ナノテクノロジーニュース

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ナノテクノロジーがMRIに画期的な変化を

2012-01-07 | 報道/ニュース

MRI(磁気共鳴イメージング)は、原子核がスピン(9/25,28)を持つことを利用する。スピンを持つ原子核は小さな磁石であると考えればよい。人間が、大きな磁石が発生する強い磁界の中に横たわると、体内のスピンが向きを揃える。これに電磁波を加えると、スピンが電磁波のエネルギーをもらってその向きを変える。この現象は、光(光も電磁波である)が半導体の価電子帯の電子を持ち上げる現象(9/27参照)と同じような過程であると考えてよいが、この場合はスピンの向きを変換出来るのは特定の波長の電磁波に限られる。これを磁気共鳴という。外から加える電磁波を切断すると、向きを変えていたスピンが電磁波を放出してもとの方向に戻る。MRIに用いるのは通常水素原子核であるが、その結合状態によって共鳴が起こる波長やスピンの向きを変える速度が異なる。このことが診断に利用されている。また、患部に造影剤を投与することもある。

3次元のイメージングのためには電磁波のビームをスキャンさせる。しかも電磁波の進行方向に磁場の強さを少し変えておく。放出される電磁波の波長が磁場の強さによって少し異なるので、これを利用して3次元のイメージングを可能にする。

ダイヤモンドのナノ粒子は、生体の中で無害でドラッグデリバリーにも利用されている。カドミウムを不純物として含むダイヤモンドナノ粒子が、放出する電磁波の強度を増大し、造影剤の役割を果たし得ることが示されている。最近、酸化鉄のナノ粒子がその周辺の磁場を乱すため、造影剤として利用出来ることも示されている。すでに治験の認可が得られているという。

現状では、MRIの分解能を上げるためには電磁波ビームを小さくする必要があるが、発生する電磁波が弱くなって測定出来ない。アメリカのピッツバーグ大学の研究者たちは、最近窒素を不純物として含むダイアモンドナノ粒子を用いて、局所的な磁界の強さを従来の方法に比べて10倍程度の高精度で測定出来ることを示した。この方法を用いて細胞内の分子集団のMRIを得ることが出来るものと研究を進めている。