通常用いられているレンズは、光を屈折させて集光する。この手法では、光の波長より小さい物体は観測出来ない。しかしながら、ナノ粒子の助けを借りて、ナノメートルサイズの物体でも観測出来るスーパーレンズが模索されている。
光が材料に入射すると必ず反射される。この場合は、反射係数が正であるが、反射係数が負である材料は、波長より小さいサイズまで光を収束することが証明されている。反射係数が負である材料はこの世の中には存在しない。しかしながら、人工的に作り出すとは可能である。つまりスーパーレンズを作り出し得る可能性がある。
金属材料の表面に特定の波長の光が入射すると、共鳴を起こしてプラズマ振動を誘起する(11/17,12/21参照)。つまりプラズモンを発生するが、この場合は反射係数が負になることが明らかにされている。光は電磁波であるから、電波と磁波が共に伝播している。プラズマ振動を発生すると、電波の反射係数は負になるが、磁波の反射係数は負にならない。スーパーレンズを実現するには、両方の反射係数が負にならなければならない。
ミシガン工科大学の研究者たちは、ナノサイズの金属薄膜の近くに特殊な構造を配置することによって、金属薄膜に発生したプラズモンが強い磁場を誘起し、実質的に磁波の反射係数も負に出来ることを明らかにした。プラズモンを発生する光の波長は、ナノ粒子のサイズや形によって変化することをすでに説明した。このことを利用して、可視光のかなり広い波長範囲にわたって両方の反射係数を負に出来る人工材料を見つけだした*。
*http://www.sciencedaily.com/releases/2012/01/120109102916.htm
この人工材料の製作費も比較的安い。スーパーレンズだけではなく、リソグラフィ(10/24,11/3)にも利用出来るものと期待される。
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