Doll of Deserting

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偽善との共鳴:伍(日乱)

2005-07-06 23:00:31 | 偽善との共鳴(過去作品連載)
伍:プラスティックエリカ
 花は例え人工物であったとしても美しい。乱菊はエリカの花のホワイトディライトという品種を現世で見た時、まるで生きていないようだと思ったのを覚えている。花弁は他の花とは違い柔らかそうではなく、何だか硬そうに見えた。この世に花というものはありふれているから、自分がなぜそのエリカの花を見てそう思ったのかは定かではない。しかし何かが、自分の感情を突き動かしているように感じた。
「そういえば、五番隊の任務はどうなった、松本。」
 日番谷は訝しげに尋ねた。乱菊はその質問に呆れるかのように、ふうと一度息をついて何ともなしに答える。予想していた質問だ、と遠回しに言っているようにも見えた。
「それはもう、…滞りなく。」
「…そうか。雛森は無事なんだな?」
「ええ、勿論です。そのように心配なさらなくとも。」
 相変わらず桃の話になると、乱菊の返答にはいちいち棘があった。いつもならば桃と朗らかに談笑を交わしたりして、どう見ても桃を蔑んでいるようには見えないのに、なぜ日番谷が桃の話題を出すと急に機嫌が悪くなるのか日番谷には理解出来なかった。自分はここまで女心の分からない男だっただろうか。こんなことだからまだ子供だと言われるのだろうか、と悶々としていると、乱菊の方から再び声がかけられた。
「…隊長、大丈夫ですか?良かったじゃありませんか。雛森が指揮を取るって聞いて一時はどうなることかと思いましたけど、貴方がおっしゃった通りにあの子は強い子でしたよ。あたしみたいに見るからに小生意気そうな見た目じゃないからか弱く見られがちですけど、あれでいて強い女なんだってあたし関心しちゃいました。完璧じゃないですか、強くて可愛いなんて。」
「見るからに小生意気そうって、お前あんまり自分を虐げるんじゃねえよ。」
「あら、じゃあ隊長はあたしと初めて会った時派手だって思わなかったって言うんですか?」
「そりゃあ派手だとは思ったが、小生意気そうとは誰も思っちゃいねえだろ。」
 ふふ、と乱菊が微笑む。日番谷は、先程乱菊が「強くて可愛いなんて完璧だ」と言ったことに対して少しばかり疑問を覚えた。確かに雛森はその通りだと思うが、本当に才色兼備なのは乱菊なのではないか、と。
「だってあたし、花に例えられると決まって薔薇だとか百合だとか豪奢なものばっかりで。それはそれで綺麗だし嬉しいんですけど、あたしもっと可愛い花に例えられてみたかったんです。」
「薔薇や百合か?考えたこともなかったな…。」
「じゃあ隊長はあたしのこと、どんな花に見えます?」
「そうだな、白くて小せえのでいいんじゃねえか?…答えにしてはありきたりすぎるか。」
 ふうと息をついて顔を背けてしまった上司を見つめ、乱菊はあの時現世で見た花のことを思い出していた。白く小さな、エリカの花。豪奢ではないが、幾房もの花弁が連なった姿は、美しい生命力を連想させた。外見に柔らかさがなくとも、強く生きるその姿は大地に根を張る美しい女そのものだった。


何ていうか、ありきたりな答えですみません。でも何か日番谷君は、必要以上に乱菊のことを派手な女とは思ってなさそう。外見云々でなくて、中身の可愛さを理解してそう。(夢)これだけラブい雰囲気を作ってますが、くっついてませんよ、まだ。(笑)

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