惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

旭とルリ子

2005-03-14 20:40:09 | 映画
 同時期に2つのホームページの「日記」がブログへ移行し、書き手は知り合い同士、しかも数日前に顔を合わせているとなれば、「ははん、どちらかが思いついたことを話し、互いに示し合わせて行動に移したのだな」と勘ぐられてもしょうがないでしょうね。
 しかし、これは本当に偶然の一致。世間の趨勢がそうなりつつあるということかもしれません。堀晃さんの「マッドサイエンティストの手帳」と、当ブログとのことです。

 で、堀さんが13日に書いておられることに関して、気がついたことを少し。

 昨年末に出た黒須紀一郎『多摩川夢工場』(作品社)はタイトルからも察しがつくとおり、日活撮影所にまつわる匿名小説。著者は元日活のプロデューサー。
 彼が日活に入社した1955年は浅丘ルリ子がデビューした年で、いわば撮影所の同期。作品では、それぞれ「加茂公一」「花房このみ」という名前になっています。もう1人メインとなる人物はシナリオライターの「上山信太郎」で、これは明らかに山田信夫。
 物語はこの3人の足跡を中心に「東活」が全盛期を迎え、やがて衰退に向かおうとするところまでを描く。

 中で、私が特に興味を覚えたのは「花房このみ」と男優「比良野健」の仲でした。
 比良野は「背も高く、彫りの深い端正な顔で、動きは草原を走る豹を思わせる」青年で、ギターを持った流れ者の役で当てる。その相手役をこのみがつとめた。そして、実生活においても2人の関係はただならぬものがあるようにほのめかされているのです(もっぱら精神面にスポットが当てられていますが)。

 この他にも色々とゴシップ的な意味で推測を呼ぶ事柄があり、ここに書かれていることのどこまでがフィクションで、どこまでが事実なのか気になります。作中に登場する(もちろん仮名で)元監督がすぐそばに住んでいるので、聞いてみたくもあるのですが、果たしてこの本のことをいっていいものかどうか、迷っているところ。

 堀さんの書かれたことを読んで、少なくとも「花房このみ」と「比良野健」に関しては事実に近い部分がありそうだと思えてきました。
 ということは、その他の記述も……。
 小説技巧として視点の移動の処理に問題があり、読者を戸惑わせる点が残念ですが、色々と気になる小説ではあります。