
降雪後の三国越林道は,まっしろな道となっていた.高い木々に囲まれて,陽が射してこないため,昼前でもあたりは薄暗く白い世界に包まれていた.路面は,アイスバーンの上に少しだけ積雪している状況だ.

傾斜のない平地では,あえて積雪しているところを走行して遊んでみた.積雪した雪が潰れるときに出す軽快な音が気持ちよかった.そして,振り返っては,自分のつけた轍のあとをみて満足するのだった.だれもいない山奥で,雪の降らない土地で育った大人が童心にかえっていた.

傾斜のきつい下りの道に差し掛かると,辺りはさらに一面まっしろな景色に様変わりした.先に進むか悩ましいところでだったが,止まれずに転倒して立ち往生といったケースが頭によぎる.それに下りの狭路で転回できる自信もないため,素直にここで引き返すことにした.

復路では来たときと道の傾斜が反対になるので,まだ安心はできない.それにしても,林道入り口から奥に行くに従って,これほど分かりやすく残雪の量が増えていくというのは,当たり前のことかもしれないが非常に印象的だった.

ローとセカンドギヤを多用しながら,ようやく林道入り口付近まで戻ってくることができた.そして,来るときには気づかなかった雪をかぶった抹茶ケーキのような茶畑を発見した.寒さと緊張とで固まった心身が,雪解けのように溶けていくような気がした.

自宅を出るときには想像もしなかった,まっしろな道を走る冒険もこれで無事に終わるのだった.
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