石原延啓 ブログ

seeking deer man

nobuhiro ishihara blog 

絵の背景を観ながら

2010-12-22 21:38:32 | Weblog


一週間程前に100号Sの作品を描き上げる。
日本の絵画の伝統的な空間表現を意識して平面的に近景と遠景を分け、そこから一歩踏み込んで近景であるdeer manの体の空白部にまた別のdeer manを描きこむことで異なるレイヤーへの窓口となるような装置とした。
この作品で自分の意図がどれほど上手くいったかどうかは別として、上がった作品を眺めながら、なぜ自分はdeer manの背景に集合住宅を描き込んだのかを改めて考えてみた。

東京の都市部の風景を象徴的に背景としようということは最初の時点で決めていたのだけれども、具体的にこれだというものが思い浮かばず、なんとなく近所のごく普通のマンションを描くことにした。
集合住宅というものはどの国にも必ずあるものだが、日本には日本独特の雰囲気がある。そして(どこがどうということではないけれど)ニュータウンなどと共に戦後の日本の高度経済成長期を象徴しているような気がする。
昨年民主党政権が誕生し、人々は革命とか新しい時代の到来を声高に叫んだ訳だけれども、実はこれからが本当の意味で日本にとって全く新しいステージに入ったといえるのではないだろうか。
つまり古い保守の時代が終わり、古い革新のやり方がもはや現代社会では通用しないということを認識することでやっと日本が新しいスタートを切れるのではないか。いよいよ働きに働いて日本に繁栄をもたらせてくれた世代を支えていた両極の価値観を脱ぎ捨てなければいけない時代になったということか。
父の受け売りだけれど、例えばアメリカなら「自由」、フランスなら「文化」、でもって今の日本を象徴する言葉は「温泉、グルメ、お笑い」だとか。右左とか反米反中とか受動的な要因からではなく、我々日本人がどういった国づくりをしたいのかを能動的に考え直す時期かもしれない。

~とまあ、そんなことをつらつら考えていた訳ですけれども、絵画はやはり難しいです。