課外授業にようこそ

2006年01月26日 | Weblog
受験シーズンである。トヨタや中部電力やJR東海など中部財界が出資して開校される中高一貫の海陽学園に受験生がそれなりに殺到している。設立者サイドは日本の将来のエリートを作りたいと公言して憚らない。どんなエリート教育をしたいのだろうか。

堀江貴文氏は受験エリートだった。東京大学に入学するだけの偏差値学力はあった。しかし、自分の限界も同時に知っていたはずだ。中学、高校と九州の有名私立進学校に在籍していたから、周りの同級生には優秀な人間が多かっただろう。彼ら同級生の中には東大法学部に進み、官僚になったり、理系なら、医学や工学の世界で既に活躍している人間も多いだろう。そんな彼らに比べれば、文学部の堀江氏は己の限界も知っていたのだろう。日本文学でも、英文学でも、はたまた、社会学の世界でサブカルチャーを研究する選択支もあったはずだが、ビジネスの世界に飛び込んだ。彼はコンプレックスを抱えていたのだろう。ルックスが特別良いわけでもない。文学部なら、就職で勝ち組みに入れる保証もない。自分で自分を何者かにしたかったのだ。彼にとって、地道に学究生活を送ることよりも株取引と言う課外授業の方が意味をなしえた。雑誌プレイボーイを地で行く生活を送れば、大衆は拍手喝采を自分に送ることを理解していた。良い車に乗り、幾人もの女性を側にはべらし、美食の限りを尽くす。全部、世の男性の夢だったのだ。社会的に成功する夢を実現してみせたのだ。しかし、大衆は同時に残酷でもある。大衆はガス抜きにも拍手喝采する。ルサンチマンを抱えた大衆は堀江氏に自分をかさね、そして、墜ちた偶像を今度は叩き、溜飲を下げる。

堀江氏の少し長めの課外授業は終了した。彼は何を学んだのだろう。
現在、日本の中学や高校では、職場体験学習などの課外授業も盛んに行われている。その中でも授業に株式の売買を取り入れているところもある。また、各界の人物を招き、講師に据えている。海陽学園ではどんな人物が招鞭されるのだろうか。

  宇沢弘文氏  鎌田 慧氏
  高木 剛氏  佐高 信氏
  森田 実氏  堀江貴文氏
  
以上の人々が、講師になれば面白いが、あり得ないんだろうなあ。

― 香山リカ+福田和也 『愛国問答』より ―
 香山「日野原重明のベストセラー本なんか読むと、やっぱりすごい教養
    ですよね。ギリシアの先哲、とか言われてみんなついていけるかと
    思うけど。いろいろな物を読んでいる。財界人にあんな人はいない?」
 福田「いや、中にはいますけど。でも財界人って本当にどうしようもない。
    僕、商売柄、三百人ぐらい会っているけど、まともな人って三人か
    四人ぐらい。本を読んでいる人は本当に少ないですね。」