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奈良県は宇陀郡曽爾村の大字長野という所に,柱状節理の発達した断崖があるらしい.柱状節理と聞くと,すぐにあの楯ヶ崎を思い起こしてしまうのだが,山深い曽爾村と柱状節理の関係がどうもしっくりこなかった.
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そんなわけで,曽爾村へと向かい,屏風岩を目指し,名もなき道を登り始めた.道は深い山の中を上がっていくようになっている.この日は,風が強くて,晴れたり曇ったりを繰り返す天候であった.
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一台の車両とも出くわすことなく,狭い山道を走ってしばらくすると,開けた場所へと出た.そして,視界の先ではなく,上に広がっていたのは,まさに柱状節理の断崖―屏風岩―だった.
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屏風岩の標高は940メートルだそうだ.この柱状節理は,高さ200メートルあって,およそ2キロメートルに渡って続ている.これを屏風岩と呼ばずして,何と呼べばよいか分からない.想像以上のスケールであって,ちょっと首が疲れてしまう程だった.
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断崖の下には山桜をはじめとした落葉樹が広がっているが,柱状節理のてっぺんには常緑樹が植生している.この柱状節理の上と下でのコントラストが,また独特の雰囲気を醸し出していた.
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この柱状節理は,室生火山岩主部の流紋岩質熔結凝灰岩であると言われている.どれだけの火山活動の規模であったのかは,人間の想像を絶するものに違いない.このような規模の火山活動が,人間が地上にいる間は,絶対に起こらないで欲しいものだ.
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楯ヶ崎を海上の柱状節理とすれば,屏風岩は雲上の柱状節理と言うことができそうだ.地球の大きさを考えれば,地表はりんごの皮の部分にあたるようなものだから,別に柱状節理が山の上にあっても,別におかしくはないわけである.風が激しく吹き荒れる中,一人合点して,寒さから逃げるようにして山を下って行くのだった.
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