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アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』

2007-03-01 22:21:28 | 読書
 失踪した友人を捜して、ボンベイ、マドラス、ゴアと旅する男の十二夜の物語。

 しかし、読み進めるにつれて、捜し求める相手の姿も、旅の目的も何もかもがインドのけだるい熱気の中に溶解していく。そして旅の最中の様々な人々の遭遇を通じて、主体と客体、現実と仮象といった自明と見えた区別が意味をなさなくなり、西欧近代が生み出した思考や認識の枠組みそのものが次第に消失する。ストーリーが進むに従い、プロットは曖昧になり、最後にこの作品そのものが一個の謎として残る。

 微熱のつづく頭で読んだせいか、聖俗入り混じったインドの空気にあてられる。

 
アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』(須賀 敦子訳、1993.10、白水Uブックス)


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