6月1日の2日前。30日の仏滅の日曜日。今日も外出自粛で売上の見込みがない日が続きます。
百貨店の時計売り場はお休み、不要不況不急の時計宝飾業界です。新型コロナでさらに追い討ちを掛けられた。
突然ですが「時計修理工房ヌーベル・パスティーシュ工房」を6月20日日曜日付けで閉店。移転先は長崎県南島原市有家町、雲仙岳のふもとのどかな町で時計つくりをやります。とりあえず修理品の受付はメーカー、代理店など業者のみ、今までの事務所は京都市下京区のままなので基本的な形態はそのまま。
一般のお客様は南島原工房へ送付していただくことになります。電池交換料金は従来どおり1100円ですが送料などの負担がかかります。準備出来次第このブログでお知らせします。
移転の要因1
使い捨て時計の普及。中国製修理不能品が主流の現状です。コロナ禍により現在、欧米では10万円以下の時計の輸出がコロナ前25%と全滅状況です。クオーツ化が始まった1970年代以来スイスの不況でしょう。
現状では普及品の99%は中国製、一度中国からヨーロッパに戻してベルト取付けなど簡易作業の上それぞれスイス、ドイツ、デンマーク製として輸出していました。コロナでインボイスなどの複雑な形態のためロジスティック部門がダウン、ウラブタをあけるとチャイナ・ケーシングと書いてある安物に余分な経費がかかる。主流の素材はお粗末なものが多く旋盤くずに悩まされるしバネ棒の頭は簡単に飛びます。これがパンドラの箱を開けたような時計師の絶望感でガクッとなる。
セイコー、シチズンもほぼ製品の99%がソーラー電波使い捨て中国製なので今では国産時計とはいえなくなりました。合掌!時折お客様からソーラー電波の修理依頼が来るがおおよその見積2万円と告げると蒼くなって速攻帰る。「さよなら~」のお見送りに慣れてきた。
2番目に世界的グローバル市場原理主義社会「構造不況」で時計が売れない。そこでリシュモングループ、スウォッチグループなど修理部門で利益を上げる方向に進む。中には出荷時にウラブタを接着剤で固めるモデルもある。無理やり自社修理の売上にしたいのでしょう。ネジなど簡単な部品、材料さえ調達が難しい上にウラブタが開かないモデルが増えた。さらにこのコロナで日本人商社員がそろって帰国。お手上げ状況が続きます。時計師は不要な社会に突入した21世紀。
3番に「コピー商品」の増加。ネットのサイトを開くと毎日のようにコピーのロレックス販売が載っています。警察官など司法関係者も見ているだろうに野放し状態。工房にも毎週コピーの持ち込みがあるのでうんざり。特にシャネルのスーパー・コピーはウラブタを開けるまで判別不能!シチズン・ミヨタ社の機械にくそっとつぶやいてふたを閉めて返す日々が続きます。
昔、バイヤー時代に起きた大阪心斎橋店のトラブルを思い出す。店内にコピー・ロレックスを修理にだす、その際慣れない販売員の女性を見つけるのがうまい。コピー詐欺を知らない新入社員はそのまま預かって奥へ、その後時計修理担当者があわてて戻ると「コピーにすりかえられた!」と店頭で騒ぐ。慰謝料目的だ。私が何度か本部の名古屋から急遽大阪まで飛んでいくことになる。大阪名物パチモン騒ぎ、あるときは幼児を店内で走り回らせる手口。転んだ拍子にガラスケースで怪我をした救急車を呼べ!と騒ぐ。
従業員の女性たちは楽しいはずのあこがれたキレイ時計販売のお仕事があっという間に暗い絶望感しかないつらい場所に変わる。全店の中で離職率が圧倒的に大阪店が高かった、採用費が高騰し当然店舗は早々につぶれた。
今回、工房を閉めるにあたって一般客を下京区の事務所で受付できないか?といわれるが大阪心斎橋の思い出がよみがえる。今でも毎週のようにコピー品を持ち込む横着な大阪人が絶えないのでお断りはしょうがないのだ。「悪貨が良貨を駆逐する」理論が悔しいね~。コピー文化が染み付いた大阪人が一人でも入り込むとガチャンとシャッターが下りてしまうのが現実です。もしこれを読んでいる人がコピー品をお持ちでしたら早急に処分しましょう。思っているよりはるかに人を傷つけます。
今週も始まりました。あと一月ばかりのしばらくのお付き合いですがお持ちしております。