京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間

2011-07-25 21:32:52 | 日記

新入社員のカエルです。
まだアオい。

突然の従業員。
時計業界では、無口な人が多い。

両生類。サンショウウオのような人もいます。
「職場」が生活の場所。
朝から晩まで仕事をしていますので、同僚の結婚式など、お出かけが無理。


上司には蛇・トカゲなど爬虫類系の人が多い。
「蛇ににらまれたカエルのような?状態。」

カエルは逃げました。

カエルだから?時計師だからなのか、夢を見ます。

「いつかは、王女様がやってきて、自分を王子様にカエル。」
時計師をやっているのは仮の姿なのだ。

腰掛け気分の社員が多いのがこの業界の特徴。

夢が破れて、もう一度社員で、やってくる人も多い。
カエル君に何もいえない人が多いのだ。

「いまどき、パテック・フィリップの工房にいるはずだった!」
など、夢は尽きないのです。

カエルの愛読書はカフカ「変身」

一度、変身したので・・。夢をもう一度。
菊池寛の「ちち カエル」などベタな小説は読まない。


後姿が、オーナーのパステー君と同じ。
独り言も同じだ。

「げろげーろ!」ー時計の裏蓋を開けてみたらサビだらけお手上げだの意味。

「げげーっ!」-コイルを切ってしまった。または、天真を折ってしまったような致命的なミスをした。

「ケッーヶッ!」高価な時計の割には安いムーブを使っている。こんな時計!ありえない!の意味。

「けろ」っとした顔をするとき。
たいした仕事もしていないのに、給料をたくさんもらうとき。

時計師は無口なのね!カエルより無口。

「飯・風呂・寝る」の前に3時間くらい奥さんを捕まえてしゃべる。
結局、人見知りするだけなのだ。

帰宅後、寝る前に「今日は、会社で誰かと会話したかなー?」


今日はいそがしい一日でした。
二人で仕上げた時計は山のようだ。

「木村カエル。」と、よく間違えられる。カエラではない。
バタフライはまずいから食べない。

倉敷美術館のモネの「睡蓮(すいれん)」が好み。
見つめていると吸い込まれそうになるの!

夏休み特別出張のカエルです。パスティーシュ工房の旋盤を担当しているのです。
ちなみに愛用の時計はカシオ「フロッグマン」。

「有給休暇」を楽しみにしていると、「新人は有給休暇は来年からだよ!」と言われた。
ちょっと、元気がない後姿だ。

明日は近所のパン屋さんの営業日。楽しみなカエルです。







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時計師の京都時間

2011-07-24 22:11:32 | 日記

今日は日曜日。

いい時計が集まる日。期待通り無名ですが上品な時計だ。
文字盤のエンボス(浮き文字)も見事。

写真では見えないリューズ部分にも、ロゴが刻印されている。
パテック・フィリップの名品にあこがれる時計師の作だと思う。

家族全員が工房に訪れていただいた。
時計の修理を専門にしているオヤジが珍しいのでしょう。
顔がこわばっています。
かわいいお嬢様達です。私は嬉しい出会いなのですが・・。
「油くさいオヤジはきらいですか?」。



今日は掛時計がいっぱいの日。
「充分働いた時計。まだ使いますか?」

機械式の振子時計達の到着だ。
はと時計を合わせて一日4本の機械式時計を仕上げる。

手首が笑う。関節が硬くなるのだ。
ドライバーを使う力は今日の楽器の練習をあきらめるほどの力が必要だ。

さび付いたネジを一つ、一つ、ほどいてネジを抜いていきます。
さび付いたネジのサビを取ると、やせ細った芯が出てくる。哀れな芯です。

「よく今日まで頑張った!」私が褒めてあげるのだ。

写真の左隅の置き時計は
「ヘルムレ」だ。存在感は充分の時計。
ゼンマイ切れだ。
またまた名品が消える。日本から、名品が消える象徴的な日です。

今日で工房のテレビが終わる。
テレビがオブジェに変わる。

悲しい政治欠陥の遺物だ。

替わりに衛星放送をみた。
どのチャンネルもむなしく韓国映画の再放送を続けているのでしょう。

この国の放送業界人は韓国人なのか?日本人なのかよく解らなくなっています。
韓国映画は面白いの?

ひたひたと、韓国の映像業界にのっとられているのかもしれない。

地デジ化は小泉・竹中・奥田路線の最終仕上げだ。その最後のお披露目はむなしい。

電力会社からの個人献金で三途の川を渡れるのかな?
廃棄されたテレビの山に向って「エコ~!」と叫んでみましょう。

「エコ~!」と、こだまでしょうか?

産業廃棄物の野山から、テレビが答えるのです。
「小泉政権に一番貢献したのに!裏切り者~!」

メディアも今日で終焉を迎える?
メディアのハルマゲドンは続くのだ。

























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時計師の京都時間

2011-07-23 22:41:50 | 日記

ロレックスの修理が多い。

残念ながら水入りが多い。

10年ほど前からロレックスの人気が急上昇した。
自動巻きの時計だ。
二日ほど使わないと止まっている。

時刻あわせの後に、面倒だから、リューズは閉めないで使う。
時計に対する愛情が薄れるのです。

当然、非防水の時計になっている事も無視。
「手を洗うだけでも水が入る。」時計になっても使い続ける。

「カシオは、一度もネジを締めて使ったことがない!
数十倍の価格のロレックスが簡単に水が入るの?不良品だ!」
このように騒ぐ人までロレックスの悲しいユーザーなのだ。

ロレックスの修理マニュアルがあるのです。

「修理後、フルに巻き上げた状態で、一日経過後、200度以上の振り角」が修理調整後の条件がある。
その他、「一日の許される誤差がプラス10秒・マイナス5秒まで。」

一度水が入った時計は、歯車の抵抗値が大きいので振り角200度が出ない。
また、精度が出ない。

これでは修理料金はいただけないのです。修理失敗なのだ。

また、自動巻きのローターにガタが来ます。巻き上げ不足でこれまた不合格。
手巻きの時計としてなら使えるのですが残念!

すべてロレックスの修理条件を一つもクリアできないのだ。
つまり、お客様から一円も修理料金をもらえないのです。

まともな時計師なら、水が入ったロレックスの修理はお断りだ。

「昨日、水が入ったのです!」
お客の言葉に騙されてはいけない。

私は何度か騙された!

ふたを開けたら、ローターや、巻真が真っ赤になるほど錆びていました。

「ただ働き」のロレックスは今や、嫌われ者だ。

二番目には、修理完了後の引き取りが遅いのも嫌われる理由だ。

ブームで購入した。使ってみると面倒だ。
そのうちに引き取りに行く予定だけど、四、五万円のお金がもったいない。

今日も、ロレックスを数個。工房からさびしく持ち帰る。
ごろごろとロレックスの修理品が重い。

工房に盗難でもあった日には、泣くに泣けないので毎日持ち帰る。
そのうちに修理伝票がよれよれボロボロになってしまう。

カシオとロレックスは初心者向き、バブル後遺症の残骸時計だ。
「初心者は機械式時計を買ってはいけない!」

国産機械式のメーカー、オリエント時計の名品を10年ほどこなした上で、高級時計にチャレンジして欲しいと思う。
オリエントの時計なら、修理料金も2万円以下で済みます。丁寧なつくりなのだ。

ただし、このままではロレックスがあわれなのです。今や使い捨て状態だ。

このロレックスの会社。利益のほとんどを福祉団体、スポーツ団体に寄付しています。

実に良心的なメーカーなのです。
マニュアルもしっかりとしている。日本に学校も作っている。頭が上らない。
私たち修理技術者はどれだけ利益が上らなくなってもロレックスの修理は断れない。

水が入ったら、ロレックスのサービスセンターへ連絡することです。

一番、水で失敗する時計なのだ。
自分の子供に渡すまでに使いこなしていて欲しい時計だ。伝える楽しみ、会話が生まれる。

いいものを時間を掛けて使いこなしていく楽しみ。
時計師との付き合いも時間と、本当のことを告げる勇気が必要なのです。






















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時計師の京都時間

2011-07-22 22:37:10 | 日記

パスティシュ工房には往年の名機。
使用年数20年以上の時計がやってきます。

私は使用年数56年。56歳だ。
そろそろ、アガキが多くなる。

持ち込まれる時計の中には100年近い現役時計は多い。


ティファニーとクレドールが仲良く還暦を迎えそうな風景です。
まだまだ動きますよ。
人間の年齢にたとえると、喜寿の時計です。
よく激動の昭和を生き延びたと思う。


カルチェ。この時計ほど年齢が不肖な時計はない。
時計売り場の定番。

50万円前後の価格なのですが時折売れていくのです。
カルチェの金色は18金。電池交換の際に、磨き上げます。
「お疲れ様!」

今日。セイコークロックに修理の用事で連絡する。
昔お世話になったI氏のことを思い出した。
「彼はお元気ですか?」
もはや、役職上位で雲の上の存在だと思って聞いてみた。

「一年前に定年退職しました!」あっけない答え。
私より少し先輩。電波時計に尽力した人だ。

「毎朝の朝礼で、時刻を合わせるのが一番苦痛だ!」
鉄道関係者の声です。

小さな要望を誠実に聴いた人です。

電波を受信して安心お時計。トラブルなしで朝礼が終わる世界を実現した。
新入社員は時計を秒まで正確にセットするのが苦の時代だ。

時計業界の社内では「年差20秒の高精度クオーツ時計で充分。」の声が大きい。
電波時計不要論が大きい。その中で、電波時計に執着した人がいました。

当時の通産省・運輸省に掛け合って電波時計を実現した人の一人だ。
電波時計に費やしたエネルギーに敬服。

現在、セイコー・シチズンのメーカー知名度・認知度が下っていました。
20才以下では20%前後のレベルまで下ったようです。

現役時代は日本人ならセイコーの知名度は80%程度だろうと信じていた。
時計離れは、はげしい思い違いの現実がある。

若い人はクオーツ腕時計が世界で初めて日本で開発した話など興味がないのです。

私は、むちゃくちゃ古い時計をつけて、何もなかった時代のことを考える。
コピーがなかった時代。
冒頭部と、末尾の字体の乱れで、企画書が没になっていた時代です。
当時の電気製品が消える。地デジ化でテレビも消える。

バイクの世界でヤマハのSRが残っている程度でしょう。

今日、登場したモデルはその当時からデザインが同じなのだ。
憧れた気持ちが30年以上持続する。

当時のデザイナー達に、乾杯したい。

「これから、起きる わくわくする思い出に乾杯。
どうせ、歴史は同じことの繰り返しなのだが、パスティーシュでもいいから一瞬、これからも、
いい思い出を見させて欲しい。」

「中途半端なジイサマたちは、早く消えてしまえ!」と思う。

一番先に抹殺されそうな、パスティーシュ・オヤジだが、
最後に残るのは時計師なのかもしれないですよ。

最近、始祖鳥並みに大切に取り扱われています?!
チビ子達の見学者歓迎!パスティーシュ工房。








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時計師の京都時間

2011-07-21 22:37:11 | 日記

今日は、時計師の恐怖のお話。

いつも一人で仕事をしていると独り言が多くなります。
その中に先輩の一人に、独り言が多い人がいました。
孤独でいつも一人で食事。出張の航空機の座席も別。

ぶつぶつと、誰かと会話しているようなひと。

この業界は仕事が出来ると、すべてが許されるようなところがある。
協調性、コミュニケーション能力など免除。

「仕事を質にする。」いい例の先輩でした。
上司も手が出せない仕事をする。あこがれる部分も多い。

彼は、仕事が速いので定時には帰宅します。勝手に帰る。
同僚との会話のシーンは見たことがない。

ある日。突然、私の席にやってきます。
ーややこしいのが来よった!どうしよう身構える。

「パステー君はうお座だよね!」いきなり話し出す。
1955年生まれ。ずーと「はい」「はい」の回答を続けた。
出身校、結婚記念日まで正解だ。気持ち悪い。
私のことをしっかりと調べ上げているのだ。

「はい」「え!違いますよ。」が一箇所あった。
多少の違いだ。
私は00山には登っていない。
機会はあったのですがなんとなく行っていない。

「良かった!」君は京都出身だから!きっと行っていると思っていたんだ。
嬉しそうだ。

その後、私が出向で職場を離れた。その先輩ともそれ以降お別れのままだ。

京都に帰って2003年にその00山に上る。ピクニックコースです。
その時点でスイッチがオンに入ったらしい。

それ以来、不思議なくらいすれ違いざまに知人と出会うことが増えた。
相手が私を見つけてくれるパターンだ。
昨日も大きな荷物を持った友人と出会う。奇跡のような出会いだ。

残念ながら、男ばかり!不思議と出会いたくない男ばかりと出会うのだ!
ラーメン屋で隣同士になったり、新幹線指定席の通路側にいたり。
男ばかりと出会う。

初恋の女性と甘い出会いなど皆無だ。「皆無!」
私の人生はどうなっているのだ!

今は00山に登ったことを後悔しています。
先輩は、私と出会いたくなかったのだと、確信しているのだ。
そのうち、きっと出会うと思う。

時計師の呪いのお話でした。















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