旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

恋がかなう駅と諏訪泉となまこ壁の宿場町 智頭急行を完乗!

2022-03-19 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 智頭急行の主役「スーパーはくと」は、時速130kmで大阪〜鳥取を2時間30分で駆け抜ける。
陰陽連絡を担う智頭急行は、スーパーはくと号の効果で第三セクター鉄道の中では数少ない黒字の優等生だ。

何人たりともスーパーはくと号を邪魔できないから、ローカルの単行気動車は彼の通過後にひっそりと発車する。

ところで智頭から上郡まで全線を乗り通すと1,320円、1日フリーきっぷは1,200円だから、
たった一度の途中下車をしなくてもフリーきっぷがお得だという珍しい運賃設定になっている。

ひとつ目の駅は恋山口駅、1日の平均乗降人員がたった3人の山間の小駅は、平成25年に駅舎をピンクに彩り
“恋がかなう駅” としてリニューアルした。大きなハートマークと記念撮影ができるじかけの駅なのだ。
上郡発10:27、鳥取発11:05発は恋山口駅には15分停車するので、恋する二人は訪ねてみたらいかが?

 恋はしていない呑み人は、智頭の蔵 “諏訪泉” の純米を開ける。うさぎラベルはかろやかな定番晩酌酒だ。
しかしながら300mlを飲み切らないうちに車両基地のある大原駅に到着、ここは途中下車しておきたい。

交換した下り列車は、車体に夜空にきらめく星のようを散りばめた「あまつぼし」だ。
内装に地元材をふんだんに使い、外装に沿線の澄みわたる夜空を描いたこの車両はイベント列車に使われる。

 大原(美作市)は因幡街道の宿場町として栄えた。袖壁、なまこ壁、通し土間に虫籠窓、白い家並みが美しい。
池田侯(鳥取藩主)が宿泊した本陣も、土蔵と長屋門が立派な脇本陣も江戸期の建屋が現存している。
脇本陣に並んで酒林を提げているのは “白梅” の田中酒造場、大原宿を代表する町家が創業当時の趣を残す。

大原宿をぶらり歩いて駅至近の「Restraunt Paris」へ。赤れんがの外壁と屋号はまるでフレンチレストラン。
実は洋食はもちろんだが、中華も丼物ある大衆食堂、いや田舎のファミリーレストランと云うべきか。

     

オーソドックスに “とんかつ定食” を注文したのだが、これがまたボリューミー。
もはや中鉢と云うべき、“切り干し大根” と “春菊のお浸し” をアテにスーパードライを呷ったら、
丼めしと赤だしで “とんかつ” をいただく。もう動けないくらいの満腹状態で、これ以上車中酒は飲めない。

駅に戻ると、ちょうど当駅始発の738Dが車両基地から出庫して来た。乗客はボクを含めて二人だけ。
山間を走る第三セクター鉄道の日中は、特急を利用する通過客を除けばほとんど閑散としている。

一旦は建設凍結したAB線(地方開発線)である智頭線は、沿線自治体の第三セクター化により開業した。
1994年開通の新路線は、路線のほとんどが高架かトンネル、踏切だってほとんどない高規格路線。
普通列車の110km/hの高速運転も大きな揺れはなく、地酒を注ぐのに零す事もない。クロスシートも快適だ。

寄り添ってきた千種川が大きく蛇行して播磨灘をめざして流れていく。流れも緩やかになって平野も近い。
釜ケ谷トンネル(1,476m)を抜けると、近寄って来た山陽本線の複線に飲み込まれてあっさりと上郡に終着する。
特急が爆走する第三セクター鉄道、ガラガラの鈍行列車に身を任せての暢気な呑み鉄の旅が愉しい。

智頭急行・智頭線 智頭〜上郡 56.1km 完乗

♡じかけのオレンジ / 大瀧詠一 1982
     



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2 コメント

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初めまして (sugar photolog)
2022-03-22 09:14:09
いつも御覧頂きありがとうございます。
旅する写真家・・尾仲浩二というのをご存知でしょうか。主被写体との向き合い方は多少違いますが、その絶対的距離感が私は好きで良く見るのですが、発表の場は違いますが一つの参考までに・・・検索をされると良いかも知れません。
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Unknown (呑み人)
2022-03-22 19:30:34
sugar photolog 様
こんばんは。コメントありがとうございます。
尾仲浩二さんのHPを覗いて見ました。
興味深い視点ですね。
sugar photologさんの「通り過ぎた町」には
そのエッセンスを感じますね。
参考にさせていただきます。
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