腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

バイナリードメイン(PS3版)

2022年04月03日 01時01分27秒 | PS3ゲーム感想文
【ハード】PS3
【メーカー】セガ
【発売日】2012年2月16日
【定価】8629円(現物版)
【購入価格】108円(中古)
【プレー時間】29時間


昨年、2021年の11月。Amazonが恒例のブラックフライデーセールを開催した。店の規模が規模だけに、大きな祭りである。
が、Amazonのセールではいつものことだが、TVゲームにはあまり恩恵がない。幾つかはあるが、なんつーか予定調和的なのだ。
「あの有名ゲームが20%→80%オフに!」といった目を剥くようなセールはない。故に、俺にはあまり嬉しい催しではない。
だが今回、あるシリーズがズラリとブラフセールに並んでいたのだ。比類なきセガの人気ゲーム「龍が如く」の現物版である。
PS4版の全作品? に、「ジャッジアイズ」はPS5版もあった。値下げ度はさほどではないが、これに関しては目を引いた。
というのも俺、すっかり龍ファンになったくせに、ここ2年でプレーした「3」「4」「OTE」は全て中古購入なのである。
更に次にやる「5」も中古。これだけやってるくせに、セガへ全然金を落としてない。さすがに? 大人として恥ずかしくない?
そう思っていたところにこのセールである。……うむ、行くか。年に何回かある散財のオーラが俺を包んだ。アホか大袈裟な。
「維新」「極1」「極2」「6」「0」そして「ジャッジアイズPS5版」を一気買い。最後のはPS5入手を見越した先行購入だった。
合計で11000円くらい、まぁ俺にしては偉い。もちろん新品だから、セールと言えどセガにも幾らかは金が落ちることだろう。
これで勘弁して頂けませんか、セガさん。さすがに3~5も買い直しってのはアレなので。あ、7は追いついた時に考えます。
ふぅ。てわけで、長年心に引っ掛かってた後ろめたさをこれでチャラにした。何だかなぁ。一人でブツブツ何やってんだ俺。
んじゃ、スッキリしたところでシリーズプレーを続けっぞ。やるはもちろん「龍が如く5(PS3版)」だ!!
……ヘっ(笑)。それ、素人の発想な。俺のような本物は、正道を歩む。「バイナリードメイン」である。無論中古、110円な。
はぁ。

バイナリードメイン、BD(タイトルロゴにこう書いてある)。丁度10年前にセガ・龍が如くスタジオが放ったTPSである。
龍が如くスタジオは龍シリーズが軌道に乗ってから設立されたが、そのリリース第一弾は実は龍が如くではなく今作であった。
準OWで大きな支持を得たと思ったら、いきなりTPSである。ちなみに龍のアレンジだったOTEと違い、非常に本格的な撃ちゲーだ。
当時の龍ファンは、恐らく戸惑ったのではなかろうか。「何で?」と。まぁそらそうだろう。正直俺は今でもそう思うし。
ただ、スタジオとしては、龍シリーズを作り続けるのは当然として、そればかりに依存するリスクは当然考慮すべきだった。
諸行無常は世の真理、今の人気がどれほどでも将来のことは誰にも分からない。そのために、他作品という備えをしておかねば。
今なら龍のヒットで余裕もある。新ジャルの開拓だ! となれば狙うは当代一の最強ジャンル・撃ちゲーにはるのは自然なこと。
当時は突飛な印象を受けたが、今考えてみれば別にそうでもない。……スタジオは結局ほぼ龍のみになっちまったようだが。
「龍ファンだからって今作までやらずともいいのでは?」とも思ったが、まぁ俺の場合せっかくだからと回り道する方がいい。
10年程度の古さが何のハンデにもならんのは我ながら良い才能である。……ゲームにとっちゃ多分不幸だけど。はぁ。

さて、BD。TPSである。「なんちゃってじゃないの?」と疑念を持たれるかもしれないが、全く問題なくTPSを名乗れる出来だ。
弾撃ち、リロード、構えてグレネード投げ、十字キーで武器変更、障害物に隠れるカバー……おかしな所は何もない。
個人的な既視感は、やはり「ギアーズ・オブ・ウォー」である。実際今作はギアーズを相当パ……研究して作られたと思う。
また俺は10年前に今作の情報を軽く調べたところ、あちこちでギアーズの名前を見て、それでプレーに至ったという経緯がある。
実際やってみて、「あ、これは確かに」と思った。カバーの重要性なんて特にそうだな。ほぼギアーズフォロワーと言っていい。
しかし、当時見た「ギアーズの方が比較にならないくらい上」という評は違うと思う。今作は今作で、普通に遊べるTPSだった。
あんま撃ちゲーやらん俺が言うのも何だが、今作に対し「TPSとしてレベル低そう」て先入観を持つ人がいたら、それは間違いだ。
そら海外超大作と比較したら甘いとこもあるかもしれんが、時代的には十分頑張ってると思う。……曖昧な言い方しか出来んが。
「龍スタジオが調子こいて作った」てな印象だけは捨て去りましょう。まぁ今更このゲームやる人なんてまずいないだろうけど。

ジャンルは「ごく普通の」TPS。だがそれなら敢えて出す意味がない。今作の、龍スタジオならではの要素はあるのか?
ある。一番は「敵がロボット」てことだ。もちろんこれは世界設定と密接に結びついている。ちなみに2080年が舞台。
敵がロボだと何があるのか? まず、描写を気にしなくていい。人体を銃撃したら色々ぐちゃぐちゃヌルヌルで、まぁ超グロい。
そんなのをちゃんと描写してたらZ指定になっちまう。しかしやっぱリアリティは欲しい。銃撃の快感も。バーチャルなんだし。
そこで、ロボ、人間じゃない。だから幾ら顔を集中攻撃しても「顔面が壊れる」で済む。無論、描写も詳細にやって問題なし。
更に、欠損。人間相手で手足がいちいち千切れたら、Z指定でも無理かもしれない。「NINJA GAIDEN2」はよう通ったもんだよ。
だがこれもロボなら簡単で無問題。またロボ故に「足を欠損しても壊れるまで攻撃してくる」というしつこさも作れる。
今風(?)に例えるなら、ゾンビの採用に近い。人じゃないから残酷に扱えるし、欠損後の気持ち悪い動きも自然にやれる。
それから、ロボなんだから、人型に拘る必要はない。なので今作には猿やゴリラといった動物タイプ等も色々と登場する。
何より、大型ロボだ。ゲーム中には何度かボス戦として大型ロボ撃破大作戦が挟まれる。どいつもかなりデカく、当然強い。
撃ちゲーは基本的に人が敵なので、ボス戦を作りにくいという問題点があった。俺の知ってる作品にもそういう部分があった。
今作はボス戦を、極めて自然に、ボスらしく存在させている。これは何気に今作の独自要素とまで言えるのではなかろうか。
てわけで「敵がロボ」という設定は、何でもないことのようで撃ちゲーにおける問題点をかなり多く解決してるように思えた。
宮本茂氏の名言「アイデアとは複数の問題を解決するもの」そのものだと思う。やるな名越さん。気持ち良いものがあった。

ロボの新鮮さはあってもゲームの流れは本当に「従来のTPS」で、ほぼ一本道のフィールドを只管順繰りに進むリニアな作りだ。
龍シリーズのイメージから寄り道があるのではと思っていたが、ない。街は崩壊してても道は壁や瓦礫で常に舗装されている。
同じく龍シリーズのイメージから予想されるミニゲームの類も、ゼロ。いやマジで。一個くらいあるやろと思ってたのに、ゼロ。
ゲーム中に小さな盛り場が登場するので、「あ、ここでか」と思ったのに、ただ普通に撃ちゲーの戦場にされただけであった。
これは……どうなのか。ジャンルが全く違うと言えど、龍スタジオの名を出している以上「あの味」を期待する層はいるだろう。
それをここまでガン無視してるのはちょっと疑問に思う。マルチプレイで桐生ちゃんらを使えるとか、そういうんじゃなくて。
もちろんそんな寄り道は不だ、とTPSだけを求めてる層にはこれでいいのだろうけど。俺は正直ガッカリした。10年前のゲームに?
一方、「本筋での変化球」は結構揃っている。ボス戦もそうだし、唐突に急流すべりやカーチェイス撃ちゲーが挟まったりする。
撃ちゲーは面白さはさておき単調になりがちだが、そこはしっかり考えて弱点をフォローしている。……成功してるかは知らん。
変化球にしては高難度のネタが多く、個人的にはイマイチだった。特に猿ロボに集られる仲間を助けるやつは二度と御免である。

難度は易普難の3段階で、一周クリアーすると超難が開放される。ここは龍シリーズと同じ。で、俺は普通に普で開始した。
……超難の開放条件は難のクリアーだと後で知った。おかげで3周やるはめになっちまったい。最初から難でやるべきだった。
今作は「普遍的なTPS」なので、HPの減少は画面が赤く染まることで表現され、しばしノーダメ状態を保つと徐々に回復していく。
基本的にカバー状態は安全なので、ちょっと撃ってカバーを繰り返せば無敵!! ……そんな甘くはない。時間もかかるしな。
敵はロボなので相応に固く、撃破に必要な弾数がかなり多い(多分)。また欠損もあるので、一部だけ潰しても止まらない。
だからある程度身を晒して集中攻撃が求められるが、その場合当然敵からの攻撃を食らう。画面は徐々に赤く染まっていく。
また撃ちゲーなので当然ながらリロードがあり、この間は無防備。画面真っ赤・弾切れの際は即カバーに入り、回復を待つ。
テキトー撃ち(手だけ伸ばしての銃撃)も可能だが、この際は命中率がダダ下がりし、あまり使えない。弾の無駄にもなる。
結局の所、正確なエイムとHP&リロード管理が今作の攻略のほぼ全てである。形態が王道撃ちゲーだから攻略もそうなったか。
エイムに関しては、家庭用ゲーム機TPSとして適切な補助がなされている(多分)。易モードだと更に強いアシストがかかる。
俺自身は正直その辺よう分からんが、まぁ普通に通用したからやりやすいんだろう。カーソルが赤くなればOK、は分かりやすい。
やり直しもチェックポイントから無限に可能で、死にまくりからの難度落としもある(元には戻せない)。非常に親切設計だ。
洋撃ちゲーの作りに対して疎外感を抱く、けど撃ちゲーには興味があるという層にはうってつけのゲームかもしれない。
当時としては上手い企画だったのかもな。……あれから10年、今はバトロワ撃ちゲーが国内でも一番人気ですけどね。はぁ。

武器の成長(改造)も独自要素だろうか。……バイオ5にもあったし、そんなことないな。謎に端末でやってくれる不思議未来。
今作は武器を4種持てるのだが、うち一種がキャラ専用武器。更に投擲系&ハンドガンも固定で、一種は拾って選択できる。
その専用武器のみショップ端末で強化可能。威力や精度、一度に装填できる弾数等を改造で強化していく。無論タダではないが。
店で使う金は敵を倒すと「クレジット」という形で貰える。……まぁこの辺の理屈はスルーすべきだろう。大人の事情である。
今作には色んなキャラが登場するが、キャンペーンで使うのは主人公「ダン」のみ。よって強化もダンの専用武器に集中する。
他キャラの武器強化も可能ではあるが、操作がCPUだけに効果は全然実感出来ないし、金に余裕もないからやる人は少ないだろう。
逆にダンのアサルトライフルはキッチリ強化しないと先がしんどくなってくる。なんかゲームみたいだね! そらな。はい。
金は餌場で頑張れば(非常に面倒臭いが)一応無限稼ぎが可能だが、強化は進行具合によって限度が定められている。
一気に強くしてのヒャッハープレーは出来ないわけだ。今作の感覚ならそこは許してもいいと思うんだけどな。
他、キャラに「ナノマシン」を装着し、パラメータを上げるという要素もある。HPアップやリロード速度アップ等、色々ある。
それ自体は構わんのだが、一本道で後戻り不可なゲームのくせに、取り逃すと入手不可になるナノマシンが多いのは気になった。
高速リロードなんてあるとないじゃ天地の差が出るんだから、店売りでずっと置くべきだろう。変な意地悪を入れるなよ。
とまぁ成長関係は、あんまし面白くはなかった。撃ちゲーは変化なく同じことを繰り返させるのが寧ろ正解なのかもね……。

今作はほぼ全編がパーティ行動で、仲間と一緒に作戦に従事する。しかし面子は固定ではなく、プレーヤーに選ばせてくれる。
……作中にはダンの上役も出てくるし、そのことを強調されるのに、面子選びがいつもダンに振られるのは意味不明だった。
仲間キャラには専用武器の特性等で個性が存在するが、ぶっちゃけ誰を選んでも大差はない。頼れるのは己(ダン)だけだ。
ただキャラクター性は別で、彼らとの会話やイベント(内容は全員同じだが)を楽しみたいならそこは悩む必要がある。
性格や喋りには個性があるから、そういうやり取りは楽しめるだろう。ここは龍スタジオの面目躍如と言っていいのかな。多分。
そう、仲間キャラとの他愛ない、或いは真面目なやり取りは楽しい。間違いなく今作の売りの一つだ。……でも、大問題がある。
音声入力である。今作はマイクによる音声入力に対応していて、初回限定で(当然安物の)ヘッドセットまで用意していた。
道中に仲間から「そうは思わないか?」と問われることがあれば、音声にて【はい/いいえ】を答える。実にリアルである。
また戦闘時には「突撃しろ」「フォローしろ」等の命令が可能。逆に「私が行くからフォローしろ」と要求されることもある。
実のところそれらにキー操作で答えることも可能だが、自分の声で対応することとの臨場感の差は言うまでもない。
この「リップルリンクシステム」は今作の売りとして発売時に強く推されていた。そら、これ用の特典まで用意したんだからな。
……で、発売後に大不評だった。そう言い切って問題なかろう。もちろん俺も同意だ。ようこれで発売したもんだな、と。

まぁ、酷いよ。意思疎通とか何の冗談だと。ちっとも通じない。ちなみに俺はUSBマイクを使った。別に禁じ手でもないはず。
が、通じない。喋ることが虚しくなるほど。まるで人とロボットのよう。……実は今作のテーマを表現していた!? アホか。
現実世界でもそうだが、「口にした言葉が届いてない(現実だと聞き返されることも)」ことは非常に不快である。俺だけか?
それが今作では日常になる。スムーズで密なコミュニケーションを実現するはずの口答が全く逆の効果を生み出している。
もちろん俺はマイクに向けてハッキリ発言している(つもり)。また音量調整等もやるにはやった。その上での結果である。
加えて問題なのが、「遅い」ことだ。言葉がCPUに通じても、それに対する反応が遅い。あまりにも遅い。機械のくせに。
例えば 「そう思うだろ? ダン」→【そうだな】と答える→……矢鱈と時間をかけて「だよなぁ!」と会話が続けられる
こんな感じだ。「会話のテンポ」が全く出来てなくて、非常に気持ち悪い。まして戦場だぞ? 歴戦の戦士たちだぞ?
恐らく認識処理と、ボタンでやる人への配慮でこうなってるのだろうが……そっかーで受け入れられる欠点ではない。
結局、ちっとも伝わらないし伝わっても反応が遅すぎて気持ち悪いんで、序章で早くもマイクプレーは止めちまった。
売りのシステムのはずが、どう見ても失敗している。製作者の狙い通りに臨場感を楽しめたプレーヤーはいたのか……?

この音声コミュシステムを含め、今作は「CPUのAI行動に力を入れた」らしい。仲間がそれだけ賢い動きをしてくれる、と。
……で。これもプレーヤーの9割が、音声コミュと同様に裏切られたことだろう。寧ろアホすぎてムカつくこと請け合いである。
つっても別に検証したわけじゃなく感覚だが……プレー中に味方AIが機能し、俺と一緒に戦ってくれたという認識は一切ない。
ずっと「今までのゲーム」と同様好きなように行動していたようにしか見えない。ボイスだけは迫真の演技をしてるけど。
何より問題なのが、同士討ちである。今作はフレンドリーファイアの概念があり、射線上にいれば味方にもキッチリ弾が当たる。
「じゃあ当てなきゃいいだろ、エイムの下手なお前が悪い」と? ……そりゃ俺のミスならいいよ。でも味方が自分から来たら?
そう、今作の「何も考えてない」賢人AI、プレーヤーのことを一切気にせず動き回るから、しょっちゅう射線に立ち塞がる。
当然フレファーが起き、「気をつけろ!」「何を考えてるの!?」等の罵声を浴びせられる。いやお前が当たりに来たんやろが!
この不快感は半端じゃない。今作で一番悪い部分かもしれない。なんで製作者がこのAIを誇る気になったのか皆目不明である。

厄介なことに仲間キャラには「信頼度」があり、フレファーが起きるとそれが下がる。不快感以上のデメリットもあるのだ。
ちなみに稀に味方がプレーヤーを撃つこともあるが、その際にこちらが文句を言うことも、AIが謝罪することもない。糞である。
救いは信頼度があまりゲームに影響しないことか。低いと命令を聞いてもらえないらしいが、そもそも命令などしなくていいし。
ストーリー展開に影響する部分は少しあるが、それはまぁ普通にやっていればほぼ達成可能なのであまり気にしなくてもいい。
ただ例によって「各キャラの信頼度を最大にした」トロフィーがあったりするので、それを狙う際は非常に面倒臭いことになる。
基本的に敵を倒していれば上がるから、無限湧きの場面でしこしこ戦闘を続けたりな。機械なのに……リアリティどこ……。
なーんかなー。物語上では味方キャラを丁寧に描いていたが、ゲーム部分ではさっぱりである。実に機械。劣った技術の機械。
豪華声優陣の演技が虚しく響く戦場である。このゲーム、アニメか実写映画の方が良かったんでは。ゲームの負けである。はぁ。

物語はどうか。……実は、最低である。さっき映像作品にした方がいいのではと書いたが、実際は寧ろゲームだから救われてた。
まず今作の舞台は2080年。開発当時の70年後辺りで、その70年前が二次大戦頃。時代の変化の感覚をその辺に習ったとか。
地球温暖化が急速に進行し、世界中で海面が上昇、人類は元々の土地に住めなくなり、自然と高層社会が構築されていった。
当然全人類が上に行くことは出来ず、下に残された者もいる。……人権問題的にそんなことにならんやろ。切羽詰まったら別か?
で、その高層社会を作るのに役立ったのが、飛躍的に進歩したロボット技術だった。現代では人類になくてはならない存在だ。
しかし人型ロボはよくても人に似せたロボの製作は国際条約で固く禁じられていた。……ToHeartのマルチもダメか。嫌な社会だ。
だがある日、外見は人間そのものながら、皮一枚の下はロボな「ホロウチルドレン」の存在が各国で明らかになる。
何十年も発覚していなかったことから、既に文明の深くまで浸透している可能性が高い。これは人類の危機である。
怪しいのは日本の企業「AMADA社」の社長、天田。数十年前に特許争いで破れ、表舞台から姿を消した天才ロボット技術者。
天田とアマダ社の調査のため、国際ロボット連盟(適当)の実行部隊「ラストクルー」が秘密裏に日本に上陸、上層を目指す。
主人公ダンらはそのメンバーである。徐々に集結する各国のメンバー達は、アマダ捕縛作戦を進行させていく……。

まぁ、いい。大幅な海面上昇が起きれば人類は滅ぶと思うし、ロボット技術にも無理を感じるが、そこはフィクション補正だ。
この時代になっても特殊部隊が銃撃戦をやるってのも違和感があるが、それもいい。あくまでゲーム、作り物の設定と世界だ。
で、概要だけで分かるが、今作のキーとなるのは「ホロウチルドレン」だ。人の姿をしたロボット。ちなみに自覚はないらしい。
……薄皮一枚下は機械なのに、何十年もバレないとかあり得るか? 怪我したら一発やないか。レントゲンはどう突破した。
まぁ一体だけなら偶然隠し通せたもありかもしれんが、世界中に何百体も広まってたんだろ? あまりにも無理がありすぎる。
だが、それもいい。「それくらい」のことはいい。今作の衝撃的真実の前では、無理がある背景設定なんて塵に等しい。
もうハッキリ書いてしまう。物語終盤、アマダ社の中枢まで辿り着いた面々は、ホロウチルドレンの詳細なデータを入手する。
そこにはホロウチルドレンの蔓延どころではない深刻な現実があった。クルーのリーダー、チャーリーは語った。

「ホロウチルドレンの女は、人間との間に……子供を、孕む……っ!!!」

どかーん。そう、機械たるホロチルどころか、それと人間との子「ハイブリッド」が既にこの世に多数存在することが明らかに。
そして当然というか、仲間の一人がそれであり(判明までは自覚なし)、人類の敵に。しかし真の敵は別に……いやいやいや!!
ちょちょちょちょ、ちょっと待ちーーーーよ!!! 何なのよそれ、ハイブリッドって! 人間とホロチルの子供って!!!
今作に登場するロボットは、もちろん現実の技術水準を遥かに越えてるし、ホロチルには創作的な無理が多大にあった。
それでも、やはり俺らの思う「ロボット」の範疇にはあった。「人間との間に子を孕む」って、そんなこと出来るか!!!
女ってことはホロチル版の卵子があると? それが人の精子と受精して? ハイブリッド子? 胎内で成長? はぁあ!?!?
んで出産の際、母も子も正体バレず? ハイブリ子、人間と同様に成長? そして身体検査をしても人間と区別不可能だった?
……無理である。どう考えても「創作的ハッタリ」を越えている。現実の延長線上の世界にいきなりドラえもんが登場した感じ。
マジで「はぁ!?」と声出たもんな。そこから怒涛の終盤戦に入っていったわけだが、俺の心は醒める一方だった。はぁ。

もう一つ。先述のように今作の世界は海面上昇により、上層界と下層(スラム)が明確に分けられている。当然、住人も。
んでダンらが上層に上がるために下層のヤクザやチンピラの力を借りる。チンピラ少女「ユキ」は一応今作の華であろう。
……なのに、これら下層のキャラや設定が、後半さっぱり出てこなくなるのよね。上層への憧れや恨みや、色々あるだろうに。
三船(ヤクザ)やユキらは前半で偉そうに登場したのに、後半は完全に退場し、物語は人間とロボの関係性のみに絞られる。
せっかく上と下ってネタを用意したのに、中途半端にも程がある。ユキが上層人の隠し子だとか、そういうのあるだろが!!
それでいて何の魅力もない刑事はしつこく登場させた上に、これまた最後は行方不明だし。キャラ描写に責任を持てよ。
今作のシナリオは、多分納期がヤバくて無理やり纏めたんだろうな。いや纏まってないけど。とてもプロの仕事とは思えんよ。

龍シリーズも、物語の整合性には多大な問題があった。いやそんなもんは知らんと、その場の盛り上がりだけが重視されていた。
しかしその分、その場の盛り上がりだけは熱く、浸れるものがあった。その場エンターテインメントと俺は名付けている。
それに対し今作は、ロボ孕みというあまりに出鱈目な設定一つで、その場も何も全てをブチ壊している。これ一つで、俺は無理。
名越氏が描きたかった今作のテーマは「命」らしいが、それがこんなチンケなものだったとは。心からガッカリですよ。はぁ。
何度でも書くが、「ホロウチルドレンの女は人間との間に子を孕む」、そんなことは不可能なんだよ。あり得ないんだよ。
ちなみに、そこまでの物語でそういったことが可能な技術的背景が描かれたわけでもないからな。極めて唐突に出てきた話だ。
神室町でヤクザ抗争やってたら、いきなり異世界転移してきた俺がハズレスキルで無双するようなもんだ。意味不明な供述。
とにかく「世界がいきなりあり得ない・受け入れられない技術を前提にしたもの」に変貌したわけよ。舐めるにも程がある。
その場エンターテインメントにすらなってない。何でもハッタリと勢いで誤魔化せると思ってんじゃねーぞチー牛が。畜生。
終盤のクソ設定一つで、今作の物語は完全に崩壊した。それなりに魅力のあったキャラ達も、これに加担してる悪役に見えた。
何が命だよほんま。創作は魔法だ。言葉一つでどんな世界でも描ける。でもだからってどんな世界でもオッケーなんちゃうぞ?
久方ぶりにブチギレレベルで「許せない」案件だった。せっかく撃ちゲーとしてはまともなのに。罪深いよほんまに。

萎え萎えで一周目を終えた。だが俺の戦いはまだ終わらない。寧ろここからが本番だ。恒例のトロフィータイム、開始である。
つっても今作に関しては、トロコンを最初から諦めていた。何故かって、オントロがあるからだ。それも多人数が必要なものが。
中にはフレンド6人で長時間かかるネタもあるとか。無茶苦茶である。そんなん、発売当時であっても相当難しかっただろう。
ちなみに起動の度にオン部屋を覗いてはみたが、誰一人いなかった。マジで一人も。まぁ10年経ってるんだから当然だけどさ。
なのでコンは諦めたわけだが……だからってトロが抜けだらけじゃ気分悪い。ここはシンプルに「オフトロはコンプ」としよう。
それだけなら十分可能だ。つっても最高難度含め3周、全員の信頼度MAX、ナノマシン全入手等、難度も面倒臭さも結構高い。
今作は引き継ぎが一切なく、難度含め「一周だけで達成せよ」が多い。漫然としたプレーでは(オフ)トロコンは成らない。
難度ハードからは敵の耐久力が一気に上がり、なかなか壊れん。それに対する武器の強化を意識してやる必要がある。
そして敵が固くなると弾薬不足が酷くなる。今作はハンドガンが無限弾なので詰みにはならんが、威力が低く、ほぼ役に立たん。
ダン専用武器・サブマシンガンの弾がとにかく重要。それなりに入手は出来るが、雑に撃ってると弾切れで機械に食われる。
今作のコンティニューは「チェックポイント通過時から再開」であって、戻っても別に弾薬がMAXになったりはしない。
修羅場での弾薬入手数も決まっているので、武器の強化ともったいない精神がないと高難度ではドツボにハマることだろう。

それでもハードならまだ何とか頑張れたが、最高難度「NO MERCY」はマジ大変。敵が硬い被ダメ痛いで普通に高難度撃ちゲー。
特にボス戦は、敵の外装が金属じゃなくダイヤモンドではと思えるほど固く、いい加減撃つのが嫌になるほど。撃つ意味ある?
ゴリラと高速道路ストーカーはもう二度と戦いたくないわ。技術よりも度重なるやり直しに耐えきる精神が重要だな。
ちなみにHPが尽きると「瀕死」になり、そのままだと死ぬが、復活薬を使うと全快する。ただし当然ながら回数制限あり。
今作では復活薬を「味方に使う」「味方に使ってもらう」ことも可能。味方の死でもゲームオーバーなので放置はダメ絶対。
基本的にCPUはCPU同士で復活させるし、こちらが瀕死だと概ね助けに来てくれる。この時ばかりは仲間の存在がありがたい。
ただし味方の復活薬も回数制限ありなので、全員分が尽きたら一直線で死亡。全員瀕死で這いずり回る状況の絶望感は異常。
まとにかく、最高難度は大変だった。まぁそれでもギアーズのアンセインよりはマシだったかな? ごめんよう分からん。
龍ファンとしての意地と義侠心にて、何とかクリアー。他、信頼度MAX等の面倒臭案件もこなしていき、準トロコン達成。
オフラインモードに関しては十分にやり切ったと言えるだろう。10年遅れてやる以上、義理は通す。偉いなぁ俺ほんま。
……ま、言わせといてくれ。実際ようやったしな。トロがゲームを引っ張る面もある時代なんだよ。だから10年前だっての……。

グラフィックは、時代とハードを考慮すれば普通だと思う。ロボのロボロボしさや破壊の描写は今でも見応えがあった。
背景がのっぺりしているところにハードを感じるが、まぁあまり言うまい。人物は龍で培った技術が存分に生きてていい出来だ。
音楽は撃ちゲーにしてはいい感じだったのだが、サントラが出てないのが残念。龍シリーズは大半がスポッチ等にあるのに。
一方声の演技はバッチリ。山寺宏一、久川綾らバリバリの実力派の演技には文句の付けようがない。声優さんは最高である。
……物語の質がそれに全く見合ってないのがアレだけどね。あとラブシーンにもう少し気合を入れて頂けたらと。はい。


ふぅ。今作は龍スタジオの失敗作として、Wii U版「龍が如く1&2」と共に記憶されている。ハッキリ言えば嘲笑タイトルか。
けど実際やってみたら極めてちゃんとした撃ちゲーであり、絵やフレームレートを重視しなければ今でも十分楽しめた。
しかしそれを、物語の終盤がブッ壊してくれたのだった。現実にいきなりドラえもんを出すな名越。ほんまええ加減にせぇよ。
「機械人間」は大昔からある創作の夢だが、機械が進歩すればするほど、それで生物を作るのは無理だと分かるだろう。
形のない思考はAIが頑張ってるし、まぁ動物単体くらいならいずれ可能かもしれない。けど「子を孕む」って!! 無理!!!
それでもやれると言うなら、作中で理屈を示してくれ。もちろんハッタリでいい。こっちを納得させた上で無茶やってくれ。
まさか期待薄だった撃ちゲー部分は概ね良好で、龍的に期待が持てた(瞬間の)物語面がクソダメとはなぁ。分からんもんだ。
ちなみにEDの〆もクソでなぁ。たった二人で国際組織相手にどう戦うってんだアホか。ED後のキャラはどうなってもええんか。
もしかしたら続編の構想もあったのかもしれんが、結果的には出なくて良かったまであるかもしれん。少なくとも俺はいいや。
海外の覇権ジャンルに乗り込んでいって、日本の強みと言える部分でバカやってどうする。罪深いよ名越さん。ほんまに。
ま、ええか。もう10年前の話だ。今作で懲りたのか、龍スタジオは基本的に龍が如くのみで生きるチームになっていった。
「そればかり」の危険性は重々承知でも、ゲーム製作が肥大化した現在ではそうそう冒険も出来ないんだろう。大変やのう。
今作はその余裕と意欲がまだあった「龍スタジオの良い頃」の残滓なのかもしれない。ま、プレーしてよかったよ。はい。

さて、ここからは龍が如く本編に戻る。最初に書いたように、未プレー作を大量に買い込んだ。もう隙はない。……逃げ場も。
3~4は流用が目立ったが、5では何と5都市5主人公という大ボリュームである。これは燃えるよ。やる気はバリバリにある。
結局俺は龍ファンだからな。こんだけ文句つけといて自分でもよう分からんが、名越ワールドが肌に合うんだろう。多分。
今作も終盤までは楽しくやれたしな。ダンにビッグボウ、レイチェルにチャーリー、カイン、そしてフェイ。嗚呼。
最早誰も覚えてないかもしれない、今作で生きたキャラ達。せめて俺だけはなるべく覚えておいて、また次のゲームをやろう。
比類なバイナリードメインを胸に龍が如くスタジオの作品をこれからもガンガンやっていくと誓って終わり。そんな大層な話か?
ロボット社会なぁ。AIはありそうだけど、物理でも来るか? 一般人にも降りてくるか? 人の「孤独」を埋めてくれるか??
夢があるようで実は全く無い話だよなぁ。惨めなもんだ。一人でゲームしていよう。人間の環境適応能力、舐めんなよ。
はぁ。







拍手を送る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« VESTA | トップ | ゼルダ無双 »

コメントを投稿

PS3ゲーム感想文」カテゴリの最新記事