11月21日(日)、ホテルオークラで行われた沢木耕太郎の講演会に行ってきた。
正直にいえば、深夜特急の話を期待して行った。
しかし、講演会は、沢木さんが20年ほど前からずっと訪れたいと思っていたが、
訪れる事ができなかった場所「セロ・ムリアーノ村」という場所に、ようやく最近
訪れる事ができたという話だった。
「セロ・ムリアーノ村」とはスペインの小さな村である。
そして、その場所は戦場写真家であるロバートキャパが「崩れ落ちる兵士」という
写真をとった場所なのだ。
なぜこの写真が有名なのか?というと、兵士が撃たれる瞬間をおさめた写真は、
他にはないからだ。しかし、この写真は真贋論争がずっと続いているのだ。
沢木さんは、現地にいってみて、真相を突き止めたかったのだ。
その結論は、来年あたりに本になると言っていたのだが、多分結果は、黒だと思う。
沢木さんがキャパを語る口ぶりはとても優しかった。
キャパは22歳のときに、「崩れ落ちる兵士の写真を撮影している。
」
その時のキャパは、派遣社員的な身分であり、とった写真を次々、新聞社?に送っていた。
そのうちの1枚が「崩れ落ちる兵士」であり、それが有名雑誌に載ったことで、いつの間にか
世界的な戦場写真家になってしまった。
キャパは、自分の口から「崩れ落ちる兵士」の写真について、語る事はほとんどなかったという。
その後、キャパはノルマンディー上陸作戦を、兵士よりも先に上陸し、
背後に敵を背負いながら、臨場感あふれる写真をとっている。(震えている感じがリアルだ)
」
キャパは22歳の時に人生の「負債」を背負ってしまった。
それを、ノルマンディーのように、自分の命をかけて戦場の写真をとることで、「負債」を返済していった
のではないか?と沢木さんは言っていた。
僕が何より羨ましく思ったのは、沢木さんは、本当に楽しそうに仕事(遊び?)をしていることだ。
沢木さんにとっては、キャパも仕事になってしまったのかもしれない。(翻訳もしているし)
しかし、誰かの人生を、そこまで深く考え、想像する機会というのは、それほど多くはないと思う。
そして、「崩れ落ちる兵士」の真相を突き止めるんだという情熱、しかも新しい手法で、とってもすっきりした
形で世界に発表できるのではないか?とおっしゃっていた。
とても、ワクワクしていて、羨ましかった。
振りかえれば、未だ自分は不調から脱していない。
他の人からみれば、問題なく仕事はできているかもしれないが、何かちょっと抜け殻だ。
早くこの状態を脱しなければ・・・と思うのだ。自分の人生は、自分で掴みとらなければ・・・・。