オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

紀伊田原の海霧

2020年02月17日 | 紀伊半島


 和歌山県の串本町で目覚めた朝.お決まりのように荒船海岸へと日の出を見にいくと,散歩していた地元の方から,田原の海岸に海霧が出ているから,そっちに行ったほうがよいと教えていただいた.素直に田原海岸へと直行すると,幻想的な海霧の景色が広がっていた.





 田原の海霧は,海へと注ぐ田原川の上流で発生した霧が川を下って,海へ出るとさらに霧の量を増やして海上を漂う,という真冬だけに見られる現象だそうだ.この幻想的な景色の中で,漁船が黒いシルエットとなっており,神秘的な感じさえするのであった.



 田原海岸には漁港があって,海霧の中を漁師さん一人を乗せた漁船が頻繁に港を出入りしていた.海霧は沖合の方へと行くにつれて,消失してしまうようで,海岸に極近いところだけに漂っていた.



 沖合の遠くの方には,大きなタンカー船がたくさん航行していた.寝ぼけていた訳ではないが,タンカー船が蜃気楼のように,ゆらゆらと揺れているように見えた.



 そして,日の出と共に太陽の位置が少しずづ上がっていき,辺りが明るくなっていくと同時に海霧もだんだんと消えていってしまうのだった.それでも,海霧になどお構いなしに漁船は頻繁に海を行き交っていた.



 辺りが明るくなりだすと,大勢いたカメラマンたちも霧のように立ち去って行ってしまった.自分にとっては,初めての経験だったこの景色がとても感動的で,明るくなってもその場を離れることが中々できなかった.いつか自分もファインダーのあるカメラを持って,もう一度この景色を切り取ってみたいと憧れに近い思いを抱くのであった.



 この景色を教えて下さった荒船海岸を散歩していた地元の方には,感謝の念しかない.いずれお礼を言いに行こうと思うのだった.そして,完全に太陽は昇り,朝がやってきた.南紀の山を越えるために,北に向かってオートバイを走らせることにした.


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