1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5月24日・ボブ・ディランの耳

2015-05-24 | 音楽
5月24日は、温度計の華氏ファーレンハイトが生まれた日(1686年)だが、米国のシンガーソングライター、ボブ・ディランの誕生日でもある。

ボブ・ディランは、1941年に、米国ミネソタ州、ダルースで生まれた。本名は、ロバート・アレン・ジマーマンで、祖父の代にロシアからやってきたユダヤ人移民の三世である。
小さいころからラジオで、ブルース、カントリー、ロックを聴いて育ったロバートは、高校生のころからバンドを組んで音楽活動をはじめた。
18歳でミネソタ大学に入学した後も、カフェなどでライブをおこない、このころ英国の詩人ディラン・トーマスからとって、「ボブ・ディラン」と名乗るようになった(21歳のとき、本名も「ボブ・ディラン」に改名した)。後に、彼は名前について言っている。
「人は生まれる、まちがった名前、まちがった親のもとに。時として、ね。でも、自分がそう呼んで欲しい名前を名乗ればいい。ここは自由の国なんだから」
19歳のとき、彼は1年目の終わりに大学をドロップアウトし、ニューヨークに出た。この大都市で音楽活動をするため、また、あこがれのシンカーソングライター、ウディ・ガスリーに会うためだった。ディランは入院していたガスリーに会い、グレニッチヴィレッジのクラブに出演するようになった。自作した曲を、自分ひとりでフォークギターを弾き、フォルダーで支えたハーモニカを吹きながら、独特のだみ声で歌う。ディランの音楽スタイルは常識破りに斬新で、個性的だった。
20歳でデビュー・アルバム「ボブ・ディラン」発表。これはあまりヒットしなかったが、22歳のときに発表したセカンド・アルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」は歴史的な名盤となった。このアルバムに収録された「風に吹かれて」は大ヒットシングルとなり、公民権運動やベトナム戦争反対を象徴するプロテスト・ソングとして、ワシントン大行進の際にも歌われた。
以後、「時代は変る」「はげしい雨が降る」「ライク・ア・ローリング・ストーン」「ガッタ・サーヴ・サムバディ」など、鋭い表現とメッセージ性の強い歌詞を盛った数々の名曲を発表しつづけ、2013年現在も新曲を発表しコンサートツアーを続けている、現役で、かつ伝説的なカリスマ。生ける音楽の神さまである。

ボブ・ディランの曲は、自分はたいていどれも好きだけれど、とくに「自由の鐘」「アイ・シャル・ビー・リリースト」「ハリケーン」「コーヒーもう一杯」「ラヴ・シック」が好きである。あのざらついた耳触りな声が、聴いているとくせになる。

来米したザ・ビートルズの4人にマリファナを教えたのはボブ・ディランだが、初対面のとき、ディランの側では、彼らはとうにマリファナなど経験ずみだろうと思っていた。なぜかというと、ビートルズの大ヒット曲「抱きしめたい(I Want to Hold Your Hand)」の歌詞に「I get high, I get high(ぼくはハイになる、ハイになる)」という歌詞が出てくるからだった。これについてジョン・レノンがディランに釈明した。
「いや、あそこは、I can't hide, I can't hide と言ってるんだよ」
ネイティブ英語のディランの耳でさえ、聞きまちがいはあるんだぁ、と、自分はこの話がけっこう好きである。
(2015年5月24日)




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