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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月10日・エリック・バーンの交流分析

2015-05-10 | 科学
5月10日は「ザ・ダンサー」フレッド・アステアが生まれた日(1899年)だが、精神科医エリック・バーンの誕生日でもある。臨床心理学のTA (Transactional Analysis 交流分析)をはじめた人である。

エリック・バーンは、1910年、カナダのケベック州モントリオールで生まれた。誕生時の本名はエリック・レナード・バーンスタイン。名前から察せられる通りユダヤ人で、父親は開業医、母親は作家だった。
エリックは2人きょうだいの長男で、5歳下に妹がいた。
エリックが11歳のとき、父親が没し、母親が女手ひとつで彼らきょうだいを育てた。
25歳のとき、モントリオールのマギル大学で医学博士の資格をとったエリックは、米国のイェール大学で精神医学を学び、ニューヨークやサンフランシスコで精神分析医としてのキャリアを積み、論文を発表した。
29歳で合衆国市民となった彼は、33歳のとき「エリック・バーン」と改名。
第二次大戦中は、陸軍の医療部隊で少佐として勤務した。
戦後は、「アイデンティティ」の概念を提唱したエリク・エリクソンのもとで研究を続け、トレーニングを積んだ。
臨床経験を重ねるうち、バーンはしだいに臨床心理学の主流の考え方から離れ、独自の方法論「TA (交流分析)」というカウンセリング方法を打ちだし、47歳のとき、論文にして発表した。
バーンは精神分析医の既成の団体から入会を拒否されるなど、拒絶にもあったが、彼の交流分析はしだいに広まり、世界中の心理カウンセリング現場で用いられるようになった。
バーンは、サンフランシスコでカウンセリングやセミナーを続けた後、1970年7月、自宅のあるカリフォルニア州カーメルで、心臓発作のため没した。60歳だった。

「交流分析」とは、その人の対人関係のやりとりを分析する方法で、現代では医療現場や職場で広く利用されているものである。かんたんに言うとこんな感じである。ほかの人とやりとりするとき、人間の自我状態は3種類の要素に分析できる。
1. P (Parent) ……批判的、または養育的に、相手に対し「親」のように接する要素。
2. A (Adult) ……現実的で冷静に接する要素。
3. C (Child) ……自由奔放、または相手の顔色をうかがう子どものように接する要素。
この3種類に交流を分析して、問題解決をはかるものである。たとえば夫婦間の会話で、
(a)「今日はきみ、友だちと外食してくるんだっけね。何時に帰ってくるの?」
(b)「なんでそんなことを、あなたにいちいち報告しなきゃいけないのよ」
この場合、(a)で、現実的な情報交換をしようとして、こちらのAから相手のAに対して話しかけているのに対し、(b)では、相手のPからこちらのCに話が返ってきている。「A対A」「P対C」など関係のやりとりならスムーズなのだけれど、行きと返りがちがっているのでぎくしゃくしてしまう、と、こう解釈するわけである。

「交流分析」は、ゲーム分析や人生脚本など、もっといろいろあるけれど、とても興味深い考え方である。バーンの発想力に感服する。
(2015年5月10日)



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