夕方の散歩は、今朝、亡くなられた水木しげる先生の仕事場がある駅前商店街へ。
取材だか中継準備だかの人たちが2組ほどいましたが、他には特に変わった様子はなし。商店街入り口の街燈の上からは、いつものように鬼太郎と目玉の親父が見下ろしてくれていました。
水木さんの作品と出会ったのは、小学生の頃。貸本屋で借りるマンガ本に載っている『墓場鬼太郎』や『河童の三平』を読みました。
貸本マンガの絵柄は洗練されてるとはいいがたいものの、個性的なものが多かった。その中でも水木さんの画風は特に強烈でした。目玉の親父は可愛かったけれど、ネズミ男は風体といい、性格といい、とても子ども向けではなかった。それだけに妙に忘れがたいキャラクターでした。
30数年前に今の街に越してきてからは、駅前周辺で時折り、水木先生をお見かけしました。書店で、天神さまのあたりで、駅前のデパートで、交差点で……。
ここ数年はそういうこともなくなっていましたが、ツイッターでお元気な姿を拝見。この秋には、故郷・境港を訪れた番組(山陰放送制作)をBSで放送してましたっけ。この夏、SF大会のついでに、境港を訪れることができたのも何かのご縁だったのでしょう。
子どもの頃、闇深い自然に対してはおのずから畏怖感を抱きましたが、それを水木さんは妖怪という形で、親しみやすいものにしてくれました。怖いんだけど、そんなに怖れなくてもいい。畏敬の念を抱きながら、仲良くすればいい。そんなふうに教えてくれたように思います。いや、これからも教えつづけてくれるはず。
〈小説推理〉1月号が出ました。担当のSFレビューで次の3作をとりあげています――
- ハオロ・バチガルピ 『神の水』 (中原尚哉訳、新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 田中啓文 『イルカは笑う』 (河出文庫)
- 梶尾真治 『猫の惑星』 (PHP研究所)
バチガルピの『神の水』は水飢饉を描く近未来SF。小説作りがぐんと巧くなっていて驚きました。