ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

太陽光発電:低価格、高能率

2012-01-04 | 報道/ニュース

太陽光発電に関しては、これまで何回か述べて来た。ウェブサイト http://sroeco.com/solar/images/PVeff-rev100414.png を開くと、その効率が年とともにどのように変化して来たがよくわかる。現在市販されているのは、茶色の中抜きの〇で示した染料を付加したシリコンパネルで、その効率は十数%である。

太陽光発電の原理はすでに説明したが(10/2,26参照)、もう一度まとめておこう。半導体の中で、電子は最もエネルギーの低い充満帯に閉じ込められ(9/25参照)、動くことが出来ない。充満帯のすぐ上には禁止帯があり、その上に電子が自由に動ける伝導体がある。半導体に光が当たると、その波長に応じて決まったエネルギーを電子に与える。そのエネルギーが、禁止帯の幅より大きいと、伝導体に電子が移り、価電子帯に正孔が生じる。pn接合を作っておくと、電子が外部回路を通って正孔と結合する、すなわち、電気が仕事したことになる。

効率が上がらない理由は色々ある。光が電子に与えるエネルギーのうち、禁止帯の幅より大きい分は熱エネルギーになってしまう。また、光が半導体の表面で反射される。シリコンを用いる場合、効率は約30%を超えないことが証明されている。

EUが支援しているRODSOLプロジェクトは、ナノテクノロジーを用いて、シリコン太陽光発電パネルのコスト削減と高効率化を目指している。シリコンの板に垂直にシリコンナノロッドの林を立てることにより(10/25参照)、光の反射を抑えかつ使用するシリコン量を低減出来る。今のところ、効率は9%とまであるが、シリコン量はかなり軽減出来るという。

上記のウェブサイトのグラフで最高の効率が得られているのは、多重pn接合を用いた太陽光パネルである。電子に与えられたエネルギーが無駄にならないように、禁止帯の幅が異なる数個の半導体のpn接合を重ねたもので、これはナノテクノロジーとは関係がない。また高価である。さらにナノ粒子を用いると二つの利点がある。第一に、ナノ粒子が小さくなると禁止帯の幅が大きくなる。膜圧が薄い場合も同様であるので、別の種類の半導体薄膜を挟むことも試みられている。もう一つは、禁止帯幅の2倍以上のエネルギーが与えられたとき、2対の電子・正孔が生じる確率が大きいことである。

太陽から地球に到達するエネルギーは、全人類が消費するエネルギーの6000倍に過ぎない(9/5参照、以前は1万倍であったが、エネルギー使用量が増加したのだろうか)。効率が100%であるとしても、太陽から降り注ぐエネルギーの6000分の1を利用する必要がある。効率が10%であると、600分の1を利用しなければならないことになる。

低価格で高効率の太陽光発電パネルを開発する努力は今後も続くであろう。