ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

スピントロニックスとナノテクノロジー

2012-01-22 | 報道/ニュース

現存のハードディスクには磁気メモリーが用いられている(1/14参照)。ここでは、強磁性材料に磁界を加え、そのスピンの向きを揃えることによって情報を記憶させる。磁界を加えるのに、小さな電磁石に電流を流し磁界を発生させている。そのため比較的大きい電力を消費する。

電気信号によって、スピンの向きを変えることができれば、操作も簡便で消費する電力も小さい。このような目的で発達したのはスピントロニックス(spintronics)である。spin electronicsの略で、1980年ごろから注目されている。必ずしもナノテクノロジーを必要とする領域ではないが、最近、日本(三重大学、東北大学)の研究者たちの成果などにより、ナノサイズの薄膜を用いることによってスピンの向きを電界で制御出来ることが明らかになってきた。金属強磁性体では、電界の影響を受けるのは表面数層に限られるため、ナノサイズ薄膜を用いることが必要である。これまでの研究では、電界によるスピンの向きの制御は低い温度でのみ可能であった。

Nature Materialsのニュースが、アメリカと日本(大阪大学等)の研究者たちが、常温で電界によってスピンの向きを制限することに成功した、と報じている。これらの研究は、磁気メモリーの高エネルギー効率スイッチ法の開発に貢献するもので、電界で制御出来る磁気メモリーデバイスへの第一歩を踏み出したものとして高く評価されている。ちなみに、アメリカ、日本の研究者たちは、それぞれ強磁性材料CoFeB、FeCoを用いている。