
今年の5月に帰郷した際に3点まとめて福田豊四郎の作品を骨董店より購入しましたが、本日紹介する作品はそのうちの1点です。

軸装の作品ですが、共箱のない作品ですので額装にしようと思い購入しました。すでに福田豊四郎の所蔵作品は130作品を超えており、その多くが掛け軸ですが、どうしても飾るには額装のほうが飾る場所が多くなるからもあります。
*下記の写真は後日、額装に改装した写真です。

山河(仮題) 福田豊四郎筆 その138
絹本着色軸装(共箱なし)→額装 誂布タトウ箱・黄袋
軸装時寸法 全体サイズ:縦1434*横665 画サイズ:縦491*横546
額装時寸法 全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦*横

落款と印章から昭和25年前後の描かれた作品と推察されます。この頃から抽象的な画風へと変遷していきます。

抽象的な画風が好きな方と自然情緒たっぷりの戦前から戦後直後までに作品が好きな方に福田豊四郎のファンは分かれるようですが、基本的に両者ともに好きという方が圧倒的に多いようです。

画風は違えどもその根底にあるのは郷里を見つめる優しい視線で描かれている福田豊四郎の作品の趣に惹かれるものがあるからでしょう。

晩年に近い作品は意外に郷里では入手が難しくなっており、郷里では戦前や戦後まもない頃の作品の掘り出し物が多いようです。今回の帰省でも亡くなった妻と母の菩提寺の両方で福田豊四郎の作品を見せていただきました。

下記は本作品の落款と印章ですが、真作に相違ありません。「山河」は仮題ですが、同題名の代表作もあります。ほぼ画風はおなじもので昭和26年に描かれています。

福田豊四郎にも贋作がありますので要注意です。ちなみに郷里から「なんでも鑑定団」に出品された二曲半双の屏風に描かれた作品は贋作との鑑定結果ですが、今でも所蔵者の経営する旅館に飾られています。地元では真贋について意見が分かれているようです。

この作品は「なんでも鑑定団」にて2014年4月22日放送されたものです。番組における評については下記のとおりです。
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評価金額:5万円
鑑定団評:福田の作品とはいえない。落款に昭和三十年秋とあるが、当時福田は「滝」という作品を展覧会に出品している。この「滝」は線描をデフォルメして模様のように描いた点が評価された。対して依頼品は写実的で、西洋画的な陰影法も用いている。当時福田が依頼品のように写実的に描くという事はありえない。もう一つの問題は印章で、福田の印章によく似たものはあるが、依頼品にあるものはよく見ると押したのではなく描いてある。
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当方の意見としてはおそらく評のとおり贋作と思っています。ただこの作品を扱ったのは本日紹介した作品の購入先の骨董店ですが、骨董店や所蔵者は真作と信じているようです。真贋のわかりやすい福田豊四郎の作品でも、精通している郷里の専門店でも判断が分かれるようです。それほど真贋は難しいものなのでしょう。所蔵者が真作と思っていればそれでよしとするのが潔いのでしょうし、他人がどうのこうのという領域ではなさそうです。

額装にしてタトウを誂えています。額装の作品は必ずタトウを誂えるように心がけましょう。作品を保護するものがないと額をはじめとして痛みが進みますし、扱いが面倒になります。