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夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

再評価されるべき画家 月天 寺崎廣業筆 その106

2021-09-29 00:01:00 | 掛け軸
展示室からの借景・・・。



さて今月は仲秋の名月・・・。今年の月はとても綺麗でした。本日は月にちなんで「月天子」を描いた作品の紹介です。本ブログでお馴染みの寺崎廣業の作品からで、落款からは寺崎廣業が画壇で地位を確立した明治末から大正初めに描かれた作品と推定されます。



再評価されるべき画家 月天 寺崎廣業筆 その106
絹本水墨淡彩軸装 軸先象牙 鳥谷幡山鑑定書添付 共箱二重箱 
作品サイズ:横530*縦1940 画サイズ:横320*縦930

 

共箱の題から描かれているのは「月天」のようです。月天については下記の説明を参考にしてください。

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月天:(がつてん、がってん、Skt:Candra、音写:戦達羅、戦捺羅、旃陀羅など)。仏教における天部の一人で、十二天の一人。

元はバラモン教の神でしたが、後に仏教に取り入れられたようです。正しくは月天子で、月天はその略称。月宮天子、名明天子、宝吉祥との異名もあり、月やその光明を神格化した神で、勢至菩薩の変化身ともされます。

四大王天に属し、月輪を主領して四天下を照らし、また多くの天女を侍らし、五欲の楽を尽くし、その寿命は500歳といわれています。 形象は、一定しないですが、3羽から7羽のガチョウの背に乗り、持物は蓮華や半月幢を持つものがあり、后として月天后を伴うものがあります。両界曼荼羅や十二天の一人として描かれることがほとんどであり、単独で祀られることはほとんどないようです。

↓高野山霊宝館より
 


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「両界曼荼羅や十二天の一人として描かれることがほとんどであり、単独で祀られることはほとんどないようです。」という記述のように、画家が描いた事例は当方ではあまり観たことがありません。



高野山霊宝館蔵と思われる立像を描いた作品に本作品が近似していることから、その作品を寺崎廣業が参考にした可能性があります。



手のひらの上には碗?に入った兎・・・、金彩を施されたいい作品だと思います。



寺崎廣業にしては珍しい題材です。



なお「月天」はアニメにおいて題材になっているようです。



知人の所蔵していた「寿老 寺崎廣業筆」(真作)と同一印章画押印され、落款の書体も近似していることから近い時期に描かれた作品と推定されます。

寿老 寺崎廣業筆
水墨着色絹本共箱 
画サイズ:横416*縦1146

  

この作品は思文閣にて10万円で引き取られたようです。本作品と箱書きの印章らは一致します。

 

印章も一致し、僅かに落款の書体に違いがあるもののほぼ同時期に描いた作品と推定されます。

左が「寿老人」、右は「月天」の印章です。

 

寺崎廣業の最盛期の明治末から大正期にかけての作品は共箱が多いようです。



なお本作品には鑑定書が付いています。

 

橋本雅邦、寺崎廣業に師事した鳥谷幡山によるもので、「昭和乙亥」とあることから1935年(昭和10年)に記されたもののようです。ここまできちんとした鳥谷幡山の鑑定書は珍しいでしょう。



多作ゆえ駄作も多い寺崎廣業の作品ですが、キチンと描いた作品はそれなりの再評価してよい画家であろうと思います。画中の金彩と相俟って金糸の表具がマッチしている品のある作品となっています。



*現代では黴臭いなどと毛嫌いする方も多い掛け軸の作品ですが、作品の鑑賞以外にも表具、取り扱い、飾り方、保管方法と奥が深いものであり、当方は「掛け軸を飾ることが大いに復活すること」を祈念しているひとりです。





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