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腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

428 ~封鎖された渋谷で~(PS3)

2011年01月09日 05時24分03秒 | PS3ゲーム感想文
まず、今作は実質「街2」であろう。
多くのファンが熱望し、しかしチュンソフトが開発に難色を示し続けていたあの名作の続編が、10年の時を経てついに登場したのだ。

街。サターンを愛する者たちの心に今も刻まれる至高の名作ゲーム。
プレイステ何とかとかいう軟弱ハードの圧倒的暴力にボコボコにされたサターンが、土俵際に見せた執念の傑作。
同時期の「グランディア」と共にサターンの素晴らしさ、健在っぷりを見せつけ、軟弱者どもに最後っ屁をカマしてみせたのだ。
尤もその程度で情勢に変化があるわけでもなく、そのままサターンは細々と老後を生き、ひっそりと散っていった。
だが最後に意地は見せた。試合に負けて勝負に勝ったってやつだ。サターンは勝ったんだよ。だから安心してよドラえもん。
ありがとうセガサターン。脳天直撃セガサターン。


……ま、その後、街もグランディアもサクッとラララプレイステーションに移植されたんだけどね。
そりゃそーだよ、サターン版売れなかったんだもん。制作費回収の為なら移植でも何でもするよ。
ハードに夢見てるのはアホなオタユーザーだけなんだよ。こっちゃ仕事なんだよ。はぁ。
ちなみに俺も街はPS版でプレーした。うるせーな投売りがあったんだよサターン贔屓だけじゃこの業界生きていけないんだよ。
ただ、街を快適に遊ぶにはオートセーブが必須なので、遊び易さはサターン版の方が圧倒的に上だと思う。


ともかくユーザーに絶賛された街だが、最初から続編の構想があったにも関わらず、それが発表されることは延々なかった。
理由は簡単、評価に反し、街の売り上げは決して芳しいものではなかったからだ。移植版を含めても、全然売れなかったのである。
発売日が近い「センチメンタルグラフティ」の半分にも満たないのは、何ともサターンらしいと言うべきなのだろうか。
幾らユーザーの評価が高くても、売れなかったゲームの続編をそう気楽に出せるわけがない。
チュンは中小メーカーだし、実写の俳優やロケだけを考えても、制作に金がかかることは自明な作品だからだ。
かくして多くのファンに愛されながら、街は1作目で終了し、もう2度と日の目を見ることはないと思われていた。

そこに突然発表された今作「428 ~封鎖された渋谷で~」に狂喜した街ファンは多いだろう。
タイトルこそ違うが、渋谷が舞台の実写サウンドノベル、街と無関係であるはずがない。
「発売されただけで喜ばしい」ってのは、遊んでナンボのテレビゲームにおいておかしい表現だが、今作に関しては適切だと思う。
比類なきサターンの加護を受けた伝説のタイトルの血を受け継ぐ新作、果たしてその出来は如何に?
俺もWii版の頃から注目はしていたが、販売元がセガだったので、その時はスルーした。
その後PS3(PSPも)に移植され、同時に販売元がスパイクに変わったので、ここで初めて買ってもいいかなと思った。
……だが何だかんだで放置してたら、先日ベスト版が発売されたので、ようやく購入。
正直、綺麗な売り方ではないよなぁ。こんなんばっかしてるからますます業界は……はぁ。



して428、当然ジャンルはサウンドノベルである。
小説ならただ読み進めるだけだが、そこにグラフィック、音楽、そして選択肢を用意している所にゲームならではの面白さがある。
読みゲーという形式自体はチュンソフトがジャンルを名乗る遥か以前からあったが、サウンドノベルはそれを更に推し進めたと言える。
ウインドウではなく、画面全体に文章が表示されるってのも何気に新鮮だったしな。あの頃、だな。
後年サウンドノベルをPCエロゲ界にてLeafがイタダキし、「痕」「ToHeart」といった名作を生み、これがエロゲに新たなムーブメントを起こした。
それ考えたら非常に偉大なジャンルだよな。世界は繋がってんよ。


今作は街と同じく、複数の主人公の物語を同時進行させ、互いに絡ませる「ザッピング」システムが売りになっている。
バッドエンドや行き詰まりはそのキャラだけでなく、他キャラの行動が原因になっている場合もあるわけだ。
よってプレーヤーは個々のシナリオを読みながらもゲーム全体の状況を把握し、俯瞰的な判断をしなくてはならない。
この「全体を眺め」、世界を動かしていく感覚こそ、今作の面白さだと思う。世界に乱立するフラグを管理するゲームって感じかな。
小説や映画などではどうやっても絶対に作れない。完全無欠のゲームオリジナルな手法。
それが面白いんだから最高である。



システムを見るだけだと難しそうかもしれないが、全然そんな事はない。
バッドエンドにぶつかっても、そこに至るまでのヒント(ほぼ解答に近い)が表示されるので、正解ルートに修正するのは容易だ。
プレーヤーはフラグの管理を楽しむことになるが、それに苦労することは恐らく殆どない。少なくともゲームクリアーまでは。
また、確かにプレーする上でフラグの関連性を考える必要はあるが、それ以外の謎解き、例えばパズルや暗号解読などの要素は一切ない。
決して今作は「謎解きゲーム」ではないのである。ハッキリ言って難度は低い。
日本語さえ読めれば誰でもプレーできるゲームと言っても過言ではないかもしれない。
そういう意味では非常に万人向けの作品なのだが……今作が醸している「オーラ」は残念ながらとっつき難い印象を持たれ易いと思う。
文章が長々と表示される。それだけで「なんだか難解そう」と思われてしまう。実際はごく平易な文体で、全然難しくはない。
フラグの管理? そんなの考えただけで無理だよ。実際は分かり易いチャートが表示されるので、全然無理ではない。
実写の、それも静止画を背景に語られる。他でもあまり見られない手法だけに、特徴的ではあるが親しみやすさはない。

今作は間違いなく力作であり、十分面白かった。
分かり易い内容と、印象に反して実は取っ付き易いシステムの、誰にでも薦められるタイプのゲームと言える。
だが悲しいかな、プレーしてみると、このゲームが一般受けすることは絶対にないことも強く実感できる。
優れたゲームを作っても、その面白さを客にどう伝えるか、どう売っていくかはまた別の問題なのだ。
そして商売的にはそちらもゲームの質と同レベルの極めて重要な課題なのである。
街も428も、ゲームの質に問題はない。が、宣伝や売り方は……?
「隠れた名作」は決して褒め言葉ではないと最近思う。はぁ……。





シナリオは、とあるウイルスを巡る大きな事件を軸に、5人(増減する)の主人公の1日を描いている。
街では各人バラバラだったが、428では全キャラ基本同じ目的で行動し、事件の解決を目指す作りになっている。
街に比べて統一感はあるが、その分バラエティに欠けている。だがまぁどっちが優れているというものでもないな。
各主人公同士の関わり方は本当によく考えられていて、クリア後に全体図を把握すると唸らされること請け合いだ。
様々な人物が混ざり合い、絡み合い、街が、渋谷が、世界が今日も動いている。決して物語だけでなく、現実でもそうだ。
主人公達だけでなく、サブキャラも1回限りで出番を終える者はおらず、方々で主人公に絡んできて、世界を彩っている。
本当によく出来たシナリオである。1本の物語ならともかく、こんなゴチャゴチャしたものをどうやって作るんだか全く想像できない。
大筋は割とチャチかもしれないが、それは取っ付きの良さを考慮したからとも言える。欠点ではない。



・加納編

誘拐事件の捜査を担当する刑事。熱くなりやすい、漫画的な刑事である。現実のオマワリにゃこんな人いないよな……。
あまり特徴のあるキャラではないが、その分嫌味もない。イケメンで美人彼女持ち公務員ってのは十分嫌味かもしれないが。
主人公だがヒーローにはならず、その他大勢の刑事として事件を見届け、またそれを良しとしていた所には好感が持てた。
あのまま情に熱い刑事であり続け、嫁ハンと幸せにやっていってください。お義父さんには気をつけてな。
彼女の顔を結局見せなかったのは不満だ。立派な伏線の一つなんだから、どこかで明らかにすべきだろう。
EDのメイキングで見せられても白けるだけだった。


・亜智編

元渋谷最大チームのヘッド。……なんか矢鱈と義賊・自警団扱いしてたけど、これもまた物語限定の話だよな。現実じゃただの愚連隊(死語?)だよ。
馬鹿で無知だが困ってる人は見過ごせない、それが可愛い女の子なら尚更だ! ……とことん少年漫画的なキャラだった。22歳らしい。
ゴミのポイ捨て憎む心は結構なことだが、何も考えずエコエコ言ってるのは正直短絡的だと思った。そう単純な話ではないだろ。
あと無職ってのもなぁ。何か職に就かないととてもひとみとは釣り合わんぞ。つっても電気屋継ぐのももう無理だろうしなぁ。
シナリオは逃避行ばかりだが、大切な姫を必死に守る姿は立派な勇者である。いいねぇ。
終盤は見せ場も多く、見事なヒーローっぷりだった。音楽でも亜智のテーマが一番気に入ったな。

……ところで亜智編ヒロインのひとみさんだが……大学のミスコンで優勝したらしいが……正直……その。
俳優に有名どころを使わなかったのは方針が理由かもしれないが、もっと上位の女優を連れてきてほしかった。
「龍が如く」のような売り方はできなかったのだろうか。あんま言いたくないが残念である。
もちろん不細工ってわけではないけどな。倉庫の中での笑顔が印象に残ってる。



・大沢編

なんか矢鱈欠陥人間扱いされ、自分でも悔いてたけど、研究者に向いてる気質とも言えるし、さほど問題あるとは思えない。
ちゃんと家族持って何不自由ない生活させてるし、あれで駄目大人扱いされたら……はぁ。
本人はいいとして、周辺人物に魅力がなかったのは残念。田中は研究者じゃなくリーマンにしか見えないし、愛さんは老け過ぎ。
梶原は飄々とした刑事のつもりなのだろうが、空回りしているように見えた。バナナ程度じゃキャラは立たないよ。



・御法川編

主人公の中で唯一、事件の当事者ではないキャラ。フリーライターという設定上確かにその方がいいと思う。
傍若無人な態度で他人に接し、敢えて怒らせて本音を語らせる手法を得意としている。なかなか面白かった。
俺はマスコミの世界なんぞ全然知らんが、こういう熱い記者ってのも空想上の生物なんだろうなぁ。つくづく今作は漫画的だ。
最後に事件をスクープとして取り上げ大成功したとの事だが、この事件はそもそも表にできる部類なんだろうか。よう分からん。
まぁ有能で熱くて責任感が強くていい男だった。千晶とのラブコメを挟んでほしかったな。


・タマ編

なんと猫の着ぐるみ人間が主人公。スゲェ、こんな設定で物語を作るのかー!! と感心したが……
割と早い段階で着ぐるみを脱ぎ、後は普通の女になっちまった。残念。もっとこの設定引っ張って欲しかったな……。
正体発覚後も記憶喪失という設定から巻き込まれ役に終始し、主人公らしくない。
真っ先に個人エンドを迎えてしまうのも寂しかった。そのくせ真ED前にいきなり出張ってくるし。
やっぱ序盤のタマ編が一番良かったと思う。尤もそこは事件と全く関係がないんだけど。

主にこのタマ編で登場するサブキャラ・柳下はお笑い芸人(?)「なすび」が演じている。作中唯一、俳優名を知ってるキャラだった。
そしてハッキリ言ってこの配役はズバリで、柳下のキャラクターは全キャラ中トップクラスの立ちっぷりだった。
とても静止画とは思えない躍動感ある演技が素晴らしかった。なすび、今は劇団で活躍しているらしいが、頑張ってほしいものだ。


・ジャック編

CIAの捜査官(?)とか、もう男だったら無条件に平伏すカッコ良さだね。CIAだよ。FBIだよ。アメリカにゃー勝てないわな。嗚呼。
登場時はドライで冷たい男だが、終盤は情にほだされる仲間。漫画だ。褒め言葉だ。
ただ、上司が裏切り者だってことに全く気付いていないのは正直間抜けだと思った。せめて疑いは持っていてほしかったな。


・建野編

加納の憧れの存在だが、現役の刑事の割に少々神格化され過ぎと感じた。そもそも杖ついて歩くのに刑事なんてやれるのか?
また、大介に強い負い目があることは分かるが、あんな無茶苦茶な要望に黙って従うのは不自然極まりない。
例えひとみ射殺に成功したって、殺人なんだから検死や何やらですぐ移植なんてできるわけがない。作中でも触れられてたけど。
鈴音を救う為というより殆ど自棄糞でやっているようにしか見えず、悲壮感も何もあったもんじゃなかった。
大体あれだけ街中でチャカ出してたら、普通に通報されるぞ。突っ込みが野暮か。はぁ。





……さて、ここまでの主人公の話を全てクリアーすると、目出度くゲームは一度エンディングを迎える。
だがこれはベストEDではなく、真EDに辿り着くには更にゲームをプレーしなければならない。
そしてここから428は大きく変貌するのだ。
難しくなる。いやハッキリ言って理不尽になる。誰でも遊べるゲームの姿はノーマルEDで消える。
ノーマルEDを迎えても、真EDへの条件などは一切教えてもらえない。
なので取り敢えず目に付く埋め要素をやっていくことにした。
具体的にはバッドエンド埋めと、ED後に解放されたサブシナリオ収集だ。

しかしこれが大変である。
まずバッドエンド埋めだが、言うまでもなくゲームの主目的はバッドエンドを避けることであり、その為ならヒントも貰える。
だが逆にバッドエンドを狙うとなると、純粋な手探りとなり、楽ではない。
ただ2択3択の結果で発生するものもあるが、大半は他キャラの行動が絡んでのザッピングバッドエンドである。
数ある選択肢からルートを一つ一つ変更し、チャートを眺めてその影響をチェックする。
どれを選んでもルートに変更はない選択肢も多いので、結局はしらみつぶしにやっていくしかない。
その過程で既読文章を何度も読む事になるので、ストレスも溜まるだろう。
ただ、少しずつバッドエンドリストを埋めていくことには十分な快感もあるので、総合的には楽しい作業だった。
ちなみに街では笑えないレベルの下らんバッドエンドが多かったが、今作ではその辺が改良されている。
寧ろもう少し御馬鹿なものも用意してほしかったかな。


次にサブシナリオ収集だが、これは非常に意地が悪い仕様になっており、正直不快だった。
サブシナリオ収集には二つの手段があって、「428カルトクイズ」の方はまぁありかと思ったが、問題は隠しコマンドだ。
本編の特定場面をしばらく眺めるとコマンドが表示されるというものなのだが、その分かり難さは噴飯もので、発見できても腹が立ったほどだ。
既にゲームをクリアーしたプレーヤーにやらせる行動とは思えない。ただの嫌がらせである。
サブキャラクターのエピソードを描くサブシナリオ自体はどれも面白かっただけに、この仕様は非常に残念だった。



……で、ここまではまだマシな方だ。俺はバッドエンド埋め、サブシナリオ収集までは全て自力でやった。
しかし「真ED条件達成」「陰謀編」「真の陰謀編」は無理だった。ネット見た。負けたとは思わなかった。
一体何なんだろう。何を考えてこんな理不尽な作りを、しかもクリア後に用意しているのか。

真ED達成条件は「複数キャラの選択肢から正解を選んでおく」になっており、普通にやってて気付くとは思えない。
事前にも事後にもヒントは何もなく、非常に唐突だ。今作全体のルールに沿っているとは思えない。
また「復讐は何も生まない」といった価値観はまぁ良いとしても、今作のシナリオのテーマにそれがあるとは思えず、
終盤でいきなりそんなカッコいいことを語られても、感動も共感もできないよ。
その綺麗な価値観を示した結果、アルファルドにスタコラ逃げられてんだからお話にならない。
仕様としても、内容としても、真ED条件はとても納得できるものではなかった。はぁ。

そして陰謀編と真の陰謀編は……死ね、だな。
それに至るまでゲームをプレーし尽くしたプレーヤーに対する仕打ちがこれか。
PS3版はトロフィーに対応しており、これを発見できなければプラチナトロフィーは獲得できない。
世の中には絶対自力プレーに拘り、プラチナを目指して今も既読文章を延々読み込んでいる人もいるのではなかろうか。
この仕様を考えた奴(中村光一かな)はそんなプレーヤーのことをどう思っているのだろうか。
この全く笑えない悪ふざけを喜んでくれると思っているのだろうか。
売れなくてザマミロである。ユーザー舐めてるメーカーは滅べ。はぁ……。




ふぅ。クリア後にオマケシナリオが登場するので、それも。

・鈴音編

唐突にチン毛も生えてなさそうな小僧の身の程知らずな色恋を見せられ不快だったが、最後は軽く感動できた。
ベタではあるが、現実性があり、また悲劇ながら前向きに終わっていることに好感が持てた。
誰かが命を犠牲にして自分を救ってくれた。そんな時、「誰か」にかけるべき言葉は?
それは「ごめんなさい」ではない。「ありがとう」だ。感謝の言葉をかけること、喜ぶことこそ、誰かは望んでいるのである。
ありがちな謝罪ではなく、あくまで前向きに少年の犠牲を受け入れたのは見事だ。気持ちの良い終わり方だった。
ちなみに鈴音は作中1番の美女だったと思う。亜智は妹萌えに走った方がいいよ。


・カナン編

作中では名前だけで姿は出てこないキー人物のシナリオがとうとう出現。
しかも実写仕立ての本編に対し、アニメ絵・声付きという掟破りのとんでも設定。
更に制作はあのTYPE-MOON! 当然絵は武内氏、文は奈須きのこ氏だ。
思い入れのない俺でも絵と文をちょっと読むだけで「あ、型月だ」と分かる質なので、ファンにはたまらんだろう。
絵は意外と多く用意されてるし、シナリオもそこそこ長いので、番外編としてじっくり楽しめる。
型月ファンならこれの為だけに今作を買う価値は十分ある。

……しかし最後まで読むと、これまた不快だった。駄目だろこれ。型月ってこんな会社だったのか。
質が低いわけではない。同社の持ち味がよく出た内容になっていると思う。
また、本編と正反対の表現手法を取っていることも別に問題ではない。番外編と考えれば寧ろ面白い。
だが、ここまで本編に無関係の展開はアリなのか。酷すぎるだろう。

428という作品のテーマはよく分からんが、個人的には「人は繋がっている」とかそういうことだと思う。
といってもよくある感動キャッチコピーではなく、純粋な事実としてだ。良くも悪くも、人は繋がっている。
諺を使うなら「風が吹けば桶屋が儲かる」だ。その不思議さ・面白さ・そして暖かさが428のテーマではなかろうか。
なのにこのカナン編の浮世離れっぷりと来たら、開いた口が塞がらない。
一応カナンと敵役のアルファルドは登場するし、その因縁の始まりを描いてるのだから、完全に無関係ではない。
しかし今現在渋谷で起きてる事件には一切絡まず、ただただ過去の回想を語られて、一体プレーヤーに何を思えと言うのか。
本編のキャラすらロクに生い立ちは語られてないのに、カナン、更には教官のシャムの人生を並べてどうする。
派手な銃撃戦を描いてどうする。難解で持って回った台詞を乱射してどうする。
なんなんだこれは。一体全体何が始まっているんだ。

繰り返すが、質が低いわけではない。只管場違いなだけなのだ。浮いている。半端でなく浮いている。
これは俺以外のプレーヤーも同様だったようで、mk2での悪評では多くの人が触れていた(総評は最高のSランク)。
納得できない条件の真EDを踏んでやっと拝めたオマケがこれでは、何とも救いがない。
「共感者」という相変わらずカッコ良過ぎる言葉や設定も、このゲームでやっては白けるだけ。
なまじ質が高かっただけに、余計その浮きっぷりが際立っていた。
正直ここまで失敗してるコラボも珍しいと思う。何気に後世に残したいレベルである。
チュンも型月も、作ってて疑問に思わなかったんだろうか。それが一番残念かもしれない。


・エコ吉編

亜智編序盤で触れられただけで出番がなくなり、今作では珍しい消えた伏線だと思っていたら……こんなシナリオがあったとは。
このシナリオもまたユーザーを舐めた出現条件が用意されているが、もう怒るのも疲れた。
このシナリオが一番オマケとして綺麗に纏まっていたと思う。
本編に無関係なとこはカナン編と同じだが、一応渋谷の物語ではあるしね。はぁ。





んなとこ。ノーマルEDを見るまでとその後で印象がガラッと変わるゲームだった。
クリア後のやり込みで評価を落とすなんて本末転倒である。手を抜いているわけでもないのに。
特にオマケの隠し方は本当に最低だった。こんな事をやっていたら、売れないのも自業自得だ。

と言っても完成度は高く、面白かったことも事実である。こんなゲーム、他にはまずない。他では作れない。
日本ゲームの傑作である今作、是非海外で発売して外人にも遊んでもらいたいが……絶対に無理、だな。
こんなにガラパゴスなタイトルも珍しい。ゲームには何の罪もないのだが。はぁ。

満を持して発売された今作だが、結局の所売り上げは振るわず、奇しくも街と同レベルに収まったようだ。
このPS3版及びPSP版の発売も焼け石に水だろう。黒字が出たかどうかも怪しい。
「テイルズオブグレイセス」のように、ハードを変えたら売り上げが一気に上がったわけでもない。
純粋に、ただ純粋に売れない。支持が集まらない。


街が発売された13年前(!)、チュンソフトは腕利きメーカーとして業界に名を馳せていた。
サウンドノベルと不思議のダンジョンを柱に、特にコアユーザーから絶大な信頼を得ていたのだ。
……だがサウンドノベルは新規タイトルを生み出せず、不思議のダンジョンは多作化と駄作化が目立っている。
更に3本目の柱を生み出すこともできず、チュンは今じゃすっかり落ちぶれているという印象を受ける。
「シレン4」と「5」の発売間隔の短さはただ事ではない。そこまでしないと首が回らないのだろうか。
そのシレンもさすがにこれ以上は苦しいだろうし、マジな話そろそろ会社がヤバイのではなかろうか。
かつて堀井雄二と並んで名を馳せた天才・中村光一がなぁ……何とも悲しい現実である。

しかしチュンが本気を出せば、428のような非常に面白いゲームを作る事は今でも可能なのだ。
後はそれをどう売るか、であろう。答えがあるわけではないが、頑張ってくれとしか言い様がない。
3DS辺りで何か画期的な新シリーズを生み出し、名声の復活とは行かないだろうか。
懲りずに実写サウンドノベルの第3弾を待ちつつ、了とする。
次は大阪を舞台にしてくんないかな。せやな。ちゃいまっせ。お前ら誤解多すぎるんだよ。


いずれにせよ10年後の話だね。気長に待つさ。あはは。
ひとは繋がっている。俺がこうして感想文を書くことが、チュン復活のきっかけになることも……!
あるわけねーだろ馬鹿。
はぁ。






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10 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-04-10 23:17:54
売れなくてザマミロ? 
ふざけんな
返信する
Unknown (ota)
2011-04-11 00:15:11
あれは陰謀編等の隠し方に対する憤りを込めたネタ表現でして、もちろん本心じゃありません。
隠し方についてはそれこそふざけるなと思いましたけどね。
伝わらないかなぁ。
返信する
Unknown (サク)
2016-11-06 22:47:55
ひとみとマリア役の近野成美さんはネットだと可愛いと結構評判でしたが、otaさんにはお気に召しませんでしたか

私も最初見た時はあまりなんとも思わなかったんですが、ゲームをやっていく内に可愛いと思うようになりました
otaさんもおっしゃってるように笑顔が凄く印象的ですよね

428のキャスティングは個人的には結構良かったと思っています
なんというか、メジャーすぎるのも嫌なんですよね、こういうのって
例えば主人公がキムタクだったりすると、それはもうゲーム中のキャラじゃなくてもうキムタクという実在人物にしか思えなくなってしまうと思うんですよね
まあ脇役とかは別にいいんですが、少なくとも感情移入の対象になる中心人物は…
そう考えると428のキャストの方は(失礼ですが)あまり知名度が高くないし、その割に質が高い感じがして結構いいキャスティングだなと感じました
個人的に一番びっくりだったのはアルファルド役のキャストが当時小学生だったという事ですね
確かにそう思ってみると幼く見えるんですが、ゲームやってる時は全然気が付きませんでした

さて問題のカナン編ですが…
個人的にはおまけとしてこういうシナリオがあってもそこまで怒らないんですが、この後の428の世界観がこのカナン編に飲み込まれてしまったことには非常に悲しみと怒りを覚えました
実写ADVの良さって実写だからこその素朴さとか温かさ、現実感が感じられるところだと思うんですが、それとカナン編の厨二的世界観はまさに水と油でした
厨二的ストーリーが悪いという訳ではありませんが、それを428と混ぜるのは勘弁して欲しかった、しかも単なるおまけならまだしもそれを正史としてその後メディア展開までするなんて…というのが率直な感想です
このカナン編とそれに続く漫画・アニメによって428の世界が完全に閉じてしまって、後日談やその後の展開を想像する楽しみすらなくなってしまったのは428を楽しんだ身としては非常に悲しかったです

というか、書いていたら段々イシイジロウに腹が立ってきました(笑)
実写ADVはもうゲーム単体では大きな利益を出せない、だからメディアミックスして一発狙おう、という姿勢は悪いものだとは思いませんが、いくらなんでもやり方が雑すぎるでしょうと
イシイジロウ自体ちょっとオタク的なところがあるので、ああいうアニメ化に抵抗が無いんだろうなとは思いますが、ユーザー層考えてくれよ、実写ゲーだぞと言いたくなります

しかし428ももう発売から8年ですか
発売直後は、街から428まで10年かかったから428の続編もまた10年後に、なんて笑い話のように開発者が語ってましたが、その10年まであと2年しかないですね
2年後ならちょうどPS4も脂が乗りきってる頃だし、もう一回据置で428に匹敵するようなゲームを…というのは夢物語ですかねえ
返信する
Unknown (ota)
2016-11-07 02:00:43
>ひとみとマリア役の近野成美さんはネットだと可愛いと結構評判でしたが、otaさんにはお気に召しませんでしたか
偉そうに書いてすんませんw この作品は動画から静止画を拾ってる(多分)から、そうそう完璧な絵は撮れないんじゃないかと想像できます。
だから仮に堀北氏や新垣氏を連れてきても、映えるかどうかは分からんですね。

>428のキャスティングは個人的には結構良かったと思っています
>なんというか、メジャーすぎるのも嫌なんですよね、こういうのって
ですな。特に今作は声がなく画だけなので、余計俳優イメージが先行するでしょう。その意味じゃ無名(?)キャストが正解でした。
まぁ街のダンカンのように、一人くらい既知芸能人がいても面白かった気もしますが。難しいところですね。

>さて問題のカナン編ですが…
そう、これ、アニメ化とかしてましたね。俺も今作プレー後は観ようかなと思ってたんですが、結局スルーしました。
そうですか、本編を飲み込むほどですか……それはアカンですな。何をやりたかったんでしょう。分からん……。

>イシイジロウ自体ちょっとオタク的なところがあるので、ああいうアニメ化に抵抗が無いんだろうなとは思いますが、
>ユーザー層考えてくれよ、実写ゲーだぞと言いたくなります
カナン編は質の高さは誰もが認めてるものの、そのせいで余計本編との乖離が際立つ皮肉な出来になってしまってますね。
内容は街に劣らぬものになってると思いますが、今作には街ほどの根強い人気が見られない気がします。
カナン編の浮きっぷりがその原因の一つ……だとしたら悲しいもんですな。

>しかし428ももう発売から8年ですか
俺がプレーしてからも6年……はっぇえすなぁ。
今作には「街の根強い人気を見れば、行けるかも」という算段があったでしょうが、次回作にそれはちょっと望めません。
家庭用市場の状況もより悪くなってますしね。まぁ出してくれたら、今度は発売日からやってみたいと思います。うーむ……。
返信する
Unknown (ロッカー)
2019-08-04 19:40:43
突如昔の記事にコメントしてすみません

428関連でタイムトラベラーズって結局otaさんはプレイされたんでしたっけ?
街、428、タイムトラベラーズは一応時系列的に繋がっているので是非タイムトラベラーズも遊んでほしいです。
タイムトラベラーズ本編中にはさすがに過去作の話はほとんど出てきませんが、ゲーム中のTIPSでは428の事件とか登場人物の一部について直接触れているものもあり、ちゃんと同じ世界観であることを強調していました。ストーリー的にはあまり意味ないですが。

あと、マイナーかもですが御法川が結構重要キャラで出ているPS2の金八先生もゲーム内容はかなり作りこまれているのでお勧めです。
返信する
Unknown (ota)
2019-08-04 23:43:12
ロッカーさん、どもです。
タイムトラベラーズ、「GUILD 01」に体験版が収録されていたので、それはプレーしました。感想も書いてます。
「街」「428」の(間接的な?)続編だったことに驚きました。タイトルからは全く想像できなかったのでw
このゲームと「善人シボウデス」はやり残し感が強く残っているので、プレー意欲はあります。PS4で出してくれんかな……。
ちなみに428もいっぺん再プレーしたく思ってます。もう9年近く前だしなぁ。……マジかいや……。

>PS2の金八先生もゲーム内容はかなり作りこまれているのでお勧めです。
こちらは版権問題があるのか、後継機での再リリースが全然ないですね。せめてPS2アーカイブス化していればなぁ。
御法川が出てるんですか! つーかこれが初出なキャラだったんですね。興味湧きました。覚えておきます。
返信する
Unknown (サク)
2019-08-06 19:29:57
タイトラは私もやりましたが、街428の続編と言えるかどうかは微妙なところですね
作品自体は明らかに428と繋がりのある作品として作ってますし、428とタイトラは共にイシイジロウ氏がディレクターを務め、シナリオライターも同一です
ですが、街428はチュンソフトのゲームで、タイトラはレベルファイブのゲームなんですよねえ
どうも本来はチュンソフトから出したかったのに、チュンソフトは業績悪化でタイトラ発売を渋り、それを不服に思ったイシイジロウらがレベルファイブに移籍して発売、という流れだったようなんですが、そのせいもあって正統な続編と見なすのは難しくなってしまった感じですね
個人的にもタイトラが続編とはあまり思いたくないです…

タイトラ自体は結構面白かったんですが、クリア後に遊べるようになるラブプラス的なモードがかなり滑っている感じでその辺りはイシイジロウの悪いところがまた出たな、という感じでした
イシイジロウ氏自体は嫌いではないですが、正直今後428の続編を出すとしたら他の人に作って欲しいなと思ってしまいますね
返信する
Unknown (ota)
2019-08-08 01:12:33
>タイトラは私もやりましたが、街428の続編と言えるかどうかは微妙なところですね
あーそっか、単純な話、メーカーが違いますもんね。作者が共通してても、そうそう露骨には乗っかれないか。
>どうも本来はチュンソフトから出したかったのに、チュンソフトは業績悪化でタイトラ発売を渋り
今はもう読みゲーは厳しいしか言い様がない時代ですからね。それでいて現行機で出すには開発費も相応にかかるでしょうし。
ジャンル的に海外展開が難しいのも痛い。質に反した不遇な立場は「街」の頃からの伝統か。……笑えないですね。
俺はイシイ氏のことはよう知らんのですが、428のような複雑怪奇なゲームシナリオを書ける才能は凄いとしか言えません。
タイムトラベラーズもやらなきゃですな。……シボウデスとセットでDL版3000円でどや? そんなこと言ってるから……。
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Unknown (サク)
2019-08-08 05:18:39
428、タイトラのシナリオライターは北島行徳という人ですね。イシイジロウもプロットの作成などで協力はしているかもしれませんが

>シボウデスとセットでdl版3000円
極限脱出シリーズも一作目はイシイジロウがプロデューサーでしたね。まあイシイジロウよりもever17の打越さんの作品というイメージの方が強いですが
ただこれも結局のところ会社が違うのでセット販売は…
その代わり、極限脱出シリーズ3部作がセットになったものがちょうど今PSstoreでセール中で、3300円になっています。PS4版なので興味があれば是非
タイトラは今は安くなってませんが、以前よくフリープレイになってたのでotaさんならその時に購入してそうな気も
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Unknown (ota)
2019-08-11 04:25:54
>ただこれも結局のところ会社が違うのでセット販売は…
すんません、この辺の作り手やメーカーの知識は正直全然持ってませんでした!w テキトー言って申し訳ない。
つーかPSハードで出てることすら何故か頭から抜けました。3DSのイメージが強すぎたんかなぁ。

>極限脱出シリーズ3部作がセットになったものがちょうど今PSstoreでセール中で、3300円になっています
おお! これはええですな。買いますわ。情報あざます。
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