Doll of Deserting

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不即不離。(ギンイヅ。145話後)

2005-07-01 23:02:12 | 過去作品(BLEACH)
完璧捏造です。ご注意下さい。145話後です。あの時の市丸隊長が言った「死なせたない人」というのが乱菊さんではなく、もっぱらイヅルのつもりで書いています。(汗)
不即不離。
 蝶の羽化する音が聞こえる。それは先刻まで鳴り響いていたが、すぐに止まった。ギンはつい半刻前に罪人である朽木ルキアの元を訪れ、その精神を乱し、からかい程度に楽しんで来たつもりだった。しかし自分が言った言葉によって自分が悩まされるとは思ってもみなかった。なぜならばそれは、他愛ないお遊びの一環として述べたつもりだったからだ。まさか本心ではない。そう思っていた。
「死なせたない人おると、急に死ぬん怖なるやろ?」
 彼女の心を弄ぶための言霊。それ以外に何の意味も持たない、はずだった。しかしその言霊は自分の精神すらも侵食していった。
 ルキアの元から去り暫くすると、副官の吉良イヅルが大人しく待っていた。彼はギンが牢獄から出してやった囚人だ。ギンにしてみればなぜイヅルが投獄されたのか遺憾であるが、連れられるイヅルを黙って見ていたのも事実なので、投獄された時と至って変わらず黙って連れ出してやった。
「お戯れも、程ほどになさいませんと。」
 呆れるようにイヅルが言った。訝しげにひそめられた髪と同じく薄い色の眉が僅かにつり上がる。こちらを向いた瞬間、さらさらと金糸が揺れた。我ながら美しい副官を与えられたものだ、とギンはふと苦笑した。金糸と銀糸。二人の髪が定められた必然のように運命的に揺れる。
「…お前は、ボクが何しとったか知っとるんやね。」
「…いいえ、知りませんよ。幾ら僕でもそんなことが分かるはずはないでしょう。ただ、あなたのことですから一人で消えてしまった後は碌なことをしていらっしゃらないのではないかと。」
「はは、せやなあ。当たり。」
 碌なことせえへんかったよ、とギンがころころと笑った。そんなギンを見つめながら、イヅルはどうせまた人一人追い詰めてでも来たのだろうな、と思う。この人は人に好かれることは極端に下手なくせに、人を追い詰めることは誰よりも上手い。お陰でイヅルも充分に知らない世界を見ることになった。彼のために、知らない世界を見ざるを得なくなった。
 ふとギンの手がイヅルの金糸を撫でた。その長い指が心地よく、イヅルは黙って身を委ねる。ギンは自分が言ったことの意味を反芻していた。
「……ボクも、死にたないなあ。」
 お前がここに、おる限り。そう続けようとしたが、イヅルが泣きそうな顔をしているのを見てやめた。どちらにしろイヅルは自分に付いて来るよりもここに残る方が幸せになるだろう。そう思い、いっそ自分は死んだ方がいいのではないかとも感じた。しかしきっと、自分が死んだらこの副官も生きてはいないだろう。ギンはそんなことを考えながら、今生きている意味を考えた。先刻あの子に思わせぶりなことを言って絶望させたことが、急に罪に思えた。


 ええと145話を見て一番初めに思いついたネタ。イヅルはどこに行ったの隊長。わたくし、ギンがイヅルを置いて行ったのはイヅルが巳魂界に残った方が幸せになれるからだと信じて疑っておりません。(汗)そしてイヅルは事前に置いて行かれることを知っていたのではないかと信じて疑いません。ずっと一緒にいられるわけじゃないことを分かってたんだよねあのこは…!!(アホ)
 ちなみに不即不離とは故事成語で、離れることのない、という意味だそうです。(うろおぼえ)