Mey yeux sont pleins de nuits...

読書、映像・音楽の鑑賞の記録など

今日買ったDVD

2011-02-07 22:53:33 | 映画
 アラン・コルノー「めぐり逢う朝」。昨年亡くなったアラン・コルノーの代表作とされるこの作品が紀伊国屋書店からDVD化されていたので購入。その日のうちに、一気に見てしまった。 . . . Read more

2010年の個人的な流行 2 / ミケランジェロ・アントニオーニの作品

2011-01-19 23:11:27 | 映画
 ミケランジェロ・アントニオーニは、パゾリーニと違って、もともと好きな監督だったが、「欲望」以外のDVDは持っていなかった。偶々、出先で、これまで見たことがなかった「砂丘」と高校生の頃に一度見たきりの「さすらいの二人」が並んでいたので、まとめて購入した。 . . . Read more

ギスラン・クロケーについてのメモ

2009-07-30 20:59:25 | 映画
 「ロシュフォールの恋人たち」の冒頭から双子の姉妹の歌までの一連の流れはこれからはじまる映画への期待を否応なく高められる見事なオープニングだ。その期待感はいうまでもなくミシェル・ルグランの見事なスコアによってもたらされる。しかし、その期待感の絶頂は、滑らかに移動しつつ群舞を捉えたあと脚立をもって祭りの準備に取り掛かったエティエンヌ(ジョージ・チャキリス)らを追っていくカメラがどこからか聴こえてくるピアノの音を辿るように上昇し、そのまま祭りで踊る少女たちのレッスンをする姉妹の部屋の窓から滑りこんでくところにある。撮影監督は「ロバと王女」でもドゥミとコンビを組んでいるアントワープ出身のギスラン・クロケー。クレーンも用いた数々のダンス・シーンでのカメラ・ワークが印象深い。 . . . Read more

スティーヴン・スピルバーグ『ターミナル』

2009-06-23 23:34:04 | 映画
 それにしても、空港とは確かに待つための空間だった。さまざまな手続きを待つ。離陸を待つ。誰かが帰ってくるのを待つ。それとともに奇妙な空間でもある。空港という場所での経験について、多木浩二は「孤独の極みとも、自由とも、完全に拘束された状態ともいえる」と述べているが、この映画の主人公もこのすべてを経験する。さらにまた多木浩二によれば、空港は常に、完全に国家に属しているわけではないが、「どこにも属していないように見えて、その実こうした自由を無化する空間」、つまり監視する権力の管理下に置かれている空間であると述べている。そして、この映画もそのような空間を舞台としている。 . . . Read more

リドリー・スコット『ブレードランナー ファイナル・カット』

2008-09-27 23:53:16 | 映画
 映画『ブレードランナー』は、自分がどこからやって来たのか、そしていつまで生きていられるのかという問いの答えを求めて、「創造主」に会いにいくレプリカントたちを描いているが、同時に記憶とイメージとアイデンティティの連関をめぐる問いを誘発せずにはおかない映画でもある。ただし、監督リドリー・スコットの野心は案外視覚効果面での完成度をいかに高めるかにあったと思われ、この映画の主題ももともとは『デュエリスト』や『エイリアン』に連なる、立場が反転する追う者と追われる者という構図として捉えていたのではないかと感じる。最初に挙げた問いは、むしろ、のちにクリス・マルケルの『ラ・ジュテ』のリメイクに関わることになるデイヴィッド・ウェッブ・ピープルズの主題だったのではなかろうか。 . . . Read more

スティーヴン・フリアーズ『クィーン』

2008-03-03 23:54:48 | 映画
 ダイアナ元皇太子妃の死亡事故当時、マスメディアが競って流した(あるいは流そうとした)事故の模様とその現場に残された大破した車、そして遺体、あるいは王室と元皇太子妃の確執といったものをこの映画は直接画面の中に映し出そうとはしない。スティーヴン・フリアーズは、あからさまであることをその本質としているかのような現代のマス・メディア(映画も含む)とは一線を画す姿勢によって、ともすれば、そっくりさんによる下世話な内情暴露ものになりそうな題材を洗練された映画にまとめ上げることに成功している。そして、それゆえにこの映画はマスメディアに対する批評(あるいは批判、というべきか)を含み持っている。 . . . Read more

(ちょっとした感想)イーストウッドの二本。

2008-02-24 11:58:52 | 映画
 『ハートブレイク・リッジ』では若い訓練兵たちに戦場で生き残るための術を叩き込む古参の軍曹を演じたイーストウッドも、『スペース・カウボーイ』では若いエリートたちの知識と体力を凌駕する老人ならではの経験と知恵をひたすら自らの若いころの夢の(遅ればせながらの)実現に注ぎ込む。 . . . Read more

ウォン・カーウァイ『2046』

2008-01-20 01:22:58 | 映画
 『花様年華』の最後に、スー・リーチェン(マギー・チャン)との記憶をアンコール・ワットに永遠に封じ込めようとしたチャウだが、しかし永遠なるものに封じ込まれたのはチャウ自身の魂であり、過去の囚われ人となったチャウのその後を描いたのがこの作品ということになる。1966年、シンガポールでギャンブルの泥沼にはまっていたところを助けてくれたスー・リーチェン(コン・リー)という女賭博師と別れ、チャウは香港に戻ってくる。ここからのストーリーの軸となるのは四つのクリスマス・イヴ。 . . . Read more

ウォン・カーウァイ『花様年華』

2008-01-15 00:31:08 | 映画
 東洋と西洋の文化が混在する1962年の香港が主な舞台。同じ日に隣り合う部屋に引っ越してきた男女―チャウ・モウワンとスー・リーチェン(チャン夫人)―が見事な色彩感に彩られた濃密な画面の中で、互いが互いの存在をなくてはならぬものと感じるほどに関係を深めていきながら、決して一線を越えずに別れていく。主役二人のストイックなさと周囲のデカダンスの対比、そして二人の距離が近づき、また遠ざかることを表象する音楽の使い分けが印象深い。  しかし、何より印象的なのは時間の描き方だった。刻々と現実的な時は過ぎ行くことを示す形象(時計)が画面上に随所に挟み込まれるが、弦のピツィカートに導かれた「夢二のテーマ」にのせたコマ落とし気味のスローモーションのシークエンスが繰り返される度に二人の距離が近づき、二人を取り巻く時間の感覚はゆるやかに溶解していく。そして観る者もしばしば二人を取り巻く時間を見失う。 . . . Read more

ビリー・ワイルダー『情婦』

2008-01-01 22:03:52 | 映画
 エンド・クレジットが流れるときに入る「結末を決して人には話さないでください」というナレーション通りの、どんでん返しの連続となるストーリー・テリングの巧さは、なるほど精巧な機械仕掛けのように組み立てられていて、それをテンポよく一瞬たりとも飽きさせぬように描いていくビリー・ワイルダーの手腕は見事だ。葉巻や「ココア」などの小道具はひとつひとつ印象深く扱われていて、台詞の巧さとともに印象に残っていく。 . . . Read more

ジョー・ライト『プライドと偏見』

2007-12-31 23:35:58 | 映画
 ストーリー自体は刈り込みすぎて説明不足の感もあるが、いずれにせよ他愛もないもの。90分前後のスクリューボール・コメディにまとめても面白い題材かも知れない。年忘れの一本としてはうってつけの映画だった。ストーリーよりは、むしろ味わい深いカントリーハウスや豪華な邸宅とともにイギリスの美しい田園風景を堪能するための映画なのかもしれない。貫禄のジュディ・デンチ、滑稽なブレンダ・ブレシンとトム・ホランダー、そして何より滋味あふれるドナルド・サザーランドの演技が素晴らしい。キーラ・ナイトレイのヒロインは若干、現代風の解釈か。 . . . Read more