昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

趣味は望遠鏡です

2021-03-05 | 日記
 写真を趣味とする人が、「趣味はカメラです」と言うことがある。
 子供が小さかった頃、ディズニーランドに行った際の列車の中に、中学生くらいの二人の娘さんを連れた家族がいた。その窓際の棚に置いてあったお父さんのカメラは、黒塗りのニコマートFTN。軍艦部の角の部分の塗装がいい具合に擦れて、下地の金属が見えている。この頃は、動き回る子供を写すために、オートフォーカスのKISSを使っていたが、そんな立場から見ると実に絵になる風景だった。きっとこういう人が趣味を聞かれたら、「趣味はカメラです」と言うのだと思う。

 ドライブが好きな人が、「趣味は車です」ということもある。
 大昔だが、実家の近くに産婦人科があった。奥さんが入院していたのだと思うが、ヤンキーっぽい若いお兄さんが、路上で一生懸命に車を磨いていた。幼かった私がちょっと触ったのだろう、「汚い手で触るな」と怒鳴られた思い出がある。これから父親になる人が、些細なことで小さな子供を怒るというのも、どうかと思うが、あの当時、まだ車を持つのが一般的でなかったので、そうもさせたのかもしれない。このような人も趣味を聞かれたら、「趣味は車です」と言うのだろう。

 かつて近くの小学校で、星の教室を行っていたこともあり、「今も星見ているのですか」と町内の人によく聞かれる。職場でも、「星を見るのはいい趣味ですね」とか「上を見すぎて、穴に落ちないで下さいね」などと、言われたりしている。このような私の趣味は、何と言えば良いのだろう。普通は「星を見るのが趣味です」とか、学究的な響きがあるので少し気が引けるが「趣味は天文です」などと言う事が多い。しかし、真の心から言うと「趣味は望遠鏡です」なのである。しかしこれは、先の例に反して、一般的には理解されない。

 カメラや車は、普通の人も所有し、その素性を理解できるものであるから、先の表現も成り立つのだろう。望遠鏡は、そういう意味では特殊なのだ。望遠鏡は、星を見る道具に過ぎないけれども、その星を見るのを趣味とする人のなかに、その趣向に一部突然変異を起こしている人たちがいて、その人たちの趣味は望遠鏡なのである。
 これからは趣味を聞かれたら、相手を良く見定めて「星を見るのが趣味です」と「趣味は望遠鏡です」を使い分けていくことにしよう。



 ビクセンのドイツサイズ接眼鏡のショーケース。昔のカメラ店などに飾られていたのだろう。



 接眼鏡は、黒い台にねじ込めるようになっている。ここでは、ミザールの接眼鏡を使ったが、ぴったりだった。