひどく鮮やかな瞳の色をしていた。禍々しいほどに透明な紅を孕んでいる顔だった。しかし男の持つ血の紅に、たまらなく惹き込まれたのも確かだ。その表情には、果てしない強さが見受けられた。男は、鴉色の袴を履いていた。それは正しく、死神の特徴を表していた。
『…あなたは僕に、何をして下さるというんですか。』
『何でもしたるよ。お前が望むもの何でも与えたる。そん代わり、お前もボクに全部くれな。』
『何をすればいいんですか?』
『簡単なことや。今ここで、忠誠誓ったらええ。そしたら次会うた時、今度こそお前の全て奪ったる。』
 その「全てを奪われる」ということがどういうことなのか、当時の自分には理解することが出来なかったし、その上次に会うことがあるのかどうかも分からなかった。その時は軽い気持ちだったのかもしれない。何も知らずに、その男の強さだけに身を預けることになった。
 その後のことは今でも思い出せない。そのまま男が消えたような気もするし、一度掠めるように口付けられたようでもある。感覚が麻痺したように肌が痺れ、その場に立っている足もおぼつかない。自分が何をしたのか、あの男が何をしたのか、これからどうなっていくのか。そんなことは全て無意味のように思えた。
「…また、会うことがあるのだろうか。」
 伯父を目の前にして、更にあの男の強さを実感する。目の前に立たれただけで足がすくむような強さは、伯父からは感じられない。おそらくここにいるのもあと少しの辛抱だろうと確信し、そっと目を伏せた。


 あ、あの誤解のないように言っておきますが、ギンとイヅルの間には何もありません、よ…?(別にあってもいいけど←ぁ)何か状況描写が怪しすぎてもうヤッっちゃったみたいになってますが、流石に市丸さんも仔イヅには手出しませんよ!(別にそれでもいいけd←黙れ)次会う時は、ね。うん…。(何)ええと仔イヅには手を出しませんが若イヅには出すんです。(ぇ)とりあえずここまでは進めておかないと他の連載はUP出来ないな、と。市丸さんとイヅルを出会わせておかなければと思いまして。

氷上の蒼。:序章(ギンイヅ。8000HIT記念御礼連載)

2005-08-21 12:38:59 | 過去作品連載(捏造設定)
 この小説をお読みになる前に、必ず下記記事の諸注意をお読みになって下さい。


氷上の蒼。
序章
 なだらかに形成を保っていたものが、突如として歪曲していく。イヅルはこれまで幸せというものが手元にありすぎて、それが幸せというものだということに気付けなかった。これは正しくそれについての罰なのだと、強く自分に言い聞かせる。きっと唇を食い縛ると、端から僅かに血が滲んだ。
 ―…人は等しく、これは確かに陰惨である、と呟いた。イヅルもその言葉に疑問などは抱かなかった。これだけ酷く斬り付けられていれば、誰でもそう思うのは当然だ。現場は、血にまみれていた。しかし、確かに父は間違いなく刀傷の跡があるのに対し、母にはそれが見受けられなかった。それでも母は死んでいる。息づく音など微塵も聞こえない。イヅルはそのことに、改めて絶望することになった。それならばつまり、父は死神に殺されたということだ。仲間であったはずの、死神に。
 大体、なぜここに自分は連れて来られたのだろうと思う。父と母が死んでいる現場など、普通ならば子に見せないものではないのだろうか。それとも、自分は吉良家の時期当主として、これを見ても動じない強い精神でなければならないと、遠まわしに言わしめられているのだろうか。
「…全く、景清もシヅカも、イヅルを一人残して逝きおって…。」
 伯父の声が聞こえたが、それにはイヅルへの同情など少しも含まれてはいない。声色からして、おそらくまさか自分が面倒を見るのかとうんざりしているのだろうと思われた。イヅルはどうすることも出来なかったが、家さえあれば一人で生活したいと思っている。しかし、親類縁者がそれを許してはくれないだろうということは分かっていた。自分は、吉良家の当主になるべき人間なのだから。
 下級で平民と同じ暮らしを強いられてはいても、貴族となればその自尊心は限りなく誇り高い。イヅルはむしろそれが忌々しかったが、父母は尊敬出来る人々だったために誇りというものは気高きものなのだと信じて生きてきた。しかしこの伯父を目の前にして、早速それが崩されようとしているのだ。
「父上、母上…。」
 悔しさに、声が震えた。しかし涙だけは流さない。もし流すとすれば、それは父母に与えられた命を失いそうになった時だけだ、と心に決めた。誇りを穢されるような死に様を強いられた時だけだ、と。
 目の前の両親はもう何も発することはない。父の背中に染め抜かれた【三】という文字が、母の腕に枷のようにはめられた【三】という文字が、イヅルの目に激しく焼きつく。矢車菊の紋章が、更に自分の脳を刺激した。
「…僕は、必ず再びここへ来ます。」
 そして、父と母が手にしていた【三】というものを、今度は自分が手にしよう。自分がその代を継ごう。そう決意を固めた。両親は、強い人達だった。母は異人との間の子だったために大変な境遇にあったが、イヅルは母から受け継いだ金糸と碧眼を宝のように思っていた。彼女は、酷く美しく、凛とした雰囲気を持った人だった。父にはよく剣技の相手をしてもらったが、互角に戦える者はそういないのではないかと思われた。そんな彼らを親に持ったからこそ、自分は誰よりも強くなりたい。そう思った。
(寒々しい…。)
 両親の死に様を思い出すと、殺した相手は一つしかない。そして 父を殺す必要があった者など、他に誰がいようか。
 空が晴れ晴れとしているのが、まだ明るい世界に自分を置こうとしているようでやけに腹立たしかった。


 とんでもない捏造連載序章です。(汗)うわーこれ大丈夫なのかなー。色々と。(笑)これから更にとんでもなくなります。ていうか8000HIT記念こんなんでいいんでしょうか。(泣)私が何となく見た夢から遂に連載にまで出世してしまい…。(笑)
 ええと何か恐ろしく妄想激しい連載ですが、宜しければお付き合い頂けると幸いですv

氷上の蒼:諸注意

2005-08-21 12:19:12 | 過去作品連載(捏造設定)
 この連載は、6000HIT御礼予定だったものを8000HIT記念に長々と改定したものです。カテゴリー名の通りに、「アナザーワールド」です。つまり、設定はそのままにものすごい捏造が含まれているということです。(汗)是非とも次の諸注意をよくお読みになってからご覧下さい。

*イヅルの両親が二代前の三番隊の上官だったとかそういうのはどうよ。
*イヅルの両親は他殺ではなく病死だと思う。
*イヅルの両親は学者とかそういうの希望です。
*市丸さんが一代前の隊長殺して隊長になったとかそういうのは…。
*まずギンイヅがー17以前に面識があるということ自体あり得ない。
*一代前の隊長とか副隊長とかオリジナルキャラ多数ってコラー!

…ここまでお読みになった上で「もうムリ、いい加減にしろ」という方はご覧にならないで下さい。切実に。お願いですから諸注意を読んだ後内容を知った上でお読みになった方や諸注意を読まずにお読みになった方は、苦情、中傷などは本当にやめて下さいね。(泣)