人並みに本を読んできたが、特定の趣味や好みを持たぬことを自らに課して80年近い人生を過ごしてきた老女が主人公。最初はちょっとした偶然から移動図書館から本を借りる。読書好きの、だが妙にバイアスのかかった青年を導き手として、あくまでも儀礼的に本を借りては読むことを繰り返すうちに、次第に小説を読むことの面白さに目覚め、「一冊の本は別の本へとつながり、次々と扉が開かれていくのに、読みたいだけ本を読むには時間が足りない」というもどかしさを覚えながらも、小説を読み耽るという「悪癖」の虜となっていく。この主人公が英国女王というところが、読書論や読者論としても読めるこのユーモア小説の読みどころとなっている。
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