神武山

　三重県は大紀町，錦の国道脇に神武台なる看板が掲げられている．今までこの看板が気になっていたけど，この国道がワインディングロードゆえにアクセルを緩めることができず，立ち寄ることができずにいた．しかし，ついに看板の案内に従って神武台へと登っていく機会に恵まれた．



　息をきらしながら登っていくこと，１０分ほどで神武山の頂上にたどり着く．神武山の頂上には立派な石碑と舞台が整備されている．神武という名前からわかるように，ここは神武天皇が東征の際に立ち寄った場所と言われている．



　この舞台から神武天皇も見たであろう錦湾を一望することができる．ご丁寧にもベンチが据え付けられていて，今にも錦湾を眺望したいところだが，ここまで急いで登ってきたため，息は切れているし体も火照っている．まずはベンチに腰掛けて一休みすることにした．



　一休みして息が落ち着いてきたところで，神武台から錦湾を一望する．眺めはとてもよくて，錦湾と錦の町並みが手に取るように見えた．錦の町はリアス式海岸にやさしく包み込まれ，山に護られているような感じだ．



　熊野灘側の眺望もすばらしく，水平線までくっきり見えた．それにしても，熊野灘のおだやかな海が印象的だ．身近なところで，まだこのような素敵な景色が見られるとは思いもしなかった．まさに灯台下暗しというやつだ．



　ちょうど錦漁港に漁船が戻って来たので，ズームレンズで追ってみた．海の波がほとんどないので，船の立てる波が目立って見えるのがおもしろい．船の頭でＶ字の波を作り，船体で直方体の白波を作るということがわかった．



　トロピカルガーデンもズームレンズに頼ればご覧のとおりで，ヤシの木と水上ハウスがとてもきれいだ．ここは錦向井ヶ浜の海水浴場だけど，じつは一度も立ち寄ったことがない．この冬に一周してみるのもいいかもしれない．



　そして，錦湾には養殖の生け簀が気持ちよさそうに浮かんでいる．この生け簀の中にはブリが泳いでいるはずだ．その生け簀の後ろには，大小さまざまな島が浮かぶ．紀伊半島らしい風景だと思う．



　とにかく海の色がきれいだし，景色がすばらしいので，久しぶりに夢中になってシャッターを切ることができたと思う．後で写真を見返してみると，おなじような写真ばかりを撮っていることに気付く．



　かれこれ３０分位は滞在しただろうか．だれも神武台に登ってくる人はいなくて，ひとりで静かにゆっくりと風景を堪能することができた．神武天皇も見たであろう神武山からの錦湾の眺望は，とてもきれいだった．