映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「さくらん」

2008年07月24日 | 映画~さ~
2007年 日本映画

安野モヨコ原作で監督は蜷川実花、音楽が椎名林檎。もう、これだけでお腹いっぱいになりませんか?原作であるコミックはまったく読んだことがないけど、テレビで見た主演の土屋アンナの花魁姿は、今まで時代劇で見てきた花魁と異なる、ものすごくロックだけどそれでも抜群に美しかったし、映画自体なんとなく気にはなっていた。でも、なんていうか、「おらおら、これだけ今が旬な女たちがこぞって参加してるのよ!よくないわけがないじゃないのっ!!!」とマスコミとか観客に畳み掛けてくるような面子に、腰が引けてたのよ。だってほかにも、永瀬正敏、成宮寛貴、安藤政信、夏木マリ・・・ほら、なんか『an・an』の特集みたいな俳優のチョイスじゃない?だから、自分の中の気持ちの整理もつき(←大袈裟)、世間の風評も落ち着いたときに見てみようと思ってたの。


で、感想なんだけど・・・「意外にいいじゃない?」と言うのが正直なところ。そう、意外におもしろかったのよ。個性派(と言われている)俳優たちが、その個性だけで観客を呼び込もうとしてるんじゃ?とも思っていたのだけど、うまいこと演技に反映されていて、「個性の一人歩きのキャスティング(でも大人数)」の心配をしていたのだけど、それはまったく苦にならなかったわ。

原作は読んでいないからまったく知らないんだけど、1本の映画としてはうまいことまとめられていたと思う。蜷川実花が監督だし、「原色の洪水のような映像なんだろうなぁ、あたくし最後まで耐えられるかしら」と不安も抱いたのだけど、これも映画の毒味となっていい作用になってました。椎名林檎の楽曲も、時代劇にジャズなんだけど、吉原と言う街のの非現実性を、大人の夢見心地な空間と言う異空間な雰囲気をかもし出すのにうまく合ってました。まぁ、きよ葉(土屋アンナ)が川で泣いているシーンのバックで、英語の歌詞というのはものっすごい違和感でしたけど。

この映画、脇を固めてる俳優陣が本当にいい仕事してます。代表格は菅野美穂と木村佳乃ね。2人とも、10年前とは別人。女優の風格と言ったら陳腐に聞こえるかもしれないけど、でもそれが備わっているように感じました。菅野美穂の台詞回しって、実はあまりうまいとは思わないのだけど、それでも引き込むものを持っているのよね。木村佳乃が泣くシーンがあるのだけど、この泣き顔が汚くて、「やるなぁ」と感心しました。褒めてますよ、これ。日本の映画ってそれほど本数を見たことないですけど、どんな場面でもどんな役でも綺麗で美しくて、全然同情できないものがいくつかあったんですけど(というか、だからあまり好きではなかった)、ここ数年女優さんたち、特に20代から30代前半の人たち、頑張ってるなぁと思います。『フラガール』も女優さんたちが素晴しかったし、『嫌われ松子の一生』の中谷美紀は抜群だった。夏木マリもはまり役だった。夏木マリを見ていて、「強すぎる個性も、それが味になることがあるんだなぁ」と納得。もちろん全員ではありませんけど。

安藤政信、この人この映画で一番よかった。映画の前半で、清次(安藤政信)が10代の設定の時と、映画後半の20代の設定時ではまったく顔や風格が違っているの!メイクとかではなく、これは演技によるものだと思うのよ。この人の抑えた演技、いいわ。永瀬正敏は・・・実は正直この人の演技、わかんないの。うまいのかどうなのか。「さすが永瀬!」という感じはしなかったし、だからと言ってほかに適役がいるかどうかと考えると思いつかないし。世間では「演技派」だの「国際派」だのいわれてるけど、なんか今ひとつ納得できないでいるのよね、私。今回もその疑問は晴れることはなく・・・。


外国人から見ると、「女郎」と「舞妓・芸子」の区別が難しいと言うけど、この映画を見てその区別って難しいなぁ、と私もおもってしまったわ。

土屋アンナさん、演技まったく期待していなかったんだけど(『下妻物語』の演技もうまいと思わなかった)、結構よかった。日暮(土屋)が桜を見た時の表情とか、うまいなぁ、とうなづいてしまったもの。漫画原作で、イラスト以上の存在感や雰囲気を出せるのはすごいです。そして古来の日本的な美しさとは異なるけど、それでもやはり美しかった。

ひとつ気になったのは、きよ葉(土屋)の子供時代を演じた子役。見た目はよかったんだけど、もう少し演技のうまい子はいなかったのかしら。そして蜷川実花の独特の色彩は、この映画ではよかったけど、もう十分です。



おすすめ度:☆☆☆★     意外によかった。


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