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10月7日・ニュースステーションの革新

2018-10-07 | ビジネス
10月7日は理論物理学者ニールス・ボーアが生まれた日(1885年)だが、テレビ番組「ニュースステーション」がはじまった日でもある。現在の「報道ステーション」の前身である。

「ニュースステーション」という番組は、テレビ朝日系列で、1985年10月7日に放送がはじまった。メインキャスターは人気アナウンサーの久米宏だった。
それまではニュース番組というと、正午だとか午後7時の決まった時刻に、テレビ局社員のアナウンサーが、10分とか15分とかの短い時間内に、国内、国外で起きた事件やできごとを手短に、感情を抑え、事務的な口調で淡々と伝えるものだった。
「ニュースステーション」は、そうしたニュース番組のあり方をがらりと変えた企画で、中学生が見てわかる、おもしろいニュースを目指した初の番組だった。バラエティーショーとしてのニュース番組が、午後10時から1時間以上の枠をとって開始された。
企画段階から参加していた久米はほかの仕事をすべてやめて、この番組に集中した。共演するアナウンサーの小宮悦子に彼は、24時間この番組のことを考えるようにと言った。
軽薄、ふまじめがウリだった久米のパーソナリティーを前面に押しだした番組で、久米は個人的な感想や意見をはっきりと口にした。そして、テレビらしい視覚に訴える演出を打ちだした。空港の近くから拾ってきた飛行機の部品を見せ、心当たりのある航空会社は名乗り出るようにと呼びかけ、大事故の被害者の人数ぶんの靴を借りてきてスタジオに並べてみせ、その事故のもつ意味を視覚化して視聴者に示した。
献身の結果同番組の視聴率は上昇し、安定して高視聴率を稼ぐ怪物番組となった。それまでニュースなど見なかった主婦、若者がこの番組だけは見るようになった。
この人気番組を他局は露骨にまねた。TBSは筑紫哲也を担ぎだして『NEWS23』を裏番組としてぶつけ、NHKは『NHKニュース10』を作った。とくにNHKの場合は、久米宏が政府や自民党に対して批判的コメントを頻発するのに反発した自民党側からNHK側へ、対抗して裏番組を作るよう強い圧力がかかかったという。「ニュースステーション」は、2004年3月26日に最後の放送を終え、18年半にわたる歴史に幕を閉じた。

「ニュースステーション」が登場したときの印象は鮮烈だった。番組中で久米宏が、
「この機材はべつのテレビ局から借りてきたものなんです。ええと、なんという局だったか忘れましたが、たしか日本で唯一、視聴者から受信料をとるテレビ局でしたが……」
とぬけぬけとしゃべるのだった。こんなニュース番組はほかになかった。

久米宏が降番を予告した日のことはよく覚えている。その夕方、自分はたまたまある週刊誌の編集部まで原稿を納めに行った。そうしたら担当者が、
「たったいま、スクープが入りました」
と、久米宏が「ニュースステーション」を降りることになり、今夜番組のなかで発表する、というのだった。帰り道、自分はほかの社の女性誌の編集部などに立ち寄り、仕入れたばかりの情報を吹聴してまわった。その夜「ニュースステーション」の番組内で来春終了との発表があり、翌日の新聞にはいっせいにそれを報じた。

いまでは、アイドルタレントがニュースキャスターを務めたりして、ニュース番組はさらに大衆向けへと進化している。そのターニングポイントは1985年の「ニュースステーション」開始にあったとみてまちがいない。
(2018年10月7日)



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