弘法大師の創建と伝わる真言宗の古刹・玉蔵院、地元では桜の名所としても名高い。
本堂横、樹齢100年を超える枝垂れ桜はピンクの花びらが舞いはじめて、今日あたりが最高の見頃だろうか。
いつまでも東京に通うわけではないから、何年か先を見越して、馴染みの小料理屋があったらいいと思う。
そう、人気TVドラマシリーズの「花の里」とか「こてまり」のような。
はじめてお邪魔したカウンターに8席のその店は、小料理屋と言うよりは寿司割烹だろうか。
板場には誠実そうな大将、寡黙に柳刃を入れるのは先代だろうか。森口瑤子似の女将のお酌は当てが外れた。
まずはご存知富山の “立山” を択ぶ。ほのかな芳香で旨味あり、軽快な飲み口の特別純米酒からはじめる。
お造りはレモンを絞って “たひら貝” に “タコ”、あとは “キンメ”、“しめさば”、“まぐろ” が並んだ。
二杯目は横手の “天の戸 美稲80”、味わい深い無濾過純米酒を愉しみながら、濃厚な “あん肝” を突っつく。
はじめましての店では「おまかせ」に限る。僭越だけれど、店の雰囲気と板場の腕を感じるには良いと思う。
なかなか素敵なお店に巡り会ったかな。ひとさら一皿が美しく美味しい。そして季節の旬を味わえた宵だ。
僕らは気に入ったお店だけど逆はどうだろう。実はこの後さらに三杯いただいている。ちょっと調子付いた。
まさか「出禁」の烙印は押されてないと思うけれど・・・。彼女の頬もほんのり桜色、枝垂れ満開の夜は更ける。
Long Term Memory / CASIOPEA 1983