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RIDE キリン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/36/ce064bfcf8719ae85d494c0aeccb8ef3.jpg)
今日はちょっと詩人になります。
私が学生時代、友人のアパートでミスターバイクBGに連載されていた「キリン」。
その後も地道に「キリン」の連載は続いています。
何の取り得もない、自信もない、明るい未来も想像できない、そんな吹けば飛ぶような自分。 そんなことをかき消すようにバイクだけは毎日乗っていました。
そんなモヤモヤを認められるかのように、貪るようにこの劇画を20代の私は何度も何度も読んでいました。
その作者、東本昌平さんの世界観「RIDE」というムックが最近毎月発売されてます。
好評のようでTSUTAYAのバイク書籍コーナーに平置きされてます。
そしてさらに関連する「ハルマン」というムックも発売されました。
http://www.shonengahosha.jp/special/index.php?n=345
そのなかにある「キリン」のリバイバルストーリーが、15年前の感情を思い起こさせました。
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高速をとあるステーションワゴンが走る。1男1女と奥さんを持つごく普通のサラリーマン。
子どもたちが騒ぐ車内は幸せな家族そのもの。
その横をスズキ刀(GSX1100S)がヒュンと通り過ぎる。
それを見たドライバーの主人は一言「速いな」と呟く。
子どもたちの用を済ますため海老名PAに寄る家族。
するとさっき横を抜いていった刀とそのライダーが一服していた。
用をたす母子を待つ主人は、思い切ってそのライダーに声をかけた。
マイル表示のメーターを見て「意外と遅いんですね」とトンチンカンなやり取りの中で、彼がその昔バイクに乗っていたことを吐露するが、そっけない反応の若いライダー。
そんなことを話していくなかで「ちょっと跨ってもいいか?」と願う主人。
しかし見ず知らずの者がそれだけはやってはいけない行為。
冷たく毅然と断るライダー。「欲しかったら自分で金出して買いな。」
そんな一線を越えた雰囲気も手伝ってか、冷たい反応しかなかったライダーが一言、
「その気があるんならいつでも“こっち側”に戻ってきなよ。」
乗りたい気持ちがあるならいつでも乗ればいい。それを気付かせてくれる言葉。
短くも楽しいひと時。通じ合うものだけが共有した瞬間。
ほどなく母子は戻り、ステーションワゴンは世話しなく目的地へ急いだ。
走行車線を走るワゴン。車内は相変わらずの雰囲気が占めていたが、主人の心はざわついていた。あのときの心の輝きと、何不自由ない、自分が目標としていた今の生活とを照らし合わせていた。
気がつくと、追い越し車線をさっきの刀が追い抜こうとしていた。
ライダーは左手をすっと挙げて挨拶をして抜いていく。
それを見た主人も右手を挙げて応える。
それは、ライダー達がいつも言い合う「気をつけて」という意味でもあるし、
「いつでも待ってるぜ」という意味にも思えた。 そしてその刀はあっという間に追い越し車線の彼方へ消えていった。
その瞬間妻に「バイクに乗ってみたい」と話してみるが、家族を心配する通り一遍の返答が返ってきてそのやり取りは終った。
しかし、一瞬だけ心の輝きを感じた主人は、その刀を追いかけてみようかと一瞬だけワゴン車のアクセルを踏みつづけた。
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15年前の当時、このストーリーはいい話だったので何度も読み返しました。
15年以上経って、物語に登場するおっさんよりもさらに歳を重ねた自分は、立ち読みしながら思わずぐっときてしまいました。
それがどんな感情なのかはわかりません。
今でも、若いときとなにひとつ変わらない感情だったことを確認できたからか、
あの時は分からなかった、人生を重ねた上での感情なのか、
今でも「こっち側」にいたままの自分であることの幸せか、
「どんな小さなことでもいいから男でありたい」と思う気持ちが見ず知らずの人間と共有できた幸せなのか、
なんなんでしょうね。
2008年の今、このムックは毎月継続して発刊されバイク書籍コーナーに平置きされている。その内容は懐古趣味なもので、今流行りのビッグスクーターの影は微塵もない。
もちろん最近ファンになった若い読者もいるでしょうが、私みたいな「あの時の輝き」を思い出しながら読んでいる方が多いかと思います。
そんな皆さんは今、どんな生活を送ってるでしょうか?
私の同級生も既婚者の割合が増え未婚者はごく少数。
その昔、深夜のファミレスでキリン話で盛り上がってた大親友も、先日結婚して一児の父となりました。
この「RIDE」というシリーズのキャッチフレーズは、
「バイクに乗り続けることを誇りに思う」
この意味が今本当によくわかります。
自分で選んだ人生とはいえ、
あのとき主人公が乗っていたビッグバイクに乗り続けられ、怪我もせず、バイクを維持する収入も得られ、健康も害すことなく、200km/hを楽しむことができる。
神様本当にありがとう。
さて、15年後の自分は何やってるだろうか? 気持ちよくバイクに乗れているだろうか。
ハーレーは買えてるだろうか・・・?
いや、乗り続けられる人生として進めていきたい。ただ生き長らえる人生ではなく。
15年前の自分は「一生バイクと付き合っていきたい」と願ってました。
気がついたらその思いは叶えられていました。
生まれてこのかた「チンケな人生だな」と思い続けてきた人生ですが、叶えられたことがあったんですね。 この幸福に感謝しなければいけませんね。
そして、
今夢中になっている趣味のお陰で、まさかこんな“地方遠征”という形でバイクを再び楽しめるような気持ちになるとは想像もつきませんでした。 今この趣味になんの後悔もありません。
そんなことを思うと「15年後の自分はどんな趣味を見つけてるんだろう?」と思うと、ちょっと楽しみになってきました。
歳を重ねてますが15年前に感じていたあの閉塞感よりも、この先の15年の方が明るく思える。
15年前に感じていた怖れ・・ おれもあんなおっさんになってバイクに乗れなくなって、家族サービスに奔走するのか? という怖れ。 そんなことがバカらしく思えます。
大事なことはバイクに乗れる、乗れない、という現象ではない。
毎日をハッピーに送る気持ちと行動と努力。
人生は意外と悪くない。
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