信州の桜は入学式が終わってからと記憶していたけど、今春は4月の声を聴くや満開を迎えた。
近所の蕎麦処で信州の地酒を吞んで里心がついた僕は、新書を一冊ポケットに束の間の帰省を果たす。
母校の時計台は櫻木に囲まれていたと思っていたけれど記憶は曖昧だね。ピンクの枝垂れが1本だった。
そう云えば、風流人を気取った古文の教師は、僕らを母校の前庭や善光寺を見下ろす公園に連れ出して、
そよ風にサクラが舞い踊る中、朗々と万葉集なんかを謳い上げていたっけ。
さて、記憶のソメイヨシノの並木は新校舎を囲むように在った。当時ここはグランドが広がっていて、
暗くなるまでボールを蹴っていた。恋を語るでもなく、訳もなく硬派を気取っていたな。
暫し16~17の頃に思いを馳せて振り返る。丘の下の市街地は春霞に揺れているようだ。
ブギ浮ぎ I LOVE YOU / 田原俊彦 1981