Doll of Deserting

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人形即興曲:序(パラレル連載、乱菊+イヅル)

2005-07-10 22:26:25 | 過去作品連載(パラレル)
人形即興曲
序:静謐な森
 乱菊は、深い深い森の中を歩いていた。その果てにある一軒の屋敷を訪ねるためだ。乱菊の家は代々呉服屋を経営しており、今から行くところはそのお得意先だった。しかし父が死に、母も早くに亡くなっていたので親戚は早々に店をたたんでしまい、一人娘の乱菊だけが残された。そのため、その屋敷でお世話になることになったのだ。乱菊はもうすぐ成人する歳であったため、これを機に独り立ちを考えていた。というか、独り立ちをしたかった。しかし乱菊にはまだ職もなく、とりあえずは居候させてもらうことに落ち着いた。
「…本当に何もないところねえ…。」
 一応地図は預かってきたが、目印になるようなものが何もない。乱菊は困り果てたが、とにかく足を進めることしか方法はなかった。ともすれば足を取られそうなほど足元に草が茂ってきた頃、やっとそれらしき銃日本風の屋敷が見えた。
 間近で見ると更に大きく感じる。中に誰がいるのか、どんな人物なのか乱菊は一つも知らない。父は通っていたらしいが、自分がそれに付いていったことは一度もなかった。
 ゆっくりと門を開け、石造りの通路を渡ると、やっと入り口の前に立つことが出来た。呼び出し鈴などはない。仕方なしに戸を開けて「ごめん下さい」と言った。
 声を掛けて暫く経ったが誰も現れないので、乱菊はもう一度声を掛けてみた。すると奥から人が歩いてきた。美しい金糸の髪だ。自分の髪よりもうんと薄い色をしている。
「…いらっしゃいませ。松本乱菊さんですね?お話は伺っております。こちらへ。」
「…あなたは?」
「吉良イヅルと申します。ここに住まわせて頂いている者の一人です。」
 そう言って微笑む人はとても美しかった。瞳は碧眼で、純日本人には見えない。顔からは女性に見えるが、身体は骨ばっているので男性かもしれない。乱菊は失礼を承知しながら聞いてみることにした。
「失礼ですけど、女性かしら、男性かしら?」
 イヅルと名乗ったその人はふっと悩ましげに微笑み、何か孕んでいるような面持ちをして言った。
「どちらに見えます?」
 乱菊はそれ以上何も言えなくなり、黙り込んだ。それを見やり、イヅルはふふ、ともう一度笑ってはぐらかすように向こうへ手をやった。
「私のことは、男と思って頂いても女と思って頂いても結構ですよ。さ、こちらへ。ご案内致します。他にも同居者の方がいらっしゃいますが、それは順を追ってご紹介を。」
 乱菊はこの館で一波乱ありそうだと思いつつ、少しばかりここでの生活が楽しみになった。しかし不安が隠しきれないのも事実だ。一体ここに何があるというのか分からないが、どうしてか背筋がぞくりと寒くなるのを感じた。


 やっとこさパラレル連載開始です。結局純和風にした模様。ちょっと大正ロマンに憧れていたのですが、やっぱり日本家屋でお人形が好みだったのでこれに。これからキャラも増えていきます。もしかしたら人形っぽい見た目の人ならCPキャラ以外にも出てくるかもしれません。(兄様とかな。笑)夢見すぎな連載ですが、暫しお付き合い下さると幸いです。

この朝に断罪を。(ギンイヅ+乱菊)ネタバレ注意!

2005-07-10 14:33:19 | 過去作品(BLEACH)
注意:この話にはここ2ヶ月間ほどのジャンプ本誌の展開が盛り込まれております。

この朝に断罪を。
「さいなら、乱菊。ご免な。」
 乱菊は、その昔家族のように恋い慕っていた男の姿を思い出す。そうして、三番隊へ書類を届けるべく腰を上げた。
 三番隊の隊舎は、いつも通りに静まり返っていた。ここのところいつもそうだ。副隊長が隊長を仕事へと引き摺っていく騒がしさがなくなったからかもしれない。それとも、もしかしたら副隊長がかもし出していた温かさが、全く感じられなくなったからかもしれない。
「失礼します。」
 乱菊が戸を開けると、三席が事務的な声で「どうぞ」と答えた。この隊にはもう、張り付いたような笑顔以外の温かみのある表情が見られなくなった。そう思っていると、奥から現在の隊主代理が出てきた。
「こんにちは、乱菊さん。日番谷隊長にお願いしていた書類の件ですね?」
 本人は愛想よくしているつもりなのだろう。しかしその表情はどこまでも喪失を孕んだ無だった。彼の顔から笑顔が消えた時、どれほど隊員達が嘆いたことだろう。ここの隊員は副隊長に心酔していたものばかりだったから。
「ええ、これでいいかしら?」
 言いながら、乱菊は隊員達の顔を見やる。皆もくもくと書類を整理している。しかし乱菊は、ついこの間三番隊の隊舎の前で、三番隊の上位席官が話していたことを聴いてしまった。
『三席、吉良副隊長は何で笑わなくなったんですか?』
『俺も思います。あんな副隊長、俺嫌です。笑っていたからこそ普段の何倍も美しい人だったのに。あれじゃあただの人形みたいだ。生きていないみたいで、怖いんです。』
『…お前達が言うように、あの方は一度亡くなったのだよ。』
『…どういうことですか?』
『あの方は、市丸隊長のためだけに存在しておられた。隊長のためだけに生き、笑い、隊長だけが傷付けることを許された存在だったのだ、副隊長は。だから吉良副隊長は、『三番隊副隊長』として今生きておられる。『吉良イヅル』様は、もう殺してしまわれたのだ。』
 隊員達が息を呑む。乱菊はそれを見ながら、あの男が、ギンが自分に別れを告げる前にいつか言っていた言葉を思い出していた。
『イヅルは連れていかれへん。』
『あの子のところに帰って来られるように、あの子にさよなら言わんで行くんや。』
(大事なものは、最後まで明かさない男だった。そうしてあたしには、吉良を託して別れを告げた。本当、勝手な男ね。)
 ギンはなぜ乱菊には別れの言葉を残したのか、乱菊には分かっていた。イヅルと乱菊では、大事の種類が違う。別れを告げるべき相手と告げるべきではない相手は、区別されているのだ。
「…あんたが中途半端に吉良を大事にしたお陰で、あの子は笑わなくなったわよ。」
 自隊の隊舎へ戻る道のり、毒づきながら乱菊は思う。恋人でもなく、友人でもなく、家族でもない永遠の絆で、自分とギンは結ばれていた。互いのイヅルや日番谷との繋がりよりも深く、そして浅い絆で。
「…本当、馬鹿な男ね。」
 あの子は大事にされていることに気付かず、自分は棄てられたと思っている。そしてその証を、顔に貼り付けた。
 乱菊は、朝が来てイヅルが隊舎へ訪れる度に「今日も笑っていない」と隊員達が落胆しているのを思い、ふと朝に裁きを与えたくなった。


 人は永遠に夢を見る生き物だと思うこんにちは桐谷です。ギンがイヅルを残していった理由っていうのがイヅルがその方が幸せになれるからだといい。ていうかわたくし今でも市丸さんはいい人だと信じております。だってそんな悪人が乱菊さんにあんな表情見せられるはずがない。そしてイヅルはさよならを言いに行ったりとかしたら離せなくなるから何も言わずに行ったんだよね!!ていうかイヅル永遠に付いて行けるはずないって知ってたもんね!!!(ドリーマー駿)
 …フー。(落ち着け自分)ていうかパ*ラ*レ*ル!!今日中には書きますマジで。